<新>翻訳に役立つソフトウェア活用法
第2回 高機能な用語集検索ソフト「Xbench」
投稿日時:2013/06/10(月) 00:00

第2回 高機能な用語集検索ソフト「Xbench」

この連載では、翻訳ソフトや翻訳メモリソフトに限らず、翻訳業務の効率化に役立つソフトウェアを取り上げて、その活用法を紹介します。
用語集や対訳ファイルを作成しても、十分活用するには優れた検索ソフトが必要です。今回は、ローカライズ業務でもよく利用されている「Xbench」を紹介します。
■Xbenchを設定する
Xbench (正式にはApSIC Xbench)はこの3月にバージョンアップして有料版となってしまいましたが、まだ旧バージョンの無料版がダウンロードできます。試すなら今でしょう。
今回は、この無料版を使ってみます。
以下のサイトからApSIC Xbench 2.9 をダウンロードしてください。
インストールができたら早速起動しましょう。
最初に行うのがプロジェクトの新規作成です。
ここで、参照する用語集や対訳ファイル(翻訳メモリ)などを指定します。
プロジェクトを設定するには、
[Project] → [Properties] をクリックするか、
「F2」キーを押します。
「Project Properties」が開いたら [Add] ボタンをクリックします(図1)。
「Add Files to Project」画面が開いたら追加するファイルの形式を選択します(図2)。
ローカライズで使用するおもなファイル形式がほとんどサポートされています。
デフォルトでチェックの入っている「Tab-delimited Text File」は要するにタブ区切りのテキストファイルです。
とりあえず、この形式のままで [Next] ボタンをクリックします。
さて、ここで用語集を指定するわけですが、サンプルとして日本法令英訳プロジェクトの「標準対訳辞書」を利用しました。http://www.kl.i.is.nagoya-u.ac.jp/told/
この辞書はCSV形式で、見出し語と訳語以外にもデータが入っています(図3)。
Xbenchでは、A列が原文でB列が訳文、それ以降は備考として扱われるので、Bの「読み」とCの「訳語候補番号」の列を削除して、「テキスト(タブ区切り)」形式で保存しました。
[add File] ボタンをクリックして「law.je.dic.4.0.txt」を選択し[開く] をクリックすると「Files」にファイル名がリストされました(図4)。
[Next] をクリックすると「Properties」画面が表示されますが、とりあえずそのまま[OK] ボタンを押して「Project Properties」画面に戻ります。
「Glossary List」にファイル名が表示されたら正常に追加されたということです。
さらにファイルを追加したい場合は、同じ操作を繰り返します。
追加が完了したら[OK] ボタンをクリックします。
■用語の検索をする
用語を検索するには、検索語の入力ボックスとオプションペインを表示させます。
「Ctrl+1」で原文検索ボックス、「Ctrl+2」で訳文検索ボックス、「Ctrl+3」でオプションペインが表示されます。あるいは、ツールバーのアイコンをクリックしても結構です(図5)。
それでは早速検索してみましょう。
この辞書は日→英なので、「Source Term」が日本語になります。
試しに「充てる」と入力して「Search」をクリックすると結果が表示されました(図6)。
任意の行をクリックすると一番下のフレームに詳細が表示されます。
ここで用語検索の便利な機能をランダムに挙げておきましょう。
●Source Term とTarget Termを同時に検索できる(図7)。
例えば、「給付」と「absence」を同時に検索すれば、「休業給付」→「absence from work benefit」という対訳が見つかるという具合です。
●「Search Mode」で、正規表現、Wordのワイルドカードの指定ができる(図8)。
(図8) 

●検索結果を選択して「Enter」を押すと、訳語がクリップボードにコピーされるので、作業中の訳文などにそのまま貼り付けることができる。
●Wordやテキストエディタで、検索したい語句を選択して「Ctrl」+「Alt」+「Insert」を押すとXbenchが開いて検索結果が表示される(見出し語をキーボード入力する必要がない)。
●「Search Mode」の右側にある Add last Search to checklist をクリックすると、「Add Checklist Item」画面が開いて、検索語やオプションを保存できる(図9)。
●Search Templateをクリックして、検索テンプレートを選択できる(図10)。
「Tools」→「Manage Checklists」から新規にテンプレートを追加することもできます。
ざっと見ただけでも機能満載で、とてもすべてを紹介しきれません。あとはご自分で研究してください。
実は、今回取り上げることができませんでしたが、Xbenchにはさらに便利なQA(Quality Assurance)機能があります。
特に、翻訳メモリソフトで作成した訳文をチェックするのに向いていますが、タブ区切りの対訳にも対応しているので、幅広く活用できると思います。もちろん前回紹介した「Align Assist」を使って作成したTMXを使うのも良いでしょう。
QA機能についてもうちょっと知りたいという方は、コメントしてください。
プロフィール
小室誠一
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
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