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すごい人工知能、しかし幼児に及ばない

2017/06/07

ビッグデータアナリストからみた人工知能

第1回 すごい人工知能、しかし幼児に及ばない

株式会社エフ・エム・アイ代表取締役:緒方維文


人工知能(AI:
Artificial Intelligenceが目覚ましく発展しており、マスコミも毎日のように報道しています。人工知能は、幅広い産業活動や私たちの生活など多くの場面で役立つようになり、人間の能力を凌駕する場面も出現しました。

 ほんの一部に過ぎませんが、人工知能の事例をいくつかあげてみましょう。

 ・AIがクイズ番組で人間に勝利した。(注1)

 ・AIが有名私学の入試合格ラインに達した。(注2)

 ・AIが小説を書いて1次選考通過した。(注3)

 ・AIが人間と音声会話できるAI音声アシスタントが現れた。(注4)

 ・AI翻訳・通訳が使われ始めた。(注5)

 ・AIが盤上ゲームで人間を凌駕した。(注6)

 このように人工知能は、目を見張る発展をとげ、その進化スピードを一段と加速しています。

 現在の人工知能は、人間の知的能力の一部分に過ぎませんが、人間の知性を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎える時期がやがて来ると主張する学者もいます。その時期がいつかはさておき、一部の能力とは言え人工知能が私たちの仕事に対して、大なり小なり影響を及ぼすであろうことを考慮すべきではないでしょうか。

 「人工知能やロボット等によって代替可能性が高い労働力人口の割合が日本で49%(米国47%、英国35%)を占める」としたショッキングな研究報告もあります。(注7)

 私は、ビッグデータを分析して、実情の把握、因果関係の解明、予測モデル開発やシミュレーション予測などを行いつつ、企業や組織の効果的・効率的な行動の意思決定をサポートする立場にいます。

 人工知能は、私の守備範囲と非常に相性が良く、仕事内容に密接に影響することが明白です。ちなみに「コンピュータを使ったデータの収集・加工・分析」という仕事は、「1020年後になくなる仕事」の上位4番目にリストアップされています。(注8)

 かかる次第で「人工知能が私にどのように関連し影響するのか」といった問題意識で私なりに人工知能を研究しています。その私見を本号から6回にわたって特集連載させていただきます。

 上記のAIが書いた小説の一部をみますと、「その日は、雲が垂れ込めた、どんよりした日だった。部屋の中は、いつものように最適な温度と湿度。洋子さんは、だらしない格好でカウチに座り、くだらないゲームで時間をつぶしている。」(注9)とまるで著作者が書いたと錯覚する出来栄えに私は感心しました。

また、AIの東ロボ君が有名私大の入試合格80%以上の判定を得たことにも感心しました。

ところが、3歳目前の孫娘に私は教えられたのです。

 それは本年3月の息子家庭での出来事でした。可愛い孫娘のひな祭りを祝い、居間で寛いでいる時でした。息子の嫁が「○○を持ってくる」といって隣の部屋に行きました。しばらく探している様子に息子が「○○は△△にあると思うよ」と声をかけました。しかし嫁からの返事がありません。居間のテーブルで遊んでいた孫娘が「ママに聞こえてないんじゃないの?」と言ったのです。

 お分かりと思いますが、3歳目前の孫娘が両親の会話の文脈を読み取ったのです。

 これに私は驚きました。現在の人工知能の能力では「文脈を読み取ることができない」と聞きます。多くの研究者や開発専門家が偉大な英知と多大な時間と予算を費やし、膨大なデータを駆使して作り上げた人工知能の言語処理能力は、未だ発言内容に理解できない部分を残し会話力不十分である3歳目前の幼児の言語処理能力に劣るのか、と気づかされた瞬間でした。

 では、人工知能の言語処理能力が3歳目前の幼児になぜ劣るのか、次回(722日号)で述べます。

(注1)2011年、IBM「ワトソン」が米国クイズ番組でクイズ王に勝利。

(注2)2016年、「東ロボ君」(プロジェクトリーダー:国立情報学研究所新井紀子教授)がMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政の5大学)や関関同立(関西・関西学院・同志社・立命館の4大学)のくつかの学部・学科で合格80%以上のA判定のテスト結果を得る。

(注3)20163月、AIが書いた小説が星新一賞の1次選考通過。(プロジェクト統括:公立はこだて未来大学松原仁教授)

(注4)2014年、AmazonAIAlexa(アレクサ)」を利用した「Amazon Echo」、話しかけるだけで、今日の天気や交通渋滞を教えてくれたり、音楽をかけてくれたり、質問に回答してくれたり、レストランを探してくれたりする。(ディスプレイがない)

20165月、「Google Home」、話しかけた内容を認識して、音楽再生したり、ネット検索したり、テレビや部屋の照明、冷暖房などのコントロールも可能。(ディスプレイがない)

(注5)PCの「Google翻訳」やスマホアプリの「Google翻訳」を使う人が増えだした。音声翻訳システム「ボイストラ」(情報通信研究機構:略称NICTが開発)を基盤とした、AI同時通訳機「メガホンヤク」(パナソニック)、AI同時通訳医療用システム(富士通)、AI音声翻訳無料アプリ「VoiceTra」(NICT)などが使われ始めた。

(注6)1997年、IBM「ディープ・ブルー」がチェス世界チャンピオンに勝利。

    2013年、将棋ソフトがプロ棋士に初勝利。

    20163月、Google「アルファ碁」が世界のトッププロ棋士に勝利
                                                                                                         (
4敗)。

    20175月、Google「アルファ碁」が世界最強棋士に完勝(3連勝)。

(注7)2015年、野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究

(注8)松尾豊「人工知能は人間を超えるか」角川選書 20153

(注9)NHK NEWS WEB2016.3.21より