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第17回 すんなり入れる特許翻訳 ― メールやレターでよく使う表現

2020/07/07

特許翻訳入門 

第17回 すんなり入れる特許翻訳
  - メールやレターでよく使う表現 ‐

奥田百子(おくだももこ)
奥田国際特許事務所にて、翻訳者、執筆者、弁理士として活躍。
バベル翻訳専門職大学院(USA)では 第3科目「特許・技術・医薬翻訳専攻」にて
「特許翻訳訳レベルⅠ(英日)」をプロフェッサーとして担当 

 
 
 今回は、一般英語では頻繁に使うが、特許の仕事でメールやレターにもよく書くことがある表現を紹介します。

文例1
ご参考までに、弊所の案内を添付します。
We will attach our brochure for your reference.

キーワード
案内 brochure, pamphlet, 
ご参考までに for your reference, for your confirmation
案内といっても、guidance, introductionは誘導、紹介の意味になってしまいます。ここでいう「案内」はパンフレットです。

注)海外の代理人に事務所案内を送ることは頻繁に行われます。海外の法律事務所は取引相手となる日本の特許事務所の規模やバックグラウンドを重視します。海外の代理人(弁護士)が表敬訪問のために来日するのも、事務所の規模を見たいという目的もあるようです。
 したがって、日本の特許事務所としても事務所案内を用意しておくのが礼儀です。海外代理人からお土産代わりに自分たちの分厚くて立派な事務所案内を渡されることがあります。

文例2
ご参照頂ければ幸いです。
We appreciate if you would refer to this.

“appreciate if you would ~”は、「~してくれれば幸いです」というフレーズで他の個所でも頻繁に使うことができます。

文例3
弊所の案内は、ウエブサイト(www. -------)をご覧ください。
Please see our website located at www. -------.
注)URL(www. -------)にあるウエブサイトは、a website located at www. ------と表現します。「ご覧ください」は、「ご参照ください」と言い換えることができ、seeを使います。

文例4
詳細については、弊所ウエブサイト(www. -------)を参照のこと。
For details, see our website (www. -------).
たとえば、
弊所料金は、弊所ウエブサイトwww. -------をご覧ください。
For our fees, see our website (www. -------).
のように表現できます。

文例5
お尋ねしたいことがあります。
We have questions.
いくつかご質問したいことがございます。
We have a few questions for (ask) you.

注) 前置詞がわからないとき、Google®で検索して調べることができます。
“questions * you”
このように検索ボックスに入力します。
toも若干ヒットしますが、forのヒット件数の方が多いです。

文例6
以下、ご回答申し上げます。
We will answer your questions in the following.
We will answer your questions below.
We will answer your questions as follows.

文例7
以下の質問に(早急に)お答えいただけるようお願い申し上げます。
Please answer the following questions (immediately).
Please let us have your answers to the following questions (immediately).
Please let us have your answers to the following questions (as soon as possible).

キーワード) 
answer to questions        質問に対する回答
let us have your ~    ~を私たちに下さい。
「私たちに貴方の~を持たせてください」が直訳であり、~に様々な名詞を置くことができます。”let us have … ”は、「~を下さい」という多くのパターンで使うことができ、特許実務ではよく使われます。クライアントから送ってもらうものが多いからです。

let us have your instructions 
ご指示下さい
let us have your answers    
ご回答ください
let us have your comments 
コメントを下さい
let us have your remarks   
ご回答、ご意見を下さい
let us have documents 書類を下さい
「書類を送ってください」という場合にも、let us haveを使うことができます。「私たちに書類を持たせてください」と表現します。

文例8
委任状フォーマットをすぐに送ってください。
Please let us have a power of attorney format as soon as possible.
注) 現在では、委任状フォーマットをメール添付で送ってもうらことが多いので、これは委任状フォーマットをメールで送ってください、という意味です。事務所ウエブサイトから委任状フォーマットをダウンロードできる形式のところも多いです。

文例9
私たちの質問は以下の通りです。
Our question is:
Our question is as follows:
「以下の通りです」という場合は、「:」を付して内容を記載します。

質問の例
Our question is:
whether we may submit an affidavit after filing an application or not.
このように、質問を明確に見せるため、改行して記載することもできます。

文例10
我々の質問は、宣誓供述書を出願後に提出できるか否かです。
Our question is whether we may submit an affidavit after a patent application has been filed.
われわれの質問は、
1) 委任状を出願後に補充できるか
2) 宣誓供述書は発明者に必ず署名してもらう必要があるか
3)  宣誓供述書の公証人による公証は必要か否かです。
Our questions are:
1) whether we may supplement a power of attorney after filing an application: 
2) whether an affidavit has to be always signed by inventors; and
3) whether an affidavit has been notarized by a notary public or not.

注)質問するときは、「~必要ですか」と日本語で表現されていても、”Is it necessary to ~”と訳すよりも、”please tell us whether it is necessary to ~“のように「~が必要か否か教えてください」と訳す方がよいです。
Please instruct us if it is necessary to~
Our question is whether it is necessary to ~
と訳します。

文例11
我々の回答は以下の通りです:
(1)委任状を後から提出することはできます。
(2)宣誓供述書は常に発明者が署名する必要があります。
(3)宣誓供述書は公証人による公証が必要です。
Our answers to your question:
(1)We can submit a power of attorney belatedly.
(2)An affidavit has to be always signed by inventors.
(3)An affidavit has to be notarized by a notary public.

