■翻訳に役立つソフトウェア活用法
第3回 フリーの翻訳メモリソフト「OmegaT」
投稿日時:2010/09/25(土) 15:47
第3回 フリーの翻訳メモリソフト「OmegaT」
この連載では、翻訳ソフトや翻訳メモリソフトに限らず、翻訳業務の効率化に役立つソフトウエアを取り上げて、その活用法を紹介します。
第3回目はフリーの翻訳メモリソフト「OmegaT」を取り上げます。
翻訳支援ソフトには大きく分けて、対訳データベースによる訳文の再利用をメイン機能とする「翻訳メモリソフト」と、翻訳エンジンを搭載して自動的に訳文を出力する「翻訳ソフト」とがあります。
今回は、「翻訳メモリソフト」の中でも、操作が簡単で無料で使える「OmegaT」を紹介します。
これまで、「翻訳メモリソフト」に興味があるものの、使い方が難しそうで、ソフトの価格も高く、どうも敷居が高いと感じていた方が多いのではないでしょうか。「OmegaT 」は、ちょっと試してみるのに手ごろなソフトです。しかも、十分に実務で利用できる機能が備わっています。何といってもフリーウェアなのが魅力です。
どうぞ、皆さんもお試しください。
OmegaTは、Java ベースのソフトウェアなので、原則としてどのOSでも使えます。
OmegaTは以下のサイトからダウンロードできます。この記事を書いた時点でバージョンは「OmegaT 2.0.5 update 4」です。
http://sourceforge.net/projects/omegat/
<使い方>
■プロジェクトの作成
OmegaTを起動したら、まずプロジェクトを作成します。
「プロジェクト」メニュー→「新規作成」(図1)
(図1)
「新規プロジェクト作成」画面が開いたら、ファイル名に任意の名前を入力して「保存」をクリックします。(図2)
(図2)
保存すると同時に「新規プロジェクト」画面(図3)が開くので、ファイル言語の設定をします。
英→日翻訳なら、「原文ファイル言語」を「EN-US」にします(といっても、デフォルトでこうなっています)。
「EN-US」はアメリカ英語です。その他、「EN-GB」イギリス英語、「EN-IN」インド英語など細かく指定できます。
「訳文ファイル言語」は日本語を表す「JA」を指定します。
他の設定はとりあえずこのままで結構です。
(図3)
「確定」をクリックすると、「翻訳対象ファイル一覧」画面(図4)が開きますので、「原文ファイル追加」ボタンをクリックして、翻訳する文書を追加します。
(図4)
追加すると、「翻訳対象ファイル一覧」画面にファイル名と文節数の情報が表示されます。それと同時に、編集画面に原文が読み込まれ、すでに翻訳が開始できる状態になっています。(図5)
ここまで設定ができたら「閉じる」ボタンをクリックして「翻訳対象ファイル一覧」画面を閉じます。
(図5)
■用語集の設定
さて、これで翻訳を始めてもいいいのですが、もし用語集があれば使いたいところです。用語集のフォーマットは以下のようにプレーンテキストファイルで作成します。
見出し<タブ>訳語<タブ>備考
<タブ>はタブ記号です。このようにタブで区切るだけです。そして、文字のエンコードをUTF-8にした場合は、拡張子を、「.utf8」としますがSHIFT-JISなど使用しているPCのデフォルトのエンコードの場合は、拡張子を「.tab」にします。
このファイルを、プロジェクトを保存したフォルダの中の「glossary」に格納します。(図6)
(図6)
これで、用語集の設定も済んだので、翻訳作業を始めてみましょう。
■訳文の入力方法
用語集を反映するために、一度OmegaTを終了して、再度起動します。
初期画面が表示されるので、「プロジェクト」メニュー→「開く」をクリックして、先ほど作成したプロジェクトを開きます。「翻訳対象ファイル一覧」画面も同時に開きますがこれは「閉じる」ボタンで閉じてください。
翻訳する英文が緑色にマーキングされ、その下に<文節></文節>ではさまれた同じ原文があります。この英文に上書きする形で訳文を入力します。(図7)
(図7)
訳文の入力が済んだら、「Ctrl」+「N」キーを押します。今翻訳した訳文が翻訳メモリに保存されると同時に次の文節に移動します。(図8)
(図8)
■Google翻訳との連動
OmegaTはGoogle翻訳に連動しています。利用するにはあらかじめ「設定」メニュー→「Google Translate」にチェックを入れおきます。
翻訳する文節を開いておいて、画面下の「Google Translate」をクリックします。
訳文画面が開きます(図9)。 訳文はコピー・アンド・ペーストできるので、使えそうな部分をコピーして利用します。
(図9)
■保存方法
作業が終わったら、あるいは中断するときは「保存」します。これは、プロジェクトを保存するということなので、いつでも保存した状態を再現できます。
翻訳が完了して訳文だけ取り出したいときは、「訳文ファイル生成」をクリックします(図10)。 ただ、クリックしても何も起こらないので、一瞬途方にくれるかも知れませんが、訳文はプロジェクトを保存したフォルダの中の「target」にエクスポートされているので安心してください。
(図10)
■参考訳文の設定
「参考訳文」に翻訳メモリにマッチした訳文を表示したいときは、「tm」の中に翻訳メモリファイルを入れます。
翻訳と同時に保存して行った翻訳メモリは「omegat」の中にあります。これを「tm」にコピーすれば参考訳に完全マッチ文が表示されるはずです。他のソフトウエアで作成した翻訳メモリもTMX形式にして「tm」に入れればそのまま使用できます。
OmegaTでは、このようにそれぞれのファイルを決められたフォルダに入れるだけで設定ができてしまうので、大変簡単です。「ヘルプ」も日本語化されていますので使いやすくなっています。
プロフィール
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
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