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第226号 ALUMNI編集室から

第226号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

意図した誤訳-
一語の誤訳が世界を変える

   

 






バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹

 



原爆投下は、たった一語の誤訳が原因でした。

突き付けられたポツダム宣言に対し、熟慮の末に当時の鈴木貫太郎首相が会見で発した言葉は「黙殺」という言葉でした。日本側はこれを「
ignore」と翻訳しましが、連合国側は?

鳥飼玖美子氏の著書『歴史を変えた誤訳』では、興味深く、且つ、恐ろしい
「誤訳」の例が豊富に紹介されています。

これは当時の鈴木貫太郎首相のポツダム宣言に対する発言のことです。鈴木は「静観したい」と考えていたようですが、戦争を完遂したいという雰囲気の中、もっと強い言葉が必要だと考えました。それで「黙殺」という言葉を使ったようです。これを日本側は「
ignore」と翻訳し、連合国側がそれを「reject」と解釈、翻訳したと言います。

もちろん、この微妙な意図した?誤訳がなくても、他の多くの理由があり原爆が落とされたのかもしれません。しかしそれでも、例え、数パーセントの確率でも、落とされない可能性があったとするならば、どんなに悔やんでも悔やみきれない誤訳でしょう。


He is the last person to do such a thing.


皆さんはこれをどう訳しますか。

彼はそんなことをやる最後の人だ。⇒彼はそんなことは絶対にしない人です。

しかし、岩波文庫から出版されたある本には、同じ構文のこんな誤訳がありました。

その本とは満洲国皇帝・溥儀の個人教師だったイギリス人、レジナルド・ジョンストン が書いた『紫禁城の黄昏』の日本語訳です。

 本当は「皇帝が庇護をもとめる場合、世界中でこの人たちだけには 絶対頼りたくないのが蒋介石と張学良だった」と訳すべきところを、

岩波の本では
 「皇帝がだれかに庇護をもとめるとすれば、世界中で一番最後に頼る人物が
 蒋介石と張学良であることは、あらためていうまでもない」

と訳していました。

 「頼りたくない相手」というのを、「頼るベき相手」というまったく正反対の意味に翻訳していたのです。

 上智大学名誉教授の故・渡部昇一氏は これについて以下のようにコメントしています。

 『誤訳は誰にでもあることだから、それ自体は大したことではないだろう。
しかし、溥儀が、蒋介石と張学良を世界中で一番最後に頼る人物だと考えていたと翻訳するのは、このジョンストンの本の内容が まるで解っていなかった ということになる。(中略)こんなことはジョンストンの記述をそこまで読んでくれば、当然に解るはずなのだ。
 訳者たちが正反対に誤訳したのが単なる語学力の欠如なら許せるが、読者を誘導する意図があったとしたら
(歴史の削除のやり方からみて、その可能性がないとは限らない)許せない犯罪的行為であろう。』

意図した誤訳で世界を変えようとする意思が存在することを意識しつつ、翻訳者は等価交換すると言う翻訳者の職業倫理を全うする努力を続けたいと思います。



 

第225号 ALUMNI編集室から

第225号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

感じる力

   

 






バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹

 



仕事を含め、人生は課題(必ずしも問題ではない)を解いていくたゆまないプロセスとすると、当大学院の推薦者でもあり、個人的にも師事している田坂広志先生の以下の視点は、
大切な視点と実感します。

  「大局観」を磨く
  
https://bit.ly/2Inm8Ss

我々は得てして、課題を見つけると、問題分析⇒原因究明⇒原因除去⇒問題解決とリニア―に思考しがちです。言ってみれば、西洋的治療法。

しかし、人間界、自然界で起こる出来事は、その周辺の全てが複雑に意味を持って絡まって
いる複雑系で成ってます。

それは、循環構造と自己加速性、フィードバックループとポジティブフィードバックからなるので、ひとたび起こると、ますます起こりやすくなる仕組みを持つことになると言います。

従って、これが時には、悪魔のサイクルを呼び寄せ、時には、天使のサイクルを呼び寄せることになります。

小さなゆらぎが大きな変動を生み出していくわけです。

とすると、我々は、ひとたび課題に直面した時には、全体観察⇒構造理解⇒要所加療⇒全体治癒という、東洋的治癒の発想を大切にすべきと説きます。

そして、そのうちの要所加療こそが東洋医学で言う、ツボなわけで、ここをおさえておけば、
物事が順次、好循環で直っていくと言います。

そして更に説きます。その要所をどのように見つけ出すかを。

それが大局観。大局観とは直面する様々な課題が形成する循環構造を把握する力だと言います。

ここでは、全体観察が重要、これにより課題の構造が浮かび上がってくると言います。
これをコンストレーション(布置)と称しています。

そして、その時に必要なのが、考える力より、感じる力だと言います。

すなわち、論理的思考よりも、幾何的感覚、そして美的感覚が大切と説きます。

我々はつい安易に課題の犯人捜しをして自己満足してしまいがちですが、改めて人生を処する術をここに学びたいと思います。

*「大局観を磨く」の原稿は、田坂広志先生の許可を得て掲載しております。

 

第224号 ALUMNI編集室から

第224号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association


ご存知ですか?MMT(Modern Monetary Theory)

― 平成の30年間、いやそれ以前から日本は国の経済、
財政運営を誤っていたことを明らかにしてくれた、言わば、地動説。
 

   

 






バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹

 



落ち行く日本を看過できないので、私自身は経済の専門家でも何でもないのですが、今、日米で国の運営を根底から正す
MMT(Modern Monetary Theory)、現代貨幣理論についての基本的なことを触れたいと思います。

MMT(Modern Monetary Theory)とは、最近ではニューヨーク州立大学のケルトン教授が中心となって唱えられている経済、貨幣論の基本原則です。

MMTはポット出た経済理論ではなく、ケインズ、クナップ、シュンペーターと言った錚々たる経済学者が約100年前から主張していた経済の原理原則、しかし、当時から主流派経済学からは‘地動説’扱いされてバッシングされてきたと言われます。

しかし、今、ワシントン、そして日本に黒船のように急上陸、米国では国政を揺るぐまでに、日本でも、ここ30年の日本の衰退を招いた財務省主導の財政破綻論を大きく覆す動きに発展することが予想されます。

そのMMTの2つの柱は、我々が洗脳された経済常識とは180度違うものですが、停滞した日本、貧困化した日本を救う根拠を提示してくれています。

一つ目の柱は、自国通貨で発行した国債は債務不履行(デフォルト)はしないという当たり前のことです。従って、ハイパーインフレを注意すれば、赤字国債は有効に発行でき、財政赤字を心配する必要などないということ。言わば、財政赤字こそが正常な状態であり、財政赤字の拡大なくして財政健全化はないという事実です。

従って、緊縮財政のもと、中国をはじめ主要各国に圧倒的に後れをとった科学技術予算、軍事予算の拡大をはじめ、国土強靭化予算の拡大で事故死をなくす、母子家庭への経済支援等々、20年以上実質賃金が下がり続け疲弊している日本を救う根拠ともなります。

そもそも緊縮財政、財政赤字の心配など不要なのは、国の借金は結局のところ国民の資産になるからです。

二つ目は、通貨の価値は通貨が納税手段であることによって担保されるということ。ここでは詳細は触れませんが、我々がならった通貨の考え方を覆す、しかし、もっともな主張です。

ここまででも日本の財務省主導の頭脳の破綻は明らかですが、それを裏付ける財務省の
個人向け国債のPR文を読むと、精神分裂状態であることでその混乱が明らかです。

https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/index.html

財務省は赤字国債は将来へのツケ、と主張しながら、一方では個人国債は未来への贈り物と言っている??

平成の30年間、安倍政権は3本の矢といいながら、その内、最も推奨されるべき財政出動
すらほとんどしていないに等しいと言います。まして、一本目の矢、金融緩和、三本目の矢、規制緩和は効果期待値ほぼゼロ、おまけに、国力を落とす、日本を売り飛ばす施策なわけです。

すなわち、バベル崩壊から始まった
・緊縮財政
・消費増税
・各種民営化、自由化
・小さな政府、公務員削減 等々

これらは、日本を更に疲弊させ、国民を貧乏にさせる施策であることが、このMMT上陸でも明らかになりつつあります。

おまけに、移民受け入れを実質解禁した施策は、日本を生産性向上に向かわせず、日本を更にデフレ化、貧困化させていると言えます。

我々は再び日本が繁栄をを取り戻し、日本が世界をリードしていけることを願って、MMTという地動説を受け入れる歴史的瞬間に立ち会っていきたいと思います。

そのうえで、令和の時代、文化的余裕を更に取り戻し、世界における翻訳の意味をじっくりと考え、バベルの米国翻訳専門職大学院をベースに日本、そして世界の翻訳再立国を見届けたいと切に願います。



 

第223号 ALUMNI編集室から

第223号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

東大教授の日本人騎馬民族説は嘘 

   

 






バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹

 



ご存知でしょうか、日本は2,000年を越える世界最古の国であることを。2番目が
デンマーク、そして英国と続きます。日本は男系の皇統で続く、2,000年を越える最古の国となります。

では、この日本という国のルーツ、皇室の先祖はどこから来たのか、をご存知でしょうか。日本人騎馬民族説から始まり、大陸、朝鮮半島経由で来たと言うまやかしの説がこれまで唱えられてきました。

中国4,000年の歴史、韓国5,000年の歴史と言うまやかしが未だにまかり通っています。しかし承知のように、中華人民共和国は70年、漢民族の継続性はまるでなく、異民族の混血に過ぎません。また、韓国は72年の歴史に過ぎません。

90年代から2,000年にかけて、これらの歴史を決定的に覆す、科学的根拠が発見されつつあります。

結論から言いますと、日本人は北、今のロシア、満州、モンゴル等から来たツングース族と、その後、南、インドネシア、太平洋、ニュージーランド、ハワイ、台湾等から来たオーストロネシア人との混血からなる、海洋民族とのことです。

その科学的根拠は3つあります。

ひとつは、言語学的根拠です。

言語構造をみると、日本語とそっくりなのが今のロシア、満州、モンゴル等に住んでいたツングース語族の使う言語、ただ、唯一、接頭辞が使われていないのが例外とのことです。しかし、この接頭辞をふんだんに使う語族がオーストロネシア語族だそうです。

従って、言語学的側面から日本人のルーツを探ると、北、樺太から来たツングース語族と、その後、南からきた海洋民族オーストロネシア人の混血と考えられるそうです。

日本の神話にもあるように、日本はそもそも島国で、インドネシア、太平洋、ニュージーランド、ハワイ、台湾等に住むオーストロネシア人と同様に、船で各地を巡る海の民、海洋民族であったようです。

日本人が大陸、朝鮮半島から渡来してきたのではないことを実証するもう一つの科学的
根拠は、ミトコンドリアDNA研究から実証されたそうです。それは、大陸には見られない、極端に日本人にしかみられないY染色体D1b比率だそうです。日本全国では県平均はほぼ30%-45%を占めていると言います。

3つ目は、幼少時に母乳を介して母親から感染するATウイルスキャリア(成人T細胞白血病)が日本全国に非常に多くいるということです。一方、このATウイルスのキャリアは
ツングース語族とオーストロネシア語族に多く、大陸や朝鮮半島にはこのATウイルスは発見できないと言います。

加えて、稲作は日本の縄文人のところに紀元前2世紀ごろに大陸から渡来人がやってきて、水田技術を弥生人に伝えたというのは嘘だそうです。島根や鹿児島の縄文時代の遺跡から、稲特有のプラントオパールが次々と発見され、約6,000年前からすでにコメは生産されていて、更には、福岡県、佐賀県等の水田跡遺跡からは、3,000年前から水田方式を取り入れていたことが明らかになったそうです。これらは放射性炭素年代測定法により科学的に検証されたとのことです。

従って、日本の稲作は縄文時代からすでに始まっていて、縄文時代は通じて狩猟文明ではない事がわかったと言います。

ことほど左様に、歴史はこれまである意図をもって‘創られて’きたと言うことがよくわかります。令和元年、こうした洗脳に惑わされることなく、科学的に日本、日本人を捉えるべき新たな時代に入ってきたと考えるべきでしょう。

第222号 ALUMNI編集室から

第222号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

伊能忠敬に学ぶ、続ける事の大切さ。 

   

 






バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹

 



伊能忠敬の名前は「日本地図を初めて作った人」としてご存知でしょうが、それが
55歳を過ぎてから、17年に及ぶ年月を経て作られたこと、たくさんの苦難に見舞われながらの測量だったことなどは余り知られていません。今の世であれば、70歳で引退、その後、87歳までにこの偉業を成し遂げたと言っても過言ではないかもしれません。

伊能忠敬は、下総の佐原(現千葉県香取市)の生まれ、伊能家は酒造り、米、薪、燃料等などの取引を行なっていたものの、その商売は上手くいっておらず、忠敬の才覚で盛り返し。
50歳で隠居する時には資産は現在の価値で100億円近くにまでなったということです。

忠敬は飢饉の時も困難に直面した人々に手を差し伸べ、この地域では有名な名主として知れ渡るようになったそうです。

忠敬は
49歳の時、家業を長男に譲り、単身江戸へ出て当時30歳の幕府のお抱え学者、高橋至時に弟子入り、星学(天文学)や暦学の勉強を始めます。

古今東西、為政者にとって暦を決めるということは権力の象徴でもあり、正しい暦は為政者の力と知恵の象徴でもあると言われます。不正確な暦を作ることは、為政者の権威を揺らがせるものでもありました。だからこそ、歴代の為政者は星学者をお抱えにしていたのです。

忠敬が江戸に出た
18世紀後半は、当時の宝暦暦(ほうりゃくれき)がしばしば日食や月食を外すことから、庶民には評判の悪いものとなっている時期でした。そこで困った幕府が新しい暦を作ろうと市中から召し抱えた星学者の1人が高橋至時です。

忠敬は、この高橋至時を師として選び、一から星学を学びました。
19歳年下の師で、最初は忠敬も歳をとっていたこともあってなかなかついていくのが大変だったようですが、次第にその実力は至時も認めるほどになり、2人の間には師弟関係を超えた友情が芽生え、現在でも2人の墓は並んで建立されていると言います。

忠敬の運命が大きく変わったのは
1800年頃です。当時、新しい暦ができていましたが、まだ不完全なものでした。その原因に、地球の大きさが分からないというものがありました。忠敬は、同じ経度にある2地点間の北極星の角度の差から地球の大きさがわかることに気がつきます。ただし、師の至時は、誤差のことを考えると、江戸と蝦夷くらいの距離を正確に測らないと正しい地球の大きさは出ないと考えました。

忠敬の凄いところは、では実際に蝦夷地まで歩いて距離を測ろうと考えたことです。ただ、当時は国ごとにいくつもの関所がある移動制限の厳しい時代ですから、幕府のお墨付きがないとそのような仕事はできません。そこで至時は幕府に働きかけますが、最初はよい返事はかえってきませんでした。

そこで忠敬は、かつて恩を施した佐原の村人から請願を出してもらうように働きかけます。そうした活動が功を奏し、忠敬はこの測量責任者となったのです。ちょうど蝦夷地近海にロシアの船がやってくるという世情も忠敬の測量には幸運に運びました。

では当時、どのような方法で測量していたのか、ということですが。

忠敬は
55歳(1800年)の時に第一次測量のため、蝦夷地へ向かいました。
この時一緒だったのは息子、弟子
2人、下男2人、測量器具を運ぶ人足3人、それに馬2頭でした。

この時の測量は一定の歩幅(
70cm)になるような歩き方を訓練し、複数の人間が同じ場所を歩いた歩数の平均値から距離を計算していくという方法でした。 気が遠くなるようなやり方ですが、それでも毎日40kmを移動したと言うのですから、その脚力にも驚かされます。

 蝦夷地滞在は
117日間にも及び、帰宅後は測量データをもとに3週間かけて地図を完成させたと言われています。忠敬は最終的に第十次測量までを成し遂げます。

なお、
419日(旧暦閏)は、伊能忠敬が蝦夷地の測量に出発した日として、
「地図の日(最初の一歩の日)」と言われています。

 
   年代  場所  期間
第一次測量  1800  蝦夷地  117日間
第二次測量  1801  伊豆~東日本太平洋側  230日間
第三次測量  1802  東北日本海側  132日間
第四次測量  1803  東海・北陸地方  219日間
第五次測量  1805  近畿・中国地方  19ヶ月間
第六次測量  1808  四国  約n1年間
第七次測量  1809  九州前半  19ヶ月間
第八次測量  1811  九州後半  913日間
第九次測量  1815  伊豆諸島  約1年間
第十次測量  1815  江戸  約半月間

東日本の海岸線測量が完結した第四次測量の後、忠敬は当初の目的であった地球の大きさを求める計算を始め、その結果約4万キロという数値に辿り着きました。

忠敬の師である高橋至時の持つオランダの天文学書の数値と照らし合わせ、両方が一致することを確認し、
2人で大喜びしたそうです。

第十次測量が終了するまでの忠敬が歩いた距離は
4万キロとされ、それこそ地球一周分の距離を歩いたことになります。

このように、伊能忠敬にとっては、日本地図を作ることが本当の目的ではなく、「地球一周の長さを知りたい」という好奇心を叶えることが真の目的だったそうです。

そのためには、どうしても日本国内のある程度離れた
2地点から北極星を観測する必要がありました。その大義名分として、江戸幕府が防衛のために欲しかった蝦夷地の地図を作りに行くことを口実にしたと言われています。

なお、伊能忠敬が作成した日本地図の精巧さにも感心させられるのですが、一番の目的だった、地球一周の距離を測るということについても驚きです。

忠敬によると、一周は「
4弱(※)」。北極と南極を通る地球一周の実際の距離は
49㎞」ですので、99.7%の精度で距離を割り出していたということになります。

この成功で忠敬の名声と信用は高まり、以降は幕府の測量計画を任されることになります。そして亡くなる
1818年までひたすら日本を歩き続けたのです。その総距離は35000キロメートル、世界一周の9割弱の距離でした。

なお、忠敬の死は死後
3年間、隠されたことです。忠敬の後進らの手によって「大日本沿海輿地全図」が完成を見たのは1821年のことで、その時になって忠敬の死が公表されたそうです。「この地図は忠敬の地図でなくてはならない」という関係者の思いだったそうです。

最後に、伊能忠敬の残した言葉をかみしめて結びとしたいと思います。

『歩け、歩け、続ける事の大切さ』
 
『人間は夢を持ち前へ歩き続ける限り、余生はいらない』




参考文献:
「伊能忠敬: 日本を測量した男」 (河出文庫) 文庫  
童門 冬二 著
「四千万歩の男 忠敬の生き方」 (講談社文庫) 文庫
井上 ひさし著

 

第221号 ALUMNI編集室から

第221号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

令和元年への誓い:日本語を守る、日本を守る、国体を守る 
             そして、‘翻訳’で世界へ 

   

 






バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹

 




本誌、4月8日号で金融翻訳ジャーナリストの前田高昭さんが紹介しているように、激動の時代における日本の希望を象徴する新元号「令和」について報じる4月1日付ワシントン・ポストでは、
New emperor on Japan’s Chrysanthemum Throne heralds new ‘Reiwa’ era and desire for harmony, revival」と題し、激動の時代における日本の希望を象徴する新元号と伝えていたそうです。

記事では、新元号に決まった「令和」は、めでたさ(
auspiciousness)と調和を意味するとともに、激動の時代における日本の希望を象徴していると報じ、この名称は、これまでの伝統を破り、7世紀に遡る日本最古の歌集(the oldest anthology of Japanese poetry)である万葉集からの引用、漢書(Chinese classics)からではなかったと解説しているそうです。

また「令」という漢字は法令や命令を意味するが、万葉集では、冒頭で述べたような意味で使われていると補足していたそうです。

さらに記事は、万葉集は貴族だけでなく社会の下層の人たちや農民たちの作品を収めており、新元号が一体感(
sense of unity)を醸成することを希望していると、安倍首相が語っていると伝えたそうです。 
       *万葉集研究者よると、「令」は麗しい(整っている)の意味だそうです。

令和を迎えるこの機会に、改めて日本語、日本、そして日本という国体を考えてみたい
と思います。

1.    日本語を守る

西欧人がかつて、キリスト教文明圏、イスラム教文明圏、東洋文明圏と分けていたところを、あの20世紀の偉大な歴史家トインビーの再考を基に、『文明の衝突』の著者、国際政治学者のハンチントンが、7つの文明圏に分け直していることはご承知でしょう。

 西欧キリスト教文明圏、ロシア正教文明圏、イスラム文明圏、ヒンズー文明圏、シナ文明圏、中南米ラテン・アメリカ文明圏、そして日本文明圏。日本は一国だけで独自の文化圏をなす存在であると主張しています。

そのトインビーがどうしても解けなかった謎が、日本が明治維新以来、約30年で一気に近代化できた理由でした。結局、様々な文献を紐解いても、あの天才をしても‘奇跡’としか言いようのなかった日本の近代化。英国をはじめ、当時の西欧列強ですら100年以上の時が必要とされた近代化。

そのトインビーが解けなかった謎の答えの一つは、明治維新前の200年を越える江戸時代の‘参勤交代’にあったことに驚かされます。

では、その参勤交代がなぜ、日本の近代化に大きく貢献したか。それは、日本語という言語の統一であったと言います。

 江戸時代以前は、京弁と地方の様々な方言が混在していたところが、参勤交代によって共通言語としての江戸弁が普及したといいます。

参勤交代では、地方の大名が妻子をいわば人質として江戸に住まわされていたことにより、大名は自領に帰ると自ずと江戸弁を話すようになり、江戸弁が全国に共有されたと言います。加えて、その子、そして孫と2代、3代と重ねていくにつれ子孫は自ずと江戸弁を使うようになったわけです。こうして、明治維新を迎えるころには江戸弁が共通言語として使われるようになっていくわけです。

