大きくする 標準 小さくする

寄稿文 ― 増田 眞千子

2016/05/25

寄稿文
 <プレインジャパニーズの勧め>を読んで

増田 眞千子

  Plan Written English と出会ったのは1997年頃でした。次の年に受験したBPL検定のプレイン・ビジネスライティング分野で2級認定をされ、とても嬉しかったことを思い出します。副学長が「バベルではこの Plain English 教育を始めて20余年、世界標準の英語として採用しています」(The Professional Translator 4月11日号)と書いておいでですが、バベルのPlain Written English 教育が始まったのと同時期の受験でしたので、いま思うことは、Plain English教育が加速をつけて定着したように感じています。
 
 石田佳治先生の原稿の各講のトピックスに沿って、筆者の立場から長期ベースで掌握しておく必要があるところを検証してみます。石田先生の原稿を多く使用させてもらっています。文尾に(石田佳治)と記載。筆者は(増田)と記載。
 
(第1講は general matter ですので省略)
 
(第2講 率直に書いても丁寧さは伝わる)
どんなとき丁重な表現が必要か
まず、ビジネス文書は、大きく3つに分けられる。
  1. リーガル・ライティング
契約書、規則書、議事録などを中心としたリーガル・ドキュメント。
  1. 科学レポート、技術文書、商品取扱説明書などのテクニカル・ライティング
  2. 社内外との意思疎通、連絡のためのビジネス・ライティング
 リーガル・ライティングとテクニカル・ライティングでは正確さ、首尾一貫性、読みやすさなどが重要視される(石田佳治)。
 
 筆者の専攻は、1と2なので、いまジャパニーズライティングについて、長期ベースの学習のため必修事項をまとめておける絶好のタイミングです(増田)。
 
 「あいまいと丁重は別のもの」 
現在のビジネス社会では、丁重にではあるけれど、具体的、直接的意思表示をすることが現代のスタンダードになっています。丁重表現は、一度に書くことが難しくても、まず自分が書こうとする文章を書いてしまい、それを正しいと思う日本語になるまで何度でも更に翻訳すればよいと思います。(増田)
この場合、主語を「相手方の立場で書く」のが丁重表現であることを忘れてはいけません(石田佳治)。
 
 「事実を指摘すること」「丁重ではあるが短い表現」にすることを体得しなければならない(文末の表現を短くすることがコツ)(石田佳治)。
 

(第3講 読みやすさとわかりやすさ)
 「短く、そして的・性・化は避けて」
読みやすい文章を書くための第一の注意点は、「短文」を心がけること。第二の注意点は、できるだけやさしい語を使うこと(石田佳治)。

 この二点を筆者は意識して守っています。「~的」「~性」「~化」この3点については、一つの単語として成り立っていて外せないもの、例えば「同化」「みえる化」などは別として、極力使うまいと決めています。句読点、かっこ、段落、見出し、註は、英訳した時に不自然になっていないか自分で試してみると分かり易いとおもいます(増田)。

 「親切に、ストレートに
これは、主語や目的語の欠陥(欠落)を見過ごさないようにすることですね(増田)。文レベルでは、具体的に率直に書くことに心がけること(石田佳治)。

 「~に関しては」をなるべく使わないようにと思っていますが、意志に反し、契約書、規則書、特許では、使用頻度が多く、パターン化されているものが多く、分かっていながら使わざるを得ないときがあります。
例を一つ上げますと、”shall”は、「~ するものとする」または「~ することとする」と訳しますが、ある参考書に「すること」と書いてあり、それに従って書いたところ、ダメ出しをもらいました。
言葉はどんどん変わって行きます。気になることがあれば、まず自分でチェックすることが肝要(増田)。

 リーダビリティ(読み易さ)とアンダースタンダビリティ(解り易さ) 
読み易くしてもアンダースタンダビリティが欠如しているようではいけない。

(石田佳治)この二つの言葉は、一対として考えるべきものですね。
筆者は自己陶酔タイプであるため、読み手として文を読み返し修正する努力をしています。「アンダースタンダブルな文を書くための秘訣の一つ「具体的」な文を書くこと」は当然の処置であると思います。このトピックで、いわゆる陳腐な表現として5つの例が記載されていますが(参照:P. 079)、新聞の記事でも未だにみかけるフレーズです。読者に伝染しますからで責任問題です。「へりくだり」を示す表現も極力避けること。「~ 思われる」「~ 考えられる」などはバツです。(増田)

