【ブログ】翻訳テクノロジーあれこれ by 小室誠一
「MTフェア2017」参加レポート(1)
投稿日時:2017/07/06(木) 09:50
2017年6月14日(水)にホテルアジュール竹芝でアジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)主催の「MTフェア2017」が開催されました。たいへん興味深い内容だったので、数回に分けて報告したいと思います。
アジア太平洋機械翻訳協会は1991年に「日本機械翻訳協会」として設立された(1992年に「アジア太平洋機械翻訳協会」と名称変更)歴史ある協会です。
以前は「活動報告会・講演会」として毎年開催されていましたが、2015年から「MTフェア」として開催されています。
<参考>
以下は筆者がその昔、月刊「eとらんす」に書いたレポートです。
「アジア太平洋機械翻訳協会 2002年度活動報告会・講演会」レポート(2003年6月20日)
http://www.babel-edu.jp/mtsg/aamt/aamt0306.htm
「アジア太平洋機械翻訳協会 2003年度活動報告会・講演会」レポート(2004年6月18日)
http://www.babel-edu.jp/mtsg/aamt/aamt0406/aamt0406.htm
<MTフェア2017のプログラム>
■AAMT長尾賞・長尾賞学生奨励賞授与式
■招待講演
講演1:「多言語音声翻訳システムの利活用実証について~現状と課題~」
吉田麻衣子(株式会社リクルートコミュニケーションズ)
講演2:「ニューラル機械翻訳ってどうなの?」
中澤敏明(国研 科学技術振興機構)
講演3:「機械翻訳の収益化の可能性」
佐藤弦(SDLジャパン株式会社)
今回は長尾賞について報告します。
■AAMT長尾賞・長尾賞学生奨励賞授与式
長尾賞は、2006年にAAMTの初代会長の長尾真先生によって設立された賞です。これは、学会の論文賞や発表賞のような学術賞ではなく、機械翻訳システムの実用化の促進および実用化のための研究開発に貢献した個人あるいはグループを表彰するものです。
2014年度には、新たにAAMT長尾賞学生奨励賞が設定されました。
授賞に先立って長尾先生からの挨拶がありました。
機械翻訳の研究で半世紀の間努力してきましたが、ここ2、3年でニューラルMTが出現し、非常に高いクオリティが実現した。まだまだ改善する余地はあるが、50年の進歩は遅々たるものであったが、ニューラルMTによって飛躍的に向上した、という趣旨のことを述べられました。
第12回長尾賞の受賞者は「八楽(やらく)株式会社」でした。
https://www.yarakuzen.com/
受賞理由:機械翻訳オンラインCATツール「ヤラクゼン」を開発し、翻訳の専業者でない一般の企業の人が、英文メール、社内ドキュメント、各種マニュアルなどを扱う際に有用となるツールを提供した。大企業を含む100社以上に数万人に渡る利用登録があり、このツールの提供によって機械翻訳サービスでの利用実績、ビジネスでの有用性を示すものである。これが機械翻訳の利用をさらに発展させるということで長尾賞に相応しい。
このサービスの提供先は企業であり、その点から言えばBtoBモデルですが、実際の利用者はその企業で働く社員個人であるという点からはBtoCモデルになるという、新しい形のサービスです。機械翻訳の訳文を自分で修正して保存することもできますが、クリック一つで翻訳者に翻訳を依頼することもできます。
第4回長尾賞学生奨励賞はJohn Richardson氏が授賞されました。
受賞対象論文「Improving Statistical Machine Translation with Target-Side Dependency Syntax(目的言語側の依存構文による統計的機械翻訳の改善)」
京都大学、黒橋教授の指導のもとに2016年9月に京都大学に博士論文として提出。
受賞理由:木構造から木構造への変換に基づく翻訳に関して、目的言語側の依存構造の情報を用いて木構造による言語モデルを作成し、これに翻訳結果のリランキングや英語の副詞のように位置の自由度の大きい要素をどこに挿入すれば良いかを決定するような手法を提案するものである。この提案手法によって、複数の言語対において、翻訳精度が改善することを示している。さらにニューラルネットワークに基づく言語モデルを利用して精度改善を図ることができることをも示している。
