■翻訳に役立つソフトウェア活用法
第6回 クラウド型の翻訳ツール「Google 翻訳者ツールキット」
投稿日時:2010/11/10(水) 13:20
第6回 クラウド型の翻訳ツール「Google 翻訳者ツールキット」
この連載では、翻訳ソフトや翻訳メモリソフトに限らず、翻訳業務の効率化に役立つソフトウェアを取り上げて、その活用法を紹介します。
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第6回は無料で使えるクラウド型の翻訳ツール「Google 翻訳者ツールキット」を取り上げます。
Googleの翻訳サービスは、統計的機械翻訳をベースとした「Google翻訳」がよく知られていますが、翻訳作業のためのツールとして「Google 翻訳者ツールキット」も提供されています。これは機械翻訳に加えて、翻訳メモリと用語集機能を備えた対訳エディタで、アカウントさえ取得すれば無料で利用できます。
Internet ExplorerなどのWebブラウザさえあればいつでもどこでも利用できますが、Google Chrome が使いやすいようです。
Google 翻訳者ツールキットのURL:
http://translate.google.com/toolkit/
■翻訳メモリの追加
最初に翻訳メモリの追加を行います。
アップロードできるのは、TMX形式のファイルで、合計50MBまでとなっています。TMXは翻訳メモリの互換形式のXMLファイルで、ほとんどの翻訳メモリツールにはこの形式にエクスポートする機能が付いています。
翻訳メモリを追加するには「ファイルを選択」して「TMを追加」をクリックします。このときに、そのメモリを共有するかどうか指定します。
既存の翻訳メモリが無い場合には、新規メモリを作成します。
作成する方法は、翻訳メモリ名に任意の名前を入れて「TMを追加」ボタンをクリックします。(図1)
翻訳メモリを作成しておかないと、翻訳結果が「グローバル共有TM」に保存されてしまいます。
せっかく翻訳してもその結果を翻訳メモリとしてダウンロードできなくなるので、「翻訳メモリの追加」は重要です。
(図1)
■用語集の追加
既存の用語集がある場合はアップロードします。ファイル形式はCSV(カンマ区切り)で合計1MBまでです。
辞書形式は以下のように、1行目にラベルを付けます。(例は、英語-日本語の場合)
en,ja,pos,description,
posは、part of speech(品詞)で、adjective、adverb、noun、verb のように指定します。
なお、文字コードはUTF-8にします。
追加は、CSVファイルを選択して「用語集をアップロード」ボタンをクリックします。(図2)
(図2)
■原文のアップロード
翻訳メモリと用語集の準備ができたら原文をアップロードします。
テキスト形式以外にも、HTMLやMicrosoft Wordなどの形式にも対応しています。
また、「ウェブページ」タブをクリックしてURLを入力するとWebページを取り込んでくれます。
ファイルを選択し、「共有」の設定で、翻訳メモリと用語集の指定をします。
翻訳メモリを指定すると翻訳結果がその翻訳メモリに格納されます。また、共有を制限することができます。
設定が済んだら「アップロード」をクリックします。(図3)
(図3)
文書のアップロードが完了すると翻訳エディタが開きます。
すでに機械翻訳された訳文が入力されています。(図4)
(図4)
■翻訳作業
メニューの「ツールキットを表示」をクリックすると画面下部に翻訳メモリ、用語集、機械翻訳の検索結果が表示されます。
選択した原文に対応する訳文の編集ボックスが開き、修正できるようになります。
ここでは翻訳メモリが新規なので「過去訳はありません」となっていますが、「用語集」にはヒットした訳語が表示されています。(図5)
(図5)
翻訳が終わったら、「編集」メニューの「翻訳完了」をクリックしてから「保存して閉じる」ボタンをクリックします。
■訳文のダウンロード
一覧からダウンロードする文書を選択して「ダウンロード」をクリックします。
アップロード時と同じ形式のファイルをダウンロードできます。Wordなどの場合、簡単なレイアウトならほぼ再現されます。(図6)
(図6)
Googleの機械翻訳は、統計学をベースにしたものなので、英語・日本語間のような構文の大きく異なる言語の翻訳の場合、ほとんど使い物にならないかもしれません。
「Google 翻訳者ツールキット」では、対訳表示の翻訳メモリツールと考えたほうが利用しやすいでしょう。
また、Google ドキュメントと同様の共有機能を使えば、アクセス権も「編集可能」「コメント可能」「閲覧可能」の3段階に設定できるので、役割分担に応じた共同翻訳作業が効率的に行えます。
機密文書の翻訳には利用できませんが、一般公開された文書を複数のメンバーで翻訳して一般公開するといった利用法が考えられます。
今後、このようなツールが数多く出現して来ますので、今のうちに使い方に慣れておくと良いでしょう。
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第6回は無料で使えるクラウド型の翻訳ツール「Google 翻訳者ツールキット」を取り上げます。
Googleの翻訳サービスは、統計的機械翻訳をベースとした「Google翻訳」がよく知られていますが、翻訳作業のためのツールとして「Google 翻訳者ツールキット」も提供されています。これは機械翻訳に加えて、翻訳メモリと用語集機能を備えた対訳エディタで、アカウントさえ取得すれば無料で利用できます。
Internet ExplorerなどのWebブラウザさえあればいつでもどこでも利用できますが、Google Chrome が使いやすいようです。
Google 翻訳者ツールキットのURL:
http://translate.google.com/toolkit/
■翻訳メモリの追加
最初に翻訳メモリの追加を行います。
アップロードできるのは、TMX形式のファイルで、合計50MBまでとなっています。TMXは翻訳メモリの互換形式のXMLファイルで、ほとんどの翻訳メモリツールにはこの形式にエクスポートする機能が付いています。
翻訳メモリを追加するには「ファイルを選択」して「TMを追加」をクリックします。このときに、そのメモリを共有するかどうか指定します。
既存の翻訳メモリが無い場合には、新規メモリを作成します。
作成する方法は、翻訳メモリ名に任意の名前を入れて「TMを追加」ボタンをクリックします。(図1)
翻訳メモリを作成しておかないと、翻訳結果が「グローバル共有TM」に保存されてしまいます。
せっかく翻訳してもその結果を翻訳メモリとしてダウンロードできなくなるので、「翻訳メモリの追加」は重要です。
(図1)