 明治維新当時、例えばフランスの人口2,500万人の内、フランス語を話せたのがたった300万人、他にも様々な言語が使われていたと言います。また、英国に在っては公用語が6つもあったと言います。

 明治維新以降の日本は、いわば、この言語統一という今にして思うと‘コミュニケーション戦略’によって奇跡を成し遂げたのです。こうして達成された先端の科学技術の共有、軍事技術の共有等がやがて日本を日露戦争の勝利に導き、殖産興業、富国強兵を果たし近代化を進めた要因であったといいます。また、当時の日本人の識字率に至っては日本は9割を超えていたと言います。一方、英国では20~30%、フランスは10%くらいであったと言います。

 翻って、英語至上主義の日本の現状を省みてみましょう。

 企業では英語公用語化が隆盛。大学ではスーパーグローバルOOと授業の英語化に必死、小学生は5年、いや3年生から英語授業を始めると言います。やがて、私立中学の受験に
英語が入ってくることでしょう。

 英語至上主義、日本でも喧しく企業内の英語公用語化の話題がマスコミを賑わせていますが、これこそ所謂グローバリスト、国際金融資本家の思う壺。日本が二流国に転落するのが目に見えています。

すなわち、英語を第二公用語として使う、インド、マレーシア、ケニアなどの旧イギリス植民地諸国、フィリピン、プエルトリコなどの米国占領下にあった諸国。かれらはある意味、英語を公用語として採用して、言語の統一を計らず、結果として二流国を甘んじて受け入れた国と言えるでしょう。

あの理想国家といわれるシンガポールでさえ、常に複数の言語を学ばなければならないことから始まり、エリート主義による経済格差の拡大、国民の連帯意識の欠如。そして、独自の文化、芸術が生まれない文化的貧困を皆さんはご存知でしたでしょうか。これこそ、英語化路線の一方のひずみと言えると思います。

 日本は、翻訳を盾に、日本語が国語である位置を堅持して、決して日本語を現地語の位置に貶めませんでした。6,7世紀ころから中国文明を消化、吸収するに中国文化を和漢折衷で 受け入れ、真名、仮名、文化を作り上げできた融通無碍な翻訳日本文化。

 明治維新以降も、日本語を堅持し、翻訳という方法を通じて、欧米の当時の先進文化を土着化することによって民度を上げて世界のトップに躍り出た日本。

日本は明治の近代化で翻訳を通して知的な観念を土着化し、だれでも世界の先端知識に触れられる環境を創ってきました。ひとつ間違えれば、国の独立さえ危ぶまれた明治の日本は当時の英語公用語化論を退け、翻訳を通じて日本語による近代化を成し遂げました。

その戦略の先進性に改めて驚くとともに、先人の先見の明、また、参勤交代という歴史の必然にただただ感謝するばかりです。

更に、ここで日本語を普及させることの世界的意義を考えましょう。

以前、本誌で日本語教育者であり、言語学者の金谷武洋氏の説として、英語は主語(私)と目的語(相手)を切り離して対立する世界にする、と言う説を披露しました。

例えば、広島の平和公園の中の慰霊碑の碑銘に「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」と書いてありますが、ここには誰の過ちかは明らかにされていません。ここには私とあなたが共存し、あたかも敵と味方の共存する姿を暗示しているかのようです。

さらに身近な「ありがとう」、「おはよう」と言ったことばから、日本語の本質に迫ります。

 日本語の「ありがとう」には話し手も聞き手も、つまり人間が出てきません。
それに対して
Thank youI thank you.となります。

 日本語の「ありがとう」は「有難う」、すなわち、あることが難しいという形容詞。
 「めったにない」という状況を表現しています。従って、著者は、英語は「(誰かが何かを)する言葉」、日本語は「(何らかの状況で)ある言葉」、としています。

また、英語の「おはよう」は、英語の
I wish you a good morning.で、わたしが登場し、この朝がいいものであるようにと、積極的な行為を表現しています。

対して日本語のおはようございます、は二人が「まだ早い」という状況で心を合わせているのです。ふたりはそう共感しているわけです。

すなわち、日本語は共感の言葉、英語は自己主張と対立の言葉と言えそうです。

カナダのモントリオール大学東アジア研究所で20余年に亘り日本語を教えてきた著者は、日本語の学習を通じて、学習者の世界観が、競争から共同へ、直視から共視へ、抗争から共存へ変わると言います。

日本語という言葉そのものの中に、自己主張にブレーキがかかるような仕組みが潜んでいると言うのです。

一方で、英語話者は
Listen to me.、Let me tell you something. 、 You won’t believe this.など、上から目線で自己主張してくるわけです。

金谷先生は自著の最後の章を「だから、日本語が世界を平和にする!」と結んでいます。

金谷先生の経験から言うと、日本語を学習すると性格が変わってしまう。攻撃的な性格が温和な性格になると言います。

わたしもバベルの大学院関係者でご主人が日本語が多少ともできる英語話者である場合、
喧嘩をしたときに日本語に切り替えると喧嘩は収まることが多いと聞きます。
これが所謂、フランス語で言う
tatamiser効果ということなのでしょう。

 日本語の学習を通じて、学習者の世界観が、競争から共同、直視から共視、抗争から共存に変わっていくと結んでいます。日本語は最も平和志向が強い、ロマンチックで幸せな美しい言葉と自信をもって言えると言います。

今、世界の文化の潮流は西から東へ、男性性から女性性へ向かっていると言われます。

 日本人はもっと自信をもって、しかし、母性的強い意志と日本語で世界を調和していくことが必要と心から確信します。

最近の改正移民法(入国管理法)の実施で思うのは、寛容の精神で移民にそれぞれの国の言語を学ばせることを義務付けなかったことにより、国が分断されつつあるヨーロッパ各国の悲惨な状況です。この轍は踏まないよう移民予備軍には日本語(日本精神)をしつかり学ばせたいと考えます。

米国が星条旗に誓いをさせて、徴兵にも応ずるように移民に義務化させていることを考えれば、日本語、君が代、皇統を尊重することを義務付けても良いように思います。

2.    日本を守る

世界が、特にヨーロッパ各国がグローバル化、移民の大量移入で疲弊している状況は皆様も様々なニュースでご承知でしょう。

ウォール街に代表される金融資本家に踊らされて、人、モノ、金の自由化に踊らされた結果、国体を破壊され今の悲惨な状況となったヨーロッパ各国。

この時点では行方は不透明とは言いながら、 賢明なイギリスは一昨年6月にEU離脱(
Brexit)を表明、イギリスを取り戻すという方向へ舵を切りました。思い起こすと、同様に移民人口比率が15%内外のフランスのサルコジ大統領もその在職期間中にフランスとは何か、フランスを取り戻す運動をしていたのは記憶に新しいところです。

 「我が国は古来こういう国なので、こうありたい」、と堂々と自国を主張しにくくなっているのが昨今のヨーロッパ事情のようです。 

人、モノ、金、情報の自由な移動、グローバリズムを盲目的に良しとしている人は、そもそもこの願い自体が意味のない事と言うのかもしれませんが。

例えば、今、ドイツはドイツ人がドイツはこういう国だ、と堂々と言えない国になりつつあると言います。年間何十万人もの移民が、特にイスラム系の移民が流入していて、かれらが自国のことを声高に主張すると、レイシスト呼ばわりされる国になりはて、おまけに、流入する移民たちは凶悪犯罪の温床にもなっていると言う惨状です。

 英国の国勢調査によれば、ロンドンの住人のうち「白人の英国人」が占める割合はすでに半数を切っているといいます。ロンドンの33地区のうち23地区で白人は少数派に転落していると言います。

 英国民に占めるキリスト教徒の割合も、過去10年間で72%から59%と大幅に減少し、2050年までには国民の三分の一まで減る見込みです。

 他に、例えばスウェーデンでも今後30年以内に主要都市すべてでスウェーデン人(スウェーデン系スウェーデン人)は少数派に転落するという予測もあります。

このように、グローバリスト主導の外国人労働者の受け入れに端を発する移民国家化によって、ヨーロッパ諸国は、民族構成や宗教や文化のあり方が大きく変容しつつあります。正面から十分に国民の意思を問うたわけでもなく、いつの間にか、「国のかたち」がなし崩し的に大きく変わってきてしまっています。その結果、ヨーロッパ文明は死に、ヨーロッパ人はかけがえのない故郷を失っていくと言うのです。

グローバリストが新自由主義の政策、開放経済、規制緩和、小さな政府、これに基づき世界経済の再編を進めてきたわけですが、これに世界が異議を唱えたのが2018年、ここから新たな潮流が始まったと言えそうです。

 言い換えれば、世界の大きな潮流はまさに
Independent に向かっていると言えるでしょう。Independent な人、社会、国が、Independent な人、社会、国とInter-Independentな関係をもって、融和していく。そこには一定レベルの争いもあるでしょうが、それを覚悟で調和をめざす必要があるのでしょう。

ヨーロッパ各国の状況は、特定技能労働者として外国人労働者の大量受け入れをほぼ決めてしまった日本にとっても他人事ではありません。我々は、ヨーロッパの陥っている苦境から学ぶ必要が大いにあります。

 日本も着々と移民国家への道を歩んでいると言えるでしょう。コンビニの店員がアジア系というのは身近に感じているのでしょうが。我々が知らないところでこの移民化政策が進行しつつあります。

  技術研修生という名のもとに日本に5年間滞在、その後はその技術をもって母国に貢献するというのがその制度の目的だったはずですが、これからは、更に5年更新され、一定の要件を満たせば、専門技能の人材として家族帯同が許され、実質的に移民となっていくと言われます。また、定員割れの大学、各種学校が留学生と称して受け入れる事に関しても移民化につながるグレーな部分が多いと聴きます。更に、介護、農業の分野でも同様の危惧が感じられます。

もちろん、私もこのような移民政策の全てを否定するわけではないのですが、資格要件は明確にしなければ、それに関する様々な利権がもぐり、斡旋ビジネスに利用され、なし崩し的に緩い移民受け入れ制度になる危険性もあります。例えば日本であれば、その要件の一つとしてその専門技能等の基本要件はもちろんですが、少なくとも日本語の能力を明確に資格審査に加えるなどしないと、ヨーロッパの二の舞になるのは明らかです。

ちなみに、世界で最も移民の割合が高いのは
UAEで、人口の88%。次いでフランス領ギアナが40%、サウジアラビア37%、スイス30%、オーストラリア29%、イスラエル25%、ニュージーンド23、カナダ22、カザフスタン20%などの順で、米国は15%、ドイツも15%、英国は13%、イタリアは10%となっていますが、日本もこれらに次に位置する状況にあるといいます。 

では、この移民化政策がなぜ、ひそかに進んでいるのでしょう。一つは経済界の要請、人件費を上げたくない、生産性向上より、安易に、人件費を抑えるために移民化を後押ししているようです。もちろん、その背後には、自らの利益を優先するグローバル資本家、株主の意向があることは明らかです。 

加えて、無防備な日本、それに付け込んで入り込んでくる中国をはじめとする移民予備軍。中国はいわば一帯一路に象徴されるように、世界の覇権国家たらんとし、各国に人民を送り込んで洗国(
Ethnic Cleansing)を企んでいるというのがその歴史からも想像できます。 

中国本土の高額な医療費を逃れるために、日本で起業、ビザを取って
3年もすると、日本の国民健康保険に加入でき、中国では膨大な治療費がかかる高額医療を日本で受けられると言います。おまけに、高額医療費を逃れ、日本の国民保険を食いものにする仲介ビジネスが中国本土で活況を呈しているといいます。情けないことに、日本の厚生労働省はその実態すら十分に把握できてないという体たらくだそうです。 

こうした実態をみると、少なくとも移民政策の先進国?のヨーロッパの惨状を知っているのかと日本政府に言いたくなるところです。のほほんと移民化政策を進める日本。その無防備な日本にあきれるばかり。アメリカの傘のもとに危機感を忘れ去ってしまった日本は、今こそ、自立と自律をめざす必要があるのでしょう。


3.    国体―皇統を守る

世の中が、御代替わりで一見浮かれモードの中、密かに「令和」という元号を無くそうとする勢力がいることをご存知でしょうか。

新元号の発表を控えた
327日、 新元号の差し止めを求める訴訟が起こりました。
訴訟を起こしたYY氏は このような主張をしています。

 元号の制定が国民それぞれの『連続した時間』を切断・破壊する。
 世界中で日本にしか残ってない元号制は、 国民を「天皇の時間」に閉じ込め、
 個人の尊厳を侵害している。
天皇の即位のたびに元号を制定するのは違憲だ!というのです。

元号制度は、日本で
1400年近く、連綿と続いてきます。
これは日本が、「
1400年にもわたり、独自の文化・時間軸をもっていて、世界に誇る
伝統をもつ独立国家である」ということを示しています。

日本国民の多くが知らないことなのですが、”こんなにも長い歴史をもつ国は他にない”と、
伝統を重んじるイギリスからも、 建国
200年のアメリカからも、 日本は賞賛されています。

にもかかわらず、反対勢力は誇るべき日本の制度や歴史を自ら否定しているのです。

日本の中心である天皇のことを貶めるために、このような解釈をしているとしか思えません。

日本の皇統は2000年以上の検証に耐えたシステムなのです。
神話の時代から在る男系の皇統です。

世界で現存する王室の中でも、最古の歴史を持ち、エリザベス女王やデンマーク国王より格上、世界唯一の
EmperorThe Emperor of Japan 日本の皇室なのです。
従って、宮内庁のホームぺージにあるように皇室は、
Imperial FamilyRoyal Familyとは
言わないのです。

2000余年、この世界一の長い歴史をもつ万世一系の皇統を脅かす企みが密かに
進行しているのをご存知でしょうか。

それは、皆さんも新聞等でお聞きになったと思いますが、
女性宮家(もともと男性宮家)、女系天皇制です。

神話の時代から在る男系の皇統を崩そうとするのが、女性宮家の復活、女系天皇制です。
国連機関が浅薄に日本の天皇制は女性差別と言っているようですが、これこそ無知そのもの、そもそも差別しているのは日本人の男性なわけです。すなわち、現在の皇室制度の中では、決して一般男性が皇族にはなれないし、女系の天皇(女性の天皇ではありません)はありえないわけです。

ところが、女性宮家が認められ、女性天皇が誕生するとすると、そのお婿さんは天皇になれるとなり、どこの国の男性でも天皇になり得るという怖いことになりかねません。

そんな可能性がこの一連の議論には含まれていることをご存知でしたでしょうか。これを企むとすれば、それは日本の皇統をうらやみ、崩そうとする勢力が暗躍しているとしか思えません。

神武天皇から開化天皇までの存在を否定している、日本の歴史学者。日本の正史、日本書紀、
古事記を信じないで、魏志倭人伝等の大陸の歴史書を信じている本末転倒の歴史学者たち。

GHQによる歴史教育の否定から、ここまでつながる欺瞞。
そろそろ我々も健全なナショナリズムで日本の国体、神話を取り戻す時に来ているのでは
ないでしょうか。

本稿のタイトルを、日本語を守る、日本を守る、国体を守るとしましたが、この3つを守る秘密兵器こそ‘翻訳’であると確信している今日この頃です。

第220号 ALUMNI編集室から

第220号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

Universityを超えるUniversity、Singularity University 

   

 






バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹

 




Singularity University

https://su.org/


The singularity is near
の著者、レイ・カーツワイルは、その著で「テクノロジーの進化のスピードが無限大になる」、シンギュラリティが2045年に到来する、と予言しました。レイ・カーツワイルはグーグル社で技術責任者を務め、持っている博士号は20以上という天才的未来学者。

Singularity University
は、2008年、このレイ・カーツワイルとピーター・ディアマンディス(「楽観主義者の未来予測(Abundance)」の著者)の2人が発起人になってカリフォルニア州に設立されました。名前は大学とされていますが、実態は公益企業、大学の認証を受けるにはあまりにも先進的すぎるので断念したと言います。

教育・研究機関であると同時に、ベンチャーキャピタルでもあり、創業はグーグル、シスコ、オートデスクといった企業がスポンサーになっていたと言います。

キャンパス、宿泊施設はシリコンバレーのマウンテンビューでNASAの敷地内にあるといいます。24時間体制で教育プログラムに参加し、起業に至るまでのマインドセットを徹底的に植え付けるので
SUSleepless University、寝ない大学という異名もあるくらいだそうです。

Our mission is to educate, inspire, and empower leaders to apply
exponential technologies(指数関数的に進化するデジタル技術)to address humanity’s grand challenges.

We believe that by catalyzing an
exponentially transformed, engaged, and activated community of inspired solvers, startups, corporations, development organizations, governments, academic institutions, and investors, we can better address systemic problems we face globally today.

Singularity University (SU) is a global community using
exponential technologies to tackle the world’s biggest challenges.

Singularity University (SU) is a global community using
exponential technologies to tackle the world’s biggest challenges. SU’s learning and innovation platform empowers individuals and organizations with the mindset, skillset, and network to build breakthrough solutions that leverage emerging technologies like artificial intelligence, robotics, and digital biology. With our community of entrepreneurs, corporations, development organizations, governments, investors, and academic institutions, together the community has the necessary ingredients to create a more abundant future for all.

Located on the campus of NASA Research Park in Silicon Valley, one of the world’s great epicenters of innovation, Singularity University’s educational offerings include its signature Global Solutions Program (GSP), Executive Programs, and Custom Programs for corporate training. SU also produces three industry-targeted, high-level conferences each year:
Exponential Medicine, Exponential Manufacturing and Exponential Finance, in addition to a Global Summit.

そのプログラムは大きく分けて4つ。

The Global Startup Program (GSP) is the flagship program of SU, first offered in 2009. The GSP convenes future leaders, entrepreneurs, and technologists from around the world in a 10-week collaborative experience to develop team-based technology solutions to widespread global challenges. During the GSP, SU challenges participants to design sustainable global solutions to the Global Grand Challenges in Team Projects, leveraging
exponential technology trends, innovation and the power of entrepreneurship to help create solutions in the areas of food, water, energy, environment, health, security, education, prosperity, shelter, space, disaster resilience and governance.

Executive Programs (EP) are week-long intensive and interactive programs designed to bring together leaders across a variety of fields — corporate executives, entrepreneurs, academics, government leaders and influencers — to learn about the technologies, tools, and mindsets that will best help them understand and respond to the current wave of accelerating change.

Custom Programs incorporate the core curriculum content from Executive Programs, but are tailored to the needs of a specific industry or community. SU has delivered these programs worldwide for corporate, non-profit, NGO, and government organizations.

Innovation Partnership Program (IPP) is a joint venture of Singularity University and the XPRIZE Foundation, and is presented by Deloitte. IPP curates a select group of Fortune 500 companies to participate in a three-year program, positioning them to identify and drive breakthroughs in their industries. The experience includes educational sessions on
exponential technologies and use of the tools, ‘insights-to-action’ workshops, and thematic field trips to emerging tech companies and innovative hubs around the world.

SU Exponential Summits are multi-day events that look at breakthrough innovations and accelerating technologies as they impact individual verticals, including Finance, Medicine & Healthcare, and Manufacturing.

