【ブログ】翻訳テクノロジーあれこれ by 小室誠一
「MTフェア2017」参加レポート(2)
投稿日時:2017/07/06(木) 14:34
続けて招待講演の報告です。
講演1:「多言語音声翻訳システムの利活用実証について~現状と課題~」
講演1:「多言語音声翻訳システムの利活用実証について~現状と課題~」
吉田麻衣子氏(株式会社リクルートコミュニケーションズ)
最初の講演は、総務省が推進する「グローバルコミュニケーション計画」での、多言語音声翻訳の利活用に関する開発・実証実験の報告でした。
接客の現場で、外国人の対応にこのシステムを活用することで、システムの利便性を高めるためことを目的とした事業であるとのことです。
目的:あらゆる人にとって使いやすい音声翻訳システムを実現する。実証実験を行って、翻訳エンジン、コーパスを改良する。
実験場所:①北アルプス(スキー客)、②徳島(阿波踊り)、③永平寺町(門前町)、④舞鶴(クルーズ船客)、⑤京都嵐山、⑥福島県(受け入れ態勢のPR)
実験アプリ:VoiceTra.R - 対面型翻訳UI、お気に入り機能(単語登録)、言語選択画面
昨年度は、7月に実験を開始し、8か月にわたって実施した。その間4回のアンケートを行い、使いやすさの感覚がどのように変化したかを調査した。
・告知用のPOP、ポスターを作成
・コーパスを収集(地名や、地域独特の表現など)
<結果>
・コミュニケーション成功―80%
言いたいことが伝わった、相手の言いたいことが理解できた。
・タスク達成―85%
その結果、相手の行動を変えられたら成功
・アプリに対する満足度―65%
心理的安心感が得られた、普段言えない一ことが言えた
翻訳&認識精度とスピードは不満足
★プロセスの満足度が低かった
言いたい→スマホを取り出す→アプリを起動する→話す→訳を見せる→通じない→やり直す→時間がかかる
改善の余地がある。
質疑応答では、説明会でのトレーニングの時間について質問があったが、説明会は1時間。インストール+練習(15分)という回答。もう少しトレーニングの時間を取ればもう少しスムーズになるのではないかという問いに対して、商品化された場合、ユーザーにトレーニングしてくださいとは言いにくいので、商品側をどのように改選するかという視点がまだまだ必要だと感じているとの回答。
音声機能はあるか? 音声機能は付いているが、まだ自動再生する機能がないので現場から不満が上がっている。自動再生できれば時間短縮できる。
別のプロジェクトではハードウエアの研究もされているとのこと。このような多言語翻訳システムの開発はこれからもどんどん進められていくと思われます。 英語であれば、MTを使わずに英会話を勉強した方が良いのではないかという人もいるかも知れませんが、多言語ということになれば誰でも利用してみたいシステムではないでしょうか。 地域の地名や独特の言い回しのコーパスを収集して翻訳エンジンを改善していくというところがこれからの方向性かと思いました。やはり言語はローカライズがカギのようです。これからも注目していきたいですね。 |
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プロフィール
小室誠一
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
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