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『総合的な翻訳による英語教育』第24回

2020/04/22

『総合的な翻訳による英語教育』第24回












 
 
 
 ことばは時代によって変わるのだが、未成年のスマホ世代はコミュニケーションに使う言葉が表現の豊かさを失わせているだけでなく、ほかの世代との意思疎通にも支障をきたしている。翻訳においても同じ意味範囲やニュアンスを伝えにくいことも少なくない。

大学生の語彙力
 
 「エモいは、昔でいう『あわれ』だと思う。素晴らしいと感じた時も悲しい時も、情感を込めて表現できる」。三省堂国語辞典の編集を手がける飯間浩明さん(52)は言う。飯間さんによると、「いとあわれ」は今なら「超エモい」となる。・・・
 大学生の基礎学力向上について研究する「日本リメディアル教育学会」日本語部会の大学教授らが16~17年、小中学生と大学生合わせて4000人を対象に語彙量を調べたところ、中学3年生の平均点を下回る大学生が散見されるという。調査した中央学院大学の田島ますみ教授(53)は「今の大学生は感覚重視で、論理性や理屈が希薄。だが、社会に出れば、友人だけで通じる言葉は受け入れられず、説明力や理解力が求められる。すごい、やばい、エモいだけで成り立つ会話の次元から脱却し、場面に応じて言葉を使い分けてほしい」と話す。
   (読売新聞2020年3月28日『国語力が危ない-現代の「あわれ」拡散』)


高校生の語彙力

 女子高校生の1日のスマートフォン使用時間は平均7時間で、15時間以上使用する生徒は9.7%に上る。情報セキュリティーメーカー「デジタルアーツ」が2015年2月9日に発表した調査で分かった。調査は携帯電話かスマートフォンを持つ10歳から18歳の男女618人を対象に行った。1日の平均使用時間は、小中学生が2時間未満、男子高校生が4.1時間で、女子高生が飛び抜けて長い。0~3時の深夜時間帯に使用する女子高生は24.3%に上った。  (JCASTニュース2020/4)
 
 校外学習が減少、いや実質的に欠落する。4人に1人が深夜(0~3時)に使用するなど、翌日の授業にも支障をきたす。LINEの交換に時間が支配され学習時間が奪われるだけでなく、短時間での頻繁なやりとりではことばが熟考されることなく感性的な汎用語が溢れ論理的なコミュニケーションは成立しない。入学試験で出される設問の文章が分からないのだ。


国際学習到達度調査(PISA)[1] 読解力15位 大幅ダウン

 経済協力開発機構(OECD)は3日、世界79カ国・地域の15歳を対象として2018年に実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。日本は読解力が前回(15年調査)の8位から15位と大きく後退したほか、数学的応用力が前回の5位から6位に、科学的応用力も2位から5位に順位を落とした。文部科学省では、読解力の記述式問題などで課題が浮き彫りになったとみて、学力向上策など検討する。

 調査は3年に1度、義務教育修了段階の子供たちを対象に読解力と数学的・科学的応用力を測るもので、今回は男女約60万人が参加。日本からは全国約6100人の高校1年生がテストを受けた。それによると、日本の読解力の平均点は504点で、OECD加盟国平均の487点は上回ったものの、前回の15年調査より12点、前々回の12年調査より34点低かった。文科省によると、全体の約3割を占める自由記述式の問題で得点が伸び悩んだといい、正答率がOECD平均を2割近く下回った問題もあった。文科省担当者は「自分の考えを他者に伝わるよう、根拠を示して説明することに課題がある」と分析している。一方、数学的応用力は527点(平均489点)、科学的応用力は529点(同489点)。前回に比べ5~9点低かったが、文科省では「引き続き世界のトップレベルを維持している」としている。
                          (ライフ教育2019/12)

 
総理の語彙力(漢字読めない?)

