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【ブログ】翻訳テクノロジーあれこれ by 小室誠一

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DeepL翻訳が日本語対応になった ― 翻訳英文法もびっくり

投稿日時:2020/03/27(金) 16:53

DeepLは、ドイツのケルンで開発され、2017年8月公開された機械翻訳システムです。その前身は2009年に設立された訳文検索エンジンLingueeです。
DeepLはこれまでGoogle翻訳など他の機械翻訳と比べても、はるかに高品質だと評判でしたが、残念ながら日本語には対応していませんでした。

嬉しいことに、3月19日にdeepl.comのブログに「DeepL翻訳が日本語と中国語を習得」という記事が投稿されました。
https://www.deepl.com/blog/20200319.html

「今年初めに大幅な改善を加えたDeepLのニューラルネットワークアーキテクチャを使うことで、日本語と中国語でかつてないほど上手く訳文を作れるようになりました」ということで、翻訳システムの名前を伏せた状態で翻訳者に示して、評価した結果が掲載されています。
 

体系のまったく異なる言語間での翻訳を機械に学習させる方法を、何百万という翻訳済みテキスト、巧みな数学的計算、そして日本語と中国語の社内エキスパートからの貴重な助言を総合することで見つけたとのことです。
そしてDeepLのアルゴリズムは、中国で使用される何千もの漢字、日本語の漢字、ひらがな、カタカナを処理できるようになったと書いてあります。
ここまで、素晴らしいことが書いてあれば試してみたくなりますね。

とりあえず、以下の訳文を見てください。
 
DEAC は、米国教育長官および高等教育認定評議会(CHEA)から、学位取得を目的としないレベルから専門職博士号取得までの遠隔教育を中心としたプログラムを提供する高等教育機関を対象とした機関認定機関として認定されている。

DEAC の目標は、公表されている基準、方針、手続きの遵守を求め、継続的な自己研鑽を促すことで、認定する遠隔教育機関の教育の質の高さを確保することである。


一読したところでは、人間が訳したものと間違えそうです。

DeepLはオンラインでWebブラウザから利用できますが、ソフトウエアをダウンロードすれば、デスクトップで利用できます(もちろんインターネット接続は必要です)。
https://www.deepl.com/app
Mac用もあります!
 
WordやPowerPointなど、どのソフトウエアでもテキストがコピーできれば大丈夫です。
訳したい文章を選択して、Ctrlキーを押したままCキーを2回押します。



たとえば、上図のようにWebページをブラウザで表示しておいて、翻訳したい部分を範囲指定します。
ここで、Ctrlキーを押したままCキーを2回押します。

すると、選択した原文がDeepLにペーストされて起動し、すぐに訳文が出力されます。
正しく訳されているかどうかは、下図の対訳をチェックしてみてください。図をクリックすると拡大されます。

 

参考のために、同じ文章をGoogle翻訳でも出力してみました。
 
DEACは、米国の教育長官および高等教育認定評議会(CHEA)により、主に非学位レベルから以下を含む遠隔教育法によるプログラムを提供する中等教育機関の機関認定組織として認められています。 プロの博士号。

DEACの目標は、公開されている基準、ポリシー、手順への準拠を要求し、継続的な自己改善を促進することにより、認定する遠隔教育機関において高水準の教育品質を確保することです。

訳語の違いなどを見ておきましょう。(G=Google、D=DeepL)
  • non-degree level (G) 非学位レベル、(D) 学位取得を目的としないレベル
  • postsecondary (G) 中等教育機関、(D) 高等教育機関
  • up to and including (G) 以下を含む、(D) までの。ここの分析を誤ったため(G)では、「プロの博士号」が宙ぶらりんになっています。
  • ensure a high standard of educational quality (G) 高水準の教育品質を確保する、(D) 教育の質の高さを確保する

全体に訳語レベルでは柔軟な表現になっているようです。ここまでくると、「直訳だけど意味は合っているのでOK」という従来の機械翻訳文に対する評価の認識が変わってきますね。

直訳から日本語らしい訳文を作るために用いられている翻訳技法の多くは「構造的意訳」です。要するに、原文をあまり深く読み込まなくても、表層的な情報から機械的に自然な訳文を作成するテクニックです。

この構造的意訳を31のルールにまとめたのが「バベル翻訳英文法」です。
ちなみに、バベル翻訳大学院では必ず翻訳英文法の基本ルールを学びます。このルールをマスターしていないと、素早く自然な訳文を安定してコンスタントに作成することはできません。