Singularity University is Global, with Chapters being organized in scores of countries around the globe and Singularity U Global Summits, two-day programs that showcase the profound influences of exponential technologies and the opportunities for impact created by the resulting disruptions. In 2016, Summits were held in India, Chile, Germany, The Netherlands and New Zealand. In collaboration with its alumni, community and corporate partners in The Netherlands, SU opened its very first
Exponential Partnership and Innovation Hub in Eindhoven.
(以上、Singularity UniversityのWEBページより)

Singularity University
のミッションは、世界の指導的な立場の人たちを教育し、エンパワーすることを通して人類が直面する最大の課題を指数関数的な技術で解決することとしています。人類にとって重要な課題を12のテーマをグローバルチャレンジとして列挙しています。

Humanity’s global grand challenges

https://su.org/about/global-grand-challenges/

Disaster Resilience
Energy
Environment
Food
Global Health
Governance
Learning
Prosperity
Shelter
(住宅)
Security
Space
Water

受講した人が3万人、110カ国に及ぶ。既に34のスタートアップを設立し、2億ドル以上の資金調達を実現していると言います。世界の65カ国にチャプター(支局)があり、昨春東京にも支局ができたそうです。政府自治体の政策提言など373コミュニティとして企業や政府、投資家が集まって指数関数的技術を活用して解決に取組んでいるとのこと。

Singularity University
のプログラムに参加することで世の中の見方が変わることは間違いないようです。

Massive Transformative  Purpose
(野心的な変革目標)という言い方があります。

グーグルは「世界中の情報を整理する」という目標を掲げた。
TEDは「価値あるアイデアを広める」
シンギュラリティ大学は
     「10億人に良い影響を与える」

バベル翻訳専門職大学院USAは
     「日本語という稀有な言語を一方の基軸に、翻訳を通じて世界の智を変革する
      人材を育て、共に起業する」そんな大学院になりたいと考えます。


バベルグループは大学院を含む、翻訳ビジネス複合体として、Out of Box既成概念という幻想の箱を出よう」がモットー。一隅のプレーヤーでも社会変革の一端を担いたいと考えています。


以下、参考映像です。

https://www.youtube.com/singularityu
https://www.youtube.com/watch?v=qQ55_tsvARU
https://www.youtube.com/watch?v=nYC_Ufnuu7I
https://www.youtube.com/watch?v=1uIzS1uCOcE
https://www.youtube.com/watch?v=lAJkDrBCA6k

第219号 ALUMNI編集室から

第219号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

20世紀の偉大な歴史家、トインビーが解明できなかった日本の急速な近代化  

   

                                                バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹
 


 
西欧人がかつて、キリスト教文明圏、イスラム教文明圏、東洋文明圏と分けていたところを、あの20世紀の偉大な歴史家トインビーが、7つの文明圏に分け直していることはご承知でしょう。

西欧キリスト教文明圏、ロシア正教文明圏、イスラム文明圏、ヒンズー文明圏、シナ文明圏、中南米ラテン・アメリカ文明圏、そして日本文明圏。日本は一国だけで独自の文化圏をなす存在であると主張しています。

そのトインビーがどうしても解けなかった謎が、日本が明治維新以来、約30年で一気に近代化できた要因でした。結局、様々な文献を紐解いても、あの天才をしても‘奇跡’としか言いようのなかった日本の近代化。英国をはじめ、当時の西欧列強ですら100年以上の時が必要とされた近代化。

そのトインビーが解けなかった謎の答えの一つは、明治維新前の200年を越える江戸時代の‘参勤交代’にあったことに驚かされます。

では、その参勤交代がなぜ、日本の近代化に大きく貢献したか。それは、日本語という言語の統一であったと言います。

江戸時代以前は、京弁と地方の様々な方言が混在していたところが、参勤交代によって共通言語としての江戸弁が普及したといいます。

参勤交代では、地方の大名が妻子をいわば人質として江戸に住まわされていたことにより、大名は自領に帰ると自ずと江戸弁を話すようになり、江戸弁が全国に共有されたと言います。加えて、その子、そして孫と2代、3代と重ねていくにつれ子孫は自ずと江戸弁を使うようになったわけです。こうして、明治維新を迎えるころには江戸弁が共通言語として使われるようになっていくわけです。

明治維新当時、例えばフランスの人口2,500万人の内、フランス語を話せたのがたった300万人、他にも様々な言語が使われていたと言います。また、英国に在っては公用語が6つもあったと言います。

明治維新以降の日本は、いわば、この言語統一という今にして思うとコミュニケーション戦略によって奇跡を成し遂げたのです。こうして達成された先端の科学技術の共有、軍事技術の共有等がやがて日本を日露戦争の勝利に導き、殖産興業、富国強兵を果たし近代化を進めた要因であったといいます。また、当時の日本人の識字率にいたつては日本は9割を超えていたと言います。一方、英国では20~30%、フランスは10%くらいであったと言います。

翻って、英語至上主義の日本の現状を省みてみましょう。

企業では英語公用語化が隆盛。大学ではスーパーグローバルOOと授業の英語化に必死、小学生は5年、いや3年生から英語授業を始めると言います。

英語至上主義、日本でも喧しく企業内の英語公用語化の話題がマスコミを賑わせていますが、これこそ所謂グローバリスト、国際金融資本家の思う壺。日本が二流国に転落するのが目に見えています。

すなわち、英語を第二公用語として使う、インド、マレーシア、ケニアなどの旧イギリス植民地諸国、フィリピン、プエルトリコなどの米国占領下にあった諸国。かれらはある意味、英語を公用語として採用して、言語の統一を計らず、結果として二流国を甘んじて受け入れた国と言えるでしょう。

あの理想国家といわれるシンガポールでさえ、常に複数の言語を学ばなければならないことから始まり、エリート主義による経済格差の拡大、国民の連帯意識の欠如。そして、独自の文化、芸術が生まれない文化的貧困を皆さんはご存知でしたでしょうか。これこそ、英語化路線の一方のひずみと言えると思います。

日本は、翻訳を盾に、日本語が国語である位置を堅持して、決して日本語を現地語の位置に貶めませんでした。6,7世紀ころから中国文明を消化、吸収するに中国文化を和漢折衷で 受け入れ、真名、仮名、文化を作り上げできた融通無碍な翻訳日本文化。

明治維新以降も、日本語を堅持し、翻訳という方法を通じて、欧米の当時の先進文化を土着化することによって民度を上げて世界のトップに躍り出た日本。

その戦略の先進性に改めて驚くとともに、先人の先見の明、また、参勤交代という歴史の必然にただただ感謝するばかりです。

 

第218号 ALUMNI編集室から

第218号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

日本語翻訳プロフェショナルはAIに代替されるのか!? 

   

                                                バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹
 


 
今回は
BABEL UNIVERSITYWEBサイトを借りて
 https://www.babel.edu/
 ’AI時代に翻訳をどう考えるか’
 を共に考えていきたいと思います。

ここで公開しているのは以下の3つの記事です。

1.翻訳プロフェショナルは
AIに代替されるのか!?
2.
NEW!! AI優位の未来でも、翻訳(を学ぶこと)が必要な理由
3.翻訳者の資格が問われる時代に突入!!

今後もこの分野の専門者にこのテーマに関して寄稿いただきます。

今回は‘翻訳プロフェショナルは
AI
に代替されるのか!?’を本誌でお読みいただきます。



初めに以下の
18分のTEDのスピーチを聴いてください。
 題して 
‘How great leader inspire action’


このWhyからはじまる行動パターンは決して一部のビックな経営者に限らないと思います。

さて、現在の市場に目を転じてみましょう。ビックデータ、統計的手法が進化する中、第
3AIブームが到来しています。ここ10年、20年先には我々の仕事の半分が消えてなくなる、いかにも雑誌が売れそうなテーマで危機感をあおっています。典型がSingularity(技術的特異点)の危機、2045年には人間がAIに使われる時代に突入すると言われています。

これらに踊らせられて右往左往するほどばかげたことはないと思いますが、しかし、常に主役たる人間としては、これらの議論の中に含まれるパラダイム変換には気づく必要があるでしょうし、その上で、先手先手で手を打つ必要はあるでしょう。

翻訳の分野においては、現在、ニューラル型機械翻訳の領域に入り、特定の分野ではかなりの精度の翻訳が期待されてきたとは言え、まだまだ全面的に任せるには程遠いというのが、この業界の常識です。従って、我々のスタンスとしては支援ツールとして使えるなら分野を特定するなどして活用することです。
MTを使いこなす翻訳のプロフェショナルは分野によっては市場価値も出てくるはずです。 

AI,人工知能には以下の限界があると言われています。 
 ・意思がない
 ・知覚できない
 ・事例が少ないと機能しない
 ・枠組みのデザインができない
 ・問いを生み出せない
 ・ひらめきがない
 ・常識的な判断ができない
 ・リーダーシップが取れない
(安宅和人 ヤフー チーフストラテジーオフィサー)

ということはこれを読みかえると、
 ・意思をもって
 ・自ら問い(WHY)を設定、課題を設け
 ・枠組みをデザインして
 ・リーダーシップをもって
課題を解決していくことが
AIに代替されず、AIと相互補完関係でハピーな将来像が描けると言ってよいでしょう。

最初にご紹介した
TEDのスピーチを聴かれた方は同様の考える枠組みに気づかれたと思います。

一方、こんな言い方もされます。
AIで代替されにくい仕事とは

 1. 商品企画、映画を撮るといったクリエイティブ系の仕事
 2. プロジェクト管理や会社経営などのマネージメント系の仕事
 3. 介護、看護、保育のようなホスピタリティ系の仕事
 (井上智洋 大学教授、
AI社会論研究会共同発起人)

ではこれらを勘案して、翻訳力をベースにどう起業するか、を改めて考えてみましょう。

翻訳はある原文を他の言語に変換するだけのクリエイティブ性に欠ける行為と考えている方はまさか皆さんの中にはいらっしゃらないと考えますが、今一歩進んで、翻訳にクリエイティブ性という付加価値を求めるとすれば

・翻訳リサーチャー、研究者
・翻訳ジャーナリスト、記者
・レクチャラ―、教授(なまじの専門家より翻訳者の方がより専門家)
・翻訳教師(大学、各種学校を含めると500以上の教育機関で翻訳教育を実施)
・ライター(翻訳の専門分野でライターもめざす)
・日本語教師(日本語教育の中・上級はほぼ翻訳教育)

更に、翻訳にマネージメント性を持たせるには、いち翻訳者としての仕事にとどまらず、特定の目的のために翻訳者等を集合したプロジェクトマネージメントに関わることです。

ここで思考実験として、以下のバベル
42年の歴史で積み上げてきた以下の事業のプロジェクト化を考えてみてください。(実はこれがこれからバベルの大学院生、アラムナイに期待する仕事の仕方ですが)

 ・翻訳教育ビジネス
 ・翻訳ビジネス
 ・翻訳出版・編集ビジネス
 ・版権調査・仲介ビジネス
 ・資格ビジネス

例を挙げましょう。
 例えば、(コストセンターとして)一人のプロとして翻訳を受けるのではなく、プロフィットセンターとしてそのプロジェクトの以下のマネージメントも任されて業務を遂行することです。
1.品質管理(
Resources
2.スケジュール管理 (
Time) 
3.コスト管理 (
Cost)
4.顧客管理 (
Client) 
5.コンプライアンス管理(
Compliance)  
*これらの管理項目は一社法人日本翻訳協会の翻訳プロジェクトマネージャー試験の試験範囲です。

http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm.html
http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm_2.html

さて最後に、最初の
TEDのスピーチに戻りますが、バベルグループのビジネスにおけるWhyは?

それは、
 1.翻訳者のプロフェッショナリズムの確立
月刊「翻訳の世界」をはじめ翻訳の理論、実践の雑誌を現在のデジタルマガジンに至るまで
700号を刊行、また、翻訳学習書、翻訳書の出版を重ね、現在は、これらを統合したプロ翻訳者のためのライブラリーを再構築中。また、翻訳教育を多分野で実践、世に25万人を越える修了生を輩出し、約20年前より米国にて翻訳専門職大学院教育をスタート

2.翻訳会社のプロフェッショナリズムの確立
専門別翻訳ビジネスを展開、翻訳者紹介、翻訳者派遣事業、更には版権仲介事業、翻訳者の資格認定事業、翻訳プロジェクトマネージメント検定の開発

3.翻訳教育のプロフェッショナリズムの確立
一般の高等教育認証から翻訳の高等教育に特化した翻訳高等教育認証機関を設立 
 
その上で、翻訳の世界的意義と日本の世界における翻訳の役割の再認識した‘翻訳者’が主導する翻訳立国をめざすことと考えます。

そして、以下を
Whyの核となる、共有の使命としたいと考えたいと考えています。

1.世界中の未訳の素晴らしいコンテンツを翻訳し、人類の共有財産とする。就中、日本の
  素晴らしいアイデア・コンテンツを多言語に翻訳し世界に広める。
2.翻訳を通じて日本と世界の正しい相互理解を促進し、東西融合を実現する。
3.翻訳を通じて多くの方々に気づきと喜びをもたらし、幸せを実現する。

めざすところは、智の宝庫である地球【
Global Knowledge Garden】 において、翻訳を通じて智を共有し、人々に気づきをもたらし、共に喜びを分かち合うことです。

最後は我田引水の観が否めませんが、是非、バベルに関係される皆様が、今一度、自らに
WHYを問いかけて、意思が合致すれば共に使命を共有し、共に事業パートナーとしてビジネスができればこれほどの喜びはありません。


 

第217号 ALUMNI編集室から

第217号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

日本語が世界を救う 

   

                                                バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹
 


今回は、我々日英間の翻訳者が最も大事にしなければならない日本語を学校で学んだ既成概念を取っ払って考えていきたいと思います。ご紹介する深い話はカナダのモントリオール大学で25年に渡って日本語を教えてきた金谷武洋氏の「日本語が世界を平和にするこれだけの理由」(20181011日飛鳥新社発行)に収められた体験談に基づくものです。

ウォーフ・サピアの仮説をご存知でしょうか。これは、母語、つまり子供の時に家庭で覚えた言葉で、世界の見方が決まる、という仮説です。ここでは、第
2外国語として学ぶ言語も学ぶ人の新しい世界の見方を形作る、という話です。

では、著書で紹介されている順どおりではないのですが、日本語とはどんな言語なのか、
読者が翻訳者をめざされる方が多いので、これに関するエピソードから始めたいと思います。

まず、NHK教育テレビ「シリーズ日本語」という番組での話で、番組の講師は言語学者の
池上嘉彦氏。この番組の中では、川端康成の有名な作品「雪国」の冒頭部分の日本語とE・サイデンステッカー氏の英語を比較することで日本語の特性、英語の特性を知ろうとする
ものです。

「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった」という日本語とその英訳
The train came out of the long tunnel into the snow country.」を考察しています。

この原文の日本語を追体験すると、「今、列車はトンネルの暗闇の中を走っているが、私はその社内に座っている。おやおや、だんだん窓の外が明るくなってきたぞ。やっと長いトンネルを抜けるみたいだな。そーら、外に出たぞ。うわー、山のこちら側は真っ白の銀世界じゃないか。雪国なんだ。」

すなわち、時間の推移とともに場面が刻々変化していくのを読者が感じていて、主人公が汽車の中にいて読者の視線も主人公の視線と重なり合い、溶け合っていると言うのです。

これに対して、英訳の
The train came out of the long tunnel into the snow country.は、
どのように受け止められるかを、その場に呼んだ英語話者に絵で情景描写をさせています。

すると、全員が上方から見下ろしたアングルでトンネルを描いたと言います。
日本語では汽車の中にあった視点が、英訳では汽車の外、それも上方へと移動しているわけです。

そして、池上氏がこの違いを、日本語には主語がない、しかし英語には主語が必要なので

The trainをもってきたことにより、日本語には時間の推移、流れがある動画だったのが、時間の流れのない一枚の写真のような英語表現になってしまった、と結論づけていました。

このように、日本語の立ち位置では、「私」は話し手には見えなくなると言います。
すなわち、英語のように常に主語を必要とする言語は、状況から身を引き離す役割があります。

すなわち、英語は主語(私)と目的語(相手)を切り離して対立する世界にする、と言います。

例えば、広島の平和公園の中の慰霊碑の碑銘に「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」と書いてありますが、ここには誰の過ちかは明らかにされていません。ここには私とあなたが共存し、あたかも敵と味方の共存する姿を暗示しているかのようです。


この著書の中では、さらに身近な「ありがとう」、「おはよう」と言ったことばを探り、日本語の本質に迫ります。

日本語の「ありがとう」には話し手も聞き手も、つまり人間が出てきません。
それに対して
Thank youI thank you.となります。

日本語の「ありがとう」は「有難う」、すなわち、あることが難しいという形容詞。
「めったにない」という状況を表現しています。従って、著者は、英語は「(誰かが何かを)する言葉」、日本語は「(何らかの状況で)ある言葉」、としています。

また、日本語の「おはよう」は、英語の
I wish you a good morning.で、わたしが登場し、この朝がいいものであるようにと、積極的な行為を表現しています。

対して日本語のおはようようございます、は二人が「まだ早い」という状況で心を合わせているのです。ふたりはそう共感しているわけです。

すなわち、日本語は共感の言葉、英語は自己主張と対立の言葉と言えそうです。

著者は日本人と出会うことで、また、日本語の学習を通じて、学習者の世界観が、競争から共同へ、直視から共視へ、抗争から共存へ変わると言います。

日本語という言葉そのものの中に、自己主張にブレーキがかかるような仕組みが潜んでいるのではないでしょうか。

一方で、英語話者は
Listen to me.、Let me tell you something. 、 You won’t believe this.
など、上から目線で自己主張してくるわけです。

金谷先生は最後の章を「だから、日本語が世界を平和にする!」と結んでいます。

金谷先生は言います。「海外で長年日本語を教えてきた人間の目で日本語を外から見ると、
日本語は大変人気がある。」

国際交流基金が
3年ごとに行っている「海外日本語教育機関調査」によると、最新2015年のデータでは、137の国・地域で日本語教育の実施機関数は16,167機関、 教師数は64,041人 、学習者数:3,651,715人とのこと。もはや日本語は日本列島で日本人にしか話されない「閉ざされた言葉」、「滅びゆく言葉」と言うのは間違っていると言います。

そして、日本語学習者の学習動機は、日本のことが好きということのようです。すなわち、日本の自然、日本の文化、日本人の優しさが評価されているようです。

金谷先生の経験から言うと、日本語を学習すると性格が変わってしまう。攻撃的な性格が温和な性格になると言います。

わたしもバベルの大学院関係者でご主人が日本語が多少ともできる英語話者である場合、
喧嘩をしたときに日本語に切り替えると喧嘩は収まることが多いと聞きます。
これが所謂、フランス語で言う
tatamiser効果ということなのでしょう。

日本語の学習を通じて、学習者の世界観が、競争から共同、直視から共視、抗争から共存に
変わっていくと結んでいます。日本語は最も平和志向が強い、ロマンチックで幸せな美しい言葉と自信をもって言えると言います。

最後に金谷先生は結びます。
1.    日本語を勉強したいという学生が増え続けていること
2.    日本を体験した学生はさらに日本が好きになって、日本にとって大切な味方、つまり親日家と呼ばれる人材に育って行くこと
この2つは紛れもない事実と言います。

今、世界の文化の潮流は西から東へ、男性性から女性性へ向かっていると言われます。

日本人はもっと自信をもって、しかし、母性的強い意志と日本語で世界を調和していくことが必要と心から確信します。

第216号 ALUMNI編集室から

第216号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

99年の愛 

   

                                                バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹



99年の愛 ~JAPANESE AMERICANS~』は、日本のTBSの開局60周年記念として、2010年、5夜連続で放送された。脚本家の橋田壽賀子さんが、自身の生涯のテーマでもある「戦争と平和」というテーマで描いた最後の作品と言う。主演は草彅剛と仲間由紀恵。

1世紀前、生きるためアメリカの大地に夢を賭けるしかなかった日系移民1世。アメリカで生まれ日本を知らずに生きるしかなかった日系移民2世。過酷な運命は、同じ家族を世代によって日本とアメリカの間で引き裂こうとする。

縁あって手に入ったDVDを一気に観て、涙が止まらなかった。

この壮大な物語は、
99年前、アメリカ本土へ渡った日系移民の話から始まる。

以下、オフィシャルWEBページから

http://www.tbs.co.jp/japanese-americans/
2010
8月、米国ワシントン州のシアトルで農場を営む日系2世の平松しのぶと次郎は、日本で暮らす妹・太田さちと70年ぶりの再会を果たす。11歳の時にアメリカから日本へ帰されたさちは、家族に捨てられたと思い込み、それ以来、アメリカに残った家族のことはないものとして生きてきた。そんなさちのため、大リーグ・マリナーズで活躍するイチロー選手の試合を孫と観にいくという名目で息子の嫁・景子が、生き別れとなっていた兄妹に連絡を取り引き合わせたのだ。これまでアメリカを避けて生きてきたさちだったが、アメリカに残った家族がその後どんな生き方をしたのかを知りたかったのと同時に、自分が今までどんな思いで生きてきたのかを知ってもらいたいと考え始める。

人種差別や戦争による逆境・苦悩が彼らを襲い、そのたびに強く乗り越え、生き抜く家族。その中でもアメリカで生まれ日本を知らずに育った”日系移民
2世”の長男平松一郎(草薙剛)には特に激動の運命が襲いかかる。一郎は日系アメリカ人による「442部隊」に志願し、日本人の魂を持ちながらアメリカのために戦うことを選んだ。

その兄の生き様を受けて妻のしのぶ(仲間由紀恵)、弟の二郎(松山ケンイチ)、父(中井貴一)、母(泉ピン子)の心境は大きく変化し、運命と立ち向かう強さをもらった。そしてやがて戦争が終わり彼らの新たな人生が始まる…。

これは、反日感情にさらされ、戦争に翻弄されながらも、夢を追って海を渡り、命を懸けて激しい困難に立ち向かい続けた日系移民の家族の物語”である。

戦争に翻弄された日系人の縮図のような運命を辿る家族。しかし、彼らはどんな逆境にあっても決して挫けない。健気で力強い日系人の姿が、世代を越え現在へと続く
99年の物語となり、現代に生きる我々に日本人の誇り、底力、勇気を呼び覚ます。

橋田壽賀子曰く、
戦争と平和”は私の一生のテーマです。今回の物語は、
100年前にアメリカへ渡った日系移民の家族を通して、戦争と平和への全ての想いを託した私の集大成であり、これが私にとって最後の作品になると思います。
私自身、終戦時は20歳。戦前・戦中・戦後の全てを経験しました。今回の
100年にわたる家族の物語で伝えたい事は、私の遺言でもあります。
戦乱の時代に翻弄されながらも、“努力”と“勇気”と“後悔”を胸に、懸命に生き抜いた家族の物語を最後に書いておきたかった。
日本をみつめ直す事を、忘れないで欲しいです。

瀬戸口プロデューサー曰く、
「一つの家族を通して、日系アメリカ人の歴史と生き様を描きたい」
我々が橋田先生から最初に企画の構想を伺ってから足掛け4年…その作品がいよいよ動き出す、ということで身が引き締まる思いで一杯です。
“戦争と平和”を生涯のテーマとして数々の作品を世に送り出してきた橋田先生が、自ら「最後の作品」と宣言してお書きになった作品ですので、先生のその思いと覚悟をしっかりと受けとめて、全力で作品づくりに挑みたいと思っています。

2月中旬からスタートする撮影は約5ヶ月に及び、アメリカでもシアトル周辺のほか、カリフォルニア州のマンザナー(実際に日系人が収容された強制収容所があった場所です)などで約2ヶ月間ロケを行います。アメリカならではの壮大なスケール感も、しっかり映像で表現したいと思っています。
“戦争と平和”というテーマに加えて、 戦前から戦中、戦後と米国で生き抜いた日系アメリカ人の生き様は、今を生き抜くための大きなヒントになるはず。だからこそ、今、伝えなければならない作品だと強く思っています。

