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第八回 CAP ミニレッスン➀  Domain1 : “Organizational Communication” - 1 : Management Theories

2018/12/22

世界で活躍するビジネス・パーソンのパスポート―
アメリカCAP(Certified Administrative Professional)試験


第八回 CAP ミニレッスン➀ 
Domain1 : “Organizational Communication”
- 1 : Management Theories


       
               
 河田 幸(カワタユキ):横浜商科大学商学部特任講師。CAP / CAP-OMホルダー
 
 
さていよいよCAP試験の学習内容へと入っていきましょう。
今回は
Domain 1 “Organizational Management” から ”Management Theories”(マネジメント理論)について学びます。

 アメリカにおける「マネジメント」は、産業革命への移行過程に端を発します。
農業を主産業としていた当時は家族経営が中心でしたから、マネージャーの役目は家長でもある父親が担っていました。家族同様、仕事も束ね、様々な問題は家族会議で解決していたのです。ところがイギリスから産業革命による機械化の波が押し寄せると、家族以外の人たちを雇い、機械や原材料を調達し、これらにかかるコストの動きを把握する必要が出てきました。こういった背景から、人・カネ・モノ(現代にはこれに「情報」も加わります。)をいかに効率的、効果的に管理していくかを研究する「マネジメント」という学問が生まれました。

 まず古典的管理論では、科学的管理法の父と呼ばれる
”Fredrick W. Taylor”(フレドリック・テイラー)を押さえておきましょう。彼は工場労働者の賃金に出来高払い制度を取り入れるべく、(彼の著書、”A Piece-rate System”「出来高払い私案」(1895年)は有名で、過去CAP試験でも出題されました。)業務の「効率性」(efficiency)に注目し、作業工程の見直しも行いました。
 
 こういったテイラーの手法を手本としたのが、世界的に有名な自動車メーカー、フォード・モーターの創始者である
Henry Ford(ヘンリー・フォード)です。労働組合に対して強硬姿勢を取った彼は、高品質な製品を低価格で消費者に提供し、労働者に高い賃金を支払うよう努力をしました。彼の大量生産の手法や経営思想は「フォーディズム」(Fordism)と呼ばれています。

 やがて、このような数字と隣り合わせの「効率性」を重視する管理法も転期を迎えます。
そのきっかけとなったのが、1927年から1932年にかけて、ウエスタン・エレクトリック社とエルトン・メイヨーらによって行われた「ホーソン工場の実験
(”Hawthorne studies”)」です。当時は引き続きテイラーの科学的管理法が経営管理の主流でしたが、好景気に後押しされた大量注文に対応するために、作業能率・生産能率を更に向上させる要件を洗い出す必要があったのです。

 ホーソン工場の実験の特徴は、実施前の想定と異なる結果がもたらされた点にあります。
初期の段階では、工場内の照明や室内の清潔度といった外的要因が、生産性に影響を及ぼす大きさを想定した様々な実験を試みましたが、こういった変化にもたらされる効果は一時的で、持続することはありませんでした。
 
 次に生産性に準じた給与体系の影響を試みましたが、労働者の中には非公式なグループ
(informal social relations) が存在し、摩擦や不和を避けるため、周囲に生産量を合わせるかのような微妙な調整がなされ、給与とモチベーション、生産性の関係性も不透明であることが分かりました。

 こういった様々な実験に加え、大がかりな聞き取り調査も行われ、生産性を左右するのは「人間関係」であり、人間の心理的な要素が大きいという結論が導き出されました。つまり、社会的組織としてのグループの内の人間関係に加え、上司のリーダーシップ、あるいは上司との関係性、といった人間の内面的要素が生産性を左右することが分かったのです。このような考え方は、「人間関係論」と呼ばれ、これ以降マネジメントは、人間の心理面に焦点が当たり、モチベーション(動機付け)の考え方へとつながっていきます。

 さて、この辺で練習問題に挑戦してみましょうか。
次の問題文を完成させるのに、最も適切な選択肢をA)からD)の中から選んで下さい。


Question:  The Hawthorne studies were planned to scrutinize

A) workers’ attitude toward the production
B) social relationships of workers in the manufacturing factory
C) workers’ attitude toward their responsibilities on the job
D) external or physical factors related to workers’ productivity


