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第4回 オーストラリア絵本レポート - テイラー佳子

2019/05/07



世界の出版事情 ー 各国のバベル出版リサーチャーより


第4回 オーストラリア絵本レポート
-絵本で学ぼう!オーストラリア!!



       
               
テイラー佳子(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)

 
 
 オーストラリアには、現地の子どもたちが自分たちの国について、楽しみながら学べる絵本がたくさんあります。今回は、日本ではあまり目にすることのない、オーストラリアならではの絵本をご紹介します。

 オーストラリア大陸には、およそ4万年~6万年前から先住民であるアボリジニが住んでいたと言われています。18世紀に英国により開拓され、当初は英国の流刑地として多くの囚人たちがオーストラリアへ送られていました。正式にオーストラリア連邦国が建国されたのは1901年のことで、国としては比較的、歴史の浅い国と言えます。

 世界第6位の広大な面積を誇るオーストラリアには、カンガルー、コアラをはじめウォンバットやポッサム、ワライカワセミなどの珍しい野生動物が数多く生息しています。そんなオーストラリアの歴史や文化、自然について、楽しみながら学べる絵本をご紹介します。

  
Ernie Dances to the Didgeridoo
  ディジュリドゥの音色に乗って(仮)
  作:アリソン・レスター

  
  
  






あらすじ
  主人公のアーニーは、両親の仕事の都合で、1年間アーネムランドに住むことになりました。
飛行機に乗って砂漠を超え、氾濫原を超え、イースト・アリゲーター川を越えて、ようやく引越し先のアーネムランドに到着します。

 アーネムランドには、六つの季節があります。そこで、アーニーはアーネムランドの自然や、そこでの生活について、季節ごとに友達に手紙を書いて紹介することにしました。

 雨季(グンウィング語で
Kudjewk12月~3月)には、水たまりでサーフィンをし、収穫季(Bangkerreng3月~5月)には、ガチョウの卵を収穫し、冷涼季(Yekke5月~6月)には、ヤム芋堀をしました。早期乾燥季(Wurrkeng6月~8月)には、水中に生息するファイル・スネークを捕まえ、暑く乾燥した季節(Kurrung8月~10月)には、カカドゥプラムを収穫し、雨季入り前(Kurnumeleng10月~12月)には、クロコダイルやエリマキトカゲなどアーネムランドで見られる動物の格好をして、学芸会で劇をしました。

 アーニーからの手紙を受け取った友達は、手紙の中で紹介されたアーネムランドでの様子を学校で再現し、現地の文化を体験しながら学びます。

作者および作品について
 作者のアリソン・レスターは、オーストラリア・ビクトリア州出身の絵本作家で、これまで25冊の絵本を出版しています。また、2005年には、『
Are we there yet?: A journey around Australia』(もう着いた? オーストラリアを巡る旅(仮))でオーストラリアの児童文学賞(絵本部門)を受賞しています。

 本書は、2000年の児童文学賞で最終選考まで残った作品で、オーストラリアの北部に位置するノーザンテリトリーのアーネムランドに在住する中学生たちが、自分たちの生活について書いた物語『
We love Gunbalanya』(私たちの町グンバランヤ(仮))を基にして書かれています。

 アーネムランドは、4万年以上前からアボリジニが所有している地域で、そこでは多くのアボリジニ文化が受け継がれており、多数の言語が話されています。本作品の中では、グンバランヤ地区で話されているグンウィング語が紹介されています。ちなみに、題名に使われているディジュリドゥとは、アボリジニが使い始めたアーネムランド発祥の楽器で、世界最古の管楽器と言われています。また、この作品は、オーストラリアの教育機関でアボリジニの言語や文化を学ぶ教材としても使われています。

  
  
Wombat Stew
  ウォンバットのシチュー(仮)
  作:マーシャ・ヴォーン
  絵:パメラ・ロフツ

  邦訳『ウォンバットシチュー』
  
1995年 スカラスティック社
  訳:なかざわまきこ

  



あらすじ
 ある日、ディンゴがウォンバットを捕まえました。そして、ウォンバットのシチューを作ることを思いつきます。

 それを見ていた他の動物たちは、調理されそうになっているウォンバットを助けるため、ディンゴに嘘のレシピを教えます。カモノハシは、泥を入れると美味しくなると言い、エミューは羽根を入れると歯ごたえが良くなると言います。そして、アオジタトカゲは、ハエを入れるとサクサクして美味しくなると教え、ハリモグラはナメクジを入れると食感が良くなると教えます。最後に、コアラがやって来て、ユーカリの木の実を入れると香ばしくて美味しいシチューができると教えます。

 ディンゴは、動物たちに言われた通りのレシピでシチューを作ります。そして、最後にディンゴがウォンバットをシチューに入れようとしたその時、動物たちは、ディンゴに味見をするように言います。

 味見をしたディンゴは、ようやくそれが毒シチューであることに気づき、騙された!と叫びながら森へと帰って行きます。賢い動物たちのおかげで、ウォンバットは助かることができました。

作品および作者について
 作者のマーシャ・ヴォーンは、アメリカ・ワシントン州の出身ですが、オーストラリアを代表する絵本作家の一人です。20代の頃に南太平洋のラロトンガ島で数年過ごした後、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州へ移住し、現地の小学校で図書館司書をする傍ら、著作活動を始めました。これまでに、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスにおいて80作品以上の児童書を出版しています。

 本作品は、マーシャのデビュー作で、1984年にオーストラリアで初版されました。その翌年には世界各国で翻訳本が出版され、これまでの発行部数40万部を超えるベストセラー作品となりました。35年にわたり愛読されている、オーストラリアで大人気の古典絵本です。

 作品の中には、オーストラリアに生息する野生動物がたくさん登場します。子どもたちは、絵本を楽しみながらオーストラリアの動物の名前を自然に覚えることができます。また、ディンゴがシチューを作りながら歌う歌は、韻を踏んでいて(
Rhyme song)一度聴いたら頭から離れません。読者の子どもたちは、思わず何度も口ずさんでしまいます。

 
【プロフィール】
テイラー佳子
オーストラリア在住。バベル大学院文芸翻訳専攻 修士課程修了。オーストラリアの優れた児童文学作品を日本の子どもたちに届けることを目標に、現在はフリーランスで翻訳の仕事をしています。