<新>翻訳に役立つソフトウェア活用法
第1回 簡単にTMXが作成できる「Align Assist」
投稿日時:2013/05/25(土) 14:10

第1回 簡単にTMXが作成できる「Align Assist」

この連載では、翻訳ソフトや翻訳メモリソフトに限らず、翻訳業務の効率化に役立つソフトウェアを取り上げて、その活用法を紹介します。
対訳ファイルを作成するアラインメントツールは数多くあります。翻訳メモリ機能のある翻訳支援ツールに付属していることが多いのですが、なかなか「これだ!」と言えるものがありません。
今回はその中でも、無料で使い勝手のよい「Align Assist」を使ってみたいと思います。
■Align Assistを使ってみる
Align AssistはFelixという翻訳支援ツール用のソフトですが、これだけ単体で利用できます。しかも無料です。
以下のサイトからダウンロードできます。
http://jp.felix-cat.com/tools/align-assist/
対応するファイル形式も、Microsoft Word (.doc, .rtf)、PowerPoint (.ppt)、Excel (.xls, .csv)、HTML、XML、Text、PDFと、一通りそろっており、うれしいことに翻訳メモリの標準形式であるTMXファイルで保存できます。
起動してみると、基本画面はいたってシンプルです(図1)。
(図1) 

基本的な使い方は、「参照」ボタンをクリックして、「原文ファイル」と「訳文ファイル」を指定してから「整合」ボタンをクリックするだけです。
早速やってみましょう。
■Align Assistで翻訳メモリを作成する
試しに、短文の英文と和文を対訳にしてみます。
ファイルを選択してから「整合」をクリックします(図2)。
(図2) 

「文節の取り込みが完了しました」とステータスが表示されて、「整合」画面が開きます(図3)。
この画面で、正しく対訳になっているかどうか確認します。最初から100%正しく対訳にできるアラインメントツールはないと思ってください。最終的に目視でチェックする必要があります。
対訳がずれていたら、手作業で修正します。したがって、修正しやすいかどうかがアラインメントツールを選ぶ際のポイントとなります。
Align Assistには、「分割」「統合」削除」「交換」というメニューがあります。これらを使って正しい対訳に修正します。
ここで「整合」画面の右下のステータスを見てください。原文と訳文の行数が食い違っています。どかで訳文(和文)が1箇所余分に分割されているようです。
じっくり見ていくと、ありました(図4)。原文の1センテンスを2つに分割して訳している箇所が原因でした。文末判定は、英文の場合はピリオド、和文の場合は句点が基本です。
以下のように原文と訳文が1対2になっています。
The mock turkey was a failure, no one wanted to eat tofu for Thanksgiving.
まがいものの七面鳥は失敗であった。
感謝祭に豆腐を食べたい者は誰もいなかったのだ。
翻訳メモリは1対1が原則ですからどちらかに合わせなければなりません。英日翻訳の場合は、英文に合わせればよいでしょう。
訳文のセルを選択して「統合」をクリックします(図5)。
131と132の訳文が、131に統合されました(図6)。
このような調子で、2文のはずが1文の場合は「分割」を使用して2文にしたり、順番を入れ替えるときは「交換」を使用したりして調整してください。
調整が完了したら保存します。
「上書き保存」メニュー→「TMXメモリの保存」をクリックします(図7)。
(図7) 

TMXメモリの保存画面が開いたら、ファイル名を入力して「保存」をクリックします(図8)。
言語選択画面が開きますので、「Source language」には原文の言語、「Target language」には訳文の言語を指定します(図9)。
ここでは、「Source language」に「English(United states)」、訳文に「(Japanese)」を指定しています。
(図9) 