バベルの大学院の院生、修了生も、その子供がアメリカ国籍、母親が日本国籍と言うケースも少なくない。そんなことも頭をよぎり、国を跨ぐという異文化葛藤は他人ごとには思えなかった。

また、100年前と言っても、
1952年生まれの私にとっては、また、現在、94歳の私の母にとっては、と考えると遠い過去の出来事とは思えなかった。

今の日本を囲む世界情勢に目を転じても、この時代の教訓は大事に反芻すべきことと深く
感じた。

日本の同胞、仲間を思うという横軸の健全なナショナリズム、過去の先人の残してくれた目に見えない資産を、次の世代に引き継ぐ責任という縦軸のナショナリズム、‘私’だけ、‘今’だけと考えがちな今の私たちに深いメッセージをくれた。

是非、縁がありましたらご覧ください。
今年、日本は御代がわりの年、この縁も大事に考えるべき時なのかもしれない。





 

第215号 ALUMNI編集室から

第215号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association


日本の特許出願 重要性増す国外での知財戦略 

   

                                                                       バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹



今号より、バベル翻訳専門職大学院の教授、奥田百子先生(弁理士、特許翻訳者)による
連載がスタートします。これより
3
号は公開記事として無料でも購読できます


記事は「すんなり入れる特許翻訳―普通の英語から簡単に特許の英訳ができるようになる」と題してスタートします。

スタートにあたって、日本の特許事情、科学技術投資環境を概観してみたいと思います。

ご存知のように、特許出願件数は、その国の研究開発、技術開発のレベルを示す一つのバロメーターと言われます。わが国は、1995年に科学技術基本法を制定し、「科学技術立国」を掲げ、特許出願件数は、98年に初めて40万件を超えました。02年には知的財産戦略会議が設置され、「知財立国」を目指すべく、知的財産戦略大綱及び知的財産基本法が制定されました。

その後、わが国の特許出願件数は、40万件を超える時代が続き、バブル後の市場低迷やリーマン・ショックの影響後は、わが国の特許出願件数は05年をピークに右肩下がりを続け、2016年の出願数は31万8381件に落ち込みました。

一方、国際特許の出願は若干の増減があるものの増える傾向にあり、16年は過去最高の4万4495件となり、その後は増加傾向にあると言われます。研究開発や企業活動のグローバル化が進み、国外での知財戦略の重要性が増していると考えられます。

一方、中国は国策で報奨金を出すなど、知財強化を図っており、知財大国の様相を呈しています。特許出願件数は、06年に約21万件だったのが、10年にはわが国を抜き、翌11年には米国を抜いたと言います。また、15年には75万件を超えたと言われます。わが国ではほとんど利用されない実用新案制度も、特許と同等の出願数を誇っていると聞きます。

翻って、昨年、 政府は、科学技術について、日本の基盤的な力が急激に弱まってきているとする2018年版の科学技術白書を発表しました。そこでは、引用数が影響力の大きい学術論文数の減少などを指摘しています。

白書によると、日本の研究者による論文数は、04年の6万8千本をピークに減り、15年は6万2千本になったとあります。主要国で減少しているのは日本だけだと言います。同期間に中国は約5倍に増えて、24万7千本に、米国も23%増の27万2千本になったと言われます。

研究の影響力を示す論文の引用回数で見ると、上位1割に入る論文数で、日本は03~05年の5・5%(世界4位)から、13~15年は3・1%(9位)に下がったと言います。また、2000年度を100とし、 直近の科学技術関係予算を比較すると、 中国が11倍、韓国が4.7倍、アメリカ、ドイツ、イギリス といった先進国ですら1.5倍強とのこと。それに対し、我が国は1.06倍。日本は、予算を全く増やしていないと言います。

さらに、大学を法人化し、「短期の成果主義」という科学技術開発にはおかしな発想を導入。 国立大学が法人化された2004年には1兆2415億円だった国立大学法人運営等交付金は、2017年には1兆0970億円にまで削減されたと言います。

予算削減の緊縮と、奇妙な短期の成果主義が蔓延し、長期的な研究開発がほぼ不可能と指摘されています。せめて米英独並に科学技術関係予算を増やし、かつ「長期」に予算をコミットすることで、 研究者の雇用を安定化させ、 長期的研究に取り組めるようにすべきなのでしょう。この緊縮、短期路線が続く限り、 我が国の科学技術力の凋落を食い止めることは不可能というのが偽わざる状況のようです。これこそ、知財戦略の根幹にかかわる由々しき課題で、国を挙げて挽回が望まれます。

翻訳に話を戻すと、特許明細書の文章しだいで、それが翻訳であれ、特許になるか否か、権利範囲が左右されたり、侵害訴訟を起こしても賠償金が取れないと言った場合があることは認識しておくべきです。ニューラル機械翻訳がいかに進んでも、最終的には人間に頼らざるを得ない状況は当面変わらないわけで、特許は翻訳において優秀な翻訳者が望まれる分野の一つであることは間違いありません。

第214号 ALUMNI編集室から

第214号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association


AI優位の未来でも、翻訳(を学ぶこと)が必要な理由 

   

                                                                    バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹
 



教育的ディベート(Academic Debate)といことばをご存知でしょうか。約半世紀のバベルの歴史の中で、90年代に約10年間、米国のディベートチャンピオンとコーチ(教授)を毎年、日本に招請して、日本全国の教育的興行を後援しておりました。日本語と英語でディベートを行い、ディベートの教育的効用を謳ってきました。当時は、松本茂先生(バベルプレスで「英語ディベート実践マニュアル」刊行、現立教大学経営学部国際経営学科教授、米国ディベートコーチ資格ホールダー)、故中津燎子先生(書籍「なんで英語やるの?」で大宅壮一ノンフィクション賞受賞)にお力添えをいただいておりました。
 
教育的ディベートとは、論理構成力を涵養する教育の一環としてディベートの手法を活用しようという考え方でした。
 
ここで言う「教育的翻訳とは」大学生以上の成人層を対象とするものと小中高校を対象にするものとを考えているのですが、ここでは、プロ翻訳家の養成という意図はありません。

説明をわかりやすくするために、後者の例をまずお伝えします。


4半世紀前に私がバベルにおいて行ったある実験的企画に触れたいと思います。
それは、当時、バベルの教育部長であった長崎玄弥先生と中学
23年生を78人集めてある実験的企画を実施しました。長崎玄弥先生は当時、‘奇跡の英語シリーズ’で100万部を越える売り上げを誇っていた天才的英語の使い手でした。彼は日本をいっさい出ることなく、英語ネイティブと、丁々発止の議論も喧嘩もできるという英語の使い手でした。そのプロジェクトでは英単語が500語から1,000語に限定された英語のラダーエディションを教材に中学23年生を対象に翻訳の演習を試みたのです。

文法、構文の理解から発音までの基本技法を伝えつつ、単なる英文解釈ではなく、きちんとした背景調査もして、正しい、読みやすい日本語に翻訳するという訓練でした。そして驚くべきことに約
1年この訓練を終えると生徒の英語力は言うに及ばず、国語、社会、数学等の学校での成績が1段階か2段階上がったのです。その後、私たちも根気強くこのプロジェクトを続けて実証データを積み上げていけばよかったものの、その後、他の仕事にとらわれてこれができなかったことが今でも悔やまれます。あれから20余年、懸案を実現するに、時が熟して来たと感じています。

現在の英語教育では、文法訳読形式が否定され、コミュ二カティブな英語教育、俗に言う英会話教育が推進されるなか、実効性が上がらないのを目の当たりにして、明治時代以前の教育で見られた「教育的翻訳」の必要性をうすうす感じているのは私だけではないのかと思います。本誌で昨年
5月から始まったのが大阪大学の名誉教授の成田一先生の『総合的な翻訳による英語教育』の連載が、この辺の考えの一端をまとめていただいたものです。

翻って、
2000年からOECDが3年に一度実施しているPISA(Program for International Student Assessment)では、世界の15歳の男女を対象に、数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力を測定、比較してきました。2015年からはこれに加え、協同問題解決能力、異文化対応能力( Global Competence )が測られるようになりました。ちなみに日本人はそれまで、10位少し手前に推移していた順位が、2015年は数学的リテラシーと科学的リテラシーが世界トップ、読解力が同率3位になったとのことです。
その後は、この
3つの分野では、日本は常に上位に位置していると聞きます。

また、
2015
年から導入されたグローバル・コンピテンシーはその基準に賛否両論があるようですが、次のように定義しています。「グローバルで多文化的な課題を批判的に多様な視点から分析、自己や他者の知覚や判断、考え方にどのような相違があるかを理解する力です。人間的な尊厳基づき、互いに尊敬しながら、オープンで効果的な他者とのコミュニケーションをはかる力です」。

すなわち、グローバル・コンピテンシーは、知識と理解、態度の3つの次元から成り、その基本には人間的尊厳と文化的多様さの視点があると言います。

http://www.oecd.org/pisa/pisa-2018-global-competence.htm
とすれば、これこそ広義の翻訳、教育的翻訳そのものと考えます。
 
「教育的翻訳の普及」が、言語教育、異文化理解、異文化対応力、感性の涵養し、小中高、高等教育のみならず成人教育に新しい地平を拓くものと信じます。また、更には日本の世界における新たな役割認識を促すものと考えます。

ここで、改めて歴史的観点から、翻訳のもつ意味を考えてみたいと思います。

日本は明治維新以来、福沢諭吉、西周、中江兆民をはじめ多くの啓蒙家が、西欧の文化、文物を‘和魂洋才’を念頭に急速に取り入れ、国家の近代化を果たしてきました。これは、換言すれば、‘翻訳’を通して当時の西欧の先進文化、文明を移入してきたと言えるでしょう。それが、俗に、‘翻訳立国―日本’と言われる所以です。

六世紀から七世紀にかけて中国文化を移入したときには大和言葉と漢語を組み合わせて翻訳語を創り、明治維新以降は西欧の人文科学、社会科学等の今まで日本にはなかった抽象概念を翻訳語として生み出してきました。
Societyが社会、 justiceが正義、truthが真理、reasonが理性、その他、良心、主観、体制、構造、弁証法、疎外、実存、危機、等々、その翻訳語は現在のわたしたちには何の違和感もなくになじんできているのはご承知の通りです。

しかし、この‘翻訳’の現代に占める社会的位置は、と考えてみると、不思議なくらい、その存在感が読み取れません。
もちろん、巷では、翻訳書を読み、政府、また企業でも多くの予算を翻訳に割いています。また、ドフトエスキー、トーマスマンをはじめ、世界中の古典文学を何の不自由もなく親しめる環境もあります。

将来を展望しても、ITテクノロジーによる更なるボーダレス化を考えると翻訳は計り知れないビジネスボリュームを抱えています。
一説には、一般企業が年間に外注する翻訳量は金額に換算して、3000億円市場とも言われます。これに、政府関係、出版関係(デジタルを含む)、更にアニメ、マンガといったコンテンツ産業関連を加算すれば、優に、一兆円を越える市場規模になると言われます。

とすると、過去は言うに及ばず、今後、日本のビジネス取引、文化、社会形成における‘翻訳’の役割は、想像以上に大きいと言わざるを得ません。

こうして、国家レベルの翻訳の重要性を考えるにつれて、プロの翻訳者養成ということ以前に、翻訳という行為そのものの重要性に思いが至り、教育的翻訳の重要性を改めて確信します。

英語至上主義、日本でも喧しく企業内の英語公用語化の話題がマスコミを賑わせていますが、これこそ所謂、グローバリスト、国際金融資本家の思う壺。日本が二流国に転落するのが目に見えています。
 
英語による支配の序列構造の中で、第二階層、すなわち、英語を第二公用語として使う、インド、マレーシア、ケニアなどの旧イギリス植民地諸国、フィリピン、プエルトリコなどの米国占領下にあった諸国のことです。かれらはある意味、英語公用語を採用して、二流国を甘んじて受け入れた国と言えるでしょう。


最近では日本の東大がアジア地域での大学ランキングが昨年までの第一位から七位に転落とマスコミでは自虐的論調が聴かれますが、その主たる理由は、授業が英語で行われている割合が少ない、執筆される英語論文の割合が少ないなどが問題にされているように思います。

しかし、考えてみてください。英語圏以外で先進の学問を日本語、自国言語で学べる国は日本以外ではあるでしょうか。
おまけに、世界中の古典が読める稀有な国日本、これを皆さんはどこまで自覚しているでしょうか。

 一方、あの理想国家といわれるシンガポールの現況をみると、常に複数の言語を学ばなければならないことから始まり、エリート主義による経済格差の拡大、国民の連帯意識の欠如。そして、独自の文化、芸術が生まれない文化的貧困を皆さんはご存知でしたでしょうか。これこそ、英語化路線の一方のひずみと言えると思います。

日本は、翻訳を盾に、日本語が国語である位置を堅持して、決して日本語を現地語の位置に貶めませんでした。

これは以下の日本語と日本文化の歴史と、これに裏打ちされた利点を改めて考えれば至極当然のことに思えます。

・6,7世紀ころから中国文明を消化、吸収するに中国文化を和漢折衷で 受け入れ、真名、仮名、文化を作り上げできた。

・50万語という世界一豊かな語彙をもつ日本語。英語は外来語の多くを含んでの50万語、ドイツ語35万語、仏語10万語。
 まさに、言霊の幸はふ国日本。

・古事記、日本書紀、万葉集など、1,000年前文献でもさほど苦労なく読める日本語。
 一方、英米では1,000年まえの文献は古代ギリシア語、ヘブライ語が読めなければ一般の人は読めない。

・世界200の国、6,000以上の民族、6,500以上の言語の内、50音の母音を中心に整然と組み立てられ、
 平仮名、片仮名、アルファベット、漢数字、ローマ数字等多様な表現形式を持つ言語、日本語。

・脳科学者角田忠信が指摘しているように、西欧人は子音を左脳、母音を機械音、雑音と同じ右脳で処理、また、
 小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、風の音をノイズとして右脳で受けている。
 対して、子音、母音、さらには小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、風の音までも言語脳の左脳で受け止める日本人。
 そこから導かれるのか万物に神を読む日本人。

・ユーラシア大陸の東端で、儒、仏、道、禅、神道文化を発酵させ、鋭い感性と深い精神性を育んできた日本文化。

・「日本語の科学が世界を変える」の著者、松尾義之が指摘しているように、ノーベル賞クラスの科学の発明は
 実は日本語のおかげ。自然科学の分野ではこれまで約
20の賞を受賞。アジア圏では他を圧倒。

今、なぜ、教育的翻訳が必要なのかを考えるにあたって、これを抽象化して考えるとこんなキーワードが思い浮かびます。

多文化共生

次のステージは、多文化共生の時代、お互いの文化の違いを認め合って共生していく社会。

また、それこそが翻訳の真髄と考えます。 
また別の言い方をすると、翻訳という行為そのものが多文化共生を前提とする異文化融合と言えます。

あのサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」を人種差別の書と断定する米国知識人に中国とは違った大覇権主義の限界が見え隠れします。常に普遍を追求して違いを消去してきた米国。それに反して、植民地政策の歴史を持つ英国は国際政治において揉まれたことにより、文化差に対しては経験的に理解し対処しよう言う姿勢をもっています。

また、この多文化を認め、その上で、自文化を重んじる、ある意味の度量(否、戦略)が進行中の英国のEU脱退、
BREXITにつながったのかもしれません。 

我々、バベルグループができることと言えば、政治、経済の領域ではなく、国家の文化・社会戦略としての‘翻訳’を考えることと確信します。 

なぜなら、翻訳こそ、多文化共生に基づく世界の融和政策だからです。

最後に、翻訳という行為がどんな能力を伴うものなのか、バベルの翻訳専門職大学院の翻訳教育の視点から見ていきたいと思います。


Language Competence

 
これは翻訳を職業にする場合は、当然柱となる言語関連のスキルで、バベルの「翻訳文法」を核にしています。
   PISAで言う、数学的リテラシー、科学的リテラシーに次ぐ、読解力には密接に関係しています。


Cultural Competence (Cross-cultural, Global Competence
 異文化間の変換をするに必要な、彼我の文化を熟知し、その価値を相対化できる視点を言います。
 これはPISAで言う
2015 年から加わった協同問題解決能力、異文化対応能力( Global Competence )に充たると
 思います。ここで参考までに、 渥美育子氏(バベルでは、その著「世界で戦える人材の条件」((PHPビジネス新書)の
 英訳版 「
Developing Global talent」を出版)は、世界を その文化的価値観から4つのエリアに分類しています。 

 
・モーラルコード(人間関係)で成り立つ国々 ―日本を含むアジア、南欧、南米、中部アフリカ等
 ・リーガルコード(ルール、マニュアル)で成り立つ国々―米国、英国、北欧諸国
 ・レリジャスコード(神の教え)で成り立つ国々―中東、北アフリカ等
 ・ミックスコード(混合)で成り立つ国々   ―インド等

   また、これらの国々を伝統、歴史という時間軸で掘り下げて、グローバルナビゲータを創り、
  それぞれ国が何に文化行動価値を置いているかを、
 ・モーティベータ
 ・ディ・モーティベータ
   すなわち、何を持って動機付けされるか、また逆に、なにが動機を削ぐのかを整理しています


Expert Competence
 翻訳では専門分野を極めていくことは必須です。専門分野は日々進化していきます。
 そうした変化を捉える情報収集 を常に行う必要があります。


IT Competence
 自ら翻訳をするだけではなく、プロジェクトを率いるような時は、プロジェクトマネージメントの知識、
 リサーチの技術、翻訳エディティングの技術、
DTPの技術、そして翻訳支援ツールの活用技術、辞書化の
 技術、いずれもキャリア開発に不可欠な知識とIT技術です。


Managerial Competence
 自立するための経営ノウハウ、プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを仕切る際のプロジェクトマネージメントの
  知識と技術、自立を目指すに欠かせません。


翻訳はこれらのコンピタンシ―の集合でなりたつ、極めて完成度の高い知的総合力を伴う行為です。その一部がAIで支援されたとしても、全体を統合する翻訳という行為は、人間固有の行為と言えると思います。

AI時代こそ、翻訳という学びの方法が『読み、書き、そろばん』的な基本的能力を涵養してくれると確信します。

そして、日本の小学校、中学校、高校、大学、大学院で『教育的翻訳』が行われるようになれば、やがて日本は自立の道へ導かれると信じます。

第213号 ALUMNI編集室から

第213号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association


2019年、翻訳は世界を変える、日本を変える!!  

