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第6回 イギリス絵本レポート[2]ー 大橋佑美

2019/06/07


世界の出版事情 ー 各国のバベル出版リサーチャーより
第6回 

イギリス絵本レポート[2]

-すきな野菜、きらいな野菜



       
             
大橋佑美 (翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)

 
 

 息子の幼稚園(日本でいう年少、年中の年齢です)では、毎月1冊の本を取り上げ、
カ月かけてその本の内容を掘り下げる、という指導方法がとられています。毎日毎日、同じ本の読み聞かせがされるため、子供は自然とその本の暗唱ができるようになりますし、また、ストーリーを深く理解して登場人物の簡単な相関図なども描けるようになります。また、内容から派生して、たとえば食べ物が出てくる絵本ですと、その料理をみんなで作って食べてみたり、動物がたくさん出てくる絵本ですと、遠足で実際にその動物を自分の目で見に行ったりします。自宅では一冊の本をここまで徹底して掘り下げることは難しいため、個人的にはこの指導法をとても気に入っています。

 さて、話は少しさかのぼりますが、昨年
12月にピックアップされた絵本はブラッセルズ・スプラウト(イギリスの芽キャベツのこと)が主役の絵本でした。スプラウトは、イギリスではクリスマス・ディナーの付け合わせの定番ですが、同時に、苦手な野菜ランキングの上位に常にランクインする野菜でもあります。かくいう私も、一度外で口にして以来、自らすすんで食べることはなく、我が家の食卓に登場したことは一度もありません……。

 日本でも、野菜や、野菜の好き嫌いをテーマにした絵本がたくさん出版されています。イギリスでも同様です。そこで今回は野菜に関する絵本をいくつかご紹介したいと思います。

 余談ですが、日本では毎年、種苗販売でおなじみのタキイ種苗が、子供版・大人版「好きな野菜ランキング」、「嫌いな野菜ランキング」を発表しています。こちらのランキングによると、子供の嫌いな野菜ランキングでは、ゴーヤ、ピーマン、セロリ、春菊、トマトあたりが毎年上位を占めているようです。イギリスにも似たようなランキングがあり、スプラウト、ラディッシュ、ビーツ、ナス、セロリなどが上位を占めています。国によって上位に来る野菜の顔ぶれが異なるのも、とても面白いですね。


 
SPROUTZILLA v.s. CHRISTMAS(2016)
 スプラウトジラ vs クリスマス(仮)

 作: トム・ジェイミーソン
 絵: マイク・バーン





あらすじ
クリスマスを心待ちにしている少年ジャックですが、彼には一つだけ苦手なものがあります。そう、スプラウトです。ジャックのお父さんとお母さんが買ってきたスプラウトの中に、今までジャックが見たことのないほど巨大なスプラウト、
SPROUTZILLAがいたから、さぁ大変。SPROUTZILLAは大暴れし、ついにはサンタクロースにまで襲い掛かろうとします。SPROUTZILLAの暴走を止めるには、食べてしまうしかありません。どうするジャック……!

作品について
前述したスプラウトが主役の絵本。「ゴジラ(Godzilla)」のような名前と、このイラストのインパクトにまず驚かされます。話はテンポよく進み、クリスマスをめちゃくちゃにしようと大暴れする
SPROUTZILLAとジャックとの戦いには、読んでいる大人もハラハラさせられます。
なおイギリスでは、今年の
10月に“The Return of SPROUTZILLA”という続編も出版されるようです。


 
 
The Silly Satsuma(2016)
  つまらんみかん(仮)

 作・絵: アラン・プレンダーリース








あらすじ
いたずら好きのエリックがクリスマスの朝、クリスマスツリーの下に見つけたものは、たくさんのプレゼント!ではなく、たった一つのミカンでした。しかしこのミカン、ただのミカンではありません。サンタクロースから、エリックの日ごろの悪行を正すよう送り込まれたミカンだったのです。
ミカンと行動を共にし、相手の気持ちを理解できるようになったエリックは、これまでの行いを反省し、改心します。そんなエリックが次の年のクリスマスにツリーの下に見たものは……。


作品について
等身大の登場人物とミカンのやり取り、肩の力の抜けたイラストにクスリとさせられる作品です。著者のアラン・プレンダーリースは他にも、ニンジンやバナナ、そしてスプラウトなどを題材にした絵本も出しています。
ちなみにイギリスでは、日本のみかんのように、皮が薄めで小ぶりのみかんは、一般的にSatsumaと呼ばれています。


  
I will not ever NEVER eat a tomato (初版:2000)
  作・絵: ローレン・チャイルド

  邦訳: 『ぜったいたべないからね』
 
2016年 フレーベル館
  木坂涼訳





あらすじ
チャーリーの妹ローラには嫌いな食べ物がたくさんあります。グリーンピース、ニンジン、ジャガイモ、マッシュルーム、キャベツにベイクドビーンズ。中でもトマトは絶対にいや!チャーリーは、なんとかしてローラに食べさせようとしますが……?

作者・作品について
日本でも放送されたアニメ「チャーリーとローラ」シリーズの一冊。チャーリーの妹ローラは、嫌いな食べ物は「ぜったいたべないからね!」、ベッドに入る時間になっても「ぜったいねないからね!」、大きくなっても「ぜったいがっこうにはいかないからね!」などと、わがままを言ってチャーリーを困らせます。こうした、子供の生活と切っては切り離せないトピックを扱ったこのシリーズは、
2000年の登場以来、長く子供たちに愛されています。

 

【プロフィール】

大橋 佑美(おおはし ゆみ)
英国在住、二児の母。
2018年にバベル翻訳大学院の金融・IR専攻を卒業。今後はプロの翻訳者として活躍するべく、修行に励んでいる。しかし母親業に追われて、なかなか翻訳に十分な時間を割けていないことが悩みの種。