■翻訳に役立つソフトウェア活用法
第4回 英文ライティングに役立つコンコーダンサー「AntConc」
投稿日時:2010/10/10(日) 15:22
第4回 英文ライティングに役立つコンコーダンサー「AntConc」
この連載では、翻訳ソフトや翻訳メモリソフトに限らず、翻訳業務の効率化に役立つソフトウェアを取り上げて、その活用法を紹介します。
第4回は高機能で使いやすく、しかもフリーソフトの「AntConc」を取り上げます。
英文を書く際に、辞書ではなかなか調べがつかないのが連語の情報です。検索したキーワードを中心として行単位で検索結果が表示されるKWIC(クウィック、keyword in context)コンコーダンサーを使用すれば、キーワード前後の語句が一目で分かります。これにより、語句の結びつきや使い方を知ることができます。
AntConcには、KWIC機能の他にも、並び替え、単語の分布表示、単語リスト作成、語の共起関係の計算や特徴後の抽出など、言語分析に必要な基本機能はほぼ備わっています。
今回は、英文作成に役立つ機能をいくつか紹介します。
AntConcは、Laurence Anthony's Homepage - Software からダウンロードできます。
http://www.antlab.sci.waseda.ac.jp/software.html
<使い方>
■AntConcの起動
AntConcはダウンロードしたプログラムファイルをダブルクリックするだけで起動します。インストールは不要です。初期画面は以下のようになります。(図1)
(図1)
■テキストの指定
コンコーダンサーを使用するには先ず、検索対象となる英文ファイル(コーパス)を指定します。ファイル形式は「テキスト」です。HTML、XMLも指定できます。
「File」をクリックしてプルダウンメニューを表示します。(図2)
(図2)
メニューの「Open File(s)」は個々のファイルを指定する場合、「Open Dir」はテキストファイルが格納されているフォルダを指定する場合に使用します。
ここでは、試しに「The Project Gutenberg」のサイトから、「The Adventures of Sherlock Holmes」をダウンロードして指定してみました。
■KWICK検索
「Search Term」に「look(s|ed|ing)」と入力して、「Regex」にチェックを入れて「Start」をクリックしてにみました。正規表現を使って、lookの活用形も含めて検索します。
結果が表示されたら、さらに「Kwic Sort」の下の「Level1」を「1R」にセットして「Sort」をクリックします。つまり、キーワードの右側1語を基準に並び替えるということです。
以下のような結果になります。(図3)
(図3)
活用形も含めた検索語のlookが青文字でセンタリングされた文が抽出されて、さらにその右側の並び替えの基準となる単語が赤文字になっています。
ざっと見ただけでも「about」「across」「as」「at」「back」「dawn」「for」「from」「in」「like」「out」「outside」「over」「round」「up」「upon」などの前置詞や副詞が後に続いているのが分かります。
ここで、どのような文脈で出現したのか見たければ、検索語をクリックします。
画面が「File View」に切り替わり、キーワードが反転表示されます。(図4)
(図4)
■単語の分布表示
検索語が文書全体のどのありに出現しているか調べるには「Concordance Plot」タブをクリックします。
縦線が出現箇所です。比較的最初のほうに集中しているのが分かります。(図5)
(図5)
■かたまり表示
検索語を含むかたまり(チャンク)を取り出すには、「Cluster」タブをクリックします。
「Cluster Size」で最小サイズと最大サイズを指定します。ここでは、2語から4語のかたまりを指定します。
「Start」をクリックすると、頻度順にかたまりが表示されます。(図6)
(図6)
この他にも、Collocate、Word List、Keyword Listなどの機能がありますので、それぞれタブをクリックしてどのようなものか試してみてください。
●参考: AntConc Tutorial (日本語チュートリアル)
コンコーダンサーはもともと言語学の研究ツールでしたが、AntConcのように手軽に使えるツールがあれば、だれでも簡単にネイティブの英語を分析できます。自分の専門分野の英文をできるだけ収集して「コーパス」フォルダに保存するだけで、表現辞典として役立てることができます。
プロフィール
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
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