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第6回 アメリカ絵本レポート - 柴田きえ美

2019/06/07


世界の出版事情 ー 各国のバベル出版リサーチャーより

第6回 アメリカ絵本レポート
-親子で楽しむ読み聞かせ絵本



       
                               
柴田きえ美(翻訳専門職大学院生)

 
  
 私は、子供の頃から本が大好きでした。少なくとも小学校に上がる前には、図書館に通い、貸本屋(時代が分かりますね!)や商店街の本屋さんに連れて行くようねだっていた記憶があります。家族にはそれほどの読書習慣がなかったので、どうして私が読書好きになったのかは、わかりません。しかし、幸運にも読み聞かせをお願いできる相手は
6人もいたので、たっぷりと本を楽しむことができたのです。それに対して私の2人の子供たちは、私のみです。夫は帰宅が遅いですし、日本語の本は読めないので、私一人で毎晩何冊も、時には同じ本を繰り返し読まなくてはなりません。

 私が住んでいるカリフォルニアでは、ファースト
5 (First5)というプログラムがあります。0歳から5歳までの成長の初期段階で、歌う、話す、本を読むことが子供の将来をより豊かなものにする、と提案しています。出産した病院でも、絵本入りで子供の発育に役立つキットをもらいました。それによると、毎日20分間の読み聞かせをすると脳の神経がより複雑に発達し、その後の基礎学力に繋がるということです。

 また、現在子供の通う学校でも、宿題にリーディング・ログ(読書の記録)があります。毎日
25分間本を読み、そのタイトルやページ数を記入するものです。それだけでなく、毎年春先に学校全体での読書大会が行われます。各生徒が期間中に何ページ本を読んだか記録し、クラス対抗や他校との競争をします。勝者にはちょっと長めの休み時間やピザ、アイスなどの賞品も用意されています。

 このようにアメリカでは、子供たちへの読書奨励活動が積極的に行われています。私も子供たちに本の面白さを知ってもらいたいと思っていますが、上記に書いた通り、
1人で子供2人分の読み聞かせは、簡単ではありません。性別が異なり、3年の年齢差があるので、どの本を読むのかで必ずひと悶着あります。2人共が興味を持って楽しめる本を見つけた時は、争いが避けられるのでちょっと得した気分になるのです。そこで今回は、未就学児から低学年向け、性別を問わずに楽しめて、かつ読み聞かせをし易い本をご紹介したいと思います。


 
Chicka Chicka Boom Boom(1989)
 チカ・チカ・ブーン・ブーン(仮)
 
 
作:ビル・マーティンJr.、ジョン・アーカムボルト
 絵:ルイス・エラ







あらすじ
アルファベットの
abに、それからbcに、ココナッツの木の上で待ってるよ、と呼びかけます。de、f、g達よりも早くココナッツの木に駆け登ります。まだまだみんな登れるでしょうか。他のアルファベットたちも次々と木に登って行くから、ついには木が満杯になってしまって…。チカ・チカ・ブーン・ブーン!

作品について
幼稚園でアルファベットを習い始める子供達が、ほぼ必ず目にしたことのある本ではないでしょうか。リズミカルでストーリ性のある本なので、頭に残りやすいです。読んだ後は、大人も思わず口ずさんでしまう「チカ・チカ・ブーン・ブーン。」シンプルなイラストでアルファベットの形を覚えることができます。同じシリーズに『
Chicka Chicka 1, 2, 3』があり、またアニメーションも作成されています。

 Don't Let the Pigeon Drive the Bus!(初版:2003)
 

  作・絵:モー・ウィレムズ 

 邦題: 『ハトにうんてんさせないで。』
 
2005年 ソニー・マガジンズ
 中川ひろたか訳




あらすじ
バスの運転手さんが、読者に「ハトに運転させないで」とお願いします。けれどもどうしてもバスを運転したいハトがそっとやってきて、あの手この手で「いいよ」と言わせようとするのです。果たしてバスの運転手さんが戻ってくるまで、ハトに「ダメ」と言い続けることができるのでしょうか。

作品について
ナレーションではなく、セリフで構成された絵本です。ハトの言葉を親が読み、子供がそれに答えるスタイルの対話をしながら読むことができます。コルデコット賞オナーの他、米国図書館協会や全米英語教師協議会による注目図書リストなどにも選ばれました。同ハトのシリーズは、現在までで7作品発表されています。運転だけでなく、子犬を欲しがる、お風呂を拒否する、物を独占するなど、ハトの我儘は、子供にありがちなものばかりです。子供だって、たまには叱る側に立ってみたいのかもしれません。この作品も、アニメーションが作成されました。



   
No, David! (初版:1998)   
​​​ 
作・絵:デイビッド・シャノン 

 邦題: 『だめよ、デイビッド』
 
2001年 評論社
 小川仁央 訳



 



あらすじ
やんちゃ坊主のデイビッドはいたずらばかり。お母さんはいつも「ダメ、デイビッド!」と叱ります。泥だらけで家に入っちゃダメ!服を着なさい!片付けなさい!家の中で野球はダメ!…そしてついにデイビッドは、タイムアウトになってしまいます。それでも最後には、お母さんは「大好きよ」と言って、ハグしてくれるのです。

作品について
作者のデイビッド・シャノン氏がこの作品を描いたのは、
5歳の時でした。いつも叱られるやんちゃ坊主は、作者自身だったのです。15年後、大人になったデイビッド氏は、短くて分かりやすい文と子供らしいユニークな絵に加筆修正し出版しました。本作品は、コルデコット賞オナーに選ばれています。簡単な言葉ばかりなので、子供が自分で読めますし、読む練習にぴったりです。デイビッドシリーズは、現在までに他に6作品出版されています。

 
Pete the Cat: I Love My White Shoes 
 作:エリック・リトウィン
 絵:ジェイムズ・ディーン

 邦訳:『ねこのピート だいすきなしろいくつ』
 
2013年 ひさかたチャイルド
 大友剛訳





あらすじ
青い猫の名前はピート。ピートは、新しい白い靴を履いて歩いています。ところが山積みのイチゴを踏んでしまったので、靴は赤くなってしまいました。それでもピートは気にしません。歌を歌いながらどんどん歩きます。ブルーベリーを踏んだって、泥だらけになったって、ピートは気にせず進みます。

作品について
本作品を通じて、色や食べ物、触感について学ぶことができます。リズミカルで歌うように読めるのが特徴的です。ピートのシリーズは既に60作品以上が出版されています。ピートの生みの親は、ジェイムズ・ディーンです。多くのピート・シリーズがジェイムズ・ディーンとキムベリー・ディーンによるものです。文が短い未就学児向けのものから長めの単語を使用しページ数も多めの低学年向けまで幅広く展開しています。
2017年からはAmazonでピートのアニメが放映されています。個人的には、音楽とサーフィンが大好きで、いつも前向きなピートには、どこかカリフォルニアっぽいイメージがあります。

 
【プロフィール】
柴田きえ美
カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生としてリーガル翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む。





 

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