 ここにはもう一つ、大事な事柄が書いてあります。「書き手は事実と意見をはっきり分け、事実については「○○だ」「○○である」と断定的に述べ、意見にわたる部分については、「と思う」「と考える」と能動文で書くようにする(石田佳治)。この事柄は、すでに理解していて当然のはずです(増田)。
 

(第4講 簡潔さと詳細さ)
ビジネスでは簡潔な文が求められるが、詳細な文を書かなければならないこともある。

「項目を立て、不必要なことを書かない」
 簡潔な文を書くのは、できるだけ項目を分けて箇条書きにすると、たいへん簡潔になる。項目を立てて書く癖をつける。次に必要なことだけ書くこと(石田佳治)。

「修飾語を刈り込む」
 Plain English でも言われていることだが、形容詞や副詞などの修飾語は、本当に必要なものだけ残して、できるだけ少なくすること。「真の意図をたずねる」→真意をたずねる。「結局のところ不採用とする」→不採用とするなど、不要な修飾、語の重複をしないこと(石田佳治)。
 
 ところで、「文章読本」を表題とする文庫本がたくさん出版されていた中で、山岡壮八(ネット検索できないので廃盤だと思います)編集のものを読みました。バベルの前身である雑誌「翻訳の世界」に紹介文が出ていたのかもしれません。とても優れた雑誌でした。その中で、特に、野間宏の文章(20ページ)はバイブルであるという取り上げ方がされていました。文章はあまり記憶に残っていませんが、それよりも衝撃を受けたのは、吉行淳之介の文章の中に見つけた「形容詞の多い文章は、決して後世に残らない」というものでした。筆者は感動して声を発したくらいです(増田)。

 「形容詞の多い文章は、決して後世に残らない」というのは、英語にも当てはまります。実際、形容詞の多い文章は、どこかだらだらしていて、メリハリはないしシャキッとしません。深い考えではないのですが、“, which …”と逐語調にすればひと息つけますし、副詞を使う方が、文章が落ち着きます(増田)。
 
 「詳細と冗長は違う」詳細さは冗長さとは異なる。詳細な文書であっても、一文一文は、簡潔に書かなければならないが、日本人はストレートに又は直接に切り込む論旨展開をするのが苦手である。これに対して、欧米の人々の論旨展開は、まず核心になる結論を冒頭に持ってきて、それからその理由付けをしていき、最後にまた冒頭の結論を別の短い言葉で締めくくる。欧米人の論理はこのように進んでいく。
現在のビジネス文ではまず結論、そして、その理由付けを列挙し、説得的に書く必要がある。現在のビジネス文は、欧米人の論理に従った方法を選択していると言えます(増田注釈:これは石田先生の原稿に少し補足させていただいたものです)。

 アメリカの大学では “Writing” Classを2年間必須科目として取らなければなりません。英語を母国語とする人たちにとっての国語です。筆者も(小)論文 の構文を学びました。これらのプラクティスは、日本語を書く上でとても役に立っていると今でも思っています。というわけで、筆者は、先にPlain English を学びました。いまプレインな日本語表現を学習する準備ができています(増田)。

 Writing〈英作文、Composition作文法を含む〉を2年間の必修科目として単位を取得することがrequirement になっています。当時は、Plan Written Englishということばを授業中に聞いたかもしれないけれど頭に残っていません。しかしながら、構文の学習は楽しかったと見えて、ノートに書き残していました。
5つのパターン:1) Definition; 2) Description; 3) Expression; 4) Comparison; 5) Analogyで文章を書くプラクティスです。

 具体的には、1) 辞書のごとく書く方法、2) 例えば、部品の説明に適用するもの、3) ハウツーの書き方に当たるもの、4) 例えば、データの比較、5) 例えば、チーズと石鹸の類似性を述べる方法です。
私は3) のハウツーの書き方の課題を「豆腐の作り方」にして切り抜けました。現在のようにインターネットが使えない時代で、日本語のクッキング・ブックを持って行ったのが役立ちました(増田)。
 
「一つの文書にたくさんのことを盛り込まない」
 
一つの文書の中に盛り込む事項は一つにすること。一文書一案件は、手紙文でも報告書でも、すべての文書に適用する共通の規則である(石田佳治)。

「文書の目的をはっきりさせ表題を書く」
 
その文章の目的は何なのかをはっきりさせて明記する。表題に添えて「求許可」「報告」「情報」のように書く癖をつける(石田佳治)。
 

(第5講 口頭とマゼコゼの文書にしない)
「正しい日本語を使う(特に助詞)」
 
正しい日本語を書くためには、正しい日本語が話せなければならない。そのためには常日頃から正しい日本語を使うようにすることが大切である。
 助詞を正しく使うことが、キーになる。「は」と「が」を意識して使っているか。

