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【ブログ】翻訳テクノロジーあれこれ by 小室誠一

DeepL翻訳が日本語対応になった ― 翻訳英文法もびっくり

投稿日時:2020/03/27(金) 16:53

DeepLは、ドイツのケルンで開発され、2017年8月公開された機械翻訳システムです。その前身は2009年に設立された訳文検索エンジンLingueeです。
DeepLはこれまでGoogle翻訳など他の機械翻訳と比べても、はるかに高品質だと評判でしたが、残念ながら日本語には対応していませんでした。

嬉しいことに、3月19日にdeepl.comのブログに「DeepL翻訳が日本語と中国語を習得」という記事が投稿されました。
https://www.deepl.com/blog/20200319.html

「今年初めに大幅な改善を加えたDeepLのニューラルネットワークアーキテクチャを使うことで、日本語と中国語でかつてないほど上手く訳文を作れるようになりました」ということで、翻訳システムの名前を伏せた状態で翻訳者に示して、評価した結果が掲載されています。
 

体系のまったく異なる言語間での翻訳を機械に学習させる方法を、何百万という翻訳済みテキスト、巧みな数学的計算、そして日本語と中国語の社内エキスパートからの貴重な助言を総合することで見つけたとのことです。
そしてDeepLのアルゴリズムは、中国で使用される何千もの漢字、日本語の漢字、ひらがな、カタカナを処理できるようになったと書いてあります。
ここまで、素晴らしいことが書いてあれば試してみたくなりますね。

とりあえず、以下の訳文を見てください。
 
DEAC は、米国教育長官および高等教育認定評議会(CHEA)から、学位取得を目的としないレベルから専門職博士号取得までの遠隔教育を中心としたプログラムを提供する高等教育機関を対象とした機関認定機関として認定されている。

DEAC の目標は、公表されている基準、方針、手続きの遵守を求め、継続的な自己研鑽を促すことで、認定する遠隔教育機関の教育の質の高さを確保することである。


一読したところでは、人間が訳したものと間違えそうです。

DeepLはオンラインでWebブラウザから利用できますが、ソフトウエアをダウンロードすれば、デスクトップで利用できます(もちろんインターネット接続は必要です)。
https://www.deepl.com/app
Mac用もあります!
 
WordやPowerPointなど、どのソフトウエアでもテキストがコピーできれば大丈夫です。
訳したい文章を選択して、Ctrlキーを押したままCキーを2回押します。



たとえば、上図のようにWebページをブラウザで表示しておいて、翻訳したい部分を範囲指定します。
ここで、Ctrlキーを押したままCキーを2回押します。

すると、選択した原文がDeepLにペーストされて起動し、すぐに訳文が出力されます。
正しく訳されているかどうかは、下図の対訳をチェックしてみてください。図をクリックすると拡大されます。

 

参考のために、同じ文章をGoogle翻訳でも出力してみました。
 
DEACは、米国の教育長官および高等教育認定評議会(CHEA)により、主に非学位レベルから以下を含む遠隔教育法によるプログラムを提供する中等教育機関の機関認定組織として認められています。 プロの博士号。

DEACの目標は、公開されている基準、ポリシー、手順への準拠を要求し、継続的な自己改善を促進することにより、認定する遠隔教育機関において高水準の教育品質を確保することです。

訳語の違いなどを見ておきましょう。(G=Google、D=DeepL)
  • non-degree level (G) 非学位レベル、(D) 学位取得を目的としないレベル
  • postsecondary (G) 中等教育機関、(D) 高等教育機関
  • up to and including (G) 以下を含む、(D) までの。ここの分析を誤ったため(G)では、「プロの博士号」が宙ぶらりんになっています。
  • ensure a high standard of educational quality (G) 高水準の教育品質を確保する、(D) 教育の質の高さを確保する

全体に訳語レベルでは柔軟な表現になっているようです。ここまでくると、「直訳だけど意味は合っているのでOK」という従来の機械翻訳文に対する評価の認識が変わってきますね。

直訳から日本語らしい訳文を作るために用いられている翻訳技法の多くは「構造的意訳」です。要するに、原文をあまり深く読み込まなくても、表層的な情報から機械的に自然な訳文を作成するテクニックです。

この構造的意訳を31のルールにまとめたのが「バベル翻訳英文法」です。
ちなみに、バベル翻訳大学院では必ず翻訳英文法の基本ルールを学びます。このルールをマスターしていないと、素早く自然な訳文を安定してコンスタントに作成することはできません。

さて、今回のDeepLのレベルになって、ようやく「バベル翻訳英文法」に基づく評価ができるようになったようです。
そもそも、機械翻訳は文章の意味を理解していません。よくても、表層的な分析にとどまります。したがって、「構造的意訳」ができれば機械翻訳としては非常に高品質と言えるでしょう。

以下の形式で、翻訳英文法の31の公式と例文を挙げます。
原文
模範訳文
DeepL
Google

翻訳英文法の公式を適用した模範訳文と機械翻訳を比較して分析してみてください。
かなり模範訳に近いものもありますが、まだまだ不適切なところもあります。
このように、翻訳英文法を意識して機械翻訳の訳文を見るようにすると、ポストエディット(後編集)のテクニックが身に付きます。