 ただ、語彙力に問題があるのは学生だけではない。一国の総理たる安倍首相の語彙力にも唖然とするものがある。
 安倍首相が24日の参院本会議での答弁で、漢字を読み間違えていたことが分かった。
 国会でにわかに与野党の論戦になっている「プラカード」を巡る問題。安倍首相が前日の施政方針演説で「国会でプラカードを掲げても何も生まれない」と発言したことに対し、民進党の蓮舫代表が代表質問で抗議。自民党も野党時代にプラカードを掲げていたことを指摘した。これに怒った安倍首相はこう答弁。
 「あくまでも一般論。民進党とは言っていない。思い当たる節がなければ、ただ聞いていればいい。(ひときわ声を張り上げて)『訂正でんでん』というご指摘は全くあたりません」
 訂正でんでん? どうやら安倍首相は、答弁書にあった「云々」という漢字を「でんでん」と読んでしまったようなのだ。おバカ丸出し?――読み間違えだとしても、「訂正でんでん」なんて日本語、意味不明。
                (日刊ゲンダイDIGITAL 2017/01/25)

 2019年4月30日、「退位礼正殿の儀」で、安倍晋三首相はおそらく歴史に残る大失言をしてしまった。それが起きたのは「国民代表の辞」のほぼ末尾だ。

「天皇、皇后両陛下には末永くお健やかであらせられますことを願っていません」

 これでは、国民の大多数の願いとは全く逆だ。文書として公表された「国民代表の辞」には当然、「願ってやみません」とある。なぜこんな間違いが起きたのか。動画で確認すると、安倍氏は懐から出した文書を読み上げたのだが、「あられますことを願って」まで進んだところで一瞬口ごもり、その後で「あらせられますことを願っていません」と発言していることがわかる。「願ってやまない」の「やむ」は「已む」と書く。「己」や、十二支の「巳」と紛らわしい字ではある。安倍氏が手にした原稿では教養のある官僚が漢字で書いていたため、なんと読むかためらって、「願っていません」と言ってしまったのではないかとも思われる。 
                        (AERAdot.メルマガ2019/5)

総理の教養と不思議な夫婦

 安倍総理はある雑誌で「ポツダム宣言というのは、アメリカが原子爆弾を2発も落として日本に大変な惨状を与えたあと、『どうだ』とばかり叩き付けたものです。」と言っていた。ポツダム宣言が届いた後に原爆が落とされたのは義務教育で習うことだ。
 発想も軽い。460億円もかけて小さなアベノマスクを配布。生活に困窮する国民が多い中、「家にいる」ことを星野源の歌を聞いてコーヒーを飲みくつろぐ姿をSNSで見せているが、国のトップなら「今の事態に必死で対応しろ」という思いで、呆れている人が多い。
 安倍総理は小学校からエスカレーターで成蹊大学を卒業しているが、偏差値59の大学だ。家庭教師つけても、この大学にしか入れなかったのだ。父親は外務大臣などを歴任した安倍晋太郎。母方の祖父は元総理大臣の岸信介。大叔父は元総理大臣の佐藤栄作。弟の岸信夫も国会議員。超名門の政治家一族だが、自民党の政治家は世襲議員が4割を占める。ほかの国では米国のケネディ家やブッシュ家を除けば、北朝鮮以外、世襲議員はほとんどいない。

 森永製菓の創業家の娘の昭恵夫人も学歴は低い。「2006年からの安倍第一次政権時代、夫人の経歴を『聖心女子専門学校卒』と書いたメディアに、官邸スタッフが、『経歴から“専門学校”を外してほしい』と言った。聖心女子学院で、4年制の大学に進まないのはわずか1割以下。昭恵夫人は、学歴コンプレックスを感じていたのだろう。ネット上に掲載のインタビューで「私は短大を卒業したあと~」と言っているが、聖心女子学院に短大はない。本当は聖心女子専門学校卒業なのに、なぜか短大と吹聴して回っている様子。
 森友問題以来、さんざん問題行動を繰り返してきた昭恵夫人だが、東京で行動自粛が叫ばれる中、昭恵氏が3月下旬に都内のレストランで「花見宴会」に参加し、親しい有名芸能人ら10人以上の仲間との集合写真が3月26日ネットに公開された。27日の参院予算委員会では、この花見の件が質されたのに対し、安倍首相は「都内のプライベートなスペース、レストランで会合を持った際に記念撮影を行ったものだ」と昭恵氏の会食参加は認めたうえで、「都が自粛を求めている公園での花見というような宴会という事実はない」と反論。「レストランなら問題ないのか。ファーストレディの行動として適切なのか」と追及されたが、安倍首相は「レストランに行ってはいけないのか。(シチュエーションなどを踏まえ)正確に発言してほしい」などと口をとがらせて言い返し、委員会室も騒然となった。
 安倍晋三首相が、「現状は依然として警戒を緩めることはできません」新型コロナウイルスから「自らの身を守る行動を」と警戒を呼びかけた翌日、昭恵夫人が大分に旅行し、約50人の団体とともに大分県宇佐市の「宇佐神宮」に参拝していた。昭恵夫人は、同行者に「コロナで予定が全部なくなっちゃったので、どこかへ行こうと思っていたんです」と語っていたという。 3月15日、ほとんどの人がマスクをつけていない団体が宇佐神宮境内を歩いていた。先頭に立っていたのはノーマスクの昭恵夫人。
              (「週刊文春」 2020年4月23日号より抜粋編集)

