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第13回 あそべる絵本 その1  絵本のえらび方:赤ちゃんと絵本を楽しむ

2019/08/07


『絵本の世界・絵本と世界』

第13回 あそべる絵本 その1
-絵本のえらび方:赤ちゃんと絵本を楽しむ




松本由美(玉川大学 教育学部教育学科 准教授)



■日本の赤ちゃん絵本
 日本に赤ちゃん絵本というジャンルができたのは、いつ頃でしょうか?
1992年にイギリスで始まったブックスタートという活動が、2001年には日本でもNPO法人として設立され、赤ちゃんにも絵本を手渡す活動が少しずつ広がりを見せています。しかし、それまでは、形や色、数字などを教える知育絵本のようなものが主流で、音でも、絵でも、ことばでも、純粋に楽しむ絵本は少なかったものでした。また、赤ちゃんを育てるお母さんたちへの、啓蒙も進むことなく、無限の可能性を秘めた読書への入口である絵本との出会いは、幼稚園や保育絵本に行くまでは、赤ちゃんの周りにいる個々の大人に任されていたのでした。

 我が家に最初にやってきた絵本は、メイシーちゃんのふかふか絵本です。私自身は、本を読むことは人間を豊かにするという実家の母の信条により、一人で本を読めるようになった小学校高学年から、ほしい本は全て買ってもらえた恵まれた読書人でした。ですから、自分の子どもにも良い本をたくさん読ませたいと思っていましたし、赤ちゃんに上質な絵本を与えることは大人の責任と考えていました、しかし、私自身に絵本の知識があるわけでもありませんでしたし、何より子どもに上質な絵本を選んでやる暇がありませんでした。たまたま、友人が松谷みよ子の『いない いない ばあ』と『もうねんね』を、おさがりしてくれたから、良かったようなものの、一人で絵本を探すのは大変だったろうと思います。

松谷みよ子 赤ちゃんの本 『いない いない ばあ』 松谷みよ子 ぶん / 瀬川靖男 え 
  童心社 
1967



 

 この連載の第
1回目で、よい絵本の条件としてロングセラーをあげました。一般的には二十歳(はたち)を過ぎた絵本は安心して子どもに渡して良いと言われ、初版から20年が一つの目安となっています。この『いない  いない ばあ』は、1967年に出版されてから50年以上も経つ大御所です。それもそのはず、子どもたちの大すきな動物たちが次々と登場して手で顔を覆って「いない、いない」、ページをめくると次の見開きで「ばあ」。他に仕掛けがある訳ではなく、絵本のめくりを上手に利用した絵で、いないいないばあが繰り広げられる仕組みです。我が家でも、この絵本はあっという間に、子どもの心をわしづかみにしました。私にとっては、その年齢に相応しい絵本があることを教えてくれた大切な絵本です。赤ちゃんの本として出版された初めての本(童心社HP 『いない いない ばあ』解説より)とのことです。

はじめてのぼうけん1 『ぴょーん』 作 まつおかたつひで / 絵 まつおかたつひで
   ポプラ社 
2000
年 


 
 しっかりと力をためた「かえるが・・・」、ページをめくると見開きいっぱい使って「ぴょーん」と大ジャンプしています。こちらも、絵本のページめくりと、見開きを利用したシンプルな、あそび絵本。かえるに続いて、こねこも、いぬも大ジャンプ。でも同じ「ぴょーん」でも、ちょっとずつ音が違うのです。日本語の表記の特徴の一つである長音記号と、絵を工夫して、それぞれの動物のジャンプの仕方を的確に表した楽しい絵本です。絵本の最後は「わたしも・・・ぴょーん」、絵本を閉じたらきっと、あなたもぴょーんとジャンプしたくなるに違いありません。 

■絵本とあそび
 『いない いない ばあ』も『ぴょーん』も日常のあそびを、絵本の中に取り入れ、絵本の物理的特性である、見開きというスペースとページめくりという動きを上手く利用して、あそびの動きを見事に再現したものです。そして、絵本を読み終わると、絵本の中に現されていたあそびは、子どもたちによって絵本の外に取り出されて、こどもたち自身のあそびに戻っていくでしょう。

 赤ちゃんにとっては、これらの絵本はあそびの先生です。もう少し大きな子どもたちにとっては、今日のあそびを決めてくれるリーダーです。大人の私たちも、絵本を閉じたら、思いっきり体を動かして遊びましょう。


『いない いない ばあ』表紙画像は童心社著作権規定に則り、同社ホームページの画像を複写掲載しています。
『ぴょーん』表紙画像はポプラ社著作権規定に則り、同社ホームページの画像を複写掲載しています。





【プロフィール】
松本由美 Matsumoto Yumi
玉川大学教育学部教育学科准教授
津田塾大学学芸学部英文学科卒 同大学院修了

J-SHINE(小学校英語)指導者 絵本専門士

専門は第二言語習得論、文体論、英語教育、児童英語
玉川大学では小学校英語指導者を目指す大学生の指導、並びに第二言語習得に関する講義を担当している。現在、研究は、小学校英語教育の立場から「小学校英語教育における絵本読み聞かせとその効果の見える化」(
2018年度学内共同研究)を中心に据え、絵本学の立場からも薦められる小学校英語に用いる絵本リストの作成にも取り組んでいる。

所属学会:小学校英語教育学会 児童英語教育学会 全国英語教育学会 国際幼児教育学会 絵本学会 
International Research Society for Children’s Literature、European Network of Picturebook Research 

出張依頼講演:「絵本で広がる児童英語の世界」 「すすんでコミュニケーションを取ろうとする外国語活動」「子どものそだち、ことばのそだち」


論文:
・「初期英語教育における絵本の有効活用‐児童の自発的反応を引出す「読み聞かせ」の試み」(
2015
・「必修化を見据えた小学校
年生外国語活動の在り方:視覚情報としての文字指導」(2015
・「小学校英語を取り巻く議論の動向」(
2016
・「特別活動教室
English Room の試み」(2016
・「小学校英語教育における教材用絵本選定基準の試案―絵本リスト作成にむけてー」(
2017
・「英語絵本の読み聞かせの身体性と聞き手の理解」 (
2017
・「主体的・対話的で深い学びの視点で実施する 小学校外国語活動における英語絵本の
  選定方法の考察」(
2018)など

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