さて、今回のDeepLのレベルになって、ようやく「バベル翻訳英文法」に基づく評価ができるようになったようです。
そもそも、機械翻訳は文章の意味を理解していません。よくても、表層的な分析にとどまります。したがって、「構造的意訳」ができれば機械翻訳としては非常に高品質と言えるでしょう。

以下の形式で、翻訳英文法の31の公式と例文を挙げます。
原文
模範訳文
DeepL
Google

翻訳英文法の公式を適用した模範訳文と機械翻訳を比較して分析してみてください。
かなり模範訳に近いものもありますが、まだまだ不適切なところもあります。
このように、翻訳英文法を意識して機械翻訳の訳文を見るようにすると、ポストエディット(後編集)のテクニックが身に付きます。

翻訳英文法公式集 *構造的意訳のための翻訳技法

公式 1 語順―原文の流れを生かす
≪例文 1≫
The lake was calm and beautiful with some swans swimming on its placid surface.
湖は静かで美しかった。白鳥が数羽、波ひとつない水面を泳いでいた。
DeepL:穏やかで美しい湖面には白鳥が何羽か泳いでいました。
Google:湖は穏やかで美しく、穏やかな表面に白鳥が泳いでいます。

公式 2 名詞の中に文を読みとる
≪例文 2≫
Ignorance of foreign customs can result in unexpected misunderstandings.
外国の習慣を知らないと、思いがけない誤解を生ずることがある。
DeepL:外国の習慣を知らないことで、思わぬ誤解を招いてしまうことがあります。
Google:外国の習慣を無視すると、予期せぬ誤解が生じる可能性があります。

公式 3 主語を表す所有格
≪例文 3≫
I was able to see him just for five minutes on his arrival.
彼が着いた時、なんとか5分だけ会えた。
DeepL:彼が到着して5分だけ会えた。
Google:私は彼の到着時にたった5分間彼に会えました。

公式 4 目的語を表す所有格
≪例文 4≫
The city's destruction by the enemy did not bring the war to an end.
敵がこの町を破壊したあとも、戦争は終わらなかった。
DeepL:敵に破壊されても戦争は終わらなかった。
Google:敵による都市の破壊は戦争を終わらせませんでした。

公式 5 <of +名詞>―主語を表す場合
≪例文 5≫
The powerful reasoning of his opponent drove him to admit his error.
相手が実に強力な論理を展開したので、彼も自分の誤りを認めざるをえなかった。
DeepL:相手の強力な推理が、自分の過ちを認めるように追い込んだ。
Google:相手の強力な推論により、彼は間違いを認めざるを得ませんでした。

公式 6 <of + 名詞>―目的語を表す場合
≪例文 6≫
His application of the rule to this case was in a sense quite natural.
彼がこの規則を今回のケースに当てはめたのは、ある意味ではきわめて当然なことだった。
DeepL:彼がこのケースにこのルールを適用したのは、ある意味で極めて自然なことであった。
Google:このケースへの彼の規則の適用は、ある意味で非常に自然でした。

公式 7 無生物主語の構文
≪例文 7≫
Bad weather prevented me from going out.
天気が悪かったので、私は外出できなかった。
DeepL:天気が悪くて外出できなかった。
Google:悪天候のために外出できませんでした。

公式 8 A Good Swimmerの型
≪例文 8≫
He was the fastest runner in our c    lass.
彼は、クラスで走るのがいちばん速かった。
DeepL:彼はクラス最速のランナーでした。
Google:彼は私たちのクラスで最速のランナーでした。

公式 9 人称代名詞、指示代名詞
≪例文 9≫
My mother felt rather ill that morning, but she said nothing about it.
その朝、母はかなり気分が悪かったが、ひとことも口には出さなかった。
DeepL: その日の朝、母はどちらかというと体調が悪いと感じていたが、何も言わなかった。
Google:母はその朝、かなり気分が悪くなったが、彼女はそれについて何も言わなかった。

公式 10 反復を避けるためのthat, one
≪例文 10≫
He said that the voice was certainly that of a woman.
その声は、確かに女性の声だったと彼は言った。
DeepL: その声は確かに女性の声だったという。
Google:彼は声が確かに女性の声であると言った。

公式 11 関係代名詞 (1)―接続詞を補う
≪例文 11≫
She complained loudly to the shopkeeper, who answered her mildly.
彼女は大声で店員に文句を言った。だが店員はおだやかに応対した。
DeepL: 彼女は大声で店員に文句を言ったが、店員は穏やかに答えた。
Google:彼女は店主に大声で不平を言った。