翻訳英文法公式集 *構造的意訳のための翻訳技法

公式 1 語順―原文の流れを生かす
≪例文 1≫
The lake was calm and beautiful with some swans swimming on its placid surface.
湖は静かで美しかった。白鳥が数羽、波ひとつない水面を泳いでいた。
DeepL:穏やかで美しい湖面には白鳥が何羽か泳いでいました。
Google:湖は穏やかで美しく、穏やかな表面に白鳥が泳いでいます。

公式 2 名詞の中に文を読みとる
≪例文 2≫
Ignorance of foreign customs can result in unexpected misunderstandings.
外国の習慣を知らないと、思いがけない誤解を生ずることがある。
DeepL:外国の習慣を知らないことで、思わぬ誤解を招いてしまうことがあります。
Google:外国の習慣を無視すると、予期せぬ誤解が生じる可能性があります。

公式 3 主語を表す所有格
≪例文 3≫
I was able to see him just for five minutes on his arrival.
彼が着いた時、なんとか5分だけ会えた。
DeepL:彼が到着して5分だけ会えた。
Google:私は彼の到着時にたった5分間彼に会えました。

公式 4 目的語を表す所有格
≪例文 4≫
The city's destruction by the enemy did not bring the war to an end.
敵がこの町を破壊したあとも、戦争は終わらなかった。
DeepL:敵に破壊されても戦争は終わらなかった。
Google:敵による都市の破壊は戦争を終わらせませんでした。

公式 5 <of +名詞>―主語を表す場合
≪例文 5≫
The powerful reasoning of his opponent drove him to admit his error.
相手が実に強力な論理を展開したので、彼も自分の誤りを認めざるをえなかった。
DeepL:相手の強力な推理が、自分の過ちを認めるように追い込んだ。
Google:相手の強力な推論により、彼は間違いを認めざるを得ませんでした。

公式 6 <of + 名詞>―目的語を表す場合
≪例文 6≫
His application of the rule to this case was in a sense quite natural.
彼がこの規則を今回のケースに当てはめたのは、ある意味ではきわめて当然なことだった。
DeepL:彼がこのケースにこのルールを適用したのは、ある意味で極めて自然なことであった。
Google:このケースへの彼の規則の適用は、ある意味で非常に自然でした。

公式 7 無生物主語の構文
≪例文 7≫
Bad weather prevented me from going out.
天気が悪かったので、私は外出できなかった。
DeepL:天気が悪くて外出できなかった。
Google:悪天候のために外出できませんでした。

公式 8 A Good Swimmerの型
≪例文 8≫
He was the fastest runner in our c    lass.
彼は、クラスで走るのがいちばん速かった。
DeepL:彼はクラス最速のランナーでした。
Google:彼は私たちのクラスで最速のランナーでした。

公式 9 人称代名詞、指示代名詞
≪例文 9≫
My mother felt rather ill that morning, but she said nothing about it.
その朝、母はかなり気分が悪かったが、ひとことも口には出さなかった。
DeepL: その日の朝、母はどちらかというと体調が悪いと感じていたが、何も言わなかった。
Google:母はその朝、かなり気分が悪くなったが、彼女はそれについて何も言わなかった。

公式 10 反復を避けるためのthat, one
≪例文 10≫
He said that the voice was certainly that of a woman.
その声は、確かに女性の声だったと彼は言った。
DeepL: その声は確かに女性の声だったという。
Google:彼は声が確かに女性の声であると言った。

公式 11 関係代名詞 (1)―接続詞を補う
≪例文 11≫
She complained loudly to the shopkeeper, who answered her mildly.
彼女は大声で店員に文句を言った。だが店員はおだやかに応対した。
DeepL: 彼女は大声で店員に文句を言ったが、店員は穏やかに答えた。
Google:彼女は店主に大声で不平を言った。

公式 12 関係代名詞 (2)―分解する
≪例文 12≫
This is the point beyond which I've never been.
ここから先は、私もまだ行ったことがありません。
DeepL: これは私が今まで行ったことのないポイントです。
Google:これは私が一度も行ったことがないポイントです。

公式 13 形容詞・副詞を述語に―many, some
≪例文 13≫
We often go to the station by bus, but sometimes on foot.
駅まではバスで行くことが多いが、歩いて行くこともある。
DeepL: 駅からはバスで行くことが多いですが、徒歩で行くこともあります。
Google:私たちはしばしばバスで駅に行きますが、時には徒歩で行きます。

公式 14 文修飾の副詞
≪例文 14≫
Naturally he declined the offer.
彼がその申し出を断ったのは当然だ。
DeepL: 当然、彼は申し出を断った。
Google:当然彼は申し出を断った。

公式 15 形容詞を副詞に ―all, every, each
≪例文 15≫
All big cities have traffic problems.
大都会はどこも交通問題を抱えている。
DeepL: 大都市はどこも交通問題を抱えています。
Google:すべての大都市には交通問題があります。

