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第四回 CAP試験の魅力② <継続学習・再認定制度>

2018/10/22

世界で活躍するビジネス・パーソンのパスポート―
アメリカCAP(Certified Administrative Professional)試験


第四回 CAP試験の魅力② <継続学習・再認定制度>


       
                河田 幸(カワタユキ):横浜商科大学商学部特任講師。CAP / CAP-OMホルダー

 皆さん、こんにちは。連載四回目は、CAP資格の特徴の一つである「再認定制度」についてご説明しながら、継続学習の重要性について考えてまいりたいと思います。

 皆さんはスティーブン・コヴィーの「七つの習慣」という本をご存知でしょうか。ビジネス書コーナーの常連ですから、お読みになった方も、企業研修などで学んだ方もいらっしゃるでしょう。時間管理や優先度の把握など、ビジネスや日常生活に生かせる様々な考えがまとめられており、過去のCAPテキストにも取り上げられています。今回はその中の一つである、「刃を研ぐ」という習慣に注目します。

 ある木こりが大木を切り倒そうと長時間格闘していました。そこに通りがかりの人が、疲れ切った様子の木こりに声をかけました。「少し休んで、ノコギリの刃でも研いだらいかがですか。」すると男はこう答えます。「切るのに忙しくて、刃を研ぐ時間などあるものか!」

 皆さんはこの話をどのように解釈なさいましたか。
「働き詰めでは生産性が上がらない。思い切って休んでみよう。」
「仕事が行き詰まる原因を突き止め、それを解決する努力をすべきだ。」
他にもいろいろあると思いますが、私はこう解釈しました。
「ノコギリは木こりにとって大切な仕事道具。この道具はいつ必要になっても、仕事に最善が尽くせる状態にしておくべきだ。決して手入れを怠ってはいけない。」
 実を申しますと、この解釈は自らの経験に基づくもので、私にとって大切なノコギリである「CAP資格」が教えてくれた教訓でもあります。

 CAP試験合格から3年の月日が流れようという頃、私は”Office Systems and Technology”という科目の講師のお話を頂きました。ところが講義の準備をしようと新しいテキストを読み始めた途端、懐かしいはずの風景は様変わりしており、新しい配色と景色で塗り替えられていることに気づきました。ITバブル期を経て、目覚ましい進化を遂げたこの業界の動きにCAP試験は一早く追いついていたのです。
 焦りを感じつつも、IT部署での職務経験に助けられながらテキストを読み進めて行くと、オフィスで次々と起こった変化の背景や理由に説明がついていきました。便利な二次記憶装置の主流だったフロッピーディスクはCD-ROMDVDへと変わり、やがてこの手の記憶媒体の使用が禁止に至った経緯、データウエアハウスの構築やクラウドの導入を検討し始めたこと・・。私は三年もの間、こうした変化を当然のこととして受け入れ、意思決定に至るプロセスで行われたはずの議論を見逃したまま働いてきたことに気づきました。こうして手入れを怠っていた私の大切なノコギリは、錆びる一歩手前で難を逃れたのです。

 その後間もなくCAPにも再認定制度が確立され、ファイナンシャル・プランナーや通訳案内士等と同様、継続学習が資格保持条件になりました。このように合格後も学習の機会を設けることにより、時代の変化に影響を受けにくい重要な知識や考え方はその定着を図り、新しい情報に関してはインプットやアップデートの機会が与えられることになります。そして、資格の取得は生涯学習のきっかけに過ぎず、努力を怠れば、あっと言う間に埃がかぶってしまうことを認識させる狙いもあるのでしょう。ウイルス対策ソフトウエアと同じように、セキュリティーホールがないかに目を光らせ、常に最新の状態にしておくことで資格の効力が持続するわけです。

