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第23回 きせつの絵本 その2 絵本の楽しみ方:冬の温もりを感じる②

2020/01/07


『絵本の世界・絵本と世界』

第23回 きせつの絵本 その2
絵本の楽しみ方:冬の温もりを感じる② 




松本由美(玉川大学 教育学部教育学科 准教授)


 あけましておめでとうございます。新年第1回は、前回に続いて、冬の温もりを感じる絵本をご紹介したいと思います。

■『てぶくろ』ウクライナ民話 
エウゲーニ・M・ラチョフ 絵 / 内田莉莎子 訳 福音館書店 1965年




  エウゲーニ・M・ラチョフの再話・絵によるロシア語からの翻訳絵本です。おじいさんが森の中で落としたてぶくろの中に、次々と動物たちがやってきて住み始めます。すると、てぶくろは徐々に家らしく仕上がっていき、はしごや、窓、ひさしまでしつらえられ、しまいには、てぶくろというより、てぶくろ型の家に見えてきます。そのてぶくろに、最初にやってきたのは、ねずみです。しばらくすると かえるがやって来て、尋ねます。「だれ、てぶくろに すんでいるのは?」「くいしんぼねずみ あなたは?」「ぴょんぴょんがえるよ。わたしも いれて」「どうぞ」と、お互いの自己紹介があり、かえるも一緒に住むことになります。次にやって来るのは、「はやあしうさぎ」です。「だれだい、てぶくろに すんでいるのは?」「くいしんぼねずみと ぴょんぴょんがえる。あなたは?」「はやあしうさぎ。ぼくも いれてよ」「どうぞ」とお決まりのやり取りの末、てぶくろに住む動物は3匹になります。こうした繰り返し文体を含んだ本は、パターンブックと呼ばれますが、子どもたちはこうした繰り返しのある本が大好きです。繰り返すことによって出来上がる小気味よいリズムは、人を楽しい気持ちにする効果もあるそうですが、繰り返しは、子どもたちがストーリーや言葉を覚えることを助け、予測することを容易にします。『てぶくろ』を読んでもらった子どもたちは、きっと、すぐに文を暗記してしまうことでしょう。そして、何度も読んでほしいと言ってくることでしょう。覚えてしまったら飽きて面白くなくなるのは、大人だけ。子どもたちは、何度でも飽くことなく予測しては、自分の予測が合っていることに快感を覚えます。そうして、子どもたちはことばも習得していくのです。さて、どんどん住人が増えていくてぶくろは、どうなるのでしょうか。それは読んでのお楽しみです。

■『そりあそび』《こどものとも》傑作集 さとうわきこ さく・え 福音館書店 1990年


 

 子どもたちに大人気の「ばばばあちゃん」シリーズです。冷たい雪のふるある日、ばばばあちゃんが、ストーブの前で編み物をしています。すると、いつもの動物たちが次々と、寒さに負けて、ばばばあちゃんのストーブに暖まりに、家の中に駆け込んできます。犬、猫、狐に狸、ウサギに熊まで、普段は元気に遊ぶ動物の子どもたちが、雪になった途端、縮こまっているのを見かねたばばばあちゃんが、寒い冬に負けず、元気に遊ぶ方法を教えてくれます。いつの間にか、寒さに震えていた動物たちは、外でも暑くてたまらなくなります。きっと、みんな冬が大好きになったことでしょう。さとうわきこの「ばばばあちゃんシリーズ」は、実際に子どもと一緒に楽しめる遊びや、お料理などを描いたものも多く、我が家でも『
ばばばあちゃんの おもちつき』や『ばばばあちゃんのアイス・パーティ』を見ながら、子どもと一緒に料理を楽しみました。大人も子どもも一緒に楽しめる絵本だと思います。

 みなさまも、寒い冬、風邪などひかれませんよう、お元気でお過ごしください。

 


【プロフィール】
松本由美 Matsumoto Yumi
玉川大学教育学部教育学科准教授
津田塾大学学芸学部英文学科卒 同大学院修了

J-SHINE(小学校英語)指導者 絵本専門士

専門は第二言語習得論、文体論、英語教育、児童英語
玉川大学では小学校英語指導者を目指す大学生の指導、並びに第二言語習得に関する講義を担当している。現在、研究は、小学校英語教育の立場から「小学校英語教育における絵本読み聞かせとその効果の見える化」(
2018年度学内共同研究)を中心に据え、絵本学の立場からも薦められる小学校英語に用いる絵本リストの作成にも取り組んでいる。

所属学会:小学校英語教育学会 児童英語教育学会 全国英語教育学会 国際幼児教育学会 絵本学会 
International Research Society for Children’s Literature、European Network of Picturebook Research 

出張依頼講演:「絵本で広がる児童英語の世界」 「すすんでコミュニケーションを取ろうとする外国語活動」「子どものそだち、ことばのそだち」


論文:
・「初期英語教育における絵本の有効活用‐児童の自発的反応を引出す「読み聞かせ」の試み」(
2015
・「必修化を見据えた小学校
年生外国語活動の在り方:視覚情報としての文字指導」(2015
・「小学校英語を取り巻く議論の動向」(
2016
・「特別活動教室
English Room の試み」(2016
・「小学校英語教育における教材用絵本選定基準の試案―絵本リスト作成にむけてー」(
2017
・「英語絵本の読み聞かせの身体性と聞き手の理解」 (
2017
・「主体的・対話的で深い学びの視点で実施する 小学校外国語活動における英語絵本の
  選定方法の考察」(
2018)など

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