大きくする 標準 小さくする

第2回 イギリス絵本レポート - 大橋佑美

2019/04/08


世界の出版事情 ー 各国のバベル出版リサーチャーより


第2回 イギリス絵本レポート
-5歳になるまでに読みたい絵本 イギリス編


       
                 大橋佑美 
(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)

 

 
 イギリスでは、先月
7日はワールド・ブック・デーでした。幼稚園児、小学生たち(ときには先生までも!)が、好きな絵本のキャラクターの衣装を着て学校へ行く日です。そのためワールド・ブック・デーが近づいてくると、大型スーパーマーケットの一角にはワールド・ブック・デーのための衣装を扱うコーナーが設置され、親たちは毎年新しい衣装を購入させられる……というのが恒例となっています。売られている衣装は、J・K・ローリング、ロアルド・ダール、ジュリア・ドナルドソンらイギリス人作家の作品に出てくるキャラクターから、ディズニープリンセスやスーパーヒーローまで幅広く、もはや何でもありという印象さえ受けますが、改めて絵本について親子で考える良いきっかけになる行事だと感じています。

 このように、日本を凌ぐ出版大国であるイギリスにおいて、絵本は子供たちと切っても切り離せない存在です。そして、教育においても欠かせない存在となっています。日本の推薦図書リストと似たような位置づけでしょうか、イギリスにも
歳以上(小学生以上)の子供たちに対して年齢別の図書リストReading Listがあり、これは、図書館司書や国語(つまり英語)教師、親たちから成るSchool Reading Listという団体によって選定され、毎年見直されています。

 さて、この
School Reading Listという団体は、「歳になるまでに読みたい絵本」についても100冊を選定しています。今回はその100冊の中から、特に個人的に好きな作品を3冊ご紹介したいと思います。




 
The Gruffalo(1999)
  作:ジュリア・ドナルドソン
  絵:アクセル・シェフラー

  『もりでいちばんつよいのは?』
(2001)
  作:ジュリア・ドナルドソン
  絵:アクセル・シェフラー
  訳:久山太市
  出版社:評論社



あらすじ
ねずみが森を散歩していると、キツネやヘビなどに次々と狙われますが、その度にグラッファローという架空の恐ろしい怪物をでっち上げ、追い払うことに成功します。すると、突如本物のグラッファローが森に現れてしまいます。そこでさらに、ねずみは機転を利かせ、自分が森で一番強くて恐ろしい動物だとホラを吹き、嘘だと思うなら一緒に来てみろとグラッファローを連れて森を歩きます。周りの動物たちはグラッファローを見て逃げていきますが、その様を目の当たりにしたグラッファローは、ねずみが最強なのだとすっかり騙され、ねずみに恐れをなして逃げてしまいます。

作品について
イギリスの子供であれば誰でも一度は手にしたことがある、と言っても過言ではないジュリア・ドナルドソンの絵本ですが、中でもこのグラッファローが登場する本作は、彼女を代表する作品と言えます。この本は
1,300
万部以上の売り上げを記録し、児童文学で数々の賞を受賞しました。

ジュリア・ドナルドソンの絵本の特徴の一つに、文章が韻を踏んでいることが挙げられます。そのため、文字や発音を学習し始める時期において、教育の場でよく取り扱われています。多数の作品が日本語にも翻訳されていますが、ぜひ原作も声に出して読んでみてください。リズムの良い彼女の文章は、日本の子供たちにとっても耳に心地よいものに違いありません。



 
Where’s Spot?(1980)
  作・絵: エリック・ヒル

 『コロちゃんはどこ?』
(1983)
  作・絵: エリック・ヒル
  訳:まつかわまゆみ
  出版社:評論社





あらすじ
スポットはゴハンも食べずにどこに行ったのでしょう?ドアのうしろ?ピアノの中?それともベッドの下?
仕掛けをめくってサリーと一緒に探してみましょう。スポットのいない場所には他の動物が隠れています。

作品について
背中のブチ模様がトレードマークの子犬スポット(コロちゃん)の仕掛け絵本シリーズは、世界中の子ども達のファーストブックとして親しまれています。一見シンプルにもみえる絵やストーリーですが、小さな子供たちに大人気なのは仕掛け以外にもいろいろな理由があるようです。まず、シンプルな言葉が大きな文字で記されていて、言葉を覚えるのにはぴったりであること。そして、スポットの目線で進んでいくストーリーが、子どもの好奇心と重なり、自然に絵本の世界に入り込めるようになっています。



 
All Join In(1990)
  みんなでやろう(仮)
  作・絵: クェンティン・ブレイク

 








あらすじ
はじめはそれぞれに楽器を奏でている子供たちですが、みんなで一緒に演奏すると最高だ!と気がつきます。そうなると、もう収拾がつきません。フライパンだって立派な楽器になります。最終的にはお母さんまでどんちゃん騒ぎに加わって……。

作品について
平易な単語が用いられ、一文ずつは短いにも関わらず、情景がありありと目に浮かび、作中の子供たちがどんどん大きな音を出すようになるにつれて、思わず読み手の声も大きくなる、そんな読み手も聞き手も楽しめる作品です。繰り返し読むうちに子供も自然に文章を覚えてしまう、読み聞かせにぴったりの作品と言えるでしょう。
1992年の出版以来、30年近く愛され続けている作品です。

作者のクェンティン・ブレイクは、『チョコレート工場の秘密』(
Charlie and the Chocolate Factory ロアルド・ダール作 2005年 評論社 柳瀬尚樹訳)など、ロアルド・ダールの作品のイラストレーターとして有名ですが、彼自身も絵本を多数執筆しています。彼の独特なイラストに魅了され、ファンになる人は後を絶ちません。


【プロフィール】
大橋佑美
英国在住、二児の母。昨年バベル翻訳大学院の金融・IR専攻を卒業。
今後はプロの翻訳者として活躍するため修行に励むものの、母親業に追われ、なかなか翻訳に十分な時間がさけていないのが実情であり、悩みの種。