 語彙力の問題は、スマホ世代など世代の違いだけでなく、個人の教養の違いだ。不思議ちゃんの昭恵夫人の弁護を繰り返し、官僚の人事権を強大化し忖度答弁や文書改ざんを強いて役人の自殺を招いても全く反省のない総理が朝令暮改する中で、コロナの逆境に直面するのは国民としても苛立たしい思いがある。

国民に要請する前に政府がすべきこと
 
 緊急事態の宣言も遅すぎるが、人の移動と接触の自粛の要請以外に、政府がやれることは幾つもあった。遊興店や居酒屋を含む全国の中小企業に3か月休業補償しても10兆円で済む。早期に3密を減らせたのだ。1月段階で数百~数千億円拠出して多くの企業にマスクや医師、看護師の防御服の生産を促すことができた。ごく限られた検査機器しかない国の研究機関に核酸増幅法PCR検査を限定し、数百倍の検査能力を持つ民間の専門検査機関に検査させない厚生省を指導せず、しかもほとんど素人の集団に過ぎない保健所に37.5度以上4日間など条件を付けて、なかなか検査させない。検体採取が決まっても2~4日ほどかかる。検体の検査機関への持ち込みまで保健所員にさせている。こうした異常な態勢を改め、韓国で50数万人に実施し、鳥取、新潟でも始まったドライブスルーでの検体採取を全国で実行したらいい。やっと簡便に短時間で結果の出る検査キットやワクチンや治療薬も開発中だが、その認可までに長期にわたる従来の手続きを厚生省に省略させる政治指導が必要だ。


 


[1] 
  OECDの国際学習到達度調査(PISA):15歳を対象に義務教育で学んだ知識や技能を実生活で活用する力を評価するテスト。出題は「読解力」「数学的応用力」「科学的応用力」の3分野。OECDに加盟する国以外に、地域単位でも参加している。2000年から3年ごとに実施され、今回は読解力を重点的に調査した。15年からは実施形式を筆記からコンピューター使用に移行した。
 

成田一(なりた はじめ)
大阪大学大学院言語文化研究科名誉教授。英日対照構造論・機械翻訳・言語教育/習得論専攻。大阪大学功績賞受賞。
著書『パソコン翻訳の世界』(講談社現代新書)、『日本人に相応しい英語教育』(松柏社)、編著『こうすれば使える機械翻訳』(バベルプレス)、『英語リフレッシュ講座』(大阪大学出版会)、共著『名詞』「現代の英文法6」(研究社)、『ことばは生きている』(人文書院)、『日本語の名詞修飾表現』(くろしお出版)、『翻訳辞典2002』(アルク)、『私のおすすめパソコンソフト』(岩波書店)、『英語教育徹底リフレッシュ』(開拓社)、『21世紀英語研究の諸相―言語と文化からの視点―』(開拓者)他。英文テキスト編注解説、論文・新聞(読売、朝日、日経など)・雑誌記事(『SPA!』(責任編著)、『週刊現代』、『英語教育』、『新英語教育』、『Professional English』、『The Professional Translator』、『Cat(cross and talk)』他)多数。英語教育総合学会会長。