文例12
追加の質問をさせて頂きます。
We would like to ask you further questions.
We would like to ask you additional questions.

文例13
貴方(貴所)の追加質問にお答えいたします。
We will answer your additional questions.

文例14
弊所の~月~日付け回答を補足します。
We will supplement (add) our answers dated (month) (day).

文例15
審査官の見解をコメントします。
We will comment the examiner’s remarks.

キーワード
「見解」はcommentと訳すことがありますが、「見解に対してコメントする」という場合は、見解とコメントを訳し分ける必要があるため、見解はremarkと訳します。
主張  allegation, assertion, remarks

注)特許実務では、意見や見解、所見などのことばを英訳することが多いです。審査官の判断は見解や意見であり、代理人や出願人はこれに対して独自の意見や見解があり、これを英語で表現する必要があるからです。
 しかし特許のコレポンで難しいのは、特許庁に提出する意見書という書面があり、これと訳し分けることが必要であるという点です。意見書はargumentでよいですが、これでは単なる意見と誤解されることがあるので、意見書という書面という意味で、a written argumentと訳すことをお勧めします。
 “argument”は具体的な主張という意味のときは可算名詞であるため、不定冠詞を付します。   

このほか日本語になっておりカタカナ表記される英語は数多くあります。
レビュー           review
アナリシス          analysis
オピニオン          opinion
所見、意見          observation
アリゲーション  allegation
 見解、意見という意味を有する単語としてobservationを使うことがあります。
   the examiner’s observation  審査官の見解
~に関するコメント
comments on ~
make comments on~
submission 見解、提出物
注)submissionという書類名がレターやオフィスアクションに登場することがあります。これは「提出物」と訳しておけばよいです。

 具体的には何の提出物か明示せずに、単に
the examiner’s submission dated April 1
のように書かれていることがあります。審査官が提出したものであれば「4月1日付け審査官の見解」と訳しておきましょう。
presentation 提出物、提示
提示、提出物と訳します。
filing  提出物、出願
注)fileは特許業界では、動詞であれば「出願する」、名詞であれば「包袋」(包帯ではないことに注意)を意味します。包袋とは出願の1件書類が入った袋であり、a file wrapperともいいます。
 しかしfilingという名詞は、提出物や出願という意味があります。

文例16
貴方の見解には疑問があります。
審査官の見解には疑念があります。
We are having reservations about the examiner’s opinions.
We are having doubt about your opinions.

文例17
審査官の見解は的外れである
The examiner’s opinions are off the mark.

キーワード
reservationsは「予約」「留保」の他に「疑念」という意味があります。
「~について疑念を抱いている」という場合は、having reservations about ~ということができます。  

文例18
この件は知財部に相談して下さい。
Please consult the Intellectual Property Department about this matter.
Please ask the Intellectual Property Department for an advice about this matter.

キーワード)
「~に相談する」は特許通信文では頻出です。「~の指示を受ける」「~にアドバイスを求める」と言い換えることもできます。
“ask 人 for ~”は、「人に~を求める」というフレーズであるため、「アドバイスを求める」という場合に使うことができます。

文例19
本件に関しては何らアクションがありません。
We have not received any action for the present case.
We have received no action for the present case.
アクションとは特許では特許庁が発行する何らかの通知、決定(拒絶理由通知、補正指令など)であり、office actionのことばからわかるように、そのままactionと訳すことができます。

文例20
本件の拒絶理由通知を受領しました。
We received a notice of reason for refusal with respect to the present case.




【プロフィール】
奥田百子(おくだももこ)
・外資系銀行を経て特許事務所にて勤務
・現在、奥田国際特許事務所にて、翻訳者、執筆者、弁理士として活躍し、バベル翻訳専門職大学院(USA)では第3科目「特許・技術・医薬翻訳専攻」にて「特許翻訳レベルⅠ(英日)」をプロフェッサーとして担当
・「現代日本執筆者大辞典・第5期」(日アソシエイツ)に掲載されている
・元 弁理士試験委員
<著書>
「ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語」(秀和システム)
「国際特許出願マニュアル2版」(中央経済社)
「特許翻訳テクニック2版」(中央経済社)
「もう知らないではすまされない著作権」(中央経済社)
「なるほど図解特許法のしくみ(2版)」(中央経済社)
「なるほど図解著作権法のしくみ(2版)」(中央経済社)
「なるほど図解商標法のしくみ(3版)」(中央経済社)
「米国特許法改正のポイント」(中央経済社)
「ネイティブに笑われない英文ビジネスメール」(中央経済社)
「こんなにおもしろい弁理士の仕事(3版)」(中央経済社)
「誰でも弁理士になれる本(4版)」(中央経済社)
「なるほど図解特許法のしくみ第3版」(中央経済社)
「自宅でできる翻訳の仕事」(ペーパーバック+電子書籍、インプレスR&D)
「知的財産関係条約基本解説」(法学書院、2017年1月)
「現代日本執筆者大事典・第5期」(日外アソシエーツ)所載

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