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第20回 あそべる絵本 その8 クリスマスの絵本

2019/11/22


『絵本の世界・絵本と世界』

第20回 あそべる絵本 その8 
クリスマスの絵本




松本由美(玉川大学 教育学部教育学科 准教授)


■はじめに
 いよいよ師走が近付いてきました。この時期になると、年の区切りに近づくせいか、気ぜわしいながらも、様々な思い出に浸ることが多くなる気がします。自分が小さかった頃のクリスマスツリーの飾りつけやケーキ、楽しみだったクリスマスブーツやプレゼント等々、何年たっても、この時期になると蘇える思い出の一コマです。やがて自分が親になると、今度はこうした思い出を作るのが楽しみですが、我が家では、子どもが小学生の頃に家族で海外駐在していて、プレゼントは日本に帰国した時に買い求めなければなりませんでした。夏休みに一時帰国をしていましたから、子どもには1学期のうちにサンタさんへのお願いを聞いておかなければなりません。恐らく、真夏の暑い中、子どももサンタさんのことは忘れているのに、サンタさんへのお願いは何かと急に言われても、さぞかし子どもも驚いたことでしょう。やがて子どもも成長し、1年中サンタさんのことを忘れない年齢になると、今度は子どもとサンタさんとの間に固い絆ができていて、「サンタさんに何をお願いするのかな?」とさりげなく訊いても「それはサンタさんと●●ちゃんの秘密だよ」と一蹴され、親の入り込む隙は一分もなく、これまたこれで大変だったものです。

 今、思い出すだけでも心が温まる幸せな苦労ですが、クリスマスは1年に一回で、間に合わないなんてことは許されませんから、当時は必死でした。用意してあるプレゼントから、何となく心変わりをしそうな時にも、何とか説き伏せて真夏に用意したクリスマスプレセントを夫が枕元にそっと置いて、ようやくホッとしたものでした。 
 
『サンタのなつやすみ』作・絵 レイモンド ブリッグズ 訳 さくまゆみこ
あすなろ書房 
1998



 季節外れのクリスマスプレゼントの話題が出るときに、必ず質問されるのが「サンタさんは今どうしているの?」ということでした。そんな時に助けてもらったのがこの絵本です。『サンタのなつやすみ』は、大忙しの、サンタのクリスマスイブの一日を描いてケイトグリーナウェイ賞とった『さむがりやのサンタ』(作・絵レイモンドブリッグズ 訳すがはらひろくに 福音館書店 
1978年)の続編とも思える作品で、サンタクロースの繁忙期の様子を描いた『さむがりやのサンタ』とは逆に、のんびりと夏のヴァカンスを楽しむ閑散期のサンタクロースを描いた作品で、いわばサンタの真実を語った絵本の一冊です。近年数多く出版されている物語の中のキャラクターについて小説や番組で知ることができない背景や歴史を語った一冊ですが、何と言ってもそのキャラクターがサンタクロースと言うのが、世界中の人々の心をつかみます。

■『さむがりやのサンタ』作・絵 レイモンド ブリッグズ 訳 すがはらひろくに 福音館書店 
1974


 

 こちらが、レイモン・ドブリッグズを児童書の世界での地位を不動なものにした作品で原作の出版
1973年から1年後に邦訳版が出版されています。マンガのようにコマ割りの画面は当時目新しいものでしたが、詳細な情報と時間の流れをまるで動画を見ているように読み取ることができます。ちょっぴり皮肉屋で面倒くさそうにしているように見えても、実は寒がり屋で心は暖かい優しいサンタクロースです。大人はくすっと笑ってしまう絵本ですが、そんなサンタクロースの真実が伝えられるためには、子どもたちへは、大人の助けがあった方が良いように思います。

■『ゆきだるま』作・絵 レイモンド ブリッグズ 評論社 1978年



 レイモンド・ブリッグズと言えば文字無し絵本の楽しく可愛らしくもちょっと切ないこの『スノーマン』が日本では有名でしょう。この文字無の絵本をベースとして、お話を後から書き足した絵本、
CD付の絵本、DVDなど、多様なメディアに展開されていますが、まず、この文字無しの『ゆきだるま』の絵本に触れていただければと思います。ことばを紡ぎつつ子どもたちとの時間を共有できれば、それが大人にとっても、子どもにとっても大切な思い出となるからです。きっと、この時期に思い出すのに相応しい絵本になってくれるでしょう。


 


【プロフィール】
松本由美 Matsumoto Yumi
玉川大学教育学部教育学科准教授
津田塾大学学芸学部英文学科卒 同大学院修了

J-SHINE(小学校英語)指導者 絵本専門士

専門は第二言語習得論、文体論、英語教育、児童英語
玉川大学では小学校英語指導者を目指す大学生の指導、並びに第二言語習得に関する講義を担当している。現在、研究は、小学校英語教育の立場から「小学校英語教育における絵本読み聞かせとその効果の見える化」(
2018年度学内共同研究)を中心に据え、絵本学の立場からも薦められる小学校英語に用いる絵本リストの作成にも取り組んでいる。

所属学会:小学校英語教育学会 児童英語教育学会 全国英語教育学会 国際幼児教育学会 絵本学会 
International Research Society for Children’s Literature、European Network of Picturebook Research 

出張依頼講演:「絵本で広がる児童英語の世界」 「すすんでコミュニケーションを取ろうとする外国語活動」「子どものそだち、ことばのそだち」


論文:
・「初期英語教育における絵本の有効活用‐児童の自発的反応を引出す「読み聞かせ」の試み」(
2015
・「必修化を見据えた小学校
年生外国語活動の在り方:視覚情報としての文字指導」(2015
・「小学校英語を取り巻く議論の動向」(
2016
・「特別活動教室
English Room の試み」(2016
・「小学校英語教育における教材用絵本選定基準の試案―絵本リスト作成にむけてー」(
2017
・「英語絵本の読み聞かせの身体性と聞き手の理解」 (
2017
・「主体的・対話的で深い学びの視点で実施する 小学校外国語活動における英語絵本の
  選定方法の考察」(
2018)など

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