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第14回 あそべる絵本 その2  絵本のえらび方:赤ちゃんと絵本を楽しむ その2 

2019/08/22


『絵本の世界・絵本と世界』

第14回 あそべる絵本 その2
-絵本のえらび方:赤ちゃんと絵本を楽しむ その2




松本由美(玉川大学 教育学部教育学科 准教授)


■日本の赤ちゃん絵本つづき

 前回に引き続き、赤ちゃんと一緒に楽しめる絵本をご紹介します。

 赤ちゃんは平均的には、1歳半くらいになると大人にも理解できることばを話し始めると言われていますが、赤ちゃんの母語習得はいつごろから始まるのでしょうか?ざまざまな説があり、お母さんのお腹にいる時から学んでいるとも言われていますが、少なくとも赤ちゃんは、生まれてからことばを話すのに必要なものを段階的に身に付けていくようです。

 たとえば、ことばを発しない赤ちゃんも、じっとおとなのことばを聞いていますでし、しかも聞いているだけでなく、クーイングと言われる「ウ―」とか「アー」とか鳴き声のような音を出して、言語音を出す練習をしているとも言われています。また。周りにいる大人が「ウ―」とか「アー」と同じような音を繰り返して返事をしてやると、だんだん周りの人たちとのコミュニケーションを楽しめるようになるそうです。ことばを話せるためには、言語音を聞き取れたり、発声できたりすることも大事ですが、まず何より、こうした人とのやり取りができることが前提になります。

 絵本もそんな赤ちゃんと大人のコミュニケーション触発する、コミュニケーションメディアであると言われていますが、何より絵本を読む体験を共有することで、楽しい時間が過ごせたら良いですね。今回はそんな楽しい時間を持つのにぴったりの、遊べる絵本第二弾です。


■『きんぎょがにげた』五味太郎作 福音館書店 1977


 

 私自身が、自分の子どもに、この本を選んだ時のことは全く記憶に無いのですが、その頃私は、福音館書店の『母の友』という雑誌を愛読していましたし、子どもには『こどものとも012』という年少前の子ども用の月刊絵本を購読していたので、何かのきっかけでこの絵本を知って、買い求めたのだと思います。

 『きんぎょがにげた』の作者である五味太郎は、今や名高い絵本作家ですが、グラフィックデザイナーであったと聞けば。納得できるデザイン性の高い絵本です。赤ちゃんも子どもも大好きな風船のようにデフォルメされたきんぎょが、きんぎょばちから飛び出して、カーテンの模様に隠れたり、キャンディーボックスに隠れたり、様々なところに隠れてながら、最後には池に帰ります。しかし、池の中でも「あれ?どこ?」、五味太郎のあそび心がたくさん込められた作品です。子どもを膝にだきながら、大人も子どもも隠れたきんぎょを見つけて遊びましょう。

 絵は全編、白地の背景に鮮やかな色どりで描かれていますが、どの色も優しく深みのある色です。また、よく目を凝らしてみると、手書きのような微妙なブレや滲みがあり、それが人の目に優しく映ります。人間の眼とは当に本精度が高く、こうした微妙な色合いや微妙な線の違いを感じ取っているのです。

■こどものとも年少版
20184月号
『ひよこはにげます』 五味太郎作 福音館書店 
2018



 五味太郎の絵本をもう一冊ご紹介しましょう。月刊の絵本として
20184月に配本されたものです。ひよこたちがみんなで、家から逃げます。どんどんにげて、そうして最後には、おうちに逃げます。まず題名の「にげます」実況中継のような臨場感あふれる楽しい絵本です。ひよこの絵は表紙の画像にあるように、いつものシンプルに描かれています。しかし、よく見るとひよこは確かに走っているように見えます!パラパラとめくりながらヒヨコさんを追いかけていくと、パラパラ漫画のように、ヒヨコの絵が動き出すではありませんか!!ぜひ、子どもたちと一緒に楽しんでください。

 『きんぎょがにげた』『ひよこはにげます』の表紙画像はともに、福音館書店の許諾権規定に基づき、同社ホームページの画像を複写掲載しています。

 


【プロフィール】
松本由美 Matsumoto Yumi
玉川大学教育学部教育学科准教授
津田塾大学学芸学部英文学科卒 同大学院修了

J-SHINE(小学校英語)指導者 絵本専門士

専門は第二言語習得論、文体論、英語教育、児童英語
玉川大学では小学校英語指導者を目指す大学生の指導、並びに第二言語習得に関する講義を担当している。現在、研究は、小学校英語教育の立場から「小学校英語教育における絵本読み聞かせとその効果の見える化」(
2018年度学内共同研究)を中心に据え、絵本学の立場からも薦められる小学校英語に用いる絵本リストの作成にも取り組んでいる。

所属学会:小学校英語教育学会 児童英語教育学会 全国英語教育学会 国際幼児教育学会 絵本学会 
International Research Society for Children’s Literature、European Network of Picturebook Research 

出張依頼講演:「絵本で広がる児童英語の世界」 「すすんでコミュニケーションを取ろうとする外国語活動」「子どものそだち、ことばのそだち」


論文:
・「初期英語教育における絵本の有効活用‐児童の自発的反応を引出す「読み聞かせ」の試み」(
2015
・「必修化を見据えた小学校
年生外国語活動の在り方:視覚情報としての文字指導」(2015
・「小学校英語を取り巻く議論の動向」(
2016
・「特別活動教室
English Room の試み」(2016
・「小学校英語教育における教材用絵本選定基準の試案―絵本リスト作成にむけてー」(
2017
・「英語絵本の読み聞かせの身体性と聞き手の理解」 (
2017
・「主体的・対話的で深い学びの視点で実施する 小学校外国語活動における英語絵本の
  選定方法の考察」(
2018)など