 それではCAPの再認定制度についてご説明致しましょう。
CAP資格は合格後、3年サイクルで再認定を行うシステムを取っており、学習内容を生かした仕事や継続学習の内容を1) Professional Development,  2) Industry-specific Professional Development,  3) Leadershipの3分野に分類して報告し、認定を受けます。
分野1)はCAPテキストの学習範囲と直結した職務内容やセミナー参加など、2)は、CAPの学習内容を応用して行った業種に特化した仕事(医療分野での仕事など)、またはそれに関わる資格試験取得や教育訓練類、3)はリーダーシップを発揮した機会(PTAでも構いません)がそれぞれ該当し、こういった継続学習活動を指定用紙(IAAPのホームページからダウンロード可能)に記入します。
CAPは学習範囲が広いですから、仕事や継続学習、他の資格試験との関連付けは容易です。

 次に、各活動1時間当たりを1ポイントとして換算し、3年間で合計が36ポイント以上になるようにまとめます。1) は必須分野で単独36ポイントの申請が可能、2)3)の分野はオプションで、いずれも各15ポイントが上限です。

 最後に、これらの活動内容を明記したリストと申請内容を裏付ける書類(上司の署名付きの文書や修了証など)、そして、再認定申請費100ドル(IAAP メンバー費)の支払い情報を送付すると、特定の審査後、再認定の証明書が送られてきます。これで手続きは完了で、向こう3年間アクティブなCAPホルダーとして国際的に証明されることになります。尚、再認定は毎年5月、11月末に締め切られますので、計画的にご準備なさることをお薦めします。

 また再認定のポイントは、アメリカで行われるIAAPの各種セミナーへの参加や、CAPの上級資格である、”CAP-Organizational Management (OM)” の認定でも認められ、いずれも上記カテゴリー1)での申請が可能です。CAP-OMはオンラインで講習の受講と確認テスト後の認定となりますので、ご興味のある方はIAAPのホームページをご参照下さい。

 このように再認定は、学習継続やスキルアップの指針としても、あるいは3年間の自分の業績を振り返り、次の目標設定をするのにも役立ちます。また自分を客観視し、持っている仕事ツールの可搬性を確認するのにも有益だと思います。

 さて、冒頭に木こりの話をしましたが、同じく木こりが登場する、有名な「金の斧」の話を思い出して下さい。
 木こりが大切にしている鉄の斧をあやまって泉に落としてしまい、途方に暮れていると、泉の精が出てきて、「お前が落としたのはこの斧か?」とぴかぴかの金の斧を見せます。すると木こりは、自分の斧が金ではなく鉄だと答えると、泉の精はその正直さに対するご褒美として、金と銀の斧もくれたというお話でした。
もし皆さんがあの木こりの立場だったらどう答えますか。やはり正直者の木こりのように優等生的な受け答えをなさるのでしょうか。私ならこう答えます。
 「私が落としたのはたしかに鉄の斧ですが、いただけるのであれば、その金の斧に見合うように一生懸命働きます。」
いかにもずうずうしい木こりですね。でも金の斧は、期せずして目の前に現れ、二度と巡って来ないチャンスなのかもしれません。自信を持って受け取れるかどうかは、それにふさわしい準備が整っているかによるのではないでしょうか。

 みなさんにとって大切なノコギリは何ですか。そのノコギリは手入れが行き届き、いつでも最大の効果を
発揮できますか。
そしてある日金の斧を手にするチャンスが訪れたら、自信を持って受け取り、それを使いこなせるだけの準備はできていますか。あるいは、金の斧を自ら手に入れる努力をなさっていますか。

「清流に間断なし」。CAP資格の再認定は、不断の努力や修行の大切さをホルダーに伝え続けています。


 次回は、「CAP資格の活用法➀ 転職編」をお届けします。CAP資格がどのように私の転職活動を応援してくれたかについてお話ししたいと思います。どうぞお楽しみに。

     
 



【プロフィール】
河田 幸(カワタ ユキ)

東京都出身。大学時代にESS(英語部)で国際政治経済問題を討論するうち、ビジネス界に興味を持つ。イギリス系銀行、コンピュータ・ベンダー企業、アメリカ系銀行に勤務。CAP受験対策講座ではITとマネジメント分野を担当。
横浜商科大学商学部特任講師。CA
P / CAP-OMホルダー、英検1級、通訳案内士、翻訳実務士(英日文芸)、ビジネスマネージャー資格。


 

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