大きくする 標準 小さくする

第7回 カナダ絵本レポート[2]- クリーバー海老原章子

2019/06/22


世界の出版事情 ー 各国のバベル出版リサーチャーより

第7回 カナダ絵本レポート[2]





       
                      
クリーバー海老原 章子(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了

 
  
 カナダのスポーツと言えばアイスホッケーですが、このほどカナダのオンタリオ州トロントに本拠地を置くバスケットボールチーム、ラプターズが初のNBAチャンピオンになり、オンタリオ州だけでなく、カナダ全土が祝賀ムードで沸いています。書店をのぞくと、バスケットボール関連の書籍が「おすすめコーナー」に並ぶほど盛り上がっています。

 余談はさておき、今回はカナダレポートの2回目ということで、前回ご紹介できなかったカナダ人作家の絵本をいくつかご紹介したいと思います。前回も申し上げましたが、カナダは多国籍が集まる国。さまざまなバックグラウンドを持つ絵本作家が活躍しています。特に今回は、読み終わった後に、読者がちょっと勇気をもらえるようなユニークは絵本に注目してみました。



    Lila and the Crow (2016)
        ライラとカラス(仮)

        作・イラスト:ガブリエル・グリマード
 
 







あらすじ
新しい街に引っ越してきたライラ。新しい学校で新しいお友達ができるのを楽しみにしています。ところが、カラスのように真っ黒な髪の毛のライラは、クラスメートにいじめられてしまいます。翌日、スカーフをかぶり髪の毛を隠して登校したライラでしたが、今度は肌と目の色でからかわれます。毎日、暗い気持ちで家に帰るライラを待っているのは、どこからともなくひょっこり現れた一羽のカラス。どんなメッセージを届けてくれるのでしょう。


作者・作品について
モントリオール出身の作家/イラストレーターであるガブリエル・グリマードは、この作品の中で毎日いじめられるライラの哀しみや痛みだけでなく、カラスを通じて、自分の持つ美しさに目を向けてほしいというメッセージを巧みに伝えています。もともとはイラストレーターであったガブリエルですが、その独特のソフトなタッチのイラストはさまざまなアートシーンに登場します。



     A family is a family is a family (2016)
    かぞくは かぞく やっぱりかぞく(仮)

      作:サラ・オレアリー
      イラスト:クィン・ラン

        

 






あらすじ
先生がクラスのみんなに「どうして家族は特別なの?」と質問します。ひとりの女の子が不安そうな顔をしています。自分の家族はちょっと変わっているから。クラスのみんなの答えを聞いてみると。「僕はおばあちゃんとふたり暮らしだよ。みんなママって勘違いするけどね」「わたしにはおとうさん、ふたりいるわ」「僕には兄弟がいっぱいいる」…全員違います。さて、彼女はどんな答えをするでしょう?

作者・作品について
多国籍国家のカナダらしく、さまざまな人種の生徒が集まる教室のイラストから始まるのが、とても印象的です。作品に登場する女の子は
Foster Parent(里親)の元で暮らしているという設定です。家族はどんな形であれ「Special」なのだという、強いメッセージ性溢れる作品です。心温まる結末、そして「A family is a family is a family」というタイトルもなるほどと思わせてくれるでしょう。サスカトゥーン出身のサラ・オレアリーは、カナダを代表する人気作家のひとりです。他にも多数著書を出版しています。


    The Night Gardener (2016)    
​​​    作・イラスト:
ファン兄弟 
  
      邦題: 『夜のあいだに』
      
2019
年 ゴブリン書房
      原田 勝 訳



 







あらすじ
ウィリアムが住むグリムリッチ通りでは、朝になると姿を変える木々に大喜びです。緑生い茂る木は、一晩にしてフクロウ、うさぎ、オウム、ゾウやドラゴンに変身します。ある日、その夜の庭師(
Night Gardener)の正体を知ったウィリアム。彼から素敵なプレゼントをもらいます。

作者・作品について
エリックとテリーのファン兄弟がタッグを組んで出来上がった作品は、国内外問わず広く人気を集めています。オンタリオ州立芸術大学でアートを専門的に学んだファン兄弟は、伝統的な技法とモダンな技法を取り入れ、繊細で美しいイラストを生み出します。シンプルだけれども不思議な魅力溢れるストーリーラインも、多くの読者に愛される理由ではないでしょうか。



    Something from Nothing (1993) 
      作・イラスト:フィービ・ギルマン


      邦題:『おじいさんならできる』
      
1998
年 福音館書店
      芦田ルリ 訳








あらすじ
ヨゼフは、赤ちゃんの時におじいちゃんから手作りのブランケットをもらいました。ヨゼフが大きくなるにつれて、小さくなってくたびれていくブランケット。お母さんに捨てなさいと言われますが、そのたびにおじいちゃんのところに持って行くと、おじいちゃんはその生地を新しい物に変身させます。そして最終的に生まれたものとは…?

作者・作品について
米国出身で後にカナダ国籍を取得したフィービ・ギルマンは、多くの受賞歴を誇る人気作家です。お母さんに「もうすてましょうね」と言われたヨゼフは言います。「おじいさんなら きっと なんとかしてくれるよ」…同じフレーズが繰り返し登場するテンポある展開は、読者をワクワクさせてくれます。そして最後に変身したボタンまで、おじいさんのブランケットを大切にするヨゼフに感動します。オンタリオ州立芸術大学でアートを教えていたフィービーは、
2002年に亡くなりましたが、彼女の作品は現在も「Canadian Classic」として広く親しまれています。


    
 SPORK (2010)
    
スポーク(仮)
 
       作:キョウ・マクレア
            イラスト:イザベル・アーセノールト










あらすじ
スプーンとフォークがひとつになったスポーク。キッチンで、スプーンの仲間に入れてもらおうとするスポークですが、先っちょが尖っているからと入れてもらえません。じゃあフォークたちはどう?なんだかちょっと丸すぎると、やっぱり仲間に入れてもらえません。そこへスプーンもフォークも太刀打ちできない赤ちゃんがやってきます。さあ、スポークはどうする?

作者・作品について
イギリスで生まれ、
4歳でカナダに移住したキョウ・マクレア。この「スポーク」は、日本人の母と英国人の父を持つ著者自身の体験からインスパイアされ出来上がったそうです。自分探しをするスポークの心温まる結末に、読者はほっこりさせられることでしょう。イザベル・アーセノールトのかわいらしいイラストも魅力です。

 
【プロフィール】
クリーバー海老原 章子
バベル翻訳大学院法律翻訳修了。結婚後は夫の仕事の関係でマレーシア、トロント、アラブ首長国連邦に居住。現在は、カナダBC州のナナイモに一家5人暮らし。これまでに担当した書籍翻訳は3冊。フリーランスとして翻訳のお仕事をしています。






 

記事一覧