公式 12 関係代名詞 (2)―分解する
≪例文 12≫
This is the point beyond which I've never been.
ここから先は、私もまだ行ったことがありません。
DeepL: これは私が今まで行ったことのないポイントです。
Google:これは私が一度も行ったことがないポイントです。

公式 13 形容詞・副詞を述語に―many, some
≪例文 13≫
We often go to the station by bus, but sometimes on foot.
駅まではバスで行くことが多いが、歩いて行くこともある。
DeepL: 駅からはバスで行くことが多いですが、徒歩で行くこともあります。
Google:私たちはしばしばバスで駅に行きますが、時には徒歩で行きます。

公式 14 文修飾の副詞
≪例文 14≫
Naturally he declined the offer.
彼がその申し出を断ったのは当然だ。
DeepL: 当然、彼は申し出を断った。
Google:当然彼は申し出を断った。

公式 15 形容詞を副詞に ―all, every, each
≪例文 15≫
All big cities have traffic problems.
大都会はどこも交通問題を抱えている。
DeepL: 大都市はどこも交通問題を抱えています。
Google:すべての大都市には交通問題があります。

公式 16 比較級・最上級
≪例文 16≫
This shop carries more foreign books than any other in Japan.
日本中で、この店ほど洋書をたくさん置いているところはない。
DeepL: こちらのお店では、日本のどこよりも多くの洋書を取り扱っています。
Google: この店は、日本で最も多くの外国の本を持っています。

公式 17 否定のからんだ比較表現
≪例文 17≫
No other planet comes so close to the earth as Venus.
惑星の中で、いちばん地球に接近するのは金星である。
DeepL: 金星ほど地球に近い惑星はない。
Google: 金星ほど地球に近い惑星は他にありません。

公式 18 as... asの構文
≪例文 18≫
There are not as many trees around here as three years ago.
この辺りは木が少なくなった。3 年前はもっとあったのだが。
DeepL: この辺りの木は3年前ほど多くはない。
Google: この辺りの木は3年前ほどはありません。

公式 19 受動態 (1)-自動詞を使って能動態に
≪例文 19≫
The game was called off on account of the darkness.
日没で試合は中止になった。
DeepL: 闇の中での勝負は中止になった。
Google: ゲームは暗闇のため中止されました。

公式 20 受動態 (2)―by ... を主語にして能動態に
≪例文 20≫
The town was occupied by the guerrillas.
その町はゲリラが占領していた。
DeepL: 町はゲリラに占領されていた。
Google: 町はゲリラに占領されました。

公式 21 受動態 (3)―暗示されたby ... を主語にして
≪例文 21≫
It is said [by them] that lightning never strikes twice in the same place.
雷は二度と同じ所には落ちないという。
DeepL: 雷は,同じ場所に二度と落ちないと言われている。
Google: [彼らによれば]同じ場所で雷が二度と当たらないという。

公式 22 受動態 (4)―受動態のまま
≪例文 22≫
This tree was struck by lightning last week.
この木は先週落雷にやられた。
DeepL: この木は先週雷に打たれた。
Google: この木は先週雷に打たれました。

公式 23 仮定法 (1) ―主語に仮定が含まれている場合
≪例文 23≫
A man of common sense would have acted differently.
常識のある人なら、そんな行動はとらなかっただろう。
DeepL: 常識ある人間なら違う行動をしていただろう。
Google: 常識のある人は違った行動をするでしょう。

公式 24 仮定法 (2) ―副詞句に仮定が含まれている場合
≪例文 24≫
With a little more care, he could have avoided the danger.
もう少し注意していたら、危険を回避できたはずだ。
DeepL: もう少し気をつけていれば、彼は危険を回避できたはずだ。
Google: もう少し注意すれば、彼は危険を回避できたでしょう。

公式 25 仮定法 (3) ―発想を転換する
≪例文 25≫
I wish I could have been of more use to you.
あまりお役に立てなくて、残念です。
DeepL: もっとお役に立てればよかったと思います。
Google: もっと役に立てばよかったのに。

公式 26 話法 (1) ―直接話法を生かす
≪例文 26≫
He said that I looked really nice in that dress.
そのドレスは君によく似合うよ、と彼が言った。
DeepL: そのドレスがとても似合っていると言われました。
Google: 彼は私がそのドレスで本当に素敵に見えたと言った。

