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第十六回 CAP ミニレッスン⑨ Domain 6: “Operational Functions” – 1: Human Resource Management

2019/04/22

世界で活躍するビジネス・パーソンのパスポート―
アメリカCAP(Certified Administrative Professional)試験


第十六回 CAP ミニレッスン ⑨
Domain 6: “Operational Functions”
– 1: Human Resource Management”



       
               
                

                               
 河田 幸(カワタユキ):横浜商科大学商学部特任講師。CAP / CAP-OMホルダー

 皆さん、こんにちは。今回はマネジメント分野から「人的資源管理」について学習します。

アメリカのビジネス法律 (
Business Law) の大枠を学んだ後、組織関連の内容へと入り、採用(Recruitment)、人材配置(staffing) 、キャリア開発 (Career development)、報酬 (compensation)や各種給付 (employee benefits)、教育訓練 (Training)と能力開発 (Development), 業績評価 (Performance Evaluation), 入社、退職(On-board/Off-board) の諸手続き等、人事、総務、コンプライアンスに関わる方はもちろん、管理職の方々には欠かせない知識が凝縮されています。そしてここでは、アメリカビジネス法律の柱、“Equal Employment Opportunity Act of 1972”(雇用機会均等法)と、採用面接に焦点を当ててご説明致します。

 それでは早速、
“Equal Employment Opportunity Act of 1972” から入っていきましょう。
同法は、人種、肌の色、宗教、性別、出身地等の理由によって、採用を始め、解雇、昇進、報酬、教育、仕事の割り当て、雇用条件等における差別を禁止する内容で、
Equal Employment Opportunity CommissionEEOC、雇用機会均等委員会)という米政府内の独立機関が関連の行政活動を行っています。

 この法律の理解を深めるために、就職活動に欠かせない履歴書や職務経歴書を例に取りましょう。
日本の企業では、学歴、職歴、資格といった職務に直結する情報に加え、生年月日や出身(本籍)地の記載、そして写真貼付を求めるケースが少なくありませんが、アメリカでは、こういった個人情報の開示を応募段階で求められることはありません。後程、面接の箇所でも触れますが、法律に関わってくるからです。

 さて、同法律関連で
CAPテキストにも取り上げられているのが、”Sexual harassment” です。
”Sexual harassment” は、”Quid pro quo”対価型:労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の拒否や抵抗により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て、不利益な配置転換などの不利益を受ける嫌がらせのこと)と “A hostile environment”環境型:労働者の意に反する性的な言動により、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること)に大別されます。(「en 人事のミカタ」 Webページより)

 一般に
”Sexual harassment” は判断基準が難しいと言われていますが、
”Any actions or words with a sexual connotation that interfere with an employee's ability to work or create an uncomfortable atmosphere are considered sexual harassment. (“The balance careers” web site) という説明の通り、不快に感じる言動や環境が、当事者の仕事上の生産性にマイナスの影響を及ぼすかがポイントだと考えてよいでしょう。

 これに加え、最近増えつつあるとされているのが「パワハラ」(英語では、
”Abuse of Authority” , “Workplace Bullying”) です。皆さんご承知の通り、日本でも企業に防止を義務づけていますね。
 パワハラは、➀身体的な攻撃、②精神的な攻撃、③人間関係からの切り離し、④課題な要求、⑤過小な要求、⑥個の侵害、という6種類に分類されますが、その影響は大きく、被害者の心身に大きな影響を及ぼすだけでなく、職場環境が悪化し、生産性低下や人材流出につながる懸念もあります。上司の管理責任を問われる場合もありますから、研修等の機会を利用して、積極的に知識を吸収するようにしましょう。

 それでは2つ目のポイントである「採用面接」とその注意点へと移ります。
まず採用面接には以下のような種類があり、目的、面接の段階、応募者の数といった条件によって使い分けられます。


   1)
Structured interview:    事前に決めた質問を面接者全員に行う。
   2)
Unstructured interview:    その場で決めた内容で質問をする。
   3)
Team, panel, or committee interview 集団面接、一度に複数の面接者が参加する形式。
   4)
Behavioral interview:        行動面接、面接者が過去に取った行動についての質問をする。

すなわち、1)や3)は、多くの応募者を選考対象とする場合(新卒採用等)や第一次面接といった初期段階の面接で、そして、2)や4)は応募者を更に深く知るために行われる、第二次面接以降で多く使われるとされています。特に4)の
”Behavioral interview” は、管理職の採用時の中途採用に多く活用される面接形式で、「あなたは組織に対して提案を行ったことがありますか。どのような内容で、どういった準備をしましたか。」といった具体的な行動とその結果が問われます。この際、質問された事例の経験がない場合でも、類似性や共通性を持つ経験を関連付けて答えることが大切です。

 それでは次に、採用面接での質問内容について考えてまいりましょう。
さて以下の10項目のうち、アメリカで
”illegal questions” と見なされるものは幾つあると思いますか。

     1. Number of children
     2. Marital status
     3. Nationality
     4. Past medical problems
     5. Number of arrests
     6. Date of birth or age
     7. Religious affiliation
     8. Military status
     9. Physical or mental disabilities
     10. Ethnic association of surname


答えは10項目全て
”illegal questions” です。最初に学んだ法律の内容と照らし合わせると理由はお分かりだと思いますが、6.の生年月日と年齢、と8.の兵役関連については説明を加えます。

 まず
6.の年齢に関しては、“Age Discrimination Employment Act (ADEA) of 1975” により、年齢による雇用差別が禁止されています。ですから、正当な理由もなく、年齢を聞かれることはありませんし、開示の義務もありません。但し、安全上の理由で年齢制限を設ける場合等は、「真正職業資格」”a bona fide occupational qualification” (BFOQ)の範疇に属しますので、年齢差別には該当しません。

 そして、
8.の兵役に関しては、Because military status is a federally protected class, companies cannot make employment decisions based on a job candidate’s past, current, or future military membership or service (monser.com)という記述が示す通り、採用に影響を及ぼさないという点も理解しておきましょう。
この辺は「アメリカならでは」の知識ですね。


 さて今回はアメリカのビジネス法律を軸に学習をしましたが、CAP試験対策には、グローバルな情報と視点を持つことが欠かせません。例えば、最近のこんな記事にも関心を持ってみて下さい。


”U.S. charges Facebook with racial discrimination in targeted housing ads” 

The Trump administration accused Facebook Inc. on Thursday of selling targeted advertising that discriminated on the basis of race, in violation of the U.S. Fair Housing Act.

Seeking damages and unspecified relief for harm caused, the U.S. Department of Housing and Urban Development said in its civil charge that Facebook also restricted who could see housing-related ads based on national origin, religion, familial status, sex and disability.  (“The Japan News”  March, 29, 2019) 


「米住宅都市開発省は、28日、米フェイスブック(FB)が住宅広告の表示対象を選別し、住宅の売買や賃貸等で差別を禁止した法律に違反したとして、FBを相手取った民事訴訟を起こしたと発表した。」
(読売新聞ウエブ版)

 「不当な差別を許さない」いうアメリカの信念がビジネスにも反映しているわけですね。

さて次回はスタンボーグ先生にご登場いただき、
”Operational Functions -2 “ として ”Accounting”
学習します。どうぞお楽しみに。




【プロフィール】
河田 幸(カワタ ユキ)
東京都出身。大学時代にESS(英語部)で国際政治経済問題を討論するうち、ビジネス界に興味を持つ。イギリス系銀行、コンピュータ・ベンダー企業、アメリカ系銀行に勤務。CAP受験対策講座ではITとマネジメント分野を担当。

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