   

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹
 


て、まもなく終わる2018年はどんな年だったでしょうか。
大きな歴史的転換点として歴史に残る年と言って過言はないでしょう。
では、そのなかで翻訳的価値観がどのような意味を持つのでしょうか。

世界がグローバル化で疲弊している状況は皆様も様々なニュースでご承知でしょう。
ウォール街に代表される金融資本家に踊らされて、人、モノ、金の自由化に踊らされた結果、国体を破壊され今の悲惨な状況となった各国。


賢明なイギリスは一昨年
6月にEU離脱(Brexit)を表明、イギリスを取り戻すという方向へ舵を切りました。思い起こすと、同様に移民人口比率が15%内外のフランスのサルコジ大統領もその在職期間中にフランスとは何か、フランスを取り戻す運動をしていたのは記憶に新しいところです。

「我が国は古来こういう国なので、こうありたい」、と堂々と自国を主張しにくくなっているのが昨今のヨーロッパ事情のようです。 

人、モノ、金、情報の自由な移動、グローバリズムを盲目的に良しとしている人は、そもそもこの願い自体が意味のない事と言うのかもしれませんが。

例えば、今、ドイツはドイツ人がドイツはこういう国だ、と堂々と言えない国になりつつあると言います。年間何十万人もの移民が、特にイスラム系の移民が流入していて、かれらが自国のことを声高に主張すると、レイシスト呼ばわりされる国になりはて、おまけに、流入する移民たちは凶悪犯罪の温床にもなっているとも言われています。

英国の国勢調査によれば、ロンドンの住人のうち「白人の英国人」が占める割合はすでに半数を切っているといいます。ロンドンの
33地区のうち23地区で白人は少数派に転落しています。

英国民に占めるキリスト教徒の割合も、過去
10年間で72%から59%と大幅に減少し、2050年までには国民の三分の一まで減る見込みです。

他に、例えばスウェーデンでも今後
30年以内に主要都市すべてでスウェーデン人(スウェーデン系スウェーデン人)は少数派に転落するという予測もあります。

このように、グローバリスト主導の外国人労働者の受け入れに端を発する移民国家化によって、ヨーロッパ諸国は、民族構成や宗教や文化のあり方が大きく変容しつつあります。正面から十分に国民の意思を問うたわけでもなく、いつの間にか、「国のかたち」がなし崩し的に大きく変わってきてしまっています。その結果、ヨーロッパ文明は死に、ヨーロッパ人はかけがえのない故郷を失っていくのです。

すなわち、
Brexit以降の世界情勢は、以下のようにまとめられるでしょう。

GlobalismからNeo-nationalism (Localism)
国境を無くし、人の交流を自由化し、市場を開放する方向から、難民の無制限な移動の制限をし、国家を取り戻す方向へ 


ElitismからPopulism
国際金融資本家に代表されるエリート主導から大衆主導の時代へ


Neo-nationalismPopulismへパラダイム変換しつつあると言っても過言ではないでしょう。トランプの‘アメリカファースト’もある意味、Neo-nationalism (Localism)Populismへの傾きといえるでしょう。

グローバリストが新自由主義の政策、開放経済、規制緩和、小さな政府、これに基づき世界経済の再編を進めてきたわけですが、これに異議を唱えたのがこれらの動きで
2018年はこれが定着したと言えます。

言い換えれば、世界の大きな潮流はまさに
Independent に向かっていると言えるでしょう。Independent な人、社会、国が、Independent な人、社会、国とInter-Independentな関係をもって、融和していく。そこには一定レベルの争いもあるでしょうが、それを覚悟で調和をめざす必要があるのでしょう。

ヨーロッパ各国の状況は、外国人労働者の大量受け入れをほぼ決めてしまった日本にとっても他人事ではありません。我々は、ヨーロッパの陥っている苦境から学ぶ必要が大いにあります。

日本は地理的優位もあり、移民人口比率が15%内外の、米国、イギリス、フランス等に比べれば1.7%という10分の1程度の移民人口比率。今は、移民流入が一定程度に収まっているとは言うが、農業移民、介護移民と移民受け入れに政府は動き始めている。
今まさに米国の、いや、中国の属国への道をかけ落ちているといっても過言でないように思います。 

最近の文科省の小学校での英語教育政策の提案、大学をスパーグローバルユニバーシティと持ち上げて、米国を中心とするグローバリストの甘言に乗って進んでいる大学、大学院の授業の英語化、受験での
TOEFLの採用、英語での論文推進、等の行き過ぎた施策をここらで改める時期に来ているように思います。

日本も着々と移民国家への道を歩んでいると言えるでしょう。コンビニの店員がアジア系というのは身近に感じているのでしょうが。我々が知らないところでこの移民化政策が進行しつつあります。

技術研修生という名のもとに日本に5年間滞在、その後はその技術をもって母国に貢献するというのがその制度の目的だったはずですが、これからは、更に5年更新され、一定の要件を満たせば、専門技能の人材として家族帯同が許され、実質的に移民となっていくと言われます。また、定員割れの大学、各種学校が留学生と称して受け入れる事に関しても移民化につながるグレーな部分が多いと聴きます。更に、介護、農業の分野でも同様の危惧が感じられます。

もちろん、私もこのような移民政策の全てを否定するわけではないのですが、資格要件は明確にしなければ、それに関する様々な利権がもぐり、斡旋ビジネスに利用され、なし崩し的に緩い移民受け入れ制度になる危険性もあります。例えば日本であれば、その要件の一つとしてその専門技能等の基本要件はもちろんですが、少なくとも日本語の能力を明確に資格審査に加えるなどしないと、ヨーロッパの二の舞になるのは明らかです。

ちなみに、世界で最も移民の割合が高いのは
UAEで、人口の88%。次いでフランス領ギアナが40%、サウジアラビア37%、スイス30%、オーストラリア29%、イスラエル25%、ニュージーンド23%、カナダ22%、カザフスタン20%などの順で、米国は15%、ドイツも15%、英国は13%、イタリアは10%となっていますが、日本もこれらに次に位置する状況にあるといいます。 

では、この移民化政策がなぜ、ひそかに進んでいるのでしょう。一つは経済界の要請、人件費を上げたくない、生産性向上より、安易に、人件費を抑えるために移民化を後押ししているようです。その背後には、自らの利益を優先するグローバル資本家、株主の意向があることは明らかです。 

加えて、無防備な日本、それに付け込んで入り込んでくる中国をはじめとする移民予備軍。中国はいわば一帯一路に象徴されるように、世界の覇権国家たらんとし、各国に人民を送り込んで洗国(
Ethnic Cleansing)を企んでいるというのがその歴史からも想像できます。 

中国本土の高額な医療費を逃れるために、日本で起業、ビザを取って
3年もすると、日本の国民健康保険に加入でき、中国では膨大な治療費がかかる高額医療を日本で受けられると言います。おまけに、高額医療費を逃れ、日本の国民保険を食いものにする仲介ビジネスが中国本土で活況を呈しているといいます。情けないことに、日本の厚生労働省はその実態すら十分に把握できてないという体たらくだそうです。 

こうした実態をみると、少なくとも移民政策の先進国?のヨーロッパの惨状を知っているのかと日本政府に言いたくなるところです。のほほんと移民化政策を進める日本。その無防備な日本にあきれるばかり。アメリカの傘のもとに危機感を忘れ去ってしまった日本に今こそ自立と自律が必要なのでしょう。

そして、こういう時代だからこそ、‘翻訳’の存在意義が見いだせます。

個々の自立した文化をお互いに尊重し、そのうえで、翻訳による相互交流を行う、そんな翻訳的方法が見直されています。 

英語至上主義、日本でも喧しく企業内の英語公用語化の話題がマスコミを賑わせていますが、これこそグローバリスト、国際金融資本家の思う壺。日本が二流国に転落するのが目に見えています。

すなわち、英語を第二公用語として使う、インド、マレーシア、ケニアなどの旧イギリス植民地諸国、フィリピン、プエルトリコなどの米国占領下にあった諸国、かれらはある意味、英語公用語として採用して、二流国を甘んじて受け入れた国と言えるでしょう。

あの理想国家といわれるシンガポールの現況は、常に複数の言語を学ばなければならないことから始まり、エリート主義による経済格差の拡大、国民の連帯意識の欠如。そして、独自の文化、芸術が生まれない文化的貧困を皆さんはご存知でしたでしょうか。これこそ、英語化路線の一方のひずみと言えると思います。

日本は、翻訳を盾に、日本語が国語である位置を堅持して、決して日本語を現地語の位置に貶めませんでした。6,7世紀ころから中国文明を消化、吸収するに中国文化を和漢折衷で 受け入れ、真名、仮名、文化を作り上げできた融通無碍な翻訳日本文化。 

明治維新以降も、翻訳という方法を通じて、欧米の当時の先進文化を土着化することによって民度を上げて世界のトップに躍り出た日本。 

日本は明治の近代化で翻訳を通して知的な観念を土着化し、だれでも世界の先端知識に触れられる環境を創ってきました。ひとつ間違えれば、国の独立さえ危ぶまれた明治の日本は当時の英語公用語化論を退け、翻訳を通じて日本語による近代化を成し遂げました。

その戦略の先進性に改めて驚くとともに、先人の先見の明にただただ感謝するばかりです。

我々は、今、多言語、多文化共生世界の入り口にいるのかもしれません。 

ネオナショナリズムという言い方をしましたが、別の言い方をすると多文化共生主義、どの文明が、どの文化が、価値が上、下という序列をつける時代からの脱却が進んでいると言えます。

そもそも、西欧人がかつて、キリスト教文明圏、イスラム教文明圏、東洋文明圏と分けていたところを、歴史家トインビーが、7つの文明圏に分け直していることはご承知でしょう。西欧キリスト教文明圏、ロシア正教文明圏、イスラム文明圏、ヒンズー文明圏、シナ文明圏、中南米ラテン・アメリカ文明圏、そして日本文明圏。日本は一国だけで独自の文化圏をなす存在であると主張しています。


バベルと長いお付き合いの方はバベルの塔の神話をご存知のかたは多いことでしょう。
 
バベルの塔(
The Tower of BABEL)の神話の真のメッセージは必ずしも人間の傲慢を諌めることだけではないというところから出発したいと思います。
 
それは、
20年以上前にオーストラリアの書店で見かけた子供向けの聖書に書かれた解釈でした。
 
神は、人が、ひとところに止まらず、その智恵を世界に広め、繁栄するようにと願い、世界中に人々を散らしたという解釈でした。すると、かれらはその土地、風土で独自の言葉と文化を育み、世界中に多様な言語と多様な文化で織りなす地球文化のひとつを生み出したのです。

まさしくバベルの塔を英語という一つの言語で創ろうとしている特権階級のグローバリストに神は怒り、神は別々のことばを与え、世界へ散れと言っているかのようです。
 
しかし、人間のエゴの働きと言えるでしょうか、バベルの塔のころからの傲慢さゆえに、自文化が一番と考えることから抜けきれないでいると、もともと一つであるものでさえ見失い、理解できず、伝える(翻訳)ことさえできなくなってしまうのかもしれません。
 
翻訳の精神とは、自らの文化を相対化し、相手文化を尊重し、自立した二つの文化を等距離に置き、等価変換する試みであるとすると、この過程こそ、もともと一つであったことを思い返す試みなのかもしれません。
 
「世界が一つの言葉を取り戻す」、それは決してバベルの塔以前のように、同じ言語を話すことではないでしょう。それは、別々の言語をもち、文化を背負ったとしても、相手の文化の自立性を尊重し、その基底にある自文化を相対化し理解しようとする‘翻訳者意識’を取り戻すことなのではないでしょうか。

 

バベルの塔の神話はそんなことまでも示唆しているように思えます。
 

 

第212号 ALUMNI編集室から

第212号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association


11月30日、ハワイの学位授与式のアラムナイミーティングに寄せて  


   

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹

 
 
バベルの大学院を修了して、MST( Master of Science in Translation)を取得した以降、バベルグループとどう仕事をしていくか、もちろん仕事を保証するものではありませんが、その基本を、先日、11月30日にハワイで行われた学位授与式の中のALUMNIミーティングに寄せて説明をさせていただきます。

 

以下のアメリカの労働省のJob Outlookに表現されているように、2026年までに翻訳、通訳の仕事の伸長率は118%、575の全業種の50位以内に位置している有望な職業と言えます。従って、翻訳マーケットがある種バブル状態の現況では、バベルの大学院を卒業したあとにバベルグループとコラボして仕事をするという選択肢にこだわる必要はないわけですが、手の内の選択肢として詳述していきます。
https://www.babel.edu/news/joboutlook/

修了後は以下のバベルグループの翻訳関連の事業で、翻訳者、ライター、編集者、翻訳教師、通訳者として働いていただくというのも身近な進路として考えられます。
http://www.babel.co.jp/

しかし、私どもとしては、ひとりのプロフェショナルとして働いていただくだけでなく、あるプロジェクトを仕切っていただく形式で、バベルグループとのパートナーシップを組んでいただきたいと考えています。

こうしてプロジェクトマネージャーとして働く場合は、個人でも会社組織でもかまいません。しかしその場合、プロジェクトマネージメントの技術、知識を以下の資格を取得して、修めてください。


翻訳プロジェクト・マネージャー資格基礎試験
http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm.html
翻訳プロジェクト・マネージャー資格上級試験
http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm_2.html


この場合、前述のような様々なバベルの翻訳関連事業(専門別翻訳ビジネス、翻訳出版・編集ビジネス、版権仲介ビジネス、翻訳教育ビジネス、出版創作ビジネス等々)のどこかの部門とパートナーシップを組むことになります。

いずれにしても、以下のように、そのための必要条件と十分条件があります。
はじめに、必要条件ですが、これは当然のことですが


1. MST(Master of Science in Translation)、修士号のホールダーであること。

翻訳の世界規格(ISO17100)においても、Qualification of Translatorとして真っ先に
翻訳のディグリーを持つこととしています。

https://www.babel.edu/the-professional-translator/mission031/

2. 次に、翻訳の世界規格(ISO17100)においても尊重されている翻訳の資格を持つことです。

提携機関の一般社団法人日本翻訳協会の提供するプロ翻訳者に必要な様々な検定のうち、ご自身の専門分野としたい検定にチャレンジください。日本翻訳協会のページには日本翻訳協会は実施していませんがプロ翻訳者になるために推奨している検定、講座情報も紹介されています。
http://www.jta-net.or.jp/index.html
 
翻訳能力検定試験

翻訳能力検定試験には「出版翻訳能力検定試験」、「ビジネス翻訳能力検定試験」があります。それぞれ分野ごとの試験が行なわれています。*ここでは英語関連に限定します。
○出版翻訳能力検定試験
  ・絵本翻訳能力検定試験
  ・ヤングアダルト・児童書翻訳能力検定試験
  ・エンターテインメント小説翻訳能力検定試験
(ミステリー、SF、ファンタジー、ホラー)
  ・ロマンス小説翻訳能力検定試験
  ・スピリチュアル翻訳能力検定試験(フィクション/ノンフィクション)
  ・一般教養書(ビジネス関連)翻訳能力検定試験
  ・一般教養書(サイエンス関連)翻訳能力検定試験
  ・出版シノプシス能力検定試験
○ビジネス翻訳能力検定試験
  ・IR/金融翻訳能力検定
  ・リーガル翻訳能力検定
  ・医学/薬学翻訳能力検定
  ・特許翻訳能力検定


翻訳資格検定試験
資格認定試験には「翻訳プロジェクト・マネージャー資格基礎試験」、「翻訳プロジェクト・マネージャー資格上級試験」、「JTA公認翻訳専門職認定試験」があります。
〇翻訳プロジェクト・マネージャー資格基礎試験
〇翻訳プロジェクト・マネージャー資格上級試験
翻訳プロジェクト管理・運営責任者としての能力をプロジェクト・マネージメントに
必要とされる、6つの分野を念頭に審査する試験です。
1) 時間管理、2) 人材管理、3) 資源管理、4) コスト管理、5) クライアント管理、
6) コンプライアンス管理

〇JTA公認翻訳専門職認定試験

翻訳のプロフェッショナルの能力を総合的に審査する試験です。以下の4科目の
テスト全てに合格し、翻訳実務経験2年の実績審査を行った上で「JTA 公認翻訳

専門職(Certified Professional Translator)」と認定します。
1) 翻訳文法技能試験、2)翻訳IT技能試験、3)翻訳マネジメント技能試験、
4)翻訳専門技能試験(「翻訳能力検定試験」のなかから1分野)

 これらの検定を取得することが、キャリアデザインを実現するための試金石となると考えます。皆様がパートナーとしてバベルグループで仕事をしたい場合は、これらの検定取得が必須とお考え下さい。   

次に、バベルグループとパートナーシップを組んで仕事をする場合の十分条件をお話ししましょう。

それは、以下のバベルグループの使命(ミッション)とあなた自身の使命、目標とのすり合わせができているかです。


【バベルグループの使命】
・MISSION(使命)
 智の宝庫である地球【 Global Knowledge Garden】 において、
 翻訳を通じて智の共有を実現し、
 人々に気づきをもたらし、
 共に喜びを分かち合える環境を創ることです。

・GOAL(施策)
これを実現するのが以下のバベルグループの各事業です。

http://www.babel.co.jp/

・OUTCOMES(目標)
翻訳高等教育のプロフェショナリズムを確立し、
翻訳会社のプロフェショナリズムを確立し、
そして、
 翻訳者のプロフェショナリズムを確立します。


従って、このバベルグールプの各事業をよく知っていただき、その各事業に関連した、もしくはその隙間でバベルグループとのパートナーシップを組んでもらいたいのです。
 再度言いますが、それはいち翻訳者、いち編集者、いち教育者というスタンスだけでなく、あるプロジェクトを仕切っていただく、という仕事の仕方も考えてほしいのです。

ここで改めて、初心にかえって
あなたが、なぜ、この大学院を選び、どんな翻訳キャリアをめざしたいのか、過去にさかのぼって総点検するひとつの方法を見ていきましょう。
その核の部分は5年後の履歴書づくりです。

 
【キャリアサクセス診断シート】
https://www.babel.edu/careerconsulting/
1.  自己発見シート作成
      Find your own uniqueness

https://www.babel.co.jp/bcc/mailform/bcc1.html
2. キャリアビジョン作成
   Define your own success
https://www.babel.co.jp/bcc/mailform/bcc2.html
3. スキル棚卸しシート作成
     Do your own inventory
https://www.babel.co.jp/bcc/mailform/bcc3.html
4. 5年後の未来履歴書作成
  Write your future resume

https://www.babel.co.jp/bcc/mailform/bcc4.html
5. 5年間のアクションプラニング作成
  Make your action plan

https://www.babel.co.jp/bcc/mailform/bcc5.html

全部で5つからなる、自分の成功イメージをあぶり出す診断ですが、その4つ目が、5年後の未来履歴書をつくること。そして、これを受けて5つ目が、その未来履歴書に至るアクションプランを具体化することで完成させるというものです。
 
このキャリアサクセス実現診断シートを記入して、キャリアコンサルティングを受けるとより効果的と思います。

https://www.babel.edu/careerconsulting/

 以上が目標達成のためのバベルユニバーシティのキャリアデザイン実現支援プロジェクトです。しかし、在学中においてもその目標達成にあたっては様々な課題に遭遇すると思います。しかし、いつも心掛けてほしいのがキャリアコンサルティングです。臆せずに何回でも重ねてください。
 
 以上、学位授与式のアラムナイミーティングに寄せて申し上げました。

‘翻訳’を志した以上、‘翻訳’で社会を変革するような意気込みで、プロフェショナルを目指してください。共に、‘翻訳’を通じて日本の‘一隅’を変革する活動ができればうれしく思います。

第211号 ALUMNI編集室から


ギグ・エコノミー時代、
Professional Translatorに求められる「プロフェショナルブランディング」

   

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


 「ギグ(gig)」とは、元々はジャズやロックなどで、即興でミュージシャン同士が、音合わせを兼ねて、その場限りの演奏をやってみることを意味し、それが転じて、「単発の仕事」という意味で広く使われるようになったそうです。


Definition of the Gig Economy
The term “gig economy” refers to a general workforce environment in which short-term engagements, temporary contracts, and independent contracting is commonplace. It’s also referred to as the “freelancer economy,” “agile workforce,” “sharing economy,” or “independent workforce.” You might think it’s a buzzword, and you’d be right, but the widespread growth of startups supporting the gig economy (and the number of workers leveraging them) are a sure indication that the nature of work as we know it is changing.

Studies estimate that by the year 2020, 43 percent of the American workforce will consist of independent contractors. With digitization and automation threatening some traditional jobs, the freelance economy can provide job security, but not in the traditional sense.

In the freelance economy, workers operate as independent contractors, meaning their clients pay them an agreed-upon rate for services rendered. In an independent contracting arrangement, workers are responsible for saving and paying their own taxes and aren’t eligible for the typical benefits of full-time employment such as access to group health insurance or retirement investments and savings accounts. But thanks to the rise of the independent workforce, benefits such as health insurance coverage, independent retirement accounts (IRAs), and liability and accident insurance are more accessible than ever before. Plus, workers operating as independent contractors get to take advantage of the tax benefits of operating their own business, including tax deductions for non-reimbursed operating expenses such as travel, supplies, and the like. 
Angela Stringfellow A writer focusing on news, trends, and insights in marketing, business, and technology


企業や組織に属さず、ネットを通じて個人で単発の仕事をとる働き方が広がっています。IT関連業務に限らず、翻訳やマーケティング、法務、会計、コンサルティングなど職種も多様になってきました。AIの発達でさまざまな仕事が消えていくなか、国境を越えてオンラインで人々が仕事を取り合う「フリーランス」の時代になるのでしょうか。

「アップワーク」https://www.upwork.com/ や「リンクトイン・プロファインダー」https://www.linkedin.com/profinder といった数多くのギグエコノミーサービスで紹介される仕事を好きなように組み合わせられるということでもあります。

マッキンゼーの調査によれば、米国と欧州連合(EU)各国では約6400万人が、必要に迫られてではなく自らの選択で、本業に加えてこうしたギグワークを請け負っていると言います。

また、米国Intuitの調査によると、2020年までにアメリカ人労働者の43%がフリーエージェントとしての独立請負業者になると予測されています。また、オックスフォード大学のインターネット研究所が2017年7月に発表したレポートでは、すでに過去1年間で26%も拡大したことが報告されています。
 
マスコミでは、国境越えて仕事を奪い合う時代が来るのか 、と騒ぎ立てているようですが、
そのようなネガティブにとらえるのはマスコミの得意技、むしろポジティブにとらえるべきと考えます。

しかし、こうした国を超えた人材の自由な移動は、一見、移民と同一視されがちですが、国のアイデンティティ喪失につながる危険な移民受け入れとは根底が違うと理解すべきと考えます。移民政策はその国固有の文化を守るという立場からも安易にすべきでないと信じます。

ちなみに、実態は、日本への流入者は前年比約5万5,000人増の39万人1,000人。ドイツ(約201万6,000人)、米国(約105万1,000人)、英国(47万9,000人)に次ぐ、堂々の4位だそうです(OECD加盟35カ国中)。他の先進国が移民受け入れで国が破壊されるなか、政策を転換しているなか我が国は何を考えてこれを進めようとしているのでしょうか。

この稿では、ギグ・エコノミーの時代、ネット上で国を越えて働くクラウドワーカーの中でも古い職種であるプロフェショナルトランスレータを考えてみたいと思います

翻って、プロフッションとは英語のprofessを語源としていることはご存知でしょう。Professとは神の前で宣言する、という意味をもち、中世ヨーロッパでは神の前に誓いを立てて従事する職業として、神父、医師、法律家、会計士、教師等の専門家を指していました。彼らは職業を通して神、社会に対して責任を負うという厳しい倫理観で自らを律していたと言います。

参考までに、プロフェッションならびにプロフェッショナルの概念については様々な定義がありますがその一つを紹介しますと、

①    専門的知識・技術に基づく仕事に従事していること 
②    その知識や技術は,一定の外部汎用性を備えたものでなければならない 
③    外部に専門家団体もしくは専門家社会が存在し,何らかの形で能力その他
       を評価するシステムが備わっている。また、 これらの能力的及び倫理的基準
       を維持することを主目的とした職業団体が存在していること 

プロフェショナリズムを重んじる翻訳の各国の団体、私の関わる日本のJTA( Japan Translation Association)、アメリカのATA(American Translators Association)、イギリスのITI(Institute of Translators and Interpreters)、オーストラリアのNAATI(National Accreditation Authority for Translators and Interpreters) 等はその倫理基準を明示しています。

私としてはこの辺を踏まえて、Professional Translatorとしては一定の矜持をもってクラウドワーキングをしてもらいたいと考えます。それには、まずは翻訳者としてのプロフェショナルブランディングを創りあげることから全てが始まります。