作成されたTMXファイルを秀丸エディタで開いてみましょう(図10)。
「encoding」がutf-16になっています。TMXのバージョンは1.4です。
作成したTMX形式の翻訳メモリは、マルチステップ翻訳処理でおなじみの、フリーの翻訳支援ソフトOmegaTの「tm」フォルダに入れるだけで使用できます(図11)。
無料のソフトでも、このように実務的な環境を整えることができます。
手軽に利用できるので、翻訳支援ツール初心者でも日ごろから使い慣れておくことをお勧めします。
プロフィール
小室誠一
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
1990年から機械翻訳のユーザーとして活用法の研究を行う。
バベル翻訳大学院で、「翻訳者のためのテキスト処理」「翻訳支援ツール徹底活用」など、ITスキルに関する講座を担当。
編集部宛投稿メール
最新記事
- 第15回 総合的翻訳支援ソフト「PC-Transer 翻訳スタジオ V21」 (2013/12/25)
- 第14回 テキスト解析ソフト「Analyze Assist」 (2013/12/10)
- 第13回 テキストファイル比較ソフト「WinMerge」 (2013/11/25)
- 第12回 クリップボード監視ソフトなら「クリップアウト2000」 (2013/11/10)
- 第11回 便利なユーティリティソフト「PathText」と「WinShot」 (2013/10/25)
- 第10回 バイナリ文書対応のGrep検索が便利な「VxEditor」 (2013/10/10)
- 第9回 翻訳作業に便利なテキストエディタ「Apsaly」 (2013/09/25)
- 第8回 翻訳ユーティリティの定番「Okapi Rainbow」 (2013/09/10)
- 第7回 校正・推敲支援ツール「Tomarigi」 (2013/08/25)
- 第6回 翻訳者のためのHTMLエディタ 「TagAssist」 (2013/08/10)
- 第5回 まだまだ使える「Wordfast Classic」 (2013/07/25)
- 第4回 Chromeブラウザで動く翻訳支援ツール「Isometry」 (2013/07/10)
- 第3回 HTML編集用テキストエディタ「Crescent Eve」 (2013/06/25)
- 第2回 高機能な用語集検索ソフト「Xbench」 (2013/06/10)
- 第1回 簡単にTMXが作成できる「Align Assist」 (2013/05/25)
ブログ一覧
- 【ブログ】翻訳テクノロジーあれこれ by 小室誠一
- <新>翻訳に役立つソフトウェア活用法
翻訳ソフトや翻訳メモリソフトに限らず、翻訳業務の効率化に役立つソフトウェアを取り上げて、その活用法を紹介します。 - ■翻訳に役立つソフトウェア活用法
ブログ 7日間のアクセスランキング
- 1:第3回 フリーの翻訳メモリソフト「OmegaT」(55pv)
- 2:第9回 手軽に使える対訳ファイル作成ツール「AutoAlign」(48pv)
- 3:翻訳精度スコアBLEUを簡単に計算できるツール「シンプルMTスコア」(42pv)
- 4:第4回 英文ライティングに役立つコンコーダンサー「AntConc」(35pv)
- 5:第10回 便利なワードカウントソフト「Count Anything」(32pv)
- 6:第13回 テキストファイル比較ソフト「WinMerge」(30pv)
- 7:第1回 簡単にTMXが作成できる「Align Assist」(29pv)
- 8:みんなの自動翻訳をMemsourceで使ってみる(1)(27pv)
- 9:第2回 高機能な用語集検索ソフト「Xbench」(20pv)
- 10:みんなの自動翻訳をMemsourceで使ってみる(2)(16pv)
- 11:第1回 「EKWords - 高速キーワード抽出・集計」(15pv)
- 12:DeepL翻訳が日本語対応になった ― 翻訳英文法もびっくり(15pv)
- 13:第11回 辞書ソフトの定番「Personal Dictionary」(14pv)
- 14:第7回 校正・推敲支援ツール「Tomarigi」(12pv)
- 15:第2回 優れた用語管理ツール「xTerminology」(11pv)
- 16:第10回 バイナリ文書対応のGrep検索が便利な「VxEditor」(11pv)
- 17:機械翻訳支援ツール「GreenT」試用レポート(その2)(8pv)
- 18:第12回 クリップボード監視ソフトなら「クリップアウト2000」(7pv)
- 19:DeepLの訳文が読みやすい理由(7pv)
- 20:翻訳者の作業内容が変化している?(6pv)