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【特集】日本語をとおして英語をみる 第1回 - 藤澤 慶已

2015/10/10

『日本語をとおして英語をみる』 
第1回 新しい英語学習法の提案
藤澤 慶已(フジサワ ケイ)

一般的に外国語を勉強する場合、その言語が習得する際に妨げになっているのは、自分の母国語です。
日本語ネイティブの学習者が英語を勉強する際、妨げになっているのは、日本語です。
英語が聞きづらい、話しづらい、読みづらい、書きずらい理由は母国語である日本語が原因です。
ですから、日本語と英語の言語の違いを知って、英語に取り組むことは、言語習得の近道になります。
今回は「日本語と英語の音声の違い」「日本語と英語の表現の違い」二つの観点からお話をさせていただきます。
 
「日本語と英語の音声の違い」
リスニング上達法について、かなりの数の教材や、書籍で紹介されています。このような多くのリスニング上達法で説かれている方法の中で代表的なものが「たくさん聞いて慣れること」です。 確かに、たくさん聞いて慣れることは、大切なことです。しかし、それを自然に行える最も有効な時期は、子供の頃です。なぜなら人間の耳は子供の頃に覚えた音を決して忘れないからです。
ほとんどの日本人がそうであるように、子供の頃に英語をまったく聞くこともなく、中学校から英語の勉強を始めたのであれば、英語が聞き取れない理由を、理論的に理解、整理し、そのうえで英語に慣れるということが必要となります。これが、リスニング上達のコツです。
 
英語が聞こえない理由
日本語ネイティブにとって英語が聞こえない原因は、母国語が原因です。
つまり日本人が英語を聞きとれない理由は、「日本語」にあるのです。
従って、英語を短期間で上達するためには、まず、英語と日本語の違いを理解することが必要です。
 
「日本語と英語の音声的な違い」
さて、皆さんが英語圏に長期間滞在したり、リスニング教材等を使って英語を浴びるように聞くとどうして英語が聞けるようになるのでしょう?
流暢に話される日本語と英語の音を比較した際、いちばんの音声的な違いは母音と子音の比率です。日本語の場合、母音と子音の比率は約6対4ですが、英語ではその比率が約2対8となってしまいます。つまり、英語の母音と子音の比率は日本語のそれとは正反対であり、この母音と子音の比率の違いが,英語の音が聞きとれない原因でもあるのです。 
 
たとえば、
What time is it now?
というセンテンスで考えてみましょう。このセンテンスをネイティブが言うと「掘ったイモいじるな!」に聞こえるという笑い話がありました。 
実は、これが流暢な英語の音なのです。
 
英語の音に慣れていない日本人にとって、penという単語を文房具の「ペン」だと認識するためには、母音の「エ」という音がはっきりしないと、「ペン」だと認識することが困難なのです。実際に流暢な英語の場合、penの“e”の音は弱く響いて“pn”(子音)が強く響いてきます。こういった理由でpenを“pin”と混同してしまうということが起こってきます。
 
また、troubleとtravelという2つの単語は,ネイティブスピーカーがふつうに話すと,それを聞き分けるのは日本人にはとても難しいはずです。それは,日本人がこの2つの単語を母音で識別しているからです。
 特に初心者の場合は,英語を話す際に母音が多くなる傾向がありますが,頭の中で次のように発音しているはずです。


              母音   子音
trouble → tおrあbうlう →  おあうう →   trbl
travel →   tおrあvえlう →  おあえう →   trvl

 上記のように,違いは母音「う」と「え」です。ところが,実際のネイティブの発音では,こうした母音は聞こえてきません。彼らは子音のbとvの違いで識別するのですが,これは日本人にとってはほとんど変わらない音ですから,この2つの単語を混同してしまうのです。
 
英語の音”に慣れるというのは“英語の弱い母音と強い子音に慣れる”、ということです。皆さんは決して耳が悪いわけではありません。聞かなければいけない音の意識が違っているだけなのです。
What time is it now? の場合、英語に慣れていない
人が期待してしまう音は、
What time             is         it           now?
 たあい  なあう
というように、太字になっている母音の部分が強調された音ですが、実際にネイティブの英語で強く響いてくる音は、子音なのです。
What time is it now? 
掘ったイモいじるな → 子音が強調された結果、このように聞こえてくるのです。
 
英語のネイティブスピーカーが言った言葉を聞いて、そのまま日本語として取り込んでしまった例もあります。ラムネや、メリケン粉などのメリケンも、実は昔の日本人が英語の単語を耳から聞いて日本語に取り込んだのです。
Lemonade(レモネード)→ Lemonade→ lmnd → lmn → ラムネ
American(アメリカン) →    American → mrcn  → メリケン
といったように、子音が強調された音を聞こえたままに取り込んでしまったのです。
 
その他、みなさんがよく韓国語だと勘違いしている焼き肉の「ハツ」「タン」も,英語のhrts→hearts(心臓), tng→ tongue(舌)のことであり、また,「ワイシャツ」もwhtshrts→white shirts(ホワイトシャツ)のことだったのです。
 
