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第12回 ことば・文字であそぶ絵本 その4 絵本のえらび方:ことばであそぼう!

2019/07/22


『絵本の世界・絵本と世界』


第12回 ことば・文字であそぶ絵本 その4
-絵本のえらび方:ことばであそぼう!




松本由美(玉川大学 教育学部教育学科 准教授)



■日本のことばあそび
 日本の子どもたちで、しりとりをしたことがない子どもは、いないのではないかと思うくらい、しりとりはポピュラーなことば遊びです。我が家でもいつのまにかしりとりを覚えた娘が「しりとりしよう!」と言えば、移動の車で渋滞に巻き込まれた大人にとっては退屈なひと時も、 いつもの公園に行くほんの短い移動時間も、病院で順番を待ちながら、何かしていないとちょっぴり怖くなる、いたずらに不安になる時も、たちまちしりとりタイムになります。準備も道具も要らない、誰でも、いつでも、どこででも楽しめるしりとりは、何気なく過ぎてしまう時間に、思い出を付け加えてくれる、あそびの万能選手です。

   「○○ちゃんからね。さんぽ」と間髪を入れず始まり、次は「ポスト」「時計」…と続きます。少し慣れてくると、「傘」に対して「坂」で応酬し、「海」に対して「南」でやり込める、もう少し慣れると「海の波」なんていうフレーズも飛び出します。この頃になると大分語彙知識も豊富になっていることでしょう。それでも、単語の語尾の音を取って、次の単語の語頭で受け継ぐだけのしりとりは、単語の意味を画像でイメージして、そのナンセンスを楽しむ駄洒落ほどの言語発達は必要無いので、ことばを覚えたての子どもたちでも、楽しむことができます。しかし、ストーリーもない中で、どんどんことばを紡ぐのは、時に難しいものです。そんな時のお助けは、しりとり絵本です。

■『ぶたたぬききつねねこ』 馬場のぼる作 こぐま社

 
  『こぶたたぬききつねねこ』という歌をご存じの方も多いことでしょう。絵本の方はもっぱらことばの音で遊びますが、この絵本は、しりとりで見事に物語が紡がれています。『11ぴきのねこ』でおなじみの馬場のぼるの画風が、表紙のピンク色の背景色とともに、おおらかなやさしい絵本に仕上げています。ともすれば知育絵本になりがちなしりとり絵本を「おひさま」がのぼるところから物語が始まり、おそらく主役を張っている「ぶた、たぬき、きつね、ねこ」が登場するまでに、ことばと絵で愉快な物語が繰り広げられていきます。読み進めるうちに、大人も思わずしりとりをしていることを忘れて、「そう言えば、前のことばはなんだったっけ?」と読み戻ってしまうくらい、絵で語られる物語の力を感じさせる絵本です。しりとりも、こんな風にスラスラ答えられたらいいのになぁ。

■『わにがわになる』 多田ヒロシ作 こぐま社

 
 子どもたちも、年中、年長さんの年齢になると、さらに語彙が増えてナンセンスも大好き、駄洒落も大好きになります。「いるかはいるか」「わにがわになる」など初級編から「あるみかんのうえにあるみかん」とちょっと上級編まで、大人も感心するものまで現れます。駄洒落は、ことば遊びとしては、しりとりよりは難しくなります。しりとりのように、ことばの音を拾ってつなげるだけでなく、象徴性が出来上がっていなければならないからです。つまり、「アルミ缶」と「みかん」そして「アルミ缶の上に在るみかん」の絵図を自分で思い浮かべられなければならないのです。「み・か・ん」ということばを聞いたことがあるだけでなく、「みかんってどんなもの?」という質問に対して答えられる、つまりビジュアルにイメージできなければならないのです。ことばの音だけではなく、ことばの意味理解も必要な遊びです。

 でも、絵本があれば大丈夫。絵本は子どもたちのことばの意味理解を助ける強力な助っ人です。『わにがわになる』はそんな想像力を助けてくれる楽しい絵本です。

 子どもたちは、絵本でことば遊びをする中で、さらに語彙を増やしていきます。「はちとはちが はちあわせ」のページでは、きっと鉢合わせということばを覚えるでしょう。「ごっつんこ」と言っていた子どもがたちは、いつのまにか「はちあわせ」なんて、言い出すのです。ことば遊びをするようになった年頃の子どもたちは、紙芝居や人形劇を観て楽しむ、いわゆる鑑賞遊びができるようになります。絵本の読み聞かせも、抱っこされて2人で読む親子読みのような形から、集団の読み聞かせを、周りの子どもたちとともに楽しめるようになるのです。

(絵本表紙画像について:『ぶたたぬききつねねこ』『わにがわになる』はいずれも、こぐま社ホームページより複写掲載しています)



【プロフィール】
松本由美 Matsumoto Yumi
玉川大学教育学部教育学科准教授
津田塾大学学芸学部英文学科卒 同大学院修了

J-SHINE(小学校英語)指導者 絵本専門士

専門は第二言語習得論、文体論、英語教育、児童英語
玉川大学では小学校英語指導者を目指す大学生の指導、並びに第二言語習得に関する講義を担当している。現在、研究は、小学校英語教育の立場から「小学校英語教育における絵本読み聞かせとその効果の見える化」(
2018年度学内共同研究)を中心に据え、絵本学の立場からも薦められる小学校英語に用いる絵本リストの作成にも取り組んでいる。

所属学会:小学校英語教育学会 児童英語教育学会 全国英語教育学会 国際幼児教育学会 絵本学会 
International Research Society for Children’s Literature、European Network of Picturebook Research 

出張依頼講演:「絵本で広がる児童英語の世界」 「すすんでコミュニケーションを取ろうとする外国語活動」「子どものそだち、ことばのそだち」


論文:
・「初期英語教育における絵本の有効活用‐児童の自発的反応を引出す「読み聞かせ」の試み」(
2015
・「必修化を見据えた小学校
年生外国語活動の在り方:視覚情報としての文字指導」(2015
・「小学校英語を取り巻く議論の動向」(
2016
・「特別活動教室
English Room の試み」(2016
・「小学校英語教育における教材用絵本選定基準の試案―絵本リスト作成にむけてー」(
2017
・「英語絵本の読み聞かせの身体性と聞き手の理解」 (
2017
・「主体的・対話的で深い学びの視点で実施する 小学校外国語活動における英語絵本の
  選定方法の考察」(
2018)など

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