大きくする 標準 小さくする

寄稿文 ― 堀口潤子

2016/05/25

寄稿文
 『プレイン ジャパニーズのすすめ 』 よくわかるビジネス文で差をつけよう を読んで

堀口潤子

 私は文芸翻訳を学んでいるが 、ビジネスの場におけるプレインな日本語 表現法を学ぶことは、自分が今まで親しんできた従来の日本語を、客観的に認識する重要な機会になった。またこの表現法の違いが、翻訳作業を悩ますことの一つであることにも改めて気づかされる。ここで学ぶことは、まさに物事を論理的に考え、表現する文化、アメリカ で暮らす中で、話し言葉、書き言葉において応用出来る実用的なテクニックでもある。

 この講義から、ビジネスの場に限らず、アメリカの日常生活において、 いつもぶつかる両者の間の 表現法の違いが、日本国内でも、経済の高度成長によって人々が多忙になり、企業の国際化が 進む中で、同じ問題に直面し、プレインジャパニーズの必要性が高まってきていることを 知り驚いた。

 それにしても日本語の表現が、ヨーロッパや米国に比べてあいまいなのは、狭く密集した環境で、より人間関係を配慮しなければいけない生活の中で、発達してきたことが分かり、このような背景を知ることができたことは、自分の表現法を理解する上で 助けになった。  

 では具体的に二つの 表現法の違いによって、どのようなことが 日常問題になるかというと、従来の日本語表現法に慣れている私は、英語での話し言葉,書き言葉, 両方において、 自分の率直な意見を直接言葉にして伝えることが苦手である。特にネガティブなことを伝えるときは尚更である。その結果、自分の意志が相手に正確に伝わらず、誤解を受けたり、自分が不利な立場になったり、話がスムーズに展開しなくなる。しかし、第2講の率直に書いても丁重さは伝わるの講義で、率直な事柄であっても、相手方の立場に立ち、丁寧な言葉を使って事実を指摘することによって、丁重さを伝えることは可能であることを具体的に学べたことは大きい。 

 また、結論や尋ねたいことなどを、 話の 最後にもっていく習慣も抜けきれない。そういう時は私のあいまいな表現に相手が混乱し、決まって 「あなたの結論は結局Yes or No?」と何度も聞き返きかえされてしまう。これと関連して、私自身がアメリカにきて、はじめてコミュニティーカレッジで学んだとき、 日本と比べて大きな違いを感じたことの一つは、リポートの書き方であった。こちらでは、まず結論を書いて、そのあとその理由を順序立てて並べていくというものであり、結論を最後に持っていく日本の学校で学んできた 方法と 違うので、慣れるのに時間がかかった。しかしいくつもアメリカ式のリポートを書いていく内に、書き手の自分も何を言いたいのかよく分かり、文章がオーガナイズされ、分かりやすく、論理立てて考えることにとても役立つことを経験した。その後はカレッジの課題以外でも、多国籍の人々と暮らす日常の様々な場面で必要になってくるライティングにも、その方法を意識しながら書いている。

 第9講の本当に言いたいことは?の講義では 具体的な文章を書くためのポイントが、いくつか示されてあるが 、これも英語でのコミュニケーションに 応用できる。その一つに、抽象的な表現を避けるために、文章の中に形容詞や副詞などの単語を使う変わりに、具体的な数字を使うことが指摘されている。それは読み手が頭の中により具体的なイメージを描く効果につながる、というのには納得がいく。

 最後の講義で、自分の意見と事実を分けて書くことの大切さについて述べてある。例えば、最近、日常会話の中で、アメリカ人のパートナーに「今子どもたちが食べているこのスナックには、化学調味料の(MSGグルタミン酸ナトリウム)が入っていると思うよ。」と指摘したが、それだけでは信じられない様子で私の言ったことを疑っていた。それは、 ここで言われているように私の意見なのか、事実なのかはっきり伝わらなかったからであろう。パートナーはスナックの袋をみせてほしいと私に頼み、スナックの外袋に表示してある原材料を調べ、そこにMSGが明記されていることを確認してはじめて納得してくれた。この場合、最初に「このスナックには、この袋に書いてある通りMSGが入っているよ。」というように断定的に話すべきだったのであろう。

 第10講全ての講義を通して、自分の中に培かわれてきた表現法をより深く知ることができた。またビジネスなどの世界や、異文化社会の中で、自分の 表現の何処を意識して、どのように変えていったらいいのか具体的なノウハウを学べた。 場所や状況に応じて、より相手に届く 表現ができるように、学んだことをしっかり身につけ、日本語表現の幅を広げていきたいと思う。それは また、他分野 での翻訳のニーズに対応する機会に生かされていくはずである。

 


堀口潤子
2016年春、バベル翻訳大学院入学。 
文芸翻訳専攻。
アメリカ、ハワイ在住。子育てと勉強の両立に挑戦中。