 「従業員は、事業所内では制服を着用しなければならない」「会社は、従業員が着用するための制服を支給する」の例が示すように、「は」は文の主格を示すのに使い、「が」は文中の節の動作の主体を示すために使う。一つの文の中で二重三重の文節があるときには、しばしば忘れがちになるので気を付けること(石田佳治)。

 助詞「に」と「へ」の使い分けは意識しているか。「ニューヨークに行ってきたよ」と「ニューヨークへ部下を派遣したよ」の例に見られるように、「に」と「へ」には発話者の主体が到達したか、それとも単なる方向を話すかの違いがある。

 「から」と「より」を混用していないだろうか。「から」は、「自動車の中から転げ落ちた」の例文が示すように起点を示してそこからの動きを示す。「より」は、「営業1課より営業2課の方が、売上が大きい」の例文が示すように比較を表す場合に使う。決して「前方より列車が接近して来ます」のように「より」と「から」を混同しないこと。

 「の」は使いやすい助詞だが、あいまいになりやすい助詞である。「私の好きな人」(私の愛する人)、「それは私の絵です」(私を書いた絵)(私の所有する絵)、の例のように複数の解釈が生じやすい助詞である。「の」はなるべく使わず「についての」や「が所有する」などに書き直す方がより鋭角になる。その他「から」「ので」「ため」などがあるが、プレインジャパニーズの見地からはどれかひとつに決めて使うのがよい。原因・理由を示す助詞としては「ので」が一番正確。「ため」は目的を示すのに限って使うようにする(石田佳治)。

 一定の型を決めて使うのがプレインジャパニーズの秘訣のようです。筆者にとって助詞はエアポケットに入っていました。要再学習です(増田)。

 ピーター・バラカンは、イギリス出身で、日本語は日本の大学で教育を受けたジェントルマンです。音楽愛好家であり、レコードやCD のコレクションの趣味の良さに脱帽。 音楽の専門は、ブルース、ソウル、ロック、アフリカ音楽、レゲエ、カントリーなど多方面にわたる。
 TV局の音楽番組で、ライブやスタジオ演奏の解説をしているバラカン氏の日本語は、ほぼ完ぺきです。聞いていて、たまにミスをするのが助詞の使い方である。しかしミスがあっても、前後の文が正しいので、どの助詞と混同したかすぐに分かります。日本人である筆者は、上記の説明のような文法のルールで助詞を理解できるのではなく、単に勘で分かってしまうから不思議です。時間が許すときに分析してみたいです(増田)。
 

(第6講 明快さと正確さ)
「否定形より肯定形を使う」
 これはプレイン・イングリッシュでも、プレインジャパニーズでも、基礎中の基礎だと思っています。「受動態よりも能動態」同様に、プレインジャパニーズでもプレイン・イングリッシュでも、基礎中の基礎だと思っています(増田)。

「法律文はなぜ長くなるのか」
 法律や規制のように、多くの人に対し等しく適用するために、文章にあっては一般よりも「正確さ」が重要になる場合がある。税法などでは、特にこの正確性が重んじられる。そのため、条件を想定したり、範囲を限定したりするので、どうしても一文が長くなる(石田佳治)。

「長い分を書かない秘訣」
 法律文のように読みにくい文を書かない秘訣は、文をできるだけ短くすることです。そして、文を短くするためには文中に複数の事柄を盛りこまず一つの文では一つの事項を記述することが必要となります。また長い修飾句や節は独立させて文とすることも文を短くするのに役立ちます。文を分けて書くようにすると短文で畳みかけるような語調になりリズム感が出ます。主語と述語をできるだけ近づけるようにして短文で書くことを意識すると自然にわかりやすい文が書けるようになります(石田佳治)。
石田先生のこの見解は、ジャパニーズ・ビジネスランゲージの掟と言ってもよいくらい大切な事柄です。


 
増田眞千子  

バベル翻訳大学院 2015年4月期入学 第3専攻(特許・技術・医薬)、
音楽療法の研究
山本周五郎と池波正太郎の大ファン
1日に最低5本の映画をTVで鑑賞