公式 16 比較級・最上級
≪例文 16≫
This shop carries more foreign books than any other in Japan.
日本中で、この店ほど洋書をたくさん置いているところはない。
DeepL: こちらのお店では、日本のどこよりも多くの洋書を取り扱っています。
Google: この店は、日本で最も多くの外国の本を持っています。

公式 17 否定のからんだ比較表現
≪例文 17≫
No other planet comes so close to the earth as Venus.
惑星の中で、いちばん地球に接近するのは金星である。
DeepL: 金星ほど地球に近い惑星はない。
Google: 金星ほど地球に近い惑星は他にありません。

公式 18 as... asの構文
≪例文 18≫
There are not as many trees around here as three years ago.
この辺りは木が少なくなった。3 年前はもっとあったのだが。
DeepL: この辺りの木は3年前ほど多くはない。
Google: この辺りの木は3年前ほどはありません。

公式 19 受動態 (1)-自動詞を使って能動態に
≪例文 19≫
The game was called off on account of the darkness.
日没で試合は中止になった。
DeepL: 闇の中での勝負は中止になった。
Google: ゲームは暗闇のため中止されました。

公式 20 受動態 (2)―by ... を主語にして能動態に
≪例文 20≫
The town was occupied by the guerrillas.
その町はゲリラが占領していた。
DeepL: 町はゲリラに占領されていた。
Google: 町はゲリラに占領されました。

公式 21 受動態 (3)―暗示されたby ... を主語にして
≪例文 21≫
It is said [by them] that lightning never strikes twice in the same place.
雷は二度と同じ所には落ちないという。
DeepL: 雷は,同じ場所に二度と落ちないと言われている。
Google: [彼らによれば]同じ場所で雷が二度と当たらないという。

公式 22 受動態 (4)―受動態のまま
≪例文 22≫
This tree was struck by lightning last week.
この木は先週落雷にやられた。
DeepL: この木は先週雷に打たれた。
Google: この木は先週雷に打たれました。

公式 23 仮定法 (1) ―主語に仮定が含まれている場合
≪例文 23≫
A man of common sense would have acted differently.
常識のある人なら、そんな行動はとらなかっただろう。
DeepL: 常識ある人間なら違う行動をしていただろう。
Google: 常識のある人は違った行動をするでしょう。

公式 24 仮定法 (2) ―副詞句に仮定が含まれている場合
≪例文 24≫
With a little more care, he could have avoided the danger.
もう少し注意していたら、危険を回避できたはずだ。
DeepL: もう少し気をつけていれば、彼は危険を回避できたはずだ。
Google: もう少し注意すれば、彼は危険を回避できたでしょう。

公式 25 仮定法 (3) ―発想を転換する
≪例文 25≫
I wish I could have been of more use to you.
あまりお役に立てなくて、残念です。
DeepL: もっとお役に立てればよかったと思います。
Google: もっと役に立てばよかったのに。

公式 26 話法 (1) ―直接話法を生かす
≪例文 26≫
He said that I looked really nice in that dress.
そのドレスは君によく似合うよ、と彼が言った。
DeepL: そのドレスがとても似合っていると言われました。
Google: 彼は私がそのドレスで本当に素敵に見えたと言った。

公式 27 話法 (2) ―直接話法を掘り起こす
≪例文 27≫
Some people still don't understand the need for recycling.
なぜリサイクルが必要なのか、いまだにわかっていない人がいる。
DeepL: いまだにリサイクルの必要性を理解していない人がいる。
Google: 一部の人々はまだリサイクルの必要性を理解していません。

公式 28 強調構文
≪例文 28≫
It is only when you have your own children that you realize the troubles of parenthood.
自分の子供を持ってみてはじめて、親の苦労がわかるというものだ。
DeepL: 自分の子供ができて初めて、子育ての悩みを実感します。
Google: 親の悩みに気づくのは、自分の子供がいるときだけです。

公式 29 省略(共通)構文
≪例文 29≫
I've read many books written by him, but not all yet.
彼の著書はたくさん読んだが、まだ読んでいないものもある。
DeepL: 彼の書いた本はたくさん読んだが、まだ全部は読んでいない。
Google: 私は彼によって書かれた多くの本を読みましたが、まだすべてではありません。

公式 30 接続詞 (1)―except, without
≪例文 30≫
You cannot commit a crime without being punished.
罪を犯せば必ず罰せられる。
DeepL: 罰せられなければ罪を犯すことはできません。
Google: 罰せずに犯罪を犯すことはできません。

公式 31 接続詞 (2) ― till, until, before
≪例文 31≫
He did not get back before six o'clock.
彼が戻ったのは、6時を回ってからだった。
DeepL: 6時前には帰ってこなかった。
Google: 彼は6時前に戻ってこなかった。
 
  

翻訳英文法―訳し方のルール
安西 徹雄  (著) バベルプレス
 ⇒Amazon


BABEL UNIVERSITY 通信コース「バベル翻訳英文法 基本ルール」
https://www.babel-edu.jp/program/31003_2.html

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プロフィール

小室誠一
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
 

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