■翻訳に役立つソフトウェア活用法
第8回 みんなで使える翻訳支援統合エディタ「QRedit」
投稿日時:2010/12/10(金) 15:00
第8回は、世界中の文書をみんなで協力して翻訳するサイト、「みんなの翻訳」で提供されている高機能翻訳支援エディタの「QRedit」を取り上げます。
「みんなの翻訳」は、情報通信研究機構(NICT)言語翻訳グループと東京大学図書館情報学研究室によって2009年4月に一般公開されました。国立情報学研究所連想情報学研究開発センターと三省堂が開発に協力しています。その後、バージョンアップを繰り返し、この11月にはプロジェクト管理機能を追加して訳文の共同編集にも対応し、翻訳支援ツールとして十分な機能が備わりました。
今回は、「みんなの翻訳」の多くの機能の中から翻訳支援統合エディタの「QRedit」に焦点をあてて紹介します。
「QRedit」は登録せずに試用できる体験版が用意されていますが、ぜひ登録してフル機能を使ってみましょう。以下のURLにアクセスし、左側のメニューの「新規登録はこちら」をクリックして登録してください。
「みんなの翻訳」
登録したら早速使ってみましょう。
と行きたいところですが、もう少し待ってください。準備作業をします。
■準備作業
このような「Webアプリケーション」はWebブラウザとの相性が少なからずあります。「QRedit」の場合は、Firefoxがお勧めです。IEしか使ったことが無い人は、この際、思い切ってインストールしましょう。
⇒ http://mozilla.jp/
いくつかFirefoxの初期設定を変更する必要があります。簡単ですからご心配なく。
(1)ポップアップの許可
初期設定のままだと、「QRedit」を起動しようとすると、「ポップアップがブロックされました」と表示されて起動できません。以下のようにして、ポップアップのブロックをはずしてください。
「ツール」メニュー→「オプション」をクリック
「オプション」ダイアログが開いたら、「コンテンツ」アイコンをクリック
「ポップアップウインドウをブロックする」のチェックをはずす(図1)
「OK」をクリックして設定完了。
(図1)
【拡大表示】
これで「QRedit」がポップアップウインドウに表示されるようになりました。
ついでにもう一つ設定しておきます。
(2)「ブックマークツールバー」の表示
「表示」メニュー→「ツールバー」→「ブックマークツールバー」をクリック
何に使うかはあとのお楽しみ。
<使い方>
■起動方法
「みんなの翻訳」にログイン後、画面上部にある「翻訳文書の新規作成」で、「原言語⇒翻訳言語」が間違いないか確認します。英語⇒日本語なら「English->Japanese」になります。ユーザー登録の際に選択した組み合わせになっているはずです。確認したら「実行」ボタンをクリックします(図2)。
(図2)
【拡大表示】
すると、「みんなの翻訳における著作権の考え方」が表示されるので、確認してから「同意して翻訳文書を作成する」をクリックすると「QRedit」が起動します(図3)。
(図3)
【拡大表示】
実は、起動方法がもう一つあります。「QRedit」をブックマークに登録しておいて簡単に起動する方法です。そのために、準備作業で「ブックマークツールバー」を表示するようにしたのです。
「ブックマークレット」ページ(http://trans-aid.jp/users/bookmark/bookmarklet/)の「ブックマークツールバーに追加(おすすめ)」をクリックすると、画像が表示されるので、「ブックマークツールバー」にドラッガウ・アンド・ドラップします(図4)。
(図4)
【拡大表示】
これだけで、ブックマークから起動できるようになります。
どこかのホームページを見ていて、「これを翻訳しよう!」と思ったときに、わざわざ「みんなの翻訳」のサイトに飛んで、「QRedit」を起動するという面倒がなくなります。
そのページを表示したままで、ブックマークの「QRedit起動」をクリックします(図5)。
すると右上に「Translate」ボタンが表示されます。
(図5)
【拡大表示】
そのまま「Translate」ボタンをクリックすると、そのWEBページ全体がエディタに読み込まれます(図6)。
全体を訳す必要が無い場合は、翻訳したい部分を範囲指定して「Translate」ボタンをクリックすればその部分だけ読み込まれます。
また、「Ctrl」キーを押しながら選択すれば、飛び飛びに何箇所でも選択できます。これは便利な機能です。
(図6)
【拡大表示】
対訳エディタの左側に読み込まれた原文は、基本的にセンテンス単位にセグメントされます。右側に対応する訳文を入力することになります。
画面上部には「書誌情報」を記入します。原文、訳文のタイトルや訳者名を入力したり、文書のアクセス権の設定や対訳閲覧の許可などを設定できます。
■翻訳支援機能
「QRedit」の翻訳支援機能は、辞書引きがメインです。辞書引き対象辞書は「三省堂グランドコンサイス英和辞典」「edict」「wikipedia」です。また、対訳コーパスの検索もできます。「みんなの翻訳」に蓄積された対訳が対象ですが、詳しくは「ユーザー設定」の「基本設定」をご覧ください。現在16種類のコーパスが利用できるようです。
エディタの原文側は「Lookup」と「Modify」の2つのペインがあり、タブで切り替えられます。辞書引きは「Lookup」ペインで行います。原文を修正するときは「Modify」ペインにします。
「Lookup」ペインでは、マウスで辞書引きを行います。
入力カーソルは常に訳文入力側にあります。つまり、訳文入力中にマウスで辞書引きをしても訳文の入力位置が変わってしまうということが無いので、ストレスがありません。
辞書引き結果をクリックすると訳文側のカーソル位置にペーストされます(図7)。
(図7)
【拡大表示】
ここで、辞書引き結果のポップアップの上部にある「P」「L」「S」「M」「R」を見てください。
「P」はペーストで、辞書引き結果のポップアップが表示されると、すでにここが押された状態になっているので、すぐにペーストできます。
「L」は辞書引きの詳細画面を表示します(図8)。
(図8)
【拡大表示】
「S」はサーチで、Google検索を行います。
「M」はメモリで、翻訳メモリを連想するかもしれませんが、対訳コーパスの検索です。要するにコンコーダンサーのことです。この機能は「QRedit」の中でも秀逸で、検索結果はキワードを真ん中に揃えた「KWIC」形式で表示されます。コーパスの切り替え、検索語の左右1語での並び替えができ、しかも対訳表示です(図9)。
(図9)
【拡大表示】
「R」をクリックすると用語登録画面が表示されます(図10)。
(図10)
【拡大表示】
■翻訳ファイル
さて、翻訳が終わったらそのファイルがどうなるか気になるところです。
基本的には、「保存」をクリックしてサーバに保存します。
保存したファイルはマイページにリストアップされますのでいつでも参照したり編集したりできます。
また、「保存(ローカル)」をクリックすると、訳文のみをテキストファイルで保存できるほか、対訳をTMX形式(1.4)で保存することもできます。さらに、TMXファイルを読み込んで編集の続きを行うこともできます。
今回は、「QRedit」の機能を駆け足で紹介しましたが、「みんなの翻訳」サイト全体では、「メッセージ」「掲示板」「翻訳リクエスト」「プロジェクト管理」など、グループで共同作業を行うための機能が充実しています。
使い方次第で便利なツールになるでしょう。
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プロフィール
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
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