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【特集】日本語をとおして英語をみる 第2回 - 藤澤 慶已

2015/11/10

『日本語をとおして英語をみる』 
第2回 日本の教育の歴史が裏付ける英語がうまく表現できない理由
藤澤 慶已(フジサワ ケイ)

 日本の学校英語は「訳読方式」といって英語を日本語に翻訳して理解するという勉強法を採用しています。
このような勉強方法は、決して間違った英語学習法ではありません。このような英語教育のおかげで、今日に至り日本ほどいろいろな本が翻訳されている国はないと言われています。
 明治維新以降、日本は欧米の技術、文化を取り入れるために、国をあげて大量の翻訳技術者を養成することに取り組んできました。なぜなら、翻訳できる人が増えればそれだけ、海外からの情報を取り入れることが可能になるからです。外国からの情報を、真っ先に日本語に翻訳し、積極的に技術、文化をとりいれていったのです。そのおかげで、日本は短期間で急成長をとげることができたのです。
 開国後の明治37(1904)年 のイギリスの新聞では「日本人は西洋の学問の全てをすべて集めた、そして西洋の成果を応用し組み合わせて使いこなしている。この民族は我々が育んだ複雑な文明をわずか一世代あまりのうちに習得したのだ」と賞賛しています。
 そして、ちょうどこの時代に学校でも英語教育が開始されました。その英語の授業は「英語の習得」よりむしろ一部の能力である翻訳技術の伝達に重きを置かれました。いわゆる「訳読方式」による英語教育です。つまり日本の英語教育では外国人と直接コミュニケーションするようには、授業のカリキュラムが組まれていなかったのです。
 
 現代の日本人の中には、英文は読めても話せない、自分の伝えたいことが上手く伝えられないという方がかなりいらっしゃるのではないでしょうか。英語を話す際に、日本語英語になってしまったり、逐語訳の単語を使うことで、英語表現が堅苦しくなったりします。これらは「訳読方式」の勉強法によるものです。

 今回は、日本語が原因となっておこる英語表現の弱点の中から「ノンネイティブ英語(日本語英語)」、「Raw English」、「オノマトペ」の三つに関してお話していきます。
 
日本人の英語の弱点 その1「ノンネイティブ英語(日本語英語)」
たとえば次の日本語を英語にして下さい。
「風邪をひいた。」
「スキーってとても、おもしろいよね。」
「もうお昼ごはん食べた?」
I caught a cold.
Skiing is very interesting.
Have you eaten lunch?
いかがでしょうか?
実は上の英語はすべて間違っています。

このような日本語を英語で言おうとするときに、すぐに英語が出てこなかったり、間違ってしまうのは、皆さんが頭の中で、日本語から英語に訳していることに原因があるのです。
「風邪を引いた」を英語にする際、訳読方式で、風邪をひく=catch a cold、
「とても面白い」=very interesting, 「食べる」=eat、「昼食」=lunchと訳してしまいます。つまり日本語から英語に直訳することで、ぎこちない英語表現になってしまうのです。

実際ネイティブは
「風邪をひいた。」⇒I have a cold.
「スキーってとても、おもしろいよね。」 ⇒Skiing is a lot of fun.
「もうお昼ご飯食べた?」⇒Have you had lunch?
と表現します。
 
日本人の英語の弱点 その2 Raw English
 よくEnglish Nativeから日本人の話す英語には大げさな単語が使われ過ぎると指摘されます。この原因は、日本語からの直訳語で文章を表現することです。たとえば、「彼と連絡を取る。」という文章の場合、連絡する=contact,だからI will contact him.という表現を使います。この表現は文法的にも、全く問題はありません。しかし、Nativeスピーカーは、日常会話の中では、簡単な英単語の慣用表現を頻繁に使います。contactの代わりにget in touchを使いI will get in touch with you. という表現を使います。こういった簡単な単語のコンビネーションでできたNative speakerが使う表現を私はRaw Englishとよんでいます。
日本人が英語を表現する際、Raw English表現が欠如しているのです。
 
その他のRaw Englishの例では、疑問詞の用例で、たとえば、“That’s what I like about him.”「そこが彼のいいところだ」とか、“That’s why we are here” 「そのためにここに来た」のように典型的な訳語、his good points やreasonが使われません。
He was saying what was really on her mind= 本音=truth
I have something I want to tell you. = 話=talk
 
また日本人が通常、一語の動詞を想定する場面でネイティブはbe動詞を用いることが多くあります。
 
EX.           
She is after me.  「彼女は僕を追いまわしている          
Where are you off to now?  「今どこいくの?」
     I’ll be over right away. 「すぐ行くよ」
      The light is out. 「電気が消えている。」
    The house is on fire. 「家が燃えている」
 
