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第18回 あそべる絵本 その6 型抜き絵本   絵本のえらび方:色(模様)、音、形

2019/10/23


『絵本の世界・絵本と世界』

第18回 あそべる絵本 その6 型抜き絵本
-絵本のえらび方:色(模様)、音、形




松本由美(玉川大学 教育学部教育学科 准教授)


■『しろくまのパンツ』 
tupera tupera 作 ブロンズ新社 2012


 

 型抜き絵本、というのはあまりなじみがない言葉だと思いますが、多くの方は『しろくまのパンツ』をご存じなのではないでしょうか?この作品も、パンツの形に型を抜いた、つまり絵本のページにパンツ型の穴が開いた、穴あき絵本の一つです。そのパンツ型の穴から、2ページ先の絵の一部の色や、模様を覗いてみることができます。『しろくまのパンツ』は、穴から見えるパンツの本当の持ち主をその大きさと模様から、子どもたちに予測させていますので、パンツ型の穴の大きさもまちまちです。さて、表紙画像のしろくまくんの赤いパンツは、実はパンツ型の帯封で「パンツをぬがしてからおよみください」と書かれています。どれどれ、主人公のくまくんと、一緒に探してくれるお友だちのねずみくんと、みんなでパンツを探しにでかけましょう。しろくまくんのパンツはどんなパンツだろう?ぜひ、予測してから読んでみてください。「赤い帯封は取ってから探しにいくってことは、赤じゃないのかな?どこに忘れてきたのかなぁ?」などなど、読み手と聞き手の会話が広がります。こんな時には、子どもたちは限りない想像力を発揮します。でも、「くまはパンツなんか、はかないよ」という、とても現実的な子どもも必ずいるところが面白いのです。そこでは、大人の対応が重要です。「これは、お話だから」なんて言わずに、「でも、このくまくんは、パンツはくらしいよ」と大人も想像力を発揮してみてはいかがでしょう?パンツ型の穴から見えるパンツは誰のパンツでしょう?これは、くまくんには小さいかなぁ?じゃあ、誰のパンツなんだろう?みんなで、想像しながら、くまくんのパンツを探すお手伝いをしてあげてください。だって、探し物は、いつだって自分では中々見つけられないものですから。

 この本作家
 tupera tuperaは、亀山達矢と中川敦子という2人の絵本作家ユニットです。この『しろくまのパンツ』もそうですが、鮮やかな色彩を使ったコラージュと呼ばれる貼り絵の手法を得意としています。この連載の「78日号 特別企画 祝!“The Very Hungry Caterpillar” (『はらぺこあおむし』)50周年」でご紹介した『はらぺこあおむし』のエリック・カールも鮮やかなコラージュが特徴的ですが、tupera tuperaは絵本作家としてデビューしたころには、作風が似ていると言われたこともあるようです。(月刊MOE 20178月号p.40 Interview tupera tupera が語る『はらぺこあおむし』と『にちにち らんらん』」より)しろくまくんのパンツもコラージュの手法を見事に駆使して隠されています。さて、どこでしょう?

■『のりものつみき』 よねづ ゆうすけ 作 講談社 
2011




 世界的に活躍するイラストレーターの米津祐介は、
2005年にボローニャ国際原画展に入選したことから、注目を集めました。ご紹介する『のりものつみき』も先に英語版が20114月にminedition Ltd. から出版され、追って同年7月に日本語版が講談社から出版されました。表紙画像は積み木を上手にきれいにしまえた時の画像です。さて、どんなお話かな?とページをめくると、丸い積み木に見えている部分は、表紙の丸い穴でした。そしてさらにたくさんの積み木が現れます。そうして、色々な窓をめくると、車、電車、バス、子どもたちの大好きな乗り物が次々に登場します。最後は、どの子どももきっと1度はあこがれる乗り物です。ボードブックと呼ばれる少し厚手の紙で作られたこの絵本は、めくる度にパタパタと音を立て、その小気味よい音に合わせてリズミカルに登場する乗り物は、ページめくりの芸に合わせて出てくる手品のようです。ぜひ、手に取っていただきたいと思います。

■おわりに:しかけ絵本のまめ知識
 今回ご紹介したのは、穴あき絵本の一種、型抜き絵本です。この他にもポップアップ絵本、折りたたまれたページを広げると大きなページになる絵本、音の出る絵本から、香のする絵本まで様々なしかけが見られます。さて、こうしたしかけ絵本はいつ頃からあるのでしょう。

 国立国会図書館リサーチナビ(
http
s://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-320.php)によると大正時代に始まるようです。代表的なしかけ絵本作家として、エリック・カール、ブルーノ・ムナーリ、ロバート・サブダ、そして日本の駒形克己(第15回手を動かす絵本の『ごぶごぶ ごぼごぼ』など)の名前があげられています。

 国立国会図書館国立国際こども図書館は、その名の通り国立国会図書館の支部図書館で、
2000年に児童専門書図書館として開館しました。その建物は、1906年に帝立図書館として建造されたものを再生利用したものです。所蔵コレクションや、様々な催しものもさることながら、このルネサンス様式の建物を眺めるのも楽しいものです。絵本の展示も多く、図書館に行くというよりは、美術館を訪れているように、大人一人でもたのしむことができます。

【参考文献・参考サイト】
Interview tupera tupera が語る『はらぺこあおむし』と『にちにち らんらん』」
『月刊 
MOE20178月号 白泉社

https://www.moe-web.jp/now/201708

「しかけ絵本(日本)『国立国会図書館 リサーチナビ』
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-320.php
    (最終アクセス日2019年10月19日)

国立国会図書館 国際子ども図書館ホームページ

https://www.kodomo.go.jp/index.html
    (最終アクセス日2019年10月19日)


 


【プロフィール】
松本由美 Matsumoto Yumi
玉川大学教育学部教育学科准教授
津田塾大学学芸学部英文学科卒 同大学院修了

J-SHINE(小学校英語)指導者 絵本専門士

専門は第二言語習得論、文体論、英語教育、児童英語
玉川大学では小学校英語指導者を目指す大学生の指導、並びに第二言語習得に関する講義を担当している。現在、研究は、小学校英語教育の立場から「小学校英語教育における絵本読み聞かせとその効果の見える化」(
2018年度学内共同研究)を中心に据え、絵本学の立場からも薦められる小学校英語に用いる絵本リストの作成にも取り組んでいる。

所属学会:小学校英語教育学会 児童英語教育学会 全国英語教育学会 国際幼児教育学会 絵本学会 
International Research Society for Children’s Literature、European Network of Picturebook Research 

出張依頼講演:「絵本で広がる児童英語の世界」 「すすんでコミュニケーションを取ろうとする外国語活動」「子どものそだち、ことばのそだち」


論文:
・「初期英語教育における絵本の有効活用‐児童の自発的反応を引出す「読み聞かせ」の試み」(
2015
・「必修化を見据えた小学校
年生外国語活動の在り方:視覚情報としての文字指導」(2015
・「小学校英語を取り巻く議論の動向」(
2016
・「特別活動教室
English Room の試み」(2016
・「小学校英語教育における教材用絵本選定基準の試案―絵本リスト作成にむけてー」(
2017
・「英語絵本の読み聞かせの身体性と聞き手の理解」 (
2017
・「主体的・対話的で深い学びの視点で実施する 小学校外国語活動における英語絵本の
  選定方法の考察」(
2018)など

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