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第15回 すんなり入れる特許翻訳 ― 日用品の特許の翻訳

2020/05/07

特許翻訳入門 

第15回 すんなり入れる特許翻訳
- 日用品の特許の翻訳 ‐

奥田百子(おくだももこ)
奥田国際特許事務所にて、翻訳者、執筆者、弁理士として活躍。
バベル翻訳専門職大学院(USA)では 第3科目「特許・技術・医薬翻訳専攻」にて
「特許翻訳訳レベルⅠ(英日)」をプロフェッサーとして担当 

 
 
 では、今回からは、日用品の特許の翻訳を行います。

 最初に挙げるのは、可動間仕切り(特許6,254,001号、㈱インテリクス)の特許です。

 2枚の壁面を組み合わせて容易に作成できるL字形やT字形の間仕切り(パーティション)です。2枚の壁面の先端にさらに先端パネルというものを接合することにより、パネルが頑丈となり、地震によっても倒壊し難い間仕切りとなります。壁面の表面にはクロス材などを貼り付けることにより、部屋のインテリアともなります。

  この特許は、弊所を通して出願したものであり、一度も拒絶されることなくストレートで特許になったものであり、このようなアイディアが新規性、進歩性をクリアできたことは非常に喜ばしいことです。

 

 
     特許6,254,001号 図1

①     この発明のアイディア

 2つの壁面(下図の12、14)を組み合わせてL字形またはT字形を形成し、これらの2つ壁面の少なくとも一端に先端パネル(下図では16、18)を直角に接合することにより、間仕切りの剛性が高まります。また壁面にクロス材などを貼ったり、落書きスペースとすることで、部屋の雰囲気に合わせるフレキシブルな使い方ができるという効果もあります。

② 従来技術の欠点

従来技術として明細書に記載されているのは、

i) 特開2001-107495号

ii) 「オーダーメイド可動間仕切り」(マジキロウ)

http://www.nankaiplywood.co.jp/topics/2011/10/majikiroo.php
(検索日2014年1月15日)

 であり、天井にレールを敷設し、このレールから吊り下げるタイプのパーティションです。天井にレールを敷設することが条件となるため、間仕切りを設置する場所が限定され、好みの場所に間仕切りを設置することが不可能になります。またレールの敷設は大規模な工事を必要とします。   

 これに対し本発明の間仕切りは、2枚の壁面を組み合わせて床面に置くことによ、好みの場所に容易に間仕切りを設置することができ、「可動」のまたその形成された壁面にクロスなど仕上げ材を貼ったり、落書きスペースとすることで部屋の雰囲気に合わせることができ、という特徴があります。

③ この発明の特徴と特許請求の範囲
 上述したこの発明の特徴を請求項1~6で表現しています。以下に発明の特徴を挙げながら、どの請求項にそれが記載されているかを説明します。

(i) 2枚のパネルでL字形とT字形を形成できる
L字形は、パネルの端部同士を組み合わせたものであり、既に示した図の通りです。
これに対しT字形は次の図のように、一方のパネルの端を他方のパネルの途中(中間点とは限らない)に接合して2つの部屋(勉強部屋とベッドルームなど)を作成することができます。 
 
 この特徴はまず請求項1で表現されています。



 このように、「一端」と「途中」ということばの使い分けにより、L字形とT字形を表現しています。
 
 「第1の壁面の途中に第2の壁面の一端を接合させる」ことが記載されていますが、「第2の壁面の途中に第1の壁面の一端を接合させる」は記載しないのでしょうか。

 「第1の壁面の途中に第2の壁面の一端を接合させる」ことが記載されていますが、「第2の壁面の途中に第1の壁面を接合させる」ことはなぜ記載されていないのでしょうか?

 これは同じことを意味するからです。どちらを第1の壁面と名付けるかは重要ではなく、一方の壁面の途中に他方の壁面の一端を接合させることに意味があります。第1の壁面は一方の壁面を意味し、第2の壁面は他方の壁面を意味します。

  T字形を表した図15では、長い方の壁面が第1の壁面として描かれていますが、短い壁面を第1の壁面、長い壁面を第2の壁面として、第1の壁面の途中に第2の壁面を接合させる下図のような構造もT字形であり、請求項2でカバーされています。                
                  

 では、明細書の必要な記載を抽出して訳していきます。
 
文例1 
 図1は、この発明に係る可動間仕切り10の内面側を示す斜視図であり、図2はこの可動間仕切り10の外面側を示す斜視図である。


  Fig. 1 is a perspective view showing an inner surface side of a movable partition 10 according to the present invention, and Fig. 2 is a perspective view showing an outer surface side of this movable partition 10.  

     
文例2
 可動間仕切り10は、比較的横幅の広い長方形よりなる第1の壁面12の一辺と、比較的横幅の狭い長方形よりなる第2の壁面14の一辺とを、直角に接合させた断面L字形状を備えている。


 A movable partition 10 has an L-shaped cross section formed by  bonding one side of a first wall surface 12 with a comparatively wide rectangular shape and one side of a second wall surface 14 with a comparatively narrow rectangular shape at a right angle.