■用語集の追加
既存の用語集がある場合はアップロードします。ファイル形式はCSV(カンマ区切り)で合計1MBまでです。
辞書形式は以下のように、1行目にラベルを付けます。(例は、英語-日本語の場合)
en,ja,pos,description,
posは、part of speech(品詞)で、adjective、adverb、noun、verb のように指定します。
なお、文字コードはUTF-8にします。
追加は、CSVファイルを選択して「用語集をアップロード」ボタンをクリックします。(図2)
(図2)

■原文のアップロード
翻訳メモリと用語集の準備ができたら原文をアップロードします。
テキスト形式以外にも、HTMLやMicrosoft Wordなどの形式にも対応しています。
また、「ウェブページ」タブをクリックしてURLを入力するとWebページを取り込んでくれます。
ファイルを選択し、「共有」の設定で、翻訳メモリと用語集の指定をします。
翻訳メモリを指定すると翻訳結果がその翻訳メモリに格納されます。また、共有を制限することができます。
設定が済んだら「アップロード」をクリックします。(図3)
(図3)

文書のアップロードが完了すると翻訳エディタが開きます。
すでに機械翻訳された訳文が入力されています。(図4)
(図4)

■翻訳作業
メニューの「ツールキットを表示」をクリックすると画面下部に翻訳メモリ、用語集、機械翻訳の検索結果が表示されます。
選択した原文に対応する訳文の編集ボックスが開き、修正できるようになります。
ここでは翻訳メモリが新規なので「過去訳はありません」となっていますが、「用語集」にはヒットした訳語が表示されています。(図5)
(図5)

翻訳が終わったら、「編集」メニューの「翻訳完了」をクリックしてから「保存して閉じる」ボタンをクリックします。
■訳文のダウンロード
一覧からダウンロードする文書を選択して「ダウンロード」をクリックします。
アップロード時と同じ形式のファイルをダウンロードできます。Wordなどの場合、簡単なレイアウトならほぼ再現されます。(図6)
(図6)

Googleの機械翻訳は、統計学をベースにしたものなので、英語・日本語間のような構文の大きく異なる言語の翻訳の場合、ほとんど使い物にならないかもしれません。
「Google 翻訳者ツールキット」では、対訳表示の翻訳メモリツールと考えたほうが利用しやすいでしょう。
また、Google ドキュメントと同様の共有機能を使えば、アクセス権も「編集可能」「コメント可能」「閲覧可能」の3段階に設定できるので、役割分担に応じた共同翻訳作業が効率的に行えます。
機密文書の翻訳には利用できませんが、一般公開された文書を複数のメンバーで翻訳して一般公開するといった利用法が考えられます。
今後、このようなツールが数多く出現して来ますので、今のうちに使い方に慣れておくと良いでしょう。
コメント
プロフィール
小室誠一
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
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