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第21回 あそべる絵本 特集2 おとなが楽しむ 仕掛け絵本 絵本のえらび方:紙と物語のコラボレーション

2019/12/07


『絵本の世界・絵本と世界』

第21回 あそべる絵本 特集2 おとなが楽しむ 仕掛け絵本
絵本のえらび方:紙と物語のコラボレーション




松本由美(玉川大学 教育学部教育学科 准教授)


■はじめに
 いよいよクリスマスが近付いてきました。煌びやかなイルミネーションやモールとともに、町の文具屋さん、本屋さん、ちょっとした商品ディスプレイにも素敵なクリスマスカードが飾られています。毎年、カードの細工の見事さに惹かれてつい買ってしまうのですが、クリスマスにカードを送り合う友人が多数いるわけではないので、自分のために買ったカードは年々溜まっていく一方です。このカード収集癖は、絵本の研究を始めてからようやく収まりつつあり、仕掛け絵本への憧れに変わってきました。
 仕掛け絵本と一口に言っても、その仕掛けの仕組は様々です。しかし、どの絵本もページを開くと、そこに何らかの動きが想定されており、あるものは3次元の世界が立ち上がり、通常の絵本よりさらに、絵本の物語世界に誘い込んでくれるような気がします。材料費も手間もかけて作られた仕掛け絵本は高価なので、普段は中々手が出にくいのですが、自分へのご褒美には最適です。仕掛け絵本と銘打っていながら、物語のないものも多々ありますが、絵本というからには、たとえ文字はなくても物語がなければなりません。クリスマスにぴったりの仕掛け絵本をご紹介していきます。
 
『Little Tree  Petit Arbre』 作:駒形克己
ONE STROKE  2008年7,000円(税別)


 グラフィックデザイナーとして国際的に活躍する駒形は、
1986年にONE STROKEを設立し、そこから多くの絵本を手掛けてきました。ONE STROKEの公式ホームページ
https://www.one-stroke.co.jp/では、デザイナー、造本作家と自らを称して、絵本作品も紹介していますので、ぜひ、ご覧になってみてください。その中で、今回自分へのご褒美に選んだのは『Little Tree  Petit Arbre』です。
本の題名は英語とフランス語の併記になっていますが、中には日本語の物語も書かれています。

  この作品を初めて目にした読者は誰しも、小さく芽吹いた
1本の木が、1冊の絵本の中で、育って姿を変えていく様に目を奪われるでしょう。見開きごとに変化する紙の色と紙の質感も美しく、印刷技術の進歩によって普及した絵本が忘れがちな、日本文化に根付く紙工芸の伝統をも感じさせてくれます。まさに造本と呼ぶにふさわしく、その分少々高価なのですが、一度見たらきっと欲しくなること請け合いです。それぞれの見開きに付けられた物語は、短いながら、いえ短く凝縮された言葉だからこそ、紙で作られた舞台の上の木の物語のナレーションのように、余韻を私たちの耳に残したまま、次の見開きに進ませてくれます。第13見開きだけは、木が見当たりません。でも、最後にはまた・・・。


■“The 12 Days of Christmas Anniversary Edition: A Pop-up Celebration Novelty Book” Robert Sabuda 著 2006年


 

 仕掛け絵本といえば、この作家を無しには語れない、というくらい有名な
Robert Sabudaは、New York Times Best Illustrated Books (Awards)を受賞した Lewis Carroll原作の “Alice's Adventures in Wonderland” (Little Simon 2003) 、L. Frank Baum 原作の 出版100周年を記念した作品“The Wonderful Wizard Of Oz “ (Little Simon 2001)など子どもたちに人気の作品や、少し大人向けに見える “Winter’s Tale” (Little Simon 2005)など数々の作品を発表していますが、クリスマスには、ぜひこの“The 12 Days of Christmas”を見てほしいと思います。印刷した細かい部品が立ち上がるようになっている作品とは異なり、白い紙を複雑に織り込んだ細工がページを開くごとに立ち上がります。そして最期の見開きは美しいイルミネーションを持ったクリスマスツリーです。シンプルな紙細工かと思いきや、やはり最後は華々しく仕上げるRobert Sabuda、先にご紹介した駒形とは対極にあるような作風で、その対比も楽しんでいただけるでしょう。物語は、きっと聞いたことのあるクリスマスキャロルの歌詞です。

■『くるみ割り人形 (ぶたいしかけえほん) 』
ロクサヌ・マリー ギャイエ (著), エレーヌ ドゥルヴェール (イラスト), 清水 玲奈 (翻訳) 大日本絵画 2015年




 最後にこれもクリスマスの定番『くるみ割り人形』の仕掛け絵本をご紹介しましょう。タイトルに舞台仕掛け絵本とあるように、見開きは額縁に縁取られた中に、場面が展開されていて、まるでお芝居の舞台を見ているかのようです。物語を読みながら『くるみ割り人形』の世界をゆっくりお楽しみください。

【参考文献および参考サイト】
□ ワンストローク | ONE STROKE | 日本 
https://www.one-stroke.co.jp/blank-11

 


【プロフィール】
松本由美 Matsumoto Yumi
玉川大学教育学部教育学科准教授
津田塾大学学芸学部英文学科卒 同大学院修了

J-SHINE(小学校英語)指導者 絵本専門士

専門は第二言語習得論、文体論、英語教育、児童英語
玉川大学では小学校英語指導者を目指す大学生の指導、並びに第二言語習得に関する講義を担当している。現在、研究は、小学校英語教育の立場から「小学校英語教育における絵本読み聞かせとその効果の見える化」(
2018年度学内共同研究)を中心に据え、絵本学の立場からも薦められる小学校英語に用いる絵本リストの作成にも取り組んでいる。

所属学会:小学校英語教育学会 児童英語教育学会 全国英語教育学会 国際幼児教育学会 絵本学会 
International Research Society for Children’s Literature、European Network of Picturebook Research 

出張依頼講演:「絵本で広がる児童英語の世界」 「すすんでコミュニケーションを取ろうとする外国語活動」「子どものそだち、ことばのそだち」


論文:
・「初期英語教育における絵本の有効活用‐児童の自発的反応を引出す「読み聞かせ」の試み」(
2015
・「必修化を見据えた小学校
年生外国語活動の在り方:視覚情報としての文字指導」(2015
・「小学校英語を取り巻く議論の動向」(
2016
・「特別活動教室
English Room の試み」(2016
・「小学校英語教育における教材用絵本選定基準の試案―絵本リスト作成にむけてー」(
2017
・「英語絵本の読み聞かせの身体性と聞き手の理解」 (
2017
・「主体的・対話的で深い学びの視点で実施する 小学校外国語活動における英語絵本の
  選定方法の考察」(
2018)など

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