【ブログ】翻訳テクノロジーあれこれ by 小室誠一
翻訳者の作業内容が変化している?
投稿日時:2017/10/12(木) 11:45
オンラインのクラウド型翻訳サービス(例えば、「スピード翻訳」や「トランスマート」)がWeb上で利用できるCATツールを導入しました。しかも、翻訳メモリ機能だけでなくMTが統合されています。いよいよ新しい時代の幕開けとなりました。
ここで、これまでの流れをまとめておきましょう。
最近の翻訳を取り巻く環境はインターネットなどのIT技術の進化に伴い大きく変化し、翻訳の仕事も、短期間に大量の文書を高品質で翻訳することを求められるようになっています。
従来の人間による翻訳は、翻訳支援ツールや翻訳フロー管理ツールなどの力を借りて、最大限まで生産性を高めていますが、「情報爆発」とさえ言われる状況を打開するには不十分です。
そこで今、多くの企業が期待を寄せているのが「機械翻訳+ポストエディット」です。2010年頃から徐々に生産フローに組み込まれてきましたが、2016年11月のGoogleによるニューラル機械翻訳の発表により、翻訳業界には大変動の波が押し寄せています。訳文の流暢性が極めて高く、これまでの機械翻訳の出力結果とは全く違うという評判です。しかも、人間が手を加えなくても、良質な対訳データさえ与えれば、勝手に学習して自ら機能を向上させるようになっています。まだ、訳抜けや誤訳などが発生しますが、数年の内にはかなり改善されることでしょう。
翻訳業務を行うには、しっかりした翻訳力が必要なのは言うまでもありませんが、これからの翻訳ニーズを十分に満たすためには、従来の翻訳スキルだけでは不十分です。翻訳支援ツールを当たり前に使いこなせることが求められるようになるはずです。
翻訳テクノロジーを最も取り入れているのは「ローカライズ」と言われる翻訳生産の一形態です。もともとは、ソフトウエアの現地化に伴う翻訳がメインでしたが、現在では、企業活動のほとんどが電子データによるものとなり、それらの多くがWeb上でやり取りされるようになっています。原文の形式(レイアウト)をそのまま保持して翻訳するのは「ローカライズ翻訳」の得意分野ですが、今ではその手法を、IT系のマニュアルやヘルプだけでなく、Webサイトの翻訳などに応用しています。つまり、ビジネス関連などへジャンルが拡大しているのです。
今後、機械翻訳の機能が急速に向上し、それにつれて機械翻訳の出力結果をチェック・修正する「ポストエディット」の仕事が増加するのは間違いありません。2017年4月にはポストエディットの国際規格(ISO 18587)が発行され、これまで曖昧だった職業としての「ポストエディター」が確立されました。
さて、現状では機械翻訳はどのように利用されているのでしょうか。一例をあげてみます。
翻訳会社のプロジェクトマネージャ(PM)がプロジェクトを作成する際に、既存の翻訳メモリ(TM)を使ってマッチした訳文を一括で貼り込む「一括翻訳」を行います。これも「自動翻訳」の一種です。この時、指定したマッチ率より低いものは、空欄になってしまいますが、ここに機械翻訳の出力結果を自動的に取得します。
翻訳者は、事前に翻訳メモリと機械翻訳の訳文が貼り込まれた状態のファイルを使って翻訳を完成させます。
したがって、この場合、翻訳者の仕事は以下のようになります。
●100%マッチの訳文 ― プルーフリーディング
●ファジーマッチ(部分一致)の訳文 ― リバイズ(バイリンガルチェック)
●機械翻訳の出力結果 ― ポストエディット
●訳文全体の専門チェック ― レビュー
このように、機械翻訳はCATツールを使ったワークフローに組み込まれて利用されており。今後、この傾向は変わることはないでしょう。
翻訳者にとってCATツールの操作スキルと、訳文作成に関するマルチなスキルが必要になってきています。
ここで、これまでの流れをまとめておきましょう。
最近の翻訳を取り巻く環境はインターネットなどのIT技術の進化に伴い大きく変化し、翻訳の仕事も、短期間に大量の文書を高品質で翻訳することを求められるようになっています。
従来の人間による翻訳は、翻訳支援ツールや翻訳フロー管理ツールなどの力を借りて、最大限まで生産性を高めていますが、「情報爆発」とさえ言われる状況を打開するには不十分です。
そこで今、多くの企業が期待を寄せているのが「機械翻訳+ポストエディット」です。2010年頃から徐々に生産フローに組み込まれてきましたが、2016年11月のGoogleによるニューラル機械翻訳の発表により、翻訳業界には大変動の波が押し寄せています。訳文の流暢性が極めて高く、これまでの機械翻訳の出力結果とは全く違うという評判です。しかも、人間が手を加えなくても、良質な対訳データさえ与えれば、勝手に学習して自ら機能を向上させるようになっています。まだ、訳抜けや誤訳などが発生しますが、数年の内にはかなり改善されることでしょう。
翻訳業務を行うには、しっかりした翻訳力が必要なのは言うまでもありませんが、これからの翻訳ニーズを十分に満たすためには、従来の翻訳スキルだけでは不十分です。翻訳支援ツールを当たり前に使いこなせることが求められるようになるはずです。
翻訳テクノロジーを最も取り入れているのは「ローカライズ」と言われる翻訳生産の一形態です。もともとは、ソフトウエアの現地化に伴う翻訳がメインでしたが、現在では、企業活動のほとんどが電子データによるものとなり、それらの多くがWeb上でやり取りされるようになっています。原文の形式(レイアウト)をそのまま保持して翻訳するのは「ローカライズ翻訳」の得意分野ですが、今ではその手法を、IT系のマニュアルやヘルプだけでなく、Webサイトの翻訳などに応用しています。つまり、ビジネス関連などへジャンルが拡大しているのです。
今後、機械翻訳の機能が急速に向上し、それにつれて機械翻訳の出力結果をチェック・修正する「ポストエディット」の仕事が増加するのは間違いありません。2017年4月にはポストエディットの国際規格(ISO 18587)が発行され、これまで曖昧だった職業としての「ポストエディター」が確立されました。
さて、現状では機械翻訳はどのように利用されているのでしょうか。一例をあげてみます。
翻訳会社のプロジェクトマネージャ(PM)がプロジェクトを作成する際に、既存の翻訳メモリ(TM)を使ってマッチした訳文を一括で貼り込む「一括翻訳」を行います。これも「自動翻訳」の一種です。この時、指定したマッチ率より低いものは、空欄になってしまいますが、ここに機械翻訳の出力結果を自動的に取得します。
翻訳者は、事前に翻訳メモリと機械翻訳の訳文が貼り込まれた状態のファイルを使って翻訳を完成させます。
したがって、この場合、翻訳者の仕事は以下のようになります。
●100%マッチの訳文 ― プルーフリーディング
●ファジーマッチ(部分一致)の訳文 ― リバイズ(バイリンガルチェック)
●機械翻訳の出力結果 ― ポストエディット
●訳文全体の専門チェック ― レビュー
このように、機械翻訳はCATツールを使ったワークフローに組み込まれて利用されており。今後、この傾向は変わることはないでしょう。
翻訳者にとってCATツールの操作スキルと、訳文作成に関するマルチなスキルが必要になってきています。
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プロフィール
小室誠一
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
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