大きくする 標準 小さくする

第五回 CAP資格の活用法➀  <転職編>

2018/11/07

世界で活躍するビジネス・パーソンのパスポート―
アメリカCAP(Certified Administrative Professional)試験


第五回 CAP資格の活用法➀  <転職編>


       
                河田 幸(カワタユキ):横浜商科大学商学部特任講師。CAP / CAP-OMホルダー

 皆さん、こんにちは。今回から三回に渡って、CAP資格の活用法についてお話をしてまいります。その第一回目は「転職活用法」です。

 私は毎回CAP講座の説明会を担当していますが、出席者の方からよく出るご質問があります。
 「日本におけるCAP資格の知名度について教えてください。」
恐らく多くの方が、「知名度の高さ=試験の内容や難易度が広く知られている=転職や昇進に有利」という公式を描いていらっしゃり、その公式が成立するかどうかが、ご自身の勉強を始める判断基準になっているように思います。
 
 それでは、資格の知名度が高くなければ、その価値も低いということになるのでしょうか。
私はそうは思いません。実際、私が転職活動を始めた当時は、国内のCAPホルダーが二桁に届いたばかりという状況でしたが、それでもこの資格を秘密兵器として携え、転職活動を闘った(少し大袈裟ですね。)
私の体験談をご紹介致します。

 以前の連載で触れた「ハードスキル」と「ソフトスキル」の話を覚えていらっしゃいますか。
就職活動にもこの両面があると言われています。「ハードスキル」は、学歴、資格、教育訓練、職務経歴等、客観的にその人の能力や知識の度合いを証明するもので、書類選考の際に重要な判断材料となります。
 
 一方、「ソフトスキル」は面接で確認される点で、その人の受け答えや人間性、語学力、コミュニケーション能力、あるいは判断力、問題解決能力など多岐に渡ります。ただ、転職活動の場合、ソフトスキルをアピールしたくても、まずはハードスキルの審査に通らなくてはなりません。

 当時の私にとって、アピールポイントにしたいものの、対外的に証明しにくい点は、ビジネスで通用する英語力でした。ご存知の通り、外資系企業には、帰国子女、海外の大学や大学院の卒業生、といった肩書を持つ社員が多く、この層はバックグラウンドだけで自動的に高い英語力を証明することができます。それに比べて私は、留学どころかホームステイの経験さえありませんから、こういう人たちと肩を並べて仕事ができることを証明するには、相応な「ハードスキル」が必要になるわけです。ただそれには、TOEICや英検といった語学系の資格試験では、説得力に欠けることを私は十分承知していました。

 私は以前勤務していた外資系企業で、バイリンガル社員の書類選考や面接に加わっていたのですが、外人の上司や同僚たちは、語学系資格にほぼ無関心でした。それもそのはず、ペーパー上、高レベルの英語力をお持ちであるはずの方が、英語の面接では同一人物かと疑いたくなるようなコミュニケーション・レベルの持ち主であったり、英語で見事な自己紹介をする方が、ビジネスに踏み込んだ質問をした途端、急に無口になったり、といった事態が頻発していたからです。
 英語のペーパーテストができても、ビジネス知識に欠ける、専門用語に明るくない、あるいは、生きたビジネスの場で使える英語に強くない。こういった穴を埋め、ビジネスで実践的に使える知識や英語力を証明できる資格はないだろうか。こんなきっかけから、私はCAPの勉強を始めたのです。

 それではどのようにCAP資格を転職に活用したのかをご説明致しましょう。
冒頭で書きました通り、CAP資格はさほど多くの人が手にしていない秘密兵器なのですから、資格欄にそのまま「CAP」と書くだけでは不十分です。応募先に内容を分かってもらえるように説明を加えましょう。

 まずは、応募先企業の情報収集をします。相手をよく知ることで、自分が貢献できそうな仕事内容も見えてきますし、面接の際の企業研究や応募動機などの質問にも対応できます。
 次に、CAPで学んだビジネス知識と自分の職務経験とを、応募する職務内容と照らし合わせ、その関連性を明確にしていきました。一般的に、募集要項の職務は抽象的に書いてありますから、それを具体化することで、どのような業務を英語でこなせるかを相手側に伝えることができます。
 これに加え、CAPで新しく学んだ点も書き、それを生かした仕事も可能であると、守備範囲の広さもアピールしました。同じような職務経験を持っていたとしても、環境によって仕事の手順や責務は異なりますから、柔軟性を持って対応でき、新しい仕事を学ぶ姿勢が伝われば、と考えたのです。