 
英単語の慣用表現の例です。
  1. ask over = invite招く                  
I ask my friends over to my house.
  1. act up=misbehave 行儀が悪い   
He acted up in the party and upset everyone.
  1. back up=support支持する     
I will back up your idea.
  1. bring up=mention話題にする   
We should bring up the subject in the meeting.
  1. call off=cancel 取りやめる    
I have to call that meeting off.
  1. cut in =interfere口出す        
He rudely cut in on my conversation.
  1. figure out=solve解明する      
He had to figure the math problems out.
  1. fill in=substitute代わりを務める 
He had to fill in for the manager yesterday.
  1. get away=escape    逃げる
The man got away in a blue car. その男は青い車に乗って逃げた
  1. get behind =support             支持する
          Many young people refuse to get behind the President.
         多くの若者が大統領を支持することを拒否している。
 
日本人の英語の弱点 その3「オノマトペ」
オノマトペとは、擬音語・擬声語・擬態語の総称です。
音や様子を文字に移し替えたもので、物事の声や音・様子・動作・感情などを簡略的に表し、情景をより感情的に表現させることの出来る手段として用いられます。
 
日本語には特に多く日常生活でもよく使われます。
日本語のオノマトペは3000を超えると言われています。食べ物(食感)に関するオノマトペはゆうに100種類を越え、世界一の数として認定されています
もちもち・とろとろ・しっとり・さくさく・ひやひや・あつあつ・ねばねば・ねとねと・しゃきしゃき…など、反復型のオノマトペが圧倒的な数を占めています。
 
英語には200~300のオノマトペがありますが、
「bumpy」(デコボコ)、「twincle」(キラキラ)など、日本語のように反復型ではありません。英語では反復型のオノマトべは幼児語にしか使われません。(英語 幼児語  wee-wee おしっこする etc)
 
日本語は他の言語に比べて動詞や形容詞が少なく、日本語の一つの動詞は動作の基本な意味しか持たず、副詞を加えることによって表現を増やしていく傾向があります。
そのため、擬音語や擬態語が発達して、動詞や形容詞が少なくても幅広い表現ができるようになりました。
 
たとえば「見る」という語だけでも英語では、see,look,watchなど複数の単語があり、動詞
自体の使い分けによって表現を増やす傾向があります。それに対し日本語は、「ジロジロ見る」「さっと見る」など、副詞を使って表現の幅を広げています。
 
じっと見る      Gaze
 
私は、彼女をじっと見つめた。そしてわかった。「彼女こそ私の求める女の人だ」
I  gazed  at her and I knew she is the one..
 
じろじろ見る    Stare
 
人をじろじろ見てはいけません。失礼ですよ。
You shouldn't  stare  at people. It is rude.
 
チラッと見る    Glimpse(偶然視界をかすめる)チラッと見るというようなニュアンス)
 
タクシーに乗るときチラッと見ただけなんだけど、絶対、キャメロン ディアスだよ。
I only glimpsed him as he got into the taxi. but I'm sure he was Cameron Dias
チラッと見る    Glance(時間の短さ)に焦点
彼女のテスト用紙をちらった見ただけなのに、不幸にも先生に見つかってしまった・
I only glanced at her test paper, but unfortunately the teacher caught me.
 
日本語のオノマトペの歴史は古く、平安時代の「今昔物語集」に出てくる擬音語・擬態語の
うち53%が1000年経った現在もほぼ同じ意味で使われています。
「ガサガサ」「カラカラ」「キラキラ」「コソコソ」など、数多い日本語のオノマトペですが、辞書に載っている単語はごくわずかです。これは新しいオノマトペがどんどん作られると同時に、古いオノマトペもどんどん消えていくからるからと考えられます。
日本語の日常生活では、オノマトペがあふれています。私たちが自分の言いたいことをうまく伝えるためには、オノマトペを基準に表現をマスターすることも必要になります。
 
 
英語をコミュニケーションの手段として自由に使いこなし表現できる人とできない人の違いは,頭の中に持っている表現の数の違いです。英語らしい表現が頭の中にあれば,即座に意味を理解でき,英語が聞けるだけでなく話せるようにもなるのです。
 
皆さんがいろいろな表現を覚える際、日本語からくる弱点である「ノンネイティブ英語(日本語英語)」、「Raw English表現」、「オノマトペ」等を意識して学習することです。皆さんの英語表現力が向上することを切に願っています。     

 
藤澤 慶已(フジサ ワケイ)
南ミシシッピー州立大学音楽博士号取得
(University of Southern Mississippi, Doctor of Musical Art in Piano Pedagogy)、
およびテネシー州立大学ノックスビル校言語学博士号取得
(University Of Tennessee, Knoxville, Ph.D. in Comparative Linguistics & Phonology)。

比較言語学、音声学の観点から 日本人が実用的に英語で「聞く、話す、読む、書く」コツをつかむための勉強法  FSTMを開発。


 著書:オドロキモモノキ英語発音-子音がキマればうまくいく(ジャパンタイムズ)
        藤澤博士の英語セラピー(マクミランランゲージハウス)
          すぐに話せるしゃべれる1行英作文(あさ出版)
        子音に慣れればクリアに聞こえる!英語高速リスニングシリーズ(DHC)他