 なんだ、簡単じゃない、と思うあなたは有望です。でもB)を選んだわけではありませんよね。
この問題は少しひねりを加えており、実験当初の目的を聞いています。結果を聞いているわけではありませんから気を付けてくださいね。というわけで、解答はD)です。外的要素とは、工場内の照明や温度、湿度や清潔度のことで、これらが生産性と関係があると仮定して、実験が行なわれたのでしたね。

 CAP試験は1問1分以内を目安に解答していくスピードが要求されますが、設問を正確に読み取ることは必要最低条件です。この問題では、
”were planned to”をしっかりと押さえることが大切です。
そしてこの手の問題は丁寧に知識を積み重ね、理解することで対応可能ですから、確実に点数に結び付けましょう。

 さて、ホーソン工場の実験以降、人間の内面に注目が集まるようになり、有名な「マズローの欲求階層説」
(Maslow’s hierarchy of Needs) が出てきます。以下の図をご覧下さい。
      
                     
Maslow’s hierarchy of Needs 


 この考えは、「自己実現理論」とも呼ばれ、人間は絶えず自己実現に向かって努力する生き物であるという前提に基づいています。

 第一段階は最も低次、そして基本的な欲求で、衣食住の確保を求める「生理的欲求」
(Physiological Needs)、第二段階は身の安全や保護を意味する安全欲求(Security / Safety Needs)、その上には、周囲との関係性を求める社会的欲求 (Social Needs)、自己や他人からも認められたいという承認欲求 (Esteem/Self-esteem Needs), そして最上層には、潜在的に持っているものを全て開花させたいと願う自己実現欲求 (Self-Actualization), という五段階の欲求から構成されます。この考え方は、部下に対する動機づけとしても活用することができます。

 そしてマズローと同様、労働者の動機付けに注目し、二要因理論
(Two-factor theory / Herzberg’s motivation-hygiene theory) を確立したのがハーツバーグ (Frederick Herzberg) です。彼は働く人々に面接調査を行い、その結果を分析し、不満足を感じる要因:衛生要因 (Hygiene or Maintenance Factors)と、仕事に満足を感じる要因:動機付け要因 (Motivating Factors)とに分類しました。

                                         
Herzberg’s Theory
 Hygiene (maintenance) factors      Motivational factors
Rule and policy
Relationships with supervisor and colleagues
Work conditions
Salary and certain types of benefits
Security
Relationships with subordinates
Achievement
Recognition
Job performance
Responsibility
Advancement
Feedback
                                                      (CAP Study Guide 3rd Edition, P.58)

 この表の左側にある、会社の方針と管理、監督、給与、労働条件、同僚や上司との関係性は、あって当然、
ないと不満を感じさせる衛生要因であり、動機付けとしては不十分です。つまり、マズローの欲求段階説でいうと、「生理的欲求」、「安全欲求」と「社会的欲求」の一部の欲求を満たす要素です。
 これに対し、表の右側に書かれた達成感、承認、責任、昇進、成長、といった要素は、働き手のやる気へとつなげることが可能な要素で、マズローの考え方では、「社会的欲求」の一部より上層に該当します。

 こういった考えから、職場での満足感を引き出すには、右側の動機付け要因に注目すべきであるという考え方が導き出され、現代の「フレックスタイム制」や「カフェテリア・プラン」(福利厚生の選択肢を従業員のニーズに合わせて組み合わせるプラン)といったシステムにも応用されています。


 さて初めてのレッスンはいかがでしたか。CAPはこのように体系的な学問も含みますので、複数のアメリカの大学で単位として認められています。もちろん、MBA等専門的な知識をつける土台としても格好の素材です。


 次
回も
Domain1から、「マネジメント機能 (Management Functions) 」を学びます。
皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。



【プロフィール】
河田 幸(カワタ ユキ)

東京都出身。大学時代にESS(英語部)で国際政治経済問題を討論するうち、ビジネス界に興味を持つ。イギリス系銀行、コンピュータ・ベンダー企業、アメリカ系銀行に勤務。CAP受験対策講座ではITとマネジメント分野を担当。
横浜商科大学商学部特任講師。CAP / CAP-OMホルダー、英検1級、通訳案内士、翻訳実務士(英日文芸)、ビジネスマネージャー資格。


 

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