子音が強調され母音が弱くなることで起こる流暢な波(調子)
子音が強調され母音の弱い英語には流暢な響きが生まれます。これは一般的には「波」、「音のつながり」、「くっついて聞こえる音」と呼ばれており、日本人ネイティブ(特に慣れていない人)が違和感をおぼえるものです。
ところがこの、「流暢な調子」の正体がわかると英語がより聞きやすくなります。
 
 
「流暢な調子」には、5つのパターンがあります。
 
流暢な調子 パターン1 単語のつながり 
Train (とれいん)→Train→Trn
母音の比率の多い日本人の場合、Trainの音の印象は
Tおrえいnと母音が伸びるので、単語が長くなります。実際には、流暢な英語の場合Trnと子音が強調されるので、一音節で響いてきます。
これが初歩的な英語が聞こえない理由です。
熟語の場合も一音節で響いてきます。
This train (ディス トレイン)→This train→Thstrn
 
流暢な調子 パターン2 “主語と動詞”
母音の比率の大きい日本人の英語は主語+動詞、たとえば、She runs.の印象はSheとrunsが離れてしまい、(シー ランズ)と二つの音節になってしまいますが、子音が強調される英語ネイティブの場合は、
She runs→she runs→shrns(シランズ)
と一音節で響いてきます。
これが流暢な英語を聞いて、主語+動詞が聞きとれない
場合、単語だけしか聞こえてこない理由です。
 
その他の例:
They complain.'ゼイ コンプレイン)
  →They complain→Thycompln(ゼコンプレン)
Should we leave?(シュッド ウイー リーブ?)
  →Should we leave?→Shldwlv(シュドゥウィリブ)
 
流暢な調子 パターン3  前置詞+単語 
母音の比率の大きい日本人の英語は、前置詞を単独で意識します。しかし子音が強調されるネイティブの英語の場合、前置詞は後ろの単語につながり一音節で響いてきます。たとえば、in the boxの印象はinとthe boxが離れてしまい(イン ザボックス)と二つの音節になってしまいますが、子音が強調される英語ネイティブの場合は、in the box
    →ithe box→nthbx(ンザボックス)と一音節で響いてきます。
その他の例:
for you (フォー ユー)   →for you→fry(フユ)
 
流暢な調子4 母音のリエゾン(母音は前に付く)
英語に慣れていない日本人は、母音の前で音を切り返す癖があります。流暢な英語は母音が前に付き、加えて子音が強調されるので、違和感があり、聞きづらい音になります。たとえば
 
He is arriving,(ヒーイズ アライヴィング)
 →Heisa rriving(ヒーイザ/ライビング)
→Hs rrvng
She was impressed. (シーワズ インプレッスド)
 →shewasim pressed→shwsm prssd
(シワズィン/プレスドゥ)
 
流暢な調子5 子音のリエゾン (子音は後に付く)
英語に慣れていない日本人は、子音の後ろで音を切り返す癖があります。特にtとdは後ろに付くと響きが変わります。加えて子音が強調されるので、違和感があり、とても聞きづらい音になります。このパターンは要注意です。
Red roses(レッド ローズイズ)
→re  droses →r drss
      (レ/ドロズィズ)
ort and flat (ショート アンド フラット)
→ Shor  tan dflat →shr  tn dflt
       (ショ/タン/ドゥフラット)
He can't go (ヒー キャント ゴー)
→He can  tgo →hcn tg
      (ヒカン/トゥゴ)
 
 
英語ネイティブのように「強調された子音と抑えられた母音」を意識して発音する練習こそが、英語を聞くための近道です。発音練習は、自分の発音がよくするだけにとどまらず、リスニング練習にもなります。 日本で英語を学習している以上、まわりから英語を聞くことはむつかしいことです。ですが自分でネイティブらしくきれいに英語を発音する声(肉声という音の波)は頭蓋骨でひびきわたり聴覚にとどきます。つまり自分がネイティブのように発音できれば英語をたくさん聞くことになるのです。


 
藤澤 慶已(フジサ ワケイ)
南ミシシッピー州立大学音楽博士号取得
(University of Southern Mississippi, Doctor of Musical Art in Piano Pedagogy)、
およびテネシー州立大学ノックスビル校言語学博士号取得
(University Of Tennessee, Knoxville, Ph.D. in Comparative Linguistics & Phonology)。

比較言語学、音声学の観点から 日本人が実用的に英語で「聞く、話す、読む、書く」コツをつかむための勉強法  FSTMを開発。


 著書:オドロキモモノキ英語発音-子音がキマればうまくいく(ジャパンタイムズ)
        藤澤博士の英語セラピー(マクミランランゲージハウス)
          すぐに話せるしゃべれる1行英作文(あさ出版)
        子音に慣れればクリアに聞こえる!英語高速リスニングシリーズ(DHC)他