翻訳者として自信をもって臨めるどの分野を専門としたいのか。また、それをどう発展させていきたいのか、自分のプロフェションのドメインを確立することが重要です。そして、その社会的役割を深く認識することが必要と考えます。

そのうえで、方法として、個人事業主としてスタートするのか、株式会社としてスタートするのかを決めることになります。言うまでもない事ですが、法人組織としてスタートするメリットは、営業のしやすさ、言い換えれば経験証明となること、税務のメリットがあること。また、重要なのは有限責任であることはご存知の通りです。
 
こうして翻訳者としてのプロフェショナリズムを胸に、仕事に臨んでもらいたいと考えます。

日本でも、ウーバーhttps://urb-it.com/become-an-urber/ やWeWork https://www.wework.com/ja-JP/why-wework なども上陸し、新しい働き方の認識は着々と進んできていると言えます。しかし実態は、やっと副業・兼業という働き方が容認される環境になってきたという状況でしょう。政府主導ながら「働き方改革」推進のおかげで、テレワークを実施する企業がようやく増えつつある段階のようです。

しかし、ギグ・エコノミーの労働市場が国内に限定されることのない幅広い人材の選択を可能にしているとすれば、日本国内の法制度や働き方の環境がまだ整っていないことは、むしろグローバルのギグワーカーの活用を推進させることになるかもしれません。

いずれにせよ、始まっているギグ・エコノミーの時代。先発組のProfessional Translator
としては高度な自己マネジメント、プロフェショナルブランディングが求められる時代に入っているのでしょう。



 

第210号 ALUMNI編集室から

第210号 ALUMNI編集室から

第210号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association


訴えられたハーバード大学にみる、入試のフェアネス

   

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


今回は、大学入試制度の日米比較を考えてみましょう。

今、アメリカでは、大学入試に関する注目の裁判が迫っています。名門ハーバード大学が訴えられ係争中の案件で、入試審査で人種的偏見によりアジア系アメリカ人を不合格としたとして訴えられ、まもなく法廷審理に入ることになっているようです。

米ハーバード大学に不合格になったアジア系米国人たちが、同大学に対して不当に差別された結果入学できなかった、として訴訟を起こしたというのです。

学生たちの訴えによれば、ハーバード大学では、アジア系米国人の合格者数が多すぎないように操作していたと言うのです。この訴えには、米司法省が、一定の指示を表明したことで、今後の展開が学生に有利に働く可能性も出てきたと言います。

ニューヨークタイムズによれば、少数民族を入学させて「多様性」を実現するというハーバード大学のポリシーに在る所謂「少数民族」に、アフリカ系アメリカ人や先住民やラテン系は入っていても、アジア系が入っていなかったというのが訴訟の理由だそうです。このような意図的な人種排除は憲法違反であるとしています。また、民事訴訟とは別に、法務省がこの件で捜査に乗り出したという報道もあるようです。

この問題を考える前に、日米の入試制度の違いを考えてみましょう。

そもそも、アメリカの大学入試は入学審査であって、日本と違って、所謂入学試験ではないということです。では、何で審査するかというと、全国学力テストに相当するSATACTという試験のスコアと、高校の成績、課外活動、スポーツや音楽などの実績、ボランティア活動、そして小論文がその対象です。

しかし、それぞれの審査に、一定のルールがあるわけでもなく、いわば「ブラックボックス」と言えます。インターハイ出場と地元のボランティア活動と、どちらのほうが受験に有利かと聞かれても、大学側は絶対に答えてはくれないと言うことです。

入学希望者は、高校の宿題と期末試験の勉強に精を出しオールAをめざすことはもちろん、SATも何度でも受けスコアアップに精を出すことになります。それだけでなく、小論文の練習予備校に入り、気に入られると思われる作文を作成する力を養成するのに必死になると言います。

また、入学申込用紙に、奨学金を希望するかしないかという質問欄がありますが、これにどう記入をするかは更に悩みどころのようです。

こうした事情を考慮すると、今回のお粗末な東京医科大学の不正入試を例外とすれば、日本の受験システム(一部のAO入試を除く)は、公平な一発勝負、フェアゲームと言えそうですが。

しかし、ハーバード大学は、大学は多様性をもった人材を確保することも重要だとして、単にGPASATの成績だけでは合否判定をしない、ということを主義にしていると反論しているようです。

ハーバード大学の「多様性を確保したい」という主張の根本にある、性別、人種、出身地などで、少数派を優遇(アファーマティブ・アクション)することには明確な主張があります。

アファーマティブ・アクションは端的に言ってみれば、黒人やヒスパニックの人たちに、たとえ点数を水増ししてでも、合格させ、昇進でも優遇しようという考え方です。

家庭環境や高校までの環境に恵まれないマイノリティの場合、SATの成績が悪くても、潜在能力は高いかもしれないと想定します。かれらの不遇を断ち切るには、かれらを良い教育環境に置く、会社の昇進も優遇することで、所得を上げる、これにより、次世代のロール・モデルを作ることが重要だ、という考え方です。すなわち、アファーマティブ・アクションとは、「悪循環の鎖」を断ち切る手段として正当化されてきたわけです。

とすると、悪く言えば恣意的なようですが、ここに大学としての主体性が在るといっても良いのではないかという気がします。

とは言っても、現在のアイビーリーグでは、超富裕層の子弟が尊重され、入学しやすく、実際には1%の富裕層からの子弟が全体全体の5割になることもあると言われます。また、学費はべらぼうに高く、特に、ハーバードをはじめとするアメリカの一流大学はある種の学歴社会の歴史の上に成り立っているので、留学生は、伝統的なインナーサークルには入れないし、学校生活で孤立する事例もあると言います。これこそ問題にすべきと考えます。

こうした体質は主体性以前に問題にされなくてはならないと思います。

いずれにせよ、ハーバード大学は、今回の訴訟では、このブラックボックスの開示を「企業秘密」だとして徹底的に拒否しているようですが、担当裁判長が、裁判の評議に不可欠だとして開示命令を出したときには、ハーバードの権威失墜、米国の大学入学審査システムは一気に変わる可能性があるのかもしれません。















 

第209号 ALUMNI編集室から

第209号 ALUMNI編集室から

第209号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association


Start with Why ― 
How Great Leaders Inspire Everyone to Take Action
優れたリーダーはどうやって行動を促すか

   

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


今回は私がよく聴くTEDのスピーチの中でも特に優れたスピーチの一つと思っている
以下の内容をバイリンガル(日本語訳で若干読みにくいところも原文通りにしてあります)で共有したいと思います。
題して
How great leader inspire action’



 
How great leader inspire action’
               Simon Sinek
Leadership expert

物事がうまく行かなかったときに それをどう説明しますか? あるいは常識を全てひっくり返すようなことを 誰かが成し遂げたときに それをどう説明しますか? 例えば どうしてアップルはあれほど革新的なのか、 毎年毎年 他の競合のどこよりも 革新的であり続けています。 でもコンピュータの会社には変わりありません。 他の会社と似たようなものです。 同じような人材を同じように集め、 同じような代理店やコンサルタントやメディアを使っています。 ではなぜアップルには他と違う何かがあるように見えるのか。 なぜマーチン ルーサー キングが 市民権運動を指導できたのか。 市民権運動以前のアメリカで 苦しんでいたのは彼だけではありません。 彼だけが優れた演説家だったわけでもありません。 なぜキング師だったのでしょう。 ライト兄弟が有人動力飛行を 実現できたのはなぜでしょう。 人材を揃えて資金も潤沢な 他のグループでも 有人動力飛行を実現することはできず ライト兄弟に負けてしまいました。 何か別な要因が働いています。

How do you explain when things don't go as we assume? Or better, how do you explain when others are able to achieve things that seem to defy all of the assumptions? For example: Why is Apple so innovative? Year after year, after year, they're more innovative than all their competition. And yet, they're just a computer company. They're just like everyone else. They have the same access to the same talent, the same agencies, the same consultants, the same media. Then why is it that they seem to have something different? Why is it that Martin Luther King led the Civil Rights Movement? He wasn't the only man who suffered in pre-civil rights America, and he certainly wasn't the only great orator of the day. Why him? And why is it that the Wright brothers were able to figure out controlled, powered man flight when there were certainly other teams who were better qualified, better funded -- and they didn't achieve powered man flight, and the Wright brothers beat them to it. There's something else at play here.


三年半前のことです。
私は発見しました。 この発見によって世界がどう動いているのか。 見方がすっかり変わりました。 そればかりか、世界に対する接し方も すっかり変わりました。 明らかになったことは あるパターンです。 わかったのは 偉大で人を動かす 指導者や組織は全て、 アップルでも マーチン ルーサー キングでも ライト兄弟でも 考え、行動し、 伝える仕方がまったく同じなのです。 そしてそのやり方は 他の人達とは正反対なのです。 私はそれを定式化しました 世界でもっとも単純なアイデアかもしれません。 私はこれをゴールデンサークルと呼んでいます。


About three and a half years ago, I made a discovery. And this discovery profoundly changed my view on how I thought the world worked, and it even profoundly changed the way in which I operate in it. As it turns out, there's a pattern. As it turns out, all the great inspiring leaders and organizations in the world, whether it's Apple or Martin Luther King or the Wright brothers, they all think, act and communicate the exact same way. And it's the complete opposite to everyone else. All I did was codify it, and it's probably the world's simplest idea. I call it the golden circle.

なぜ? どうやって? 何を? この小さなアイデアで、ある組織やリーダーが なぜ 他にはない力を得るのか説明できます。 用語を簡単に定義しておきます。 世の中の誰にせよ、 どの組織にせよ、 自分たちが何をしているかはわかっています。 100% 誰でもどうやるかをわかっている人もいます。 それは差別化する価値提案とか、 固有プロセスとか、 独自のセールスポイントと呼ばれるかもしれません。 でも「なぜやっているのか」がわかっている人や組織は非常に少ないのです。 「利益」は「なぜ」の答えではありません。 それは結果です。 いつでも結果です。 「なぜ」というときには 目的を問うています。 何のために? 何を信じているのか? その組織の存在する理由は何か? 何のために朝起きるのか? なぜそれが大事なのか? 実際のところ私達が考え、行動し、伝えるやり方は外から中へです。 それはそうでしょう。 明確なものから曖昧なものへ向かうのです。 でも飛び抜けたリーダーや、飛び抜けた組織は、その大きさや業界にかかわらず、 考え、行動し、伝える時に、中から外へと向かいます。

Why? How? What? This little idea explains why some organizations and some leaders are able to inspire where others aren't. Let me define the terms really quickly. Every single person, every single organization on the planet knows what they do, 100 percent. Some know how they do it, whether you call it your differentiated value proposition or your proprietary process or your USP. But very, very few people or organizations know why they do what they do. And by "why" I don't mean "to make a profit." That's a result. It's always a result. By "why," I mean: What's your purpose? What's your cause? What's your belief? Why does your organization exist? Why do you get out of bed in the morning? And why should anyone care? As a result, the way we think, we act, the way we communicate is from the outside in, it's obvious. We go from the clearest thing to the fuzziest thing. But the inspired leaders and the inspired organizations -- regardless of their size, regardless of their industry -- all think, act and communicate from the inside out.

例を示しましょう。 私がアップル製品を使っている理由は分かりやすく誰でも理解できるから、アップルが他の会社と同じだったら、こんな CM を作るでしょう。 「我々のコンピュータは素晴らしく 美しいデザインで簡単に使え、ユーザフレンドリー。 ひとついかがですか?」いりません。 我々のほとんどはこんなふうに伝えます。 マーケティングや売り込みもそう、我々の対話のほとんどがそんなふうに行われます。何をして、どう違い、どう優れているかを述べ、相手に何か行動を期待します。 購入とか、投票とかのたぐいです。 私たちは新しい法律事務所を開所しました。最高の弁護士たちと大手のクライアントを抱えています。 私たちは常にクライアント第一で行動します。 これが私達の車のニューモデルです。低燃費で、シートは総革張り、いかがですか? これでは心を動かされません。

Let me give you an example. I use Apple because they're easy to understand and everybody gets it. If Apple were like everyone else, a marketing message from them might sound like this: "We make great computers. They're beautifully designed, simple to use and user friendly. Want to buy one?" "Meh." That's how most of us communicate. That's how most marketing and sales are done, that's how we communicate interpersonally. We say what we do, we say how we're different or better and we expect some sort of a behavior, a purchase, a vote, something like that. Here's our new law firm: We have the best lawyers with the biggest clients, we always perform for our clients. Here's our new car: It gets great gas mileage, it has leather seats. Buy our car. But it's uninspiring.

アップルならこんな風に伝えます。「我々のすることはすべて 世界を変えるという信念で行っています。違う考え方に価値があると信じています。 私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ、簡単に使えて、親しみやすい製品です。 こうして素晴らしいコンピュータができあがりました。」 一つ欲しくなりませんか? 全然違うでしょう? 買いたくなりますよね? 今したのは 情報の順番を逆にすることでした。これが示すのは、人は「何を」ではなく 「なぜ」に動かされるということです。 人は「何を」ではなく、なぜ」に動かされるのです。

Here's how Apple actually communicates. "Everything we do, we believe in challenging the status quo. We believe in thinking differently. The way we challenge the status quo is by making our products beautifully designed, simple to use and user friendly. We just happen to make great computers. Want to buy one?" Totally different, right? You're ready to buy a computer from me. I just reversed the order of the information. What it proves to us is that people don't buy what you do; people buy why you do it.

だからこの場にいる人はだれもが安心してアップルからコンピュータを買っているのです。 そしてまた、MP3 プレイヤーやスマートフォンやビデオレコーダーも、安心してアップルから買えるのです。 でも、アップルは単なるコンピュータ会社です。アップルと他社とで 何か仕組みが違うわけではありません。競合会社にだって同様の製品を作る力があります。 実際、挑んだこともあります。 数年前にはゲートウェイが平面テレビを出しました。 ゲートウェイにはそのための卓越した技術があります。PC用の平面モニタを何年も作ってきたのです。しかし全然売れませんでした。デルは MP3 プレイヤーと PDA を発売しました。 非常に高品質な製品です。デザインも申し分ありません。でも全然売れませんでした。 実際 今となっては、デルの MP3 プレイヤーを買うなんて想像すらできませんよね。 コンピュータ会社のMP3 プレイヤーなんて誰が? でもみんなアップルからは買うのです。 人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるのです。 自分が提供するものを必要とする人と ビジネスするのではなく、自分の信じることを信じる人とビジネスするのを目標とすべきなのです。 一番肝心なのは、

This explains why every single person in this room is perfectly comfortable buying a computer from Apple. But we're also perfectly comfortable buying an MP3 player from Apple, or a phone from Apple, or a DVR from Apple. As I said before, Apple's just a computer company. Nothing distinguishes them structurally from any of their competitors. Their competitors are equally qualified to make all of these products. In fact, they tried. A few years ago, Gateway came out with flat-screen TVs. They're eminently qualified to make flat-screen TVs. They've been making flat-screen monitors for years. Nobody bought one. Dell came out with MP3 players and PDAs, and they make great quality products, and they can make perfectly well-designed products -- and nobody bought one. In fact, talking about it now, we can't even imagine buying an MP3 player from Dell. Why would you buy one from a computer company? But we do it every day. People don't buy what you do; they buy why you do it. The goal is not to do business with everybody who needs what you have. The goal is to do business with people who believe what you believe.

私がお話していることは私の意見ではなく、全ては生物学の原理に基づいていることです。 心理学ではなく生物学です。 ヒトの脳の断面を上から見ると、脳は3つの主要な部位に分かれているのがわかります。 それはゴールデンサークルと対応しています。 一番新しい ホモ サピエンスの脳は 大脳新皮質であり、「何を」のレベルに対応します。 新皮質は合理的、分析的な思考と言語とを司ります。 内側の二つは大脳辺縁系に対応し、これは感情、信頼、忠誠心などを司ります。 またヒトの行動を司り、全ての意思決定を行いますが、言語能力はありません。

Here's the best part: None of what I'm telling you is my opinion. It's all grounded in the tenets of biology. Not psychology, biology. If you look at a cross-section of the human brain, from the top down, the human brain is actually broken into three major components that correlate perfectly with the golden circle. Our newest brain, our Homo sapien brain, our neocortex, corresponds with the "what" level. The neocortex is responsible for all of our rational and analytical thought and language. The middle two sections make up our limbic brains, and our limbic brains are responsible for all of our feelings, like trust and loyalty. It's also responsible for all human behavior, all decision-making, and it has no capacity for language.

言い換えれば、外から中へのコミュニケーションを行っているとき、確かに大量の複雑な情報を理解できます。機能やメリットや事実や数値などです。しかし行動につながりません。 中から外へのコミュニケーションを行っているときには、行動を制御する脳の部分と直接コミュニケーションすることが出来ます。言葉や行為によって、理由付けは後からすることができます。 直感的な決定はここから生まれます。 時には誰かに、あらゆる事実やデータを伝えても、 「細かい事実は分かったけど どうも納得感が得られない」と言われることがあります。 どうしてここで「感」なんでしょうか。 理由は脳の意思決定をする部位は 言葉を扱えないからです。 せいぜい「分からないけど納得がない」という言葉なのです。 時には胸の内一つとか 魂の導きに従ってとも言いますが、でも別に頭以外の部分で 意志決定するわけではありません。 すべては大脳辺縁系で起きています。 辺縁系は意思決定を司り、言語は担当しません。

In other words, when we communicate from the outside in, yes, people can understand vast amounts of complicated information like features and benefits and facts and figures. It just doesn't drive behavior. When we can communicate from the inside out, we're talking directly to the part of the brain that controls behavior, and then we allow people to rationalize it with the tangible things we say and do. This is where gut decisions come from. Sometimes you can give somebody all the facts and figures, and they say, "I know what all the facts and details say, but it just doesn't feel right." Why would we use that verb, it doesn't "feel" right? Because the part of the brain that controls decision-making doesn't control language. The best we can muster up is, "I don't know. It just doesn't feel right." Or sometimes you say you're leading with your heart or soul. I hate to break it to you, those aren't other body parts controlling your behavior. It's all happening here in your limbic brain, the part of the brain that controls decision-making and not language.

人々は「なぜやっているのか」に反応するのに、なぜやっているのか、自分でわかっていなければ投票してもらうにせよ、何か買ってもらうにせよ、みんなを引き付けられるわけがない。 さらには、あなたがしていることに忠誠心を持って加わりたいなどと思わせられるわけがない。 自分の商品を必要とする人に売るのではなく、自分が信じるものを信じてくれる人に売ることを目指すべきです。 単に仕事を求めている人を 雇うのではなく、自分の信念を信じてくれる人を雇うことを目指すべきです 私がいつも言っていることですが 仕事ができるというだけの理由で採用した人はお金のために働くでしょう。しかしあなたの信念を信じてくれる人を雇えば、その人は血と汗と涙を流して働くのです。このことを示す例としてライト兄弟ほどふさわしいものは他にありません。

But if you don't know why you do what you do, and people respond to why you do what you do, then how will you ever get people to vote for you, or buy something from you, or, more importantly, be loyal and want to be a part of what it is that you do. The goal is not just to sell to people who need what you have; the goal is to sell to people who believe what you believe. The goal is not just to hire people who need a job; it's to hire people who believe what you believe. I always say that, you know, if you hire people just because they can do a job, they'll work for your money, but if they believe what you believe, they'll work for you with blood and sweat and tears. Nowhere else is there a better example than with the Wright brothers.

サミュエル ピエールポント ラングレーについては知らない方が多いでしょう。 20世紀の初頭には、有人動力飛行の追求は今日のドットコムのようなもので、誰もが試みていました 。そしてサミュエルは成功のレシピと言えるものを備えていたのです。 誰かに聞いたとしましょう。 「製品や会社が失敗した理由は何ですか?」 返ってくる答えはいつも同じ3つの項目です。 資金不足、人材不足、市場環境の悪化、いつもこの3点です。 詳しく見てみましょう。 サミュエル ピエールポント ラングレーは5万ドルの資金を陸軍省から与えられ、飛行機械を開発していました。 資金は問題無し、ハーバード大に在籍し、スミソニアン博物館で働いていた彼は人脈豊富です。当時の頭脳たちと通じていました。金にものを言わせて最高の人材を集めました。 市場の環境は絶好 ニューヨークタイムズは彼を追い掛け回し、みんなラングレーを応援していました。ではどうして皆さんはサミュエル ラングレーのことを聞いたことが無いのでしょうか。

Most people don't know about Samuel Pierpont Langley. And back in the early 20th century, the pursuit of powered man flight was like the dot com of the day. Everybody was trying it. And Samuel Pierpont Langley had, what we assume, to be the recipe for success. Even now, you ask people, "Why did your product or why did your company fail?" and people always give you the same permutation of the same three things: under-capitalized, the wrong people, bad market conditions. It's always the same three things, so let's explore that. Samuel Pierpont Langley was given 50,000 dollars by the War Department to figure out this flying machine. Money was no problem. He held a seat at Harvard and worked at the Smithsonian and was extremely well-connected; he knew all the big minds of the day. He hired the best minds money could find and the market conditions were fantastic. The New York Times followed him around everywhere, and everyone was rooting for Langley. Then how come we've never heard of Samuel Pierpont Langley?

