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第5回 シンガポール絵本レポート - 楠瀬紫野

2019/05/22


世界の出版事情 ー 各国のバベル出版リサーチャーより

第5回 シンガポール絵本レポート
-多国籍文化が満載な絵本たち シンガポール編



       
                                楠瀬紫野(
翻訳専門職大学院生)

 
 

 東南アジアのほぼ中心、赤道直下のマレー半島南端に位置するシンガポール。国土面積は東京
23区とほぼ同じで、東南アジア諸国と比べても小さな国です。イギリスの植民地下におかれた後、隣国マレーシアからも独立し、アジアのみならず世界においても貿易、交通、金融の中心地とされるほど急速な発展を遂げました。アジアの中心という土地柄から文化多様性に非常に富んでおり、公用語は英語、中国語、マレー語、タミール語の4つ。公共交通機関や看板、標識などで複数の言語が連なっていることを目にするのは日常茶飯事で、国民のほとんどが2か国語以上を話すことがスタンダードと言っても過言ではありません。教育熱心な親御さんも多く、幼いころから毎日塾通いの子も多いとか。

 そんなシンガポールでは毎年、
Singapore Book Councilによりアジア・チルドレン・コンテンツ・フェスティバル(The Asian Festival of Children’s Contentが開催されます。ブック・フェアはもちろん、作家とのパネルディスカッションや作品紹介コーナー、読み聞かせアクティビティなどラインアップは実に豊富で、アジア各国より教育関係者や作家、イラストレーター、編集者や出版社などが集まるそうです。

 こちらのフェスティバルでは毎年、アジア圏内における出版物への関心を高めるべく、参加者たちによる新しい絵本の紹介コーナーが設けられています。今回は、昨年
2018度のフェスティバルで紹介された本を3冊紹介したいと思います。

 
Ai and Friends
 アイちゃんとおともだち(仮)

 作: テレサ・ルー
 絵: パトリック・リー





あらすじ
アイちゃんとクレアちゃんは外で遊ぶのが大好き。カエルのようにぴょこぴょこ跳んでみたり、蝶々になった気分でひらひら・ふわふわと、原っぱを駆け回ったり。そんな二人は、みんなよりちょっと特別な子、ラージくんとの出会いを通じて身体障害について学びます。それでも、大自然のなかで新しいお友達と遊ぶことは楽しさいっぱい!

作者・作品について
母であり、先生でもある著者テレサ・ルー。子どもと一緒に
D.E.A.RDrop Everything And Read=何はともあれ、読書を)を取り入れよう!と唱えるテレサは、子どもたちのみならず、その家族にも一緒に楽しんでもらえるような本を書いて広めたいと願っています。テレサの第一作目となるこの本も、子どもとの読み聞かせを通じて、親子、家族間の絆を深める時間に一役買うことでしょう。外で遊ぶこと、特別支援が必要な子と一緒に遊ぶことを優しく教えてくれる、ほのぼのとした絵本です。

 
 
The Huruf Parade
  いっしょにかけるかな?(仮)

 作: ヌルアフィラー・フセイン
 絵: ズハイリー・ラムラン












あらすじ
ずんずん、前へ前へ、進め進め!
アラビア語のアルファベット、
Hurufが街の中、海の中、空の上を行進。
それぞれどんな形をしているかな?
一緒についていってみよう!

作者・作品について
子どもたちが、本を通じて楽しく積極的に学べることが著者ヌルアフィラーの願い。
自ら読み聞かせやお芝居をしては、実際に子どもとコミュニケーションをとりながら
お話を進めることが好きだそう。
アラビア語を題材にした一風変わったこの絵本は、上手く韻を踏んだテンポの
良い言葉遣いと、転がったり泳いだり、と動作を取り入れた文章で楽しくアラビア語
のアルファベットを知ることができます。


 
Alif Tidak Mahu Turun/
 lif Is Not Coming Down

 アリフのぼうけん(仮)

 作:ズザニータ・ザカリア
 絵: リー・アン





あらすじ
アリフは同じところで、同じことばかり繰り返す毎日を送っている…エレベーター!
外に出ることもなく、退屈しているところに、元気いっぱい・わんぱくもののご近所さん、
ザキくんがやってきて…ザキくんとアリフの、想像力あふれる楽しい冒険の始まりです!

作者・作品について
いかにもシンガポールらしい、マレー語と英語のバイリンガル絵本です。
ジャーナリスト、編集者としても活躍する著者の「形にとらわれない想像力」を
やしなってほしい、という願いの通り、エレベーターが主人公!
毎日エレベーターに乗るのも楽しみなるほど、独創力をかきたてられる一冊です。
マレー語、英語と対訳になっているので、マレー語を勉強したい方にもおすすめです。



【プロフィール】
楠瀬 紫野
2014年よりシンガポール在住
中学校をマレーシアで過ごす。趣味はスポーツ、読書、旅行。





 

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