文例3
 また、第1の壁面12の他辺には、長方形状をした第1の先端パネル16の一辺が直角に接合されており、第2の壁面14の他辺にも、長方形状をした第2の先端パネル18の一辺が直角に接合されている。


 One side of a first end panel 16 with a rectangular shape is bonded to other side of a first wall surface 12 at a right angle, and one side of a second end panel 18 with a rectangular shape is bonded to other side of a second wall surface 14 at a right angle. 


文例4
  また、第1の壁面12の他辺には、長方形状をした第1の先端パネル16の一辺が直角に接合されており、第2の壁面14の他辺にも、長方形状をした第2の先端パネル18の一辺が直角に接合されている。


 One side of a first end panel 16 with a rectangular shape is bonded to other side of a first wall surface 12 at a right angle, and one side of a second end panel 18 with a rectangular shape is bonded to other side of a second wall surface 14 at a right angle. 


文例5 
 この可動間仕切り10は、工場でプレ加工が施された複数の構成部材をマンションのリビング等の居住空間に搬送し、現場において組立られる。


  The present movable partition 10 consists of a plurality of components that were subjected to pre-working at a factory and transported to living space such as living rooms in apartments, and assembled (there, in that place,  at that place, on the spot).   


文例6
 以下、図3及び図4に従い、可動間仕切り10の組立方法を説明する。ただし、この組立方法はあくまでも一例であり、異なる構成を備えた部材を用い、異なる組立手順に従って可動間仕切り10を形成することも当然に可能である。


 With reference to Fig. 3 and Fig. 4, a method of assembling the movable partition 10 will be explained below.  This assembling method is merely one example, and as a mater of course, the movable partition 10 can be formed following different assembling procedures using members having different structure.


文例7
 まず、図3に示すように、設置場所の床面20に、木製の第1の下部ランナ21及び第2の下部ランナ22を載置する。  
この際、第1の下部ランナ21の上端と第2の下部ランナ22の左端が直角に接するように配置され、ネジや釘、接着剤等によって相互に固定される。


 At first, as shown in Fig. 3, a first lower runner 21 of wood and a second lower runner 22 of wood are placed on a floor 20 of a place where they are installed. 
  In this case, an upper end of the first lower runner 22 and a left end of the second runner 22  are disposed in a manner that contact at aright angle and fixed to each other with screws, nails, adhesives or the like.  


文例8
 ただし、用いるパネル部材の数に限定はない。すなわち、比較的横幅の広い1枚のパネル部材によって第1の壁面12あるいは第2の壁面14を形成することもできるし、比較的横幅の狭いパネル部材を3枚以上用いて第1の壁面12あるいは第2の壁面14を形成してもよい。


 However, the number of used panel members is not limited.
 Namely, one panel member with   a relatively large width may form the first wall surface 12 or the second wall surface 14 or three or more panel members with a relatively small width may form the first wall surface 12 or the second wall surface 14. 


文例9
 各パネル部材及び先端パネルは、木製の芯板35の外面に第1の表装板36を接合させると共に、内面に第2の表装板37を接合させた積層構造を備えている。


 Each panel member and end panel have the laminate structure in which a first mounting plate 36 is bonded to an external surface of a wooden core plate 35 and a second mounting plate 37 is bonded to an internal surface. 

 第1のパネル部材30~第4のパネル部材33の芯板35の下端面には、図4(a)に示すように、それぞれ凹溝38が形成されており、

 As shown in Fig. 4(a), a concave groove 38 is formed on a lower surface of the core plate 35 of the first panel member 30 to the fourth panel member 33, respectively,

 この凹溝38を第1の下部ランナ21及び第2の下部ランナ22の凸材24に嵌め入れることにより、各パネル部材と下部ランナ間の位置決めが実現される。

 This concave groove 38 is fit into the convex material 24 of the first lower runner 21 and the second lower runner 22 to realize positioning of each pane member and the lower runner.


 

【プロフィール】
奥田百子(おくだももこ)
・外資系銀行を経て特許事務所にて勤務
・現在、奥田国際特許事務所にて、翻訳者、執筆者、弁理士として活躍し、バベル翻訳専門職大学院(USA)では第3科目「特許・技術・医薬翻訳専攻」にて「特許翻訳レベルⅠ(英日)」をプロフェッサーとして担当
・「現代日本執筆者大辞典・第5期」(日アソシエイツ)に掲載されている
・元 弁理士試験委員
<著書>
「ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語」(秀和システム)
「国際特許出願マニュアル2版」(中央経済社)
「特許翻訳テクニック2版」(中央経済社)
「もう知らないではすまされない著作権」(中央経済社)
「なるほど図解特許法のしくみ(2版)」(中央経済社)
「なるほど図解著作権法のしくみ(2版)」(中央経済社)
「なるほど図解商標法のしくみ(3版)」(中央経済社)
「米国特許法改正のポイント」(中央経済社)
「ネイティブに笑われない英文ビジネスメール」(中央経済社)
「こんなにおもしろい弁理士の仕事(3版)」(中央経済社)
「誰でも弁理士になれる本(4版)」(中央経済社)
「なるほど図解特許法のしくみ第3版」(中央経済社)
「自宅でできる翻訳の仕事」(ペーパーバック+電子書籍、インプレスR&D)
「知的財産関係条約基本解説」(法学書院、2017年1月)
「現代日本執筆者大事典・第5期」(日外アソシエーツ)所載

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