そこから数百マイル離れたオハイオ州デイトンにいたライト兄弟のオーヴィルとウィルバーは成功のレシピとはまるで無縁でした。 お金がなく、夢に挑む資金は自分たちの自転車店から持ち出しで、ライト兄弟のチームの誰ひとりとして大学を出てはいませんでした。 オーヴィルとウィルバーも違いました。 そしてニューヨークタイムズに追いかけ回されたりもしません。 違っていたことは オーヴィルとウィルバーが大義と理想と信念に動かされていたということです。 彼らはもしこの飛行機械を作り上げることができたら、それは世界を変えることになると信じていました。サミュエル ラングレーは違っていました。 彼が求めていたのは富と名声です。それによって得られるものが目的であり、富を追求していたのです。 そして、どうなったのでしょうか。 ライト兄弟の夢を信じた人々は 血と汗と涙を流して共に働きました。 もう一方のチームはただ給与のために働きます。 ライト兄弟は外へテストに出かけるたびに、部品は5セットずつ持って行ったと言います。 夕食に帰るまでには、5回ぐらい壊れるようなものだったからです。

A few hundred miles away in Dayton, Ohio, Orville and Wilbur Wright, they had none of what we consider to be the recipe for success. They had no money; they paid for their dream with the proceeds from their bicycle shop. Not a single person on the Wright brothers' team had a college education, not even Orville or Wilbur. And The New York Times followed them around nowhere. The difference was, Orville and Wilbur were driven by a cause, by a purpose, by a belief. They believed that if they could figure out this flying machine, it'll change the course of the world. Samuel Pierpont Langley was different. He wanted to be rich, and he wanted to be famous. He was in pursuit of the result. He was in pursuit of the riches. And lo and behold, look what happened. The people who believed in the Wright brothers' dream worked with them with blood and sweat and tears. The others just worked for the paycheck. They tell stories of how every time the Wright brothers went out, they would have to take five sets of parts, because that's how many times they would crash before supper.

そして、ついに 1903 年の1217日のこと、ライト兄弟は初飛行に成功。 それをその場で目撃した者もいませんでした。そのことが広く伝えられたのは数日経った後です。 そしてラングレーの動機が適切でなかったことを示すさらなる証拠には、ライト兄弟が飛行した日に彼は諦めたのです。彼はこうも言えたはずでした。 「連中はよくやった 我々の手でもっと改良してやろうじゃないか」、でもそうはせず、 一番になれず、金持ちになれず、有名にもなれなかったので彼は諦めました。

And, eventually, on December 17th, 1903, the Wright brothers took flight, and no one was there to even experience it. We found out about it a few days later. And further proof that Langley was motivated by the wrong thing: the day the Wright brothers took flight, he quit. He could have said, "That's an amazing discovery, guys, and I will improve upon your technology," but he didn't. He wasn't first, he didn't get rich, he didn't get famous, so he quit.

人は「何を」ではなく、「なぜ」に動かされるのです。 そして自分が信じていることについて語れば、そのことを信じてくれる人たちを惹きつけるでしょう。ではなぜ自分の信念を信じてくれる人を引き付けることが重要なのでしょう。「イノベーションの普及の法則」と呼ばれるものがあります。 もしも知らないなら言葉を覚えてください。 人口の2.5% イノベーターです。13.5%はアーリー アダプタと呼ばれる人たちです。34%はアーリー マジョリティー、レイトマジョリティーにラガードと続きます。この人達がプッシュホンを買う理由は ダイヤル式が買えなくなったからに他なりません。

People don't buy what you do; they buy why you do it. If you talk about what you believe, you will attract those who believe what you believe. But why is it important to attract those who believe what you believe? Something called the law of diffusion of innovation, if you don't know the law, you know the terminology. The first 2.5% of our population are our innovators. The next 13.5% of our population are our early adopters. The next 34% are your early majority, your late majority and your laggards. The only reason these people buy touch-tone phones is because you can't buy rotary phones anymore.

人はみんなこの軸上のいろいろな時点に位置づけられます。 イノベーションの普及の法則が教えるところは、マスマーケットで成功したいなら、あるいはアイデアを幅広く受け入れて欲しいなら、そのためには臨界点である。 15から18パーセントの市場浸透率が必要ということです。そこまで行くと状況が一変します。 私は「新しいビジネスのコンバージョンはどれくらい?」とよく聞きます。 相手は「10%です」と自慢げに教えてくれます。 ええ、 10パーセントの顧客を得るところまでは行けます。自分から飛びついてくれる人が 10%程いるのです。そうとしか言えないのですが、彼らは直感で、ただ飛びついてきます。 問題は 売り込まなくとも飛びつく人と食いついてこない人の違いです。ここにある小さなギャップをどう埋めるかが問題になります。 ジェフリー ムーアのいわゆる「キャズムを越える」ということです。なぜかというと アーリーマジョリティーが試そうという気になるのは、だれか他の人が先にトライした後だからです。イノベーターとアーリーアダプターは 自分の直感に従って決める人達です。彼らは世界に対して信じることに基づいて 直感的に判断するのを好みます。入手が難しくとも問題にしません。

We all sit at various places at various times on this scale, but what the law of diffusion of innovation tells us is that if you want mass-market success or mass-market acceptance of an idea, you cannot have it until you achieve this tipping point between 15 and 18 percent market penetration, and then the system tips. I love asking businesses, "What's your conversion on new business?" They love to tell you, "It's about 10 percent," proudly. Well, you can trip over 10% of the customers. We all have about 10% who just "get it." That's how we describe them, right? That's like that gut feeling, "Oh, they just get it."
The problem is: How do you find the ones that get it before doing business versus the ones who don't get it? So it's this here, this little gap that you have to close, as Jeffrey Moore calls it, "Crossing the Chasm" -- because, you see, the early majority will not try something until someone else has tried it first. And these guys, the innovators and the early adopters, they're comfortable making those gut decisions. They're more comfortable making those intuitive decisions that are driven by what they believe about the world and not just what product is available.

iPhone が登場した日に6時間並んで買う人達です。次の週になれば、歩いて店まで入っていって、すぐその場で買えるというのに、この人たちが最初の薄型テレビに400万円払うのです。その技術がまだ標準になっていなくともお構いなしです。 ちなみに彼らがそうするのは、技術がすごいのが理由ではなく、自分たちのためです。一番乗りをしたいのです。 人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるのです。 そして信じることをただ行動で示すのです。人は自らの信じることを 示すために行動します。 iPhone を買うために6 時間も列に並んで、立ちっぱなしで過ごすわけは、彼らが世界について信じていることのためです。 他の人にもその思いを見せたいのです。自分が 1 番だったと。 人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるのです。

These are the people who stood in line for six hours to buy an iPhone when they first came out, when you could have bought one off the shelf the next week. These are the people who spent 40,000 dollars on flat-screen TVs when they first came out, even though the technology was substandard. And, by the way, they didn't do it because the technology was so great; they did it for themselves. It's because they wanted to be first. People don't buy what you do; they buy why you do it and what you do simply proves what you believe. In fact, people will do the things that prove what they believe. The reason that person bought the iPhone in the first six hours, stood in line for six hours, was because of what they believed about the world, and how they wanted everybody to see them: they were first. People don't buy what you do; they buy why you do it.

ここで有名な例を紹介します。 イノベーションの普及の法則に関する有名な失敗例と有名な成功例です。まず有名な失敗例ですが、これは商品の例です。ほんの少し前にも言いましたが、成功のレシピは金と人材と市場環境です。これがそろえば成功します。TiVo を見てください。TiVo が登場したのは今から8-9 年前で、市場に投入されている唯一の高品質製品でした。 断然 間違いなし、資金調達も極めて順調でした。市場の状況もすばらしかった TiVo は動詞になりました。私はいつも「スゴ録」で TiVo ってるよ。

So let me give you a famous example, a famous failure and a famous success of the law of diffusion of innovation. First, the famous failure. It's a commercial example. As we said before, the recipe for success is money and the right people and the right market conditions. You should have success then. Look at TiVo. From the time TiVo came out about eight or nine years ago to this current day, they are the single highest-quality product on the market, hands down, there is no dispute. They were extremely well-funded. Market conditions were fantastic. I mean, we use TiVo as verb. I TiVo stuff on my piece-of-junk Time Warner DVR all the time.

でも、商業的には失敗でした。 お金を生み出せなかったのです。株式公開をしたときの株価は 30-40ドルでしたが、それから急落して10ドル以上で取引されることはありませんでした。 実際 何回かの単発的な上げを別にすると 6ドル以上で取引されることさえなかったと思います。お分かりのように TiVo が製品を投入したときには、彼らはそれが「何か」を説明しました。「生放送を一時停止したりCMをスキップしたり 巻き戻して見たりできるテレビです。どんな番組が好きかを頼まなくとも記憶してくれます。」 疑い深い大衆は思います。「信じられないね、そんなのいらない。 気に入らない、気味が悪いよ。」 もしTiVoがこんな風に言っていたら? 「自分の生活のあらゆる側面を 自分でコントロールしたいという方にはぴったりの製品がここにあります。生放送を一時停止したり、CM をスキップしたり、好みの番組を記憶します、などなど」人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるのです。何をするかは、信じることを示す限りにおいて意味を持つのです。

But TiVo's a commercial failure. They've never made money. And when they went IPO, their stock was at about 30 or 40 dollars and then plummeted, and it's never traded above 10. In fact, I don't think it's even traded above six, except for a couple of little spikes. Because you see, when TiVo launched their product, they told us all what they had. They said, "We have a product that pauses live TV, skips commercials, rewinds live TV and memorizes your viewing habits without you even asking." And the cynical majority said, "We don't believe you. We don't need it. We don't like it. You're scaring us."
What if they had said, "If you're the kind of person who likes to have total control over every aspect of your life, boy, do we have a product for you. It pauses live TV, skips commercials, memorizes your viewing habits, etc., etc." People don't buy what you do; they buy why you do it, and what you do simply serves as the proof of what you believe.

今度は、イノベーションの普及の法則がうまく行った例を見てみましょう。 1963 年の夏のこと、25万人もの人が集まって、ワシントンの通りを埋め尽くし、キング師の演説に耳を傾けました。 招待状が送られたわけではなく、日にちを告知するウェブサイトもなく、どうやったのでしょう。キング師だけが偉大な 演説家というわけではありませんでした。 市民権運動以前のアメリカで彼だけが苦しんでいたわけではありませんでした。 実際、彼のアイデアのなかにはひどいものもありました。でも、彼には才能がありました。 彼はアメリカを変えるために何が必要かなどを説かず、彼は自分が信じることを語ったのです。 「私は信じている 信じている 信じている。」 と語りました 彼が信じることを信じた人々が、彼の動機を自らの動機とし、他の人にも伝えたのです。 さらに多くの人々に伝えるため、組織を作った人もいました。そして、なんとまぁ25万人が集まったのです。その日、 その時に彼の話を聴くために。

Now let me give you a successful example of the law of diffusion of innovation. In the summer of 1963, 250,000 people showed up on the mall in Washington to hear Dr. King speak. They sent out no invitations, and there was no website to check the date. How do you do that? Well, Dr. King wasn't the only man in America who was a great orator. He wasn't the only man in America who suffered in a pre-civil rights America. In fact, some of his ideas were bad. But he had a gift. He didn't go around telling people what needed to change in America. He went around and told people what he believed. "I believe, I believe, I believe," he told people. And people who believed what he believed took his cause, and they made it their own, and they told people. And some of those people created structures to get the word out to even more people. And lo and behold, 250,000 people showed up on the right day at the right time to hear him speak.

その中でキング師のために集まった人は何人いたでしょう。 ゼロです みんな自分自身のために集まったのです。 彼ら自身がアメリカに対して信じることのために、8時間バスに揺られてやってきて、8月のワシントンの炎天の下に集まったのです。自分が信じることのためです。白人と黒人の対立ではありません。聴衆の 25 パーセントは白人だったのです。 キング師は この世界には 2種類の法があると信じていました 神によって作られた法と 人によって作られた法です。 そして人が作った法がすべて 神の法と整合するまでは 世が公正になることはないと信じていました。 市民権運動はたまたま、彼の人生の目的を果たす上で 完璧な追い風でした。人々がついて行ったのは彼のためではなく自分自身のためでした。その中で 「私には夢がある」という演説をしたのです 「私にはプランがある」という演説ではありません。

How many of them showed up for him? Zero. They showed up for themselves. It's what they believed about America that got them to travel in a bus for eight hours to stand in the sun in Washington in the middle of August. It's what they believed, and it wasn't about black versus white: 25% of the audience was white. Dr. King believed that there are two types of laws in this world: those that are made by a higher authority and those that are made by men. And not until all the laws that are made by men are consistent with the laws made by the higher authority will we live in a just world. It just so happened that the Civil Rights Movement was the perfect thing to help him bring his cause to life. We followed, not for him, but for ourselves. By the way, he gave the "I have a dream" speech, not the "I have a plan" speech.

現代の政治家の12項目の総合計画と比べてください。誰かを動かすものではありません。 リーダーと導く人は違います。リーダーというのは 権威や権力の座にある人です。でも導く人というのは、皆を動かすのです。個人であれ、組織であれ、我々が導く人に従うのはそうしなければならないからではなく、そうしたいからです。 導く人に従うのは、彼らのためでなく、自分自身のためです。そして「なぜ」から始める人が周りの人を動かし、さらに周りを動かす人を見出せる力を持つのです。

Listen to politicians now, with their comprehensive 12-point plans. They're not inspiring anybody. Because there are leaders and there are those who lead. Leaders hold a position of power or authority, but those who lead inspire us. Whether they're individuals or organizations, we follow those who lead, not because we have to, but because we want to. We follow those who lead, not for them, but for ourselves. And it's those who start with "why" that have the ability to inspire those around them or find others who inspire them.

どうもありがとうございました
Thank you very much.  

                                                
Translated by Natsuhiko Mizutani
Reviewed by Yasushi Aoki

 

第208号 ALUMNI編集室から

第208号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association


  
TOEIC英語資格の次は、
  CAP ( Certified Administrative Professional ) 米国型マネージメント英語検定
   

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


皆さまもご存知のように、世の中には、英語の運用能力を問う試験は以下のように豊富です。


・英検(実用英語技能検定)
・TOEIC(トーイック)
・TOEFL(トーフル)
・IELTS(アイエルツ)
・国連英検(国際連合公用語英語検定試験)
・日商ビジネス英語
・ケンブリッジ英検
・オックスフォード英検 等

しかし、これらはあくまでも英語の運用能力試験。言ってみれば‘英語を学ぶ資格試験’。
しかし、これからはそれに次いで、‘英語で学ぶ’資格試験が求められると確信します。

そこで、CAP(Certified Administrative Professional)をご紹介します。

https://www.iaap-hq.org/

CAP(Certified Administrative Professional)はアメリカ、カンザスシティに本部を持つIAAP(International Association of Administrative Professionals)が実施するオフィス プロフェッショナルを認定する国際資格です。 

その認定に求められる能力は、マネジメント、ビジネスコミュニケーション会計、IT、
情報セキュリティ、そして高度な英語力というきわめて広範なビジネス能力です。

それはプレMBAとも称され、それ以上にバランスの取れた能力を証明するもので、まさに国際ビジネスにかかわる者としてのEmployability(エンプロイアビリティ=企業が求める能力)を保証する資格です。

TOEICのハイスコアだけでは差をつけられない時代になりました。

机上の英語力ではなく、ビジネス実務に即した英語力の証明であるCAPこそが、現代のビジネスパーソンの大きな武器となると思います。このアメリカの資格試験は、高い英語力と共に、実践的なマネージメント力が証明でき、世界中のホールダーは約10万人、世界中で通用する資格です。

CAP資格が求める能力(日本語)
*オフィスコミュニケーション(Oral, Written)、ビジネスレター
*人的ネットワーキング
*会議の準備・議事録の作成
*ファイリング管理
*英文会計(P/L B/S)
*マネージメント(経営理論、人事管理)
*タイムマネジメント
*デイシジョン・メイキング 
*IT知識(ソフト・ハード・システム)
*データのセキュリティ管理
*人間工学 

CAP資格が求める能力(英語)
●Organizational Communication
Application of communication, management theories and leadership models
Resolving conflict/ Networking /Team building& dynamics/Presentation/Coaching Mentoring/Public speaking /Multicultural communication/Work productivity/Legality

●Business Writing and Document Production
Creating and distributing of correspondence, documents, reports/
Research and Analysis/Editing and Proofreading/Presentation Software
/Charts and Graphs Web publishing /Creation of Minutes of meetings and Agenda

●Technology and Information Distribution
IT knowledge (Software and Hardware) /Information distributing /
Data utilization and visualization/Internet and SNS / Installation,
maintenance, troubleshooting Backup/Compatibility of software/
Understanding of IT related legal issues 

●Office and Records Management
Understanding of ARMA Guidelines/Electronic and manual filing management/ 
Security for files/ Laws of record storage & confidentiality /
Efficient and effective workplaces
Inventory software/Virtual and traditional offices

●Event and Project Management
Event and travel preparation/Planning of various business travels/
Knowledge of negotiating, budget review, bill explanation when organizing a project

●Operational Functions
HR Related: Professionality and legality/Organizational policies and Procedures   
Recruitment, Staffing, Hiring/Diversity Training /HRM
knowledge/Onboarding and Offboarding processes/ Performance
Evaluation/Orientation
Financial Related: Accounting terminology/creating, tracking, balancing a budget

オフィス・ワーカーを対象としたこの資格は、昇格、あるいは管理職へのステップ・アップに役立ち、多種多様な職種や職位を持つホルダーが世界中で活躍しています。

言い換えれば、CAP試験合格がもたらす成果としては、

●仕事に生かせるビジネス英語力がつく
→ TOEIC等のスコアアップにも大きくつながります。

●広範囲な米国型マネージメント知識を習得することにより、特に外資系では昇進、異動などに有利
→ 英語のミーティングやプロジェクトに自信を持って参加することができます。

●様々な英語のマネージメントノウハウが要求される場面で、英語でリーダーシップを発揮できます。

最後に資格試験の基本情報を載せておきましょう。

・試験日 年2回 3月と9月
・会場 IAAPの指定の受験会場(世界各国にあります)
・試験形式 CBT( Computer-based Testing )方式、四肢選択
・試験時間 3時間半、約300問
・受験料 560ドル(IAAP会員は375ドル)*IAAP年会費175ドル
・受験資格 学位とビジネス実務実績が必要
(高卒:2年以上、短大卒:3年以上、学位なし:4年以上)
*高卒でも受験資格はあります。合格後、実務を積んで正式認定

現在、本誌の特集でCAPの連載を行っています。
http://e-trans.d2.r-cms.jp/

また、バベルユニバーシティでは、以下のように受験準備コースを設けております。
詳細はお問合せください。
http://babel-edu.jp/cap/


第207号 ALUMNI編集室から

第207号 ALUMNI編集室から
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association


  
Minerva Schools at KGI ミネルバ大学
   Nurturing Critical Wisdom for the sake of the World  

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹

さすがシリコンバレー発、大学の既成概念を塗り替えた大学を紹介しましょう。
https://www.minerva.kgi.edu/
バベルユニバーシティも共通点もありながら、学ぶ点も多くあります。

まず、そのミッションを見てみましょう。


The Minerva mission statement―7Guiding Principles
Being Unconventional

We are unique, standing apart from other universities and other ways of learning. We believe there is a better way and refuse to settle for the status quo. We challenge conventional thinking, anticipating needs and desires, and championing novel approaches. By delivering the unexpected — that which brings a sense of mystery, or a moment of delight — we encourage further discovery.
We never do things simply because others do,
instead we develop different, more effective solutions.
このミッションをみると、以前にもご紹介しました以下のTEDのスピーチが思い出されます。
     
     ‘How great leader inspire action’
https://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action?language=ja

Being Human
We are deeply curious and cosmopolitan. We embrace the energy and complexity of the world, seeking to understand the diverse cultures we live in. We build relationships through respectful, personal connections. By celebrating the power of different perspectives, we promote mutual understanding and shared ideas.
We eliminate barriers to human interaction, emphasizing meaningful contact.
Being Confident
We are bold and decisive, unwavering in our commitment and beliefs. We take informed risks and make prudent decisions, without fear of failure. We approach challenges directly, working through adversity and complexity. By acting with conviction, we are able to advance our progressive vision for the future.
We act with clear intent and strong judgment, yet understand that confidence does not mean hubris or arrogance.

Being Thoughtful
We continually analyze, evaluate, and examine, incorporating depth and dimension. We look for things others do not see, including details and information that add nuance and levels of interest beyond what is immediately evident. We are considered in our own views, initiating discussion and debate, and treating those that disagree with dignity and respect.
We never accept superficial thinking or lack of due diligence and expect others to engage with the same level of depth and scrutiny.

Being Selective
We are prestigious, exacting, and rigorous, attracting the finest talent in the world. We focus our time and attention on the people, institutions, and initiatives that are most important for our collective success. We carefully consider what we present to the world, producing high quality with clear intention.
We are not suitable for everyone, but neither are we elitist.

Being Authentic
We communicate openly and candidly, addressing people directly and conveying heartfelt emotion. We welcome honest dialogue, even about sensitive or controversial topics. We impart accurate information with genuine sincerity, building trust and establishing mutual respect.
We avoid anything artificial, false, or contrived; hyperbole breeds suspicion and erodes credibility.
Being Driven
We are ambitious, always pushing to transcend the commonplace. We look for opportunities to improve, refining our approach, and enhancing the outcomes for our students and the world. We work to reach apotheosis, the highest point of achievement. Only by constantly striving to excel will we realize our full potential.
We never settle for “good enough”; if we can’t accomplish excellence, we pursue a different route.