公式 27 話法 (2) ―直接話法を掘り起こす
≪例文 27≫
Some people still don't understand the need for recycling.
なぜリサイクルが必要なのか、いまだにわかっていない人がいる。
DeepL: いまだにリサイクルの必要性を理解していない人がいる。
Google: 一部の人々はまだリサイクルの必要性を理解していません。

公式 28 強調構文
≪例文 28≫
It is only when you have your own children that you realize the troubles of parenthood.
自分の子供を持ってみてはじめて、親の苦労がわかるというものだ。
DeepL: 自分の子供ができて初めて、子育ての悩みを実感します。
Google: 親の悩みに気づくのは、自分の子供がいるときだけです。

公式 29 省略(共通)構文
≪例文 29≫
I've read many books written by him, but not all yet.
彼の著書はたくさん読んだが、まだ読んでいないものもある。
DeepL: 彼の書いた本はたくさん読んだが、まだ全部は読んでいない。
Google: 私は彼によって書かれた多くの本を読みましたが、まだすべてではありません。

公式 30 接続詞 (1)―except, without
≪例文 30≫
You cannot commit a crime without being punished.
罪を犯せば必ず罰せられる。
DeepL: 罰せられなければ罪を犯すことはできません。
Google: 罰せずに犯罪を犯すことはできません。

公式 31 接続詞 (2) ― till, until, before
≪例文 31≫
He did not get back before six o'clock.
彼が戻ったのは、6時を回ってからだった。
DeepL: 6時前には帰ってこなかった。
Google: 彼は6時前に戻ってこなかった。
 
  

翻訳英文法―訳し方のルール
安西 徹雄  (著) バベルプレス
 ⇒Amazon


BABEL UNIVERSITY 通信コース「バベル翻訳英文法 基本ルール」
https://www.babel-edu.jp/program/31003_2.html

翻訳精度スコアBLEUを簡単に計算できるツール「シンプルMTスコア」

投稿日時:2020/02/13(木) 17:23

機械翻訳の記事を読んでいると、BLEU(BiLingual Evaluation Understudy)という言葉がよくでてきます。これは、機械翻訳の精度を自動的に評価するための指標のことです。
機械翻訳の出力結果と参照訳(通常は人手翻訳)を比較して類似度を計算し、0~1の値を出します。
通常はパーセントで表示します。数字が高いほど参照訳と一致しているということで品質が高いとみなされます。

BLEUスコアを計算するソフトウエアではコマンド操作が必要なので、開発者でなければ、実際に任意の文章を機械翻訳出力してスコアを調べた人は少ないかもしれません。

今回紹介するのは、西野竜太郎氏が作成した、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)から実行できるデスクトップ用ソフトウェアの「シンプルMTスコア(デスクトップ)」です。
以下のページからダウンロードできます。
https://www.nishinos.com/simple-mt-score

ダウンロードファイルはZIP圧縮されています。解凍してSimpleMTScore.exeをダブルクリックすればソフトウエアが起動します。インストールは不要です。

また、Web版も利用できます。
https://mtscore.nishinos.work/

使い方は簡単です。
「参照訳を入力:」に模範訳(通常は人手翻訳)を入力し、「評価訳を入力:」に機械翻訳の出力結果を入力して「実行」クリックするだけです。


*実行結果に100を掛けます。

BLEUスコアの解釈としては、以下が参考になります。
https://cloud.google.com/translate/automl/docs/evaluate?hl=ja#bleu



実際に試してみると分かるように、スコアの計算は、あくまでも出力結果と参照訳だけで行われます。「原文」は全く関与していません。そのためBLEU スコアが高くても、評価者が原文と突き合わせチェックをすると、大きな誤訳が発見されて全体的な評価が下がることがあります。

ちなみに、前回のブログ記事で紹介したNICTのプレスリリースでは、以下のように書かれていました。
 
NICTの自動翻訳エンジンにSMBC日興証券のアナリストレポートの日英対訳データを学習させ、金融分野に特化したAI自動翻訳システムを開発しました。従来の汎用AI翻訳と、金融に特化した本システムとの比較において、翻訳精度スコアBLEUで、従来の13.1から「高品質な翻訳」の域である42.8となり、3倍強の改善を達成することができました。

 

機械翻訳の動向

投稿日時:2020/02/03(月) 16:35

現在メインとなっているニューラル機械翻訳は、大量の対訳ファイルを学習させることで品質が向上することが分かっています。
今後の機械翻訳の動向を知るための一つの方法が、NICT(情報通信研究機構)の機械翻訳に関するプレスリリースの注視です。

