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第8回 オーストラリア絵本レポート[2]- テイラー佳子

2019/07/22


世界の出版事情 ー 各国のバベル出版リサーチャーより

第8回 オーストラリア絵本レポート[2]
-オーストラリアの児童図書賞





       
                      テイラー佳子
(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了

 
  
 オーストラリアでは毎年8月に、児童図書賞(
Book of the Year Awards)が発表されます。この賞は、オーストラリア児童図書評議会(Children’s Book Council of Australia)が主催して1946年に創設されたもので、オーストラリアで最も歴史と権威のある児童文学賞と言われています。ヤングアダルト文学部門(対象読者年齢:13歳から18歳)、児童文学部門(対象読者年齢:8歳から12歳)、幼年向け部門(対象読者年齢:0歳から7歳)、絵本部門(対象読者年齢:0歳から18歳)、ノンフィクション部門(対象読者年齢:0歳から18歳)、イラストレーション部門(対象読者年齢:0歳から18歳)の6部門において受賞作品が選ばれます。

 また、受賞作品の発表と同時期に、「ブック・ウィーク」(読書週間)が設けられます。「ブック・ウィーク」期間中には、地域の図書館、書店や学校で「ブック・ウィーク」に、ちなんだ子どもたちがわくわくするような催しものが開催されます。その催し物のひとつに、「ブック・ウィーク・パレード」というものがあります。多くの小学校や幼稚園で、生徒たちが自分たちの好きな本の登場人物に仮装して行進を行うのです。子どもたちだけでなく、先生たちも仮装して参加したり、一番見事な仮装をした生徒が表彰されたりするので、行事は大いに盛り上がります。こういった楽しいイベントを通して読書意欲がかきたてられ、子どもたちは、自然と本を手にとるようになります。

 今年は、8月16日に児童図書賞の受賞作品が発表される予定で、その翌日からの1週間、8月17日から8月23日までが「ブック・ウィーク」になっています。今号では、昨年この賞の幼年向け部門および絵本部門で最優秀賞に選ばれた作品をご紹介します。


     
    RODNEY LOSES IT!

         
    邦訳:ロドニーの探し物(仮)
    作:マイケル・ジェラルド・バウアー
    絵:クリッシー・クレブス
    出版:2019年1月1日
    スカラスティック・オーストラリア社

        
 
 




あらすじ
 うさぎのロドニーは、絵を描くのが大好きで、来る日も来る日も、寝ても覚めてもお絵かきをしています。ある日、ロドニーは、お気に入りのペン(ペニー)を失くしてしまいます。ペニーはロドニーにとって特別なペンで、ペニーがなければロドニーは上手く絵を描くことができません。ロドニーは忘れん坊で、今までにもおもちゃや鍵など、ペンの他にも失くした物が沢山あります。
ロドニーは、ペニーを見つけようと家中をくまなく探し回りますが、ペニーはどこにも見つかりません。ロドニーは、まるで人生が終わってしまったかのように泣きじゃくります。そして、ロドニーが涙をぬぐったその時、ペニーが突然、机の上に現われます!!

 実は、ロドニーは、メガネと一緒にペニーを耳にかけていたのを忘れていたのです。ロドニーが涙をぬぐった時にメガネがずれて、そのはずみでペニーが机の上に落ちたのでした。


作品および作者について
 ロドニーがペニーを探している場面でも、ページの中にはペニーや、ロドニーが失くした他の物が描かれています。洞察力の高い子どもは、物語の途中でペニーを見つけることができるでしょう。読み終わってからも、ペニーを探しに思わず再びページをめくってしまいたくなる一冊です。
 
 本作品は、昨年の幼年向け部門での最優秀賞受賞作品です。また、同年の言語病理学優良図書賞(3歳から5歳部門)においても、最優秀作品に選ばれています。

 作者のマイケル・ジェラルド・バウアーは、ブリスベン出身の元英語教師で、本作品の他、代表作品として「エリック・ヴェール」シリーズの3作品(「
Eric Vale – Epic Fail」「Eric Vale – Off the RailsEric Vale – Super Male」)がスカラスティック・オーストラリア社から出版されています。


    
 A WALK IN THE BUSH
     邦訳:森へ散歩に出かけよう(仮)
     作および絵:グゥイン・パーキンス
     出版:2017年7月3日
     アファーム・プレス


        

 




あらすじ
 イギーは、家にいるのが大好きで、外に出かけたくありません。おじいさんは、そんなイギーを誘って、森へ散歩に出かけます。
散歩の途中で二人は、キパタン(オーストラリアに生息する大型のオウム)やワライカワセミ、カササギ、イグアナなど、たくさんの野生動物に遭遇します。青虫が木の幹に残した謎めいたメッセージを見つけたり、山火事があった場所で新たな緑が芽生えている木々を目にしたりします。ユーカリの木を見つけた時には、手の平でユーカリの葉を揉んでその香りを楽しみました。

 最後に、見晴らしの良い高台から素晴らしい景色を見ながら、イギーはおじいさんに言います。「また一緒に来よう!」と。どうやら、イギーは森の散歩が気に入ったようです。

作者・作品について
 イギーとおじいさんが森を散歩している様子を通して、オーストラリアの自然について学ぶことができます。家にいるのが大好きだったイギーも、大自然に触れて気持ちが変わりました。読者の子どもたちも、この絵本を読んだ後には、森へ散策に出かけたくなるでしょう。本作品は、2018年の絵本部門で最優秀賞を受賞しています。

 作者のグゥイン・パーキンスは、メルボルン出身のイラストレーターで、本作品はグゥインが手掛けた初の絵本です。シリーズ篇として、「
A Day at the Show」(2018年、アファーム・プレス)が出版されており、今年の10月には、新作「A Trip to the Beach」(2019年、アファーム・プレス)が出版される予定です。

参考:
https://cbca.org.au/



【プロフィール】
テイラー佳子
オーストラリア在住。バベル大学院文芸翻訳専攻 修士課程修了。オーストラリアの優れた児童文学作品を日本の子どもたちに届けることを目標に、現在はフリーランスで翻訳の仕事をしています。