この後、各受賞者のスピーチがありましたが、割愛します。
アジア太平洋機械翻訳協会は1991年に「日本機械翻訳協会」として設立された(1992年に「アジア太平洋機械翻訳協会」と名称変更)歴史ある協会です。
以前は「活動報告会・講演会」として毎年開催されていましたが、2015年から「MTフェア」として開催されています。
<参考>
以下は筆者がその昔、月刊「eとらんす」に書いたレポートです。
「アジア太平洋機械翻訳協会 2002年度活動報告会・講演会」レポート(2003年6月20日)
http://www.babel-edu.jp/mtsg/aamt/aamt0306.htm
「アジア太平洋機械翻訳協会 2003年度活動報告会・講演会」レポート(2004年6月18日)
http://www.babel-edu.jp/mtsg/aamt/aamt0406/aamt0406.htm
<MTフェア2017のプログラム>
■AAMT長尾賞・長尾賞学生奨励賞授与式
■招待講演
講演1:「多言語音声翻訳システムの利活用実証について~現状と課題~」
吉田麻衣子(株式会社リクルートコミュニケーションズ)
講演2:「ニューラル機械翻訳ってどうなの?」
中澤敏明(国研 科学技術振興機構)
講演3:「機械翻訳の収益化の可能性」
佐藤弦(SDLジャパン株式会社)
今回は長尾賞について報告します。
■AAMT長尾賞・長尾賞学生奨励賞授与式
長尾賞は、2006年にAAMTの初代会長の長尾真先生によって設立された賞です。これは、学会の論文賞や発表賞のような学術賞ではなく、機械翻訳システムの実用化の促進および実用化のための研究開発に貢献した個人あるいはグループを表彰するものです。
2014年度には、新たにAAMT長尾賞学生奨励賞が設定されました。
授賞に先立って長尾先生からの挨拶がありました。
機械翻訳の研究で半世紀の間努力してきましたが、ここ2、3年でニューラルMTが出現し、非常に高いクオリティが実現した。まだまだ改善する余地はあるが、50年の進歩は遅々たるものであったが、ニューラルMTによって飛躍的に向上した、という趣旨のことを述べられました。
第12回長尾賞の受賞者は「八楽(やらく)株式会社」でした。
https://www.yarakuzen.com/
受賞理由:機械翻訳オンラインCATツール「ヤラクゼン」を開発し、翻訳の専業者でない一般の企業の人が、英文メール、社内ドキュメント、各種マニュアルなどを扱う際に有用となるツールを提供した。大企業を含む100社以上に数万人に渡る利用登録があり、このツールの提供によって機械翻訳サービスでの利用実績、ビジネスでの有用性を示すものである。これが機械翻訳の利用をさらに発展させるということで長尾賞に相応しい。
このサービスの提供先は企業であり、その点から言えばBtoBモデルですが、実際の利用者はその企業で働く社員個人であるという点からはBtoCモデルになるという、新しい形のサービスです。機械翻訳の訳文を自分で修正して保存することもできますが、クリック一つで翻訳者に翻訳を依頼することもできます。
第4回長尾賞学生奨励賞はJohn Richardson氏が授賞されました。
受賞対象論文「Improving Statistical Machine Translation with Target-Side Dependency Syntax(目的言語側の依存構文による統計的機械翻訳の改善)」
京都大学、黒橋教授の指導のもとに2016年9月に京都大学に博士論文として提出。
受賞理由:木構造から木構造への変換に基づく翻訳に関して、目的言語側の依存構造の情報を用いて木構造による言語モデルを作成し、これに翻訳結果のリランキングや英語の副詞のように位置の自由度の大きい要素をどこに挿入すれば良いかを決定するような手法を提案するものである。この提案手法によって、複数の言語対において、翻訳精度が改善することを示している。さらにニューラルネットワークに基づく言語モデルを利用して精度改善を図ることができることをも示している。
この後、各受賞者のスピーチがありましたが、割愛します。
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プロフィール
小室誠一
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
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