NICTが運営する「翻訳バンク」は、総務省と共に翻訳データを集積する取り組みで、確保した大量の対訳データを使って、NICTが開発した高精度自動翻訳システム「TexTra」の品質向上を図っています。

「翻訳バンク」にどのような企業、業界が協力しデータを提供しているかを知ることで、今後、どの分野の機械翻訳の品質が向上するかを予測できます。

以下、今年に入ってからのプレスリリースを見てみましょう。
 

金融特化型AI自動翻訳システムを共同開発

2020年1月15日
SMBC日興証券株式会社(代表取締役社長:清水 喜彦、以下「SMBC日興証券」)と国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:徳田 英幸、以下「NICT」)は、翻訳バンクのスキーム下で、SMBC日興証券が有するアナリストレポートの日英対訳データを用いて、投資情報のAI自動翻訳システムの共同研究を開始し、金融分野に特化したAI自動翻訳システムを開発しました。金融機関での翻訳バンクへの参画はSMBC日興証券が初めてです。
https://www.nict.go.jp/press/2020/01/15-1.html
 

SAPとICT分野における機械翻訳に関して提携

2020年1月29日
国立研究開発法人情報通信研究機構(本部: 東京都小金井市、理事長: 徳田 英幸、以下「NICT」)は、SAP SE(本社: ドイツワルドルフ、共同最高経営責任者: ジェニファー・モーガン/クリスチャン・クライン、以下「SAP」)と、互いの自動翻訳のリソースや技術を持ち寄り、企業の業務効率化ソフトウェア専用のAI翻訳システムの高精度化・多言語化を進め、国内外企業の業務効率化に役立つ翻訳サービスを開発していくことになりました。
https://www.nict.go.jp/info/topics/2020/01/29-1.html
 

翻訳者の作業内容が変化している?

投稿日時:2017/10/12(木) 11:45

オンラインのクラウド型翻訳サービス(例えば、「スピード翻訳」や「トランスマート」)がWeb上で利用できるCATツールを導入しました。しかも、翻訳メモリ機能だけでなくMTが統合されています。いよいよ新しい時代の幕開けとなりました。

ここで、これまでの流れをまとめておきましょう。

最近の翻訳を取り巻く環境はインターネットなどのIT技術の進化に伴い大きく変化し、翻訳の仕事も、短期間に大量の文書を高品質で翻訳することを求められるようになっています。

従来の人間による翻訳は、翻訳支援ツールや翻訳フロー管理ツールなどの力を借りて、最大限まで生産性を高めていますが、「情報爆発」とさえ言われる状況を打開するには不十分です。

そこで今、多くの企業が期待を寄せているのが「機械翻訳+ポストエディット」です。2010年頃から徐々に生産フローに組み込まれてきましたが、2016年11月のGoogleによるニューラル機械翻訳の発表により、翻訳業界には大変動の波が押し寄せています。訳文の流暢性が極めて高く、これまでの機械翻訳の出力結果とは全く違うという評判です。しかも、人間が手を加えなくても、良質な対訳データさえ与えれば、勝手に学習して自ら機能を向上させるようになっています。まだ、訳抜けや誤訳などが発生しますが、数年の内にはかなり改善されることでしょう。

翻訳業務を行うには、しっかりした翻訳力が必要なのは言うまでもありませんが、これからの翻訳ニーズを十分に満たすためには、従来の翻訳スキルだけでは不十分です。翻訳支援ツールを当たり前に使いこなせることが求められるようになるはずです。

翻訳テクノロジーを最も取り入れているのは「ローカライズ」と言われる翻訳生産の一形態です。もともとは、ソフトウエアの現地化に伴う翻訳がメインでしたが、現在では、企業活動のほとんどが電子データによるものとなり、それらの多くがWeb上でやり取りされるようになっています。原文の形式(レイアウト)をそのまま保持して翻訳するのは「ローカライズ翻訳」の得意分野ですが、今ではその手法を、IT系のマニュアルやヘルプだけでなく、Webサイトの翻訳などに応用しています。つまり、ビジネス関連などへジャンルが拡大しているのです。

今後、機械翻訳の機能が急速に向上し、それにつれて機械翻訳の出力結果をチェック・修正する「ポストエディット」の仕事が増加するのは間違いありません。2017年4月にはポストエディットの国際規格(ISO 18587)が発行され、これまで曖昧だった職業としての「ポストエディター」が確立されました。