 それでは一例をご紹介致します。
第1回目の連載でご紹介しました通り、CAP試験は6つの領域から出題されますが、学問的には、
➀IT, ②Management(会計を含む)、③オフィス実務、と大きく3分野に分類することができます。
対外的にはこの切り口の方が分かり易いと思いますので、例えば、外資系金融機関の情報システム部で、
プロジェクト・プランニングに関わるVice Presidentの職位に応募する場合、

IT: Hardware/Software knowledge, Maintenance and Troubleshooting, Security, Procurement
Management: Leadership and Motivation Theories, Planning, Performance Evaluation, Project Management,                           Business Law, Staffing, Presentation and Public Speaking, Basic Accounting
Office Administration: E-mail, Document and Letter writing, Research, Business Etiquette

という感じで、CAPの幅広い学習内容から必要と思われる部分をピックアップしてまとめます。
何となく「デキる」応募者という印象を与えませんか?
 
 応募先によって書類の内容を変えなくてはなりませんので、少し手間がかかりますが、自らの経験上、良い意味で目立つ応募書類には目を留めるものです。ですから、皆さんも応募書類のフリースペースを有効に活用したり、添付書類を作成するなど、CAP資格を説明する工夫をしてみて下さいね。

 このように、皆さんが懸念なさっている資格試験の知名度問題は、説明を加えることで解決します。
それどころか、一生懸命勉強して合格したのですから、その内容と熱意をしっかりアピールすることで、差別化にもつながります。実際に、私はこの方法で、比較的良い確率で書類選考に通りましたし、面接の場でも珍しさが功を奏したのか、必ずと言ってよいほどCAP関連の質問を頂いた記憶があります。

 それではこの辺で、CAP資格の底力を証明する体験をお話することにいたしましょう。
CAP資格に合格して、転職活動を始めたばかりの頃、人材バンクの方が薦めて下さった企業に応募してみることになりました。ところがその企業は、未経験の業界の上、かなりの応募が見込まれるとのこと。私は期待を持たず、並行して別の数社にもアプローチをしていました。
 ところが数週間後、人材バンクの方から慌てた声で電話が入りました。私の書類は最終審査まで残り、翌日に役員面接だと言うのです。不利な条件下での応募を自覚していた私は、書類選考に通った理由を聞いてみました。するとこんな答えが返ってきました。
  「以前あの企業で、あなたと同じアメリカの資格を持った、大変有能な方がいらしたそうですよ。」
聞くところによれば、その方は長いアメリカ生活を送る中、現地でCAP資格を取得し、その会社でご活躍なさっていたとのことでした。

 その後、私は別の企業で仕事をすることになりましたが、この先輩CAPホルダーからは、心に残る大切なことを学びました。 私の大好きなJ.F.ケネディー、元アメリカ大統領の就任演説に、”Ask not what America can do for you, ask what you can do for your country.”という一節がありますが、これに通じる考えのように思います。つまり、資格が自分にもたらす利益に期待をするのではなく、資格の価値を高め、広めていくのはホルダー自身であるいうことです。

 私もこの先輩CAPホルダーを見習い、いつか自分の頑張りが、どなたかの、何かのお役に立てることを願いつつ、今回のお話を締めくくることに致します。

次回はCAP活用法の第二弾として、他の資格試験への応用についてお伝えいたします。どうぞお楽しみに。

 





【プロフィール】
河田 幸(カワタ ユキ)

東京都出身。大学時代にESS(英語部)で国際政治経済問題を討論するうち、ビジネス界に興味を持つ。イギリス系銀行、コンピュータ・ベンダー企業、アメリカ系銀行に勤務。CAP受験対策講座ではITとマネジメント分野を担当。
横浜商科大学商学部特任講師。CA
P / CAP-OMホルダー、英検1級、通訳案内士、翻訳実務士(英日文芸)、ビジネスマネージャー資格。