さて、現状では機械翻訳はどのように利用されているのでしょうか。一例をあげてみます。

翻訳会社のプロジェクトマネージャ(PM)がプロジェクトを作成する際に、既存の翻訳メモリ(TM)を使ってマッチした訳文を一括で貼り込む「一括翻訳」を行います。これも「自動翻訳」の一種です。この時、指定したマッチ率より低いものは、空欄になってしまいますが、ここに機械翻訳の出力結果を自動的に取得します。
翻訳者は、事前に翻訳メモリと機械翻訳の訳文が貼り込まれた状態のファイルを使って翻訳を完成させます。

したがって、この場合、翻訳者の仕事は以下のようになります。

●100%マッチの訳文 ― プルーフリーディング
●ファジーマッチ(部分一致)の訳文 ― リバイズ(バイリンガルチェック)
●機械翻訳の出力結果 ― ポストエディット
●訳文全体の専門チェック ― レビュー

このように、機械翻訳はCATツールを使ったワークフローに組み込まれて利用されており。今後、この傾向は変わることはないでしょう。
翻訳者にとってCATツールの操作スキルと、訳文作成に関するマルチなスキルが必要になってきています。

みんなの自動翻訳をMemsourceで使ってみる(2)

投稿日時:2017/08/24(木) 17:42

「みんなの自動翻訳@TtexTra」を「Memsource」に組み込んだら早速試してみましょう。(組み込み方は「みんなの自動翻訳をMemsourceで使ってみる(1)」で説明しました)。

<プロジェクトを作成する>

Memsourceでの作業の第一歩は、プロジェクトを作成することです。
プロジェクトの名称を決め、原文言語、訳文言語を指定します。
プロジェクトなので「納期」、「ステータス」、「購入番号」などの設定項目がありますが、特に入力する必要はありません。「ステータス」は「新規作成」で結構です。
 
さて、その下の「設定」にリスト表示されている項目は初期値が設定されていますので、必要に応じて変更すれば良いでしょう。

今回は、みんなの自動翻訳を試すのが目的なので、少なくとも「機械翻訳」の「プロジェクトMT」で前回設定した「みんなの自動翻訳NMT」を選択する必要があります。
「作成」をクリックしてプロジェクトを作成します。
 

「MT翻訳テスト」プロジェクトの画面に変わります。
 

ここでは、「翻訳メモリ」と「用語ベース」を選択しますが、既存のものがなければ「新規作成」します。

作成は簡単です。「新規作成」ボタンをクリックして「翻訳メモリ新規作成」画面を開いたら、名称を入力して、原文言語と訳文言語を指定し、「作成」ボタンをクリックするだけです。
 

用語ベースも同様に新規作成」ボタンをクリックして、「用語ベースの新規作成」画面が開いたら、言語を指定して、「作成」ボタンをクリックします。

 

これで大枠の設定ができたので、「Jobs」を「新規作成」します。

<原文を追加する>

「新規ジョブ」画面が開いたら、ここで原文を追加します。これがジョブの作成となります。
原文の「ファイル選択」を行い、訳文言語を確認し「作成」ボタンをクリックします。
ちなみに、「翻訳者に通達」はワークフロー機能なので、チェックを入れません。
 

参考までに、「ファイルインポートの設定」を見ておきましょう。
ここでは対応するファイルをどのようにインポートするかを設定できます。
例えば、Wordのコメントをインポートしたり、PowerPointのノートをインポートしたりして翻訳できます。

 

<対訳エディタを使う>

ダッシュボードの「Jobs」に設定したファイル名が表示されたらジョブの新規作成は成功です。早速、ファイル名をクリックして開いてみましょう。
 
対訳エディタが開きます。右のウインドウにMTの訳文が表示されるので、ダブルクリックすると、「Target ja-jp」のセルにMTの訳文が挿入されます。
 


「MT評価のジレンマ」と修正して「Ctrl+Enter」で確定します。確定すると、ステータスにチェックが入り、即座に翻訳メモリに保存されます。
右側のウインドウには修正して保存した翻訳メモリの訳文とMTの訳文が表示されます。
 

最後まで、MTの訳文を挿入してみました。
画面の下部にはプレビューが表示されます。カーソルのあるセグメントと同期しているので対応関係が分かりやすいですね。
題名以外手を入れていませんが、みんなの自動翻訳の品質はいかがでしょうか。
 

みなさんも色々な文章で試してみてください。
「ちょっと修正してみようかな」と思われるレベルの訳文なら十分に利用できるということです。これまでは、正直言って「修正する気にならない」という意見が多かったようですが。
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プロフィール

小室誠一
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
 

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