以上、大学らしからぬ、徹底してWHY、何のために存在するかを突き詰めた想いは多くを学ばせてくれます。

How is Minerva different from other undergraduate programs?
The key differences that distinguish Minerva include:
•    Rigorous curriculum based on the science of learning
•    Accomplished faculty focused on student instruction
•    Four years of global cultural immersion
•    Small seminars with fewer than 20 students
•    
Advanced interactive learning environment
•    Lifelong career support services
•    Merit-based and need-blind admissions process
•    Accessible and affordable with tuition $12,950/year

サンフランシスコを拠点に2014年に開校したばかりだが、新設校ながら初年度には98カ国1万1000人以上の応募があり、その合格率は2.8%という狭き門だったと言います。

ハーバード大学、スタンフォード大学、ケンブリッジ大学などの名門大学の合格を辞退して
進学する学生がいると言います。

選考過程は、まず手続き上の基本書類を提出。のちIQテストのような独自のオンライン試験、課外活動の提出、成績表の提出(英語)、さらにオンライン面接が実施されます。
特徴的なのはオンライン面接です。口頭の応答だけでなく、エッセーの提出が必要で、その場で書く過程を面接官がモニタリングすると言う。ノートや辞書は持ち込み不可で、素の
自身の記述能力が問われることになります。

キャンパスはネットの中と世界中、ミネルヴァは、先進的な学校が次々と生まれるベイエリアでも、おそらく最もプログレッシブな大学として知られてます。

世界7都市のキャンパスを移動しながら学ぶ全寮制4年制大学であり、脳科学に基づいた、100%アクティブラーニングを実践しています。

学生はみな寮生活を共にするが、18名ひとクラスの授業は全てオンラインで、なんと教授の側が世界各地からコールインします。MOOCS(Massive Open Online Courses、一般的なオンライン講座)等とは逆の発想です。従って、教員は自分の滞在している研究施設等から授業を行えるので、その分移動コストと時間を節約、研究活動に専念できると言います。

また、すでにMOOC等で優れた講義動画が無料で入手できる時代に、同じような内容の講義を有料で実施するのは非論理的と考えていそうです。もっともです!!

What makes the interactive learning environment better than a traditional classroom?
Minerva’s Active Learning Forum platform uses the latest advances in information technology to provide an engaging class experience that is unmatched. Live, video-based seminars enhance student-to-professor and peer-to-peer interactions by ensuring that everyone is visibly engaged and actively participating. 
The Active Learning Forum also facilitates numerous rapid mode changes, including moving from full group discussion to smaller breakout groups, one-on-one and team debates, collaborative document sharing and editing, as well as dynamic polling and real-time simulations. The platform’s asynchronous tools provide powerful capabilities for students and professors alike, by enabling deeper and more frequent data-rich feedback, schedule and assignment management, and searchable review of prior class footage.

2014年に入学した一期生は2019年に卒業予定。起業を志す学生も多いが、多くの企業からインターシップや雇用についての問い合わせも殺到していると言います。

都市をキャンパスにする。滞在都市にある最新の研究施設、芸術施設、図書館などを利用し、企業、行政機関、NPO等との共同プロジェクト、インターンシップを実施しています。

What is included in the lifelong career services?
Minerva’s Professional Development Agency acts as a personal talent agency. In addition to unlimited consultation sessions, the team of experts provides networking, publicity, and entrepreneurial support. These coordinated services help raise the visibility of your achievements and propel your career forward.


そもそも進取、改革の気質が旺盛なアメリカにおいても規制の大学の硬直性に一般の学生も、業界の人間も呆れつつあったその時登場したのがミネルバ大学だと。

創立時の理念をみると、既成の大学を称して、真のリベラルアーツを提供している大学は見当たらず、次第に大学は、真に知的な人間を育てる方向から、ただ知識を与える方向に退化してしまったと言います。

また、現在のアイビーリーグでは、超富裕層の子弟が入りやすく尊重され、実際には1%の富裕層からの子弟が全体全体の5割になることもあるそうです。

もちろん学費はべらぼうに高く、特に、アメリカ東部の一流大学はある種の学歴社会の歴史の上に成り立っているので、留学生は、伝統的なインナーサークルには入れないし、学校生活で孤立する事例もあると言います。

おまけに、米国の大学生の大半がもらっている連邦政府系の奨学金はまもなくはじけるという噂さえ真実味を帯びて語られています。

更に詳しく、ミネルバをリサーチすると、なるほど本来の教育とは、を思い起こさせてくれます。

ミネルバ大学では、オンライン授業を行っている。不特定多数に一方通行の講義をネットで遠隔配信するだけのオンライン大学ではない、ということです。ではなぜキャンパスを有し生徒たちが顔を合わせられる環境にもかかわらずオンラインの形式をとるのでしょうか。

曰く、「私たちは、オンラインの方が質の高い授業ができると思っています。少人数のセミナー式授業で、講師のモニターには一人一人の表情、作業の手元がはっきり映り、やる気や理解度が手に取るようにわかります。また個人の発言時間を自動的に計測でき発言量のバランスも見ながら講師がクラス進行をでき、音声は自動筆記で即時にテキスト化されるのでフィードバックが早く確実になります。」

Why are all classes small seminars?
Minerva classes focus on building skills and understanding — not mere information dissemination. Cognitive and behavioral research documents that students learn most effectively when actively engaged with the subject matter — a learning approach not that large lectures or other passive forms of teaching do not facilitate. 
Minerva’s small class size, fewer than 20 students — coupled with the advanced Active Learning Forum technology, enables professors to provide expert instruction, direct personal interaction, and frequent feedback, simultaneously ensuring that every student is an active class participant.

オンラインのデモ画面を見ると、教授側からはどの学生がどの程度発言しているか、どの学生がどのキーワードを拾っているかなどが一目瞭然に判るようになっているそうで、特定の学生が授業についていけていないことをアルゴリズムがキャッチすると教授側にアラート(警告)が発されると言います。

効率よく学びを深められるメリットがあるのでオンライン講義システムを採用し授業を行っているので、決して、人とのつながりやグループワークを軽視しているわけではないと言います。

「全寮制を採用しているためグループプロジェクトやクラブ活動は生徒たちが仲間とともに行えるようになっています。」

大掛かりな施設や講堂が不要になるため、コストを抑えることもできます。生活費を含めた学費が年約3万ドルで、これはアイビーリーグのおよそ4分の1ということ。

年間の授業料は1万2950ドル(約145万円)、寮費は1万ドル(約100万円)と決して安くはないが、全米の名門私学大学が4万~6万ドルの授業料であることを考えると比較的良心的な設定で、奨学金も潤沢に給付しているそうです。これは主に、学生寮以外にはキャンパスなどの施設を持たないため設備投資が不要であることに起因していると言います。

How can Minerva offer such low tuition?
Minerva is able to uphold our commitment to affordable education because we only invest in the things needed to provide the best education possible; we don’t invest in expensive real estate, outdated infrastructure, collegiate sports, or unnecessary amenities that don’t directly support your educational experience. This is also why we do not offer faculty tenure; our expert faculty
are here because they want to teach.

「7つの都市のキャンパスを移動する全寮制」とは、いったいどんなものか見てみますと、
ミネルバ大学では、一つの建物に学生全員が住んで共同生活を送っています。

Which global cities are included in the four-year undergraduate program?
Minerva’s residence halls are located in seven major cosmopolitan cities around the world. Students spend their first full year in San Francisco, California in the United States, and subsequent years in up to six other cities: Seoul, Hyderabad, Berlin, Buenos Aires, London, and Taipei.

1年次はサンフランシスコ。そこでは、日本の大学で例えると教養課程のような共通の授業を受けます。HC(Habits of Mind and Foundational Concepts = 思考習慣と基礎概念)。

What makes the Minerva curriculum distinctive?
The curriculum was intentionally structured to teach both breadth and depth demanded by the constantly evolving world, emphasizing on four core skills — thinking critically, thinking creatively, communicating effectively, and interacting effectively. By exposing students to interdisciplinary subject matters and continuously reinforcing key habits of mind and foundational concepts, Minerva teaches a broad and adaptable set of skills and knowledge, applicable to any field.
Depth of learning occurs in the major and concentration courses, and the self-directed Capstone project, where students focus on a specific area of expertise starting in their third year and continuing through their final year.

曰く、「この時点では学生たちの専攻は決めません。今までの経験に囚われず自分の専攻をじっくりと選んで欲しいからです。そのためにまず物事の見方の120パターンの癖を矯正し、4つの学びの基本コンセプトを学びます。」
•    分析 統計手法、論理、意思決定判断、シミュレーションなど
•    複雑系 互いに関係しあう要因を観察する
•    実証分析 仮説を立て、調査・実証してみる
•    修辞学 多様なコミュニケーション方法を探る
   
更に、「これらの過程を経て自分の専攻は2年次に決定します。2年、3年次はブエノスアイレス、ベルリン、バンガロー、ソウルに4ヶ月ずつ滞在。4年次にはイスタンブールとロンドンに滞在します。それぞれの都市には個性とストーリーがあります。大都市だったり、衰退と趨勢を繰り返した街だったり、今変革の真っ只中の街であったり……。基礎学習を経て専攻を選び更に深まっていく年次ごとの学びに合せて、どの都市でどの年次を迎えるのが一番ドラマティックかというストーリーも大学側はきちんと考えているそうです。

滞在する各都市では、その地の企業や団体でのプロジェクト学習、インターンなどが行われ、前述の4つの技能を深く身につけられるそうです。

また、国籍、性別、人種、同窓生の有無によって合格基準を変えることがないことから、全生徒のうち約80%が米国籍外の生徒です。出身国は約40カ国以上に及ぶという多様性があるということ。

また、開校から4年で、43万人以上のフェイスブックのフォロワーを獲得し、MITより多い受験者を獲得できたと言います。

では、なぜ、このような 最先端の学びを生み出すことができるのでしょうか。

加えて、実は最先端のテクノロジー開発や、後述のカリキュラム開発は、全てミネルヴァのfor-profit wing(利益追求を目的とする関連会社)が手掛けていて、ここへはベンチャーキャピタル等から投資を受けて、将来的には他の教育機関へライセンス契約をすることでリターンを上げていくと言います。

ミネルヴァ大学は同社のnon-profit wingであるため、このライセンスを無償で使うことができる仕組みになっており、授業料が更に抑えられていると言います。

創業者のBen Nelson氏は、ネット上で写真ストレージと印刷を手がけるSnapfishというスタートアップのCEOを務めていた実業家として知られる。もともと教育界にいなかったメンバーが集まって理想の教育を追求して始まったが、教育界の既成概念から解き放たれることで、新しい発想を制約なく形にして行くことが可能になったのかもしれない、とのこと。

我々も学ぶべきところは学び、ミネルバの今後に期待したいと思います。



 

第206号 ALUMNI編集室から

第206号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 

今回は以前にも何回か寄稿いただきました九州大学で政治学を講じています施 光恒先生に許可を得て、施先生が他の媒体で披露されたお考えをお届けします。日本人も世界の動きに学ぶ姿勢が、国を動かす人々を筆頭にあるようです。
                                               バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹

 
「ヨーロッパ文明の死?」  
           
                        施 光恒(せ・てるひさ)
                        九州大学大学院比較社会文化研究院准教授法学博士  


日本の実質上の「移民国家化」が着々と進められています。

最近は、現在の入国管理局を改組・拡大し、「入国在留管理庁」(仮称)を設置する方針を政府が固めたという記事が各紙に出ていました。

「入国管理庁に格上げ 来年4月、人材受け入れに環境整備」(『産経ニュース』2018年8月28日配信) https://www.sankei.com/politics/news/180828/plt1808280006-n1.html

去る六月に閣議決定された「骨太方針」で事実上、外国人労働者を大規模に受け入れることが明記されました。介護や建設、農業といった分野に2025年までに50万人超を受け入れるということです。


周知のとおり、欧州では1960年代頃から外国人労働者を受け入れ始めた結果、治安の悪化や社会的分断など様々な社会問題が生じてきました。その先例に学ばず、なぜ日本は愚かな後追いを始めるのでしょうか。

この流れ、自民党が進めている限り、簡単には止まらないでしょう。今秋の自民党の総裁選でも、外国人単純労働者大規模受け入れの是非は争点に全くならないようです。

また、野党も、「リベラル=外国人労働者・移民受け入れに寛容であるべき」だと思い込んでいるので、基本的に反対しないでしょう。

(骨太方針への懸念や「リベラル=外国人労働者・移民受け入れに寛容であるべき」という図式のおかしさについては、少し前の産経のコラムで少しですが書きました。下記のリンクをご覧ください)。
【国家を哲学する 施光恒の一筆両断】「外国人就労拡大 「国民の安寧」への打撃」(『産経ニュース』2018年6月7日付) https://www.sankei.com/region/news/180607/rgn1806070027-n1.html

外国人単純労働者大規模受け入れ推進派の論拠は、概ね「少子化で深刻な人手不足に陥っているのだからしょうがないだろ」というもののようです。

上記の産経のコラムを書いた後、やはり産経新聞から、「ニッポンの議論」という欄で外国人労働者受け入れ問題について賛否それぞれの意見を併記する記事を作るので、反対派として出てくれと声がかかりました。

その際、賛成派がどのような議論を展開するのか、大いに関心があったのですが、期待外れでした。下記のリンクを見ていただければわかるように、賛成派の毛受敏浩(めんじゅ・としひろ)氏の論拠は、やはり「人手不足が深刻だから」だけでした。

【ニッポンの議論】「外国人労働者受け入れ 毛受敏浩氏「人手不足深刻で必要」×施光恒氏「経済安定化に逆行」(『産経ニュース』2018年7月29日付)
https://www.sankei.com/premium/news/180729/prm1807290014-n1.html

賛成派の他の論拠としてたまに耳にするのは、「ダイバーシティ」(多様性)のためだというものです。例えば、経団連の中西宏明会長は、外国人労働者大規模受け入れが必要だという理由は、人手不足以前に「ダイバーシティ」のためだと述べています。

経団連会長「外国人労働者受け入れ拡大を」(『日テレNEWS 24』 2018年6月11日) http://www.news24.jp/articles/2018/06/11/06395597.html

賛成派が最低限しなければならないことは、日本が外国人単純労働者を大規模に受け入れたとしても、欧州のように移民国家化しないこと、また移民国家化のため欧州各国で生じた様々な社会問題から真剣に学び、こうした問題を日本では引き起こさないということを、きちんと説明することだと思うのですが、賛成派でそうしている人をみたことがありません。

外国人単純労働者受け入れ問題に関して、私が最近、講演などでよく触れる本があります。英国のジャーナリストであるダグラス・マレー氏が昨年出版し、同国でベストセラーになっている『ヨーロッパの奇妙な死――移民、アイデンティティ、イスラム』という本です。(Murray, D., The Strange Death of Europe: Immigration, Identity, Islam (London: Bloomsbury Continuum, 2017))。

英国アマゾンのサイトでみると、昨日現在でレビューが702件もついており、平均値は4.8です。英国人の非常に大きな支持を受けています。
https://www.amazon.co.uk/Strange-Death-Europe-Immigration-Identity/dp/1472958004/

この本、私は、中野剛志氏の新刊『日本の没落』(幻冬舎新書)で紹介されていたので興味を持ち読んでみたのですが、衝撃的な内容です。(未邦訳ですが、中野さんの本(特に第四章)で全体の概要が紹介されています。邦訳は、東洋経済新報社から年末~年明け頃、出版される予定だそうです)。

著者のマレー氏は、ヨーロッパは、「自殺しつつある」と述べています。理由は、大規模な移民の受け入れです。大規模に移民を受け入れてきたため、ヨーロッパ各国の「国のかたち」は大きく変容してしまい、その文化的アイデンティティを喪失しつつある。ヨーロッパ人は自分たちの故郷を、近い将来、失うと警告するのです。

マレー氏は、本書を次のような文章で始めています(中野さんの訳文をかなり拝借しています)。

「ヨーロッパは自殺しつつある。あるいは、少なくともヨーロッパの指導者たちはヨーロッパを自殺に追い込むことに決めた」。

「私が言っている意味は、ヨーロッパとして知られる文明が自殺の過程に入っており、イギリスであれ他の西ヨーロッパの国であれ、どの国も、同じ兆候と症状を示しているので、この運命からは逃れられないということだ。結果として、現在生きているヨーロッパ人のほとんどの寿命が終わるころには、ヨーロッパはヨーロッパではないものになり、ヨーロッパの人々は世界の中で故郷と呼べる唯一の場所を失っていることであろう」。 マレー氏の本では、英国をはじめとするヨーロッパ諸国は、どの国の国民も自分たちの国を移民国家にするとはっきりとは決めたわけではないのに、ずるずると取り返しのつかないところまで来てしまった経緯が描かれています。

例えば、英国をはじめとするヨーロッパ各国で、もともとの国民(典型的には白人のキリスト教徒)は、どんどん少数派になってきています。本書で紹介されている数値をいくつかあげてみましょう。

2011年の英国の国勢調査によれば、ロンドンの住人のうち「白人の英国人」が占める割合は44.9%とすでに半数を切っています。

また、ロンドンの33地区のうち23地区で白人は少数派に転落しています。ちなみに、この数値を発表した英国の国家統計局のスポークスマンは、これはロンドンの「ダイバーシティ」(多様性)の表れであると賞賛したそうです。 2014年に英国内で生まれた赤ん坊の33%は、少なくとも両親のどちらかは移民です。オックスフォード大学のある研究者の予測では、2060年までには英国全体でも「白人の英国人」は少数派になると危惧されています。

英国民に占めるキリスト教徒の割合も、過去10年間で72%から59%と大幅に減少し、2050年までには国民の三分の一まで減る見込みです。

他に、例えばスウェーデンでも今後30年以内に主要都市すべてでスウェーデン人(スウェーデン系スウェーデン人)は少数派に転落するという予測もあります。

このように、外国人労働者の受け入れに端を発する移民国家化によって、ヨーロッパ諸国は、民族構成や宗教や文化のあり方が大きく変容しつつあります。正面から十分に国民の意思を問うたわけでもなく、いつの間にか、「国のかたち」がなし崩し的に大きく変わってきてしまっています。その結果、ヨーロッパ文明は死に、ヨーロッパ人はかけがえのない故郷を失うだろうと著者のマレーは警鐘を鳴らすのです。

こうしたヨーロッパ各国の状況は、外国人労働者の大量受け入れをほぼ決めてしまった日本にとっても他人事ではありません。近い将来、『日本の奇妙な死』という本がベストセラーになる日がこのままだと来るのではないでしょうか。

我々は、ヨーロッパの陥っている苦境から学ぶ必要が大いにあります。

追伸:マレーの『ヨーロッパの奇妙な死』については、『表現者クライテリオン』のメルマガ(施担当分)でも異なる角度から少し触れています。そちらもご覧ください。

『表現者クライテリオン』

http://amzn.asia/d/fGoIcLh

 

第205号 ALUMNI編集室から

第205号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 


 
「日本の言語は不便利にして、文章も演説も出来えぬゆえ、英語を使い、英文を用いるなぞと、取るにも足らぬバカを言う者あり(初代文部大臣森有礼)」
― 福澤諭吉

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


今回は前回に次いで、福沢諭吉に学ぶ視座を小浜逸郎氏の著書『福澤諭吉 しなやかな日本精神』を参考に考えていきたいと思います。

「日本の言語は不便利にして、文章も演説も出来えぬゆえ、英語を使い、英文を用いるなぞと、取るにも足らぬバカを言う(文部大臣森有礼)という者あり」と喝破した福澤諭吉。

諭吉が「学問のすすめ」を発刊したとほぼ同時期に、初代文部大臣、森有礼が英語公用語論を唱えた時に、福沢諭吉が森を罵倒した言葉です。 

私企業ならまだしも、安易に戦略特区で公共のサービスの場を英語化しようなどという提案をしている国と地方自治体、スパーグローバルユニバーシティを謳い、日本の高等教育を単純に英語化しようとしている文科省、おまけに英語教育の早期化を小学校で成算もなく進めようとしている文科省等々を考えると改めて諭吉のことばを戒めとしたいと思います。

また、英語を高等教育の言語に採用したシンガポール他、アジア各国、一方日本は日本語による高等教育を堅持しながらも、理系に関しては米国に次いでのノーベル賞を取得してきたという実績。しかし、残念なことに、2,000年を100として、科学技術関係予算の推移を主要国で比較すると、アメリカ、ドイツ、イギリスは1.5倍、韓国は4.7倍、なんと中国は11倍。対して、日本はなんと横ばいの1.06倍。技術立国を真っ向から否定していく政府には呆れます。

諭吉が教えてくれている、西洋と東洋の半ばにあり、日本の在り方を常に考えて、安易に西洋につくこともなく、東洋、日本、そして西洋もしつかり学ぶ姿勢は、日本政府はもちろんのこと我々がしつかりと獲得しておかなければならないでしょう。

改めて、日本の現状を憂い、日本の在るべき姿を問題意識をもって考える時期にきていることを昨今の日本政府の施策をみるたびに思います。

諭吉は明治維新というまさに転換期にこうしたことを考えていたわけですが、我々も今が転換期、転換しなければならない時期にきているという強い認識を持ちたいと考えます。

ご存じだったでしょうか、小浜氏の著書でも引用されていますが(京都大学大学院教授 藤井聡作成データ)OECDが発表している主要国の名目GDPの推移、1990年を100として、ドイツ、フランス、イタリアは200以上、アメリカ、イギリス、カナダは300以上、ところが日本はなんと横ばい。おまけに、1995年から2015年までの20年間の名目GDP成長率は世界の主要国80か国中、最低。いきおい名目賃金も20年間下がり続けているという惨状の日本。こんな現実を意図的にか?政府はもちろん、マスコミも一切触れていないという不可思議さ。

福澤諭吉が生きていればこう思うのではないかと思います。

現状の日本の亡国の3大危機と敢えて言えば、その最たるものは、国民の危機意識の欠如、国を想う意識欠如、いわば、‘ゆでガエルの状態の日本人’を思わざるを得ません。日本の経済的凋落(為政者の失政)を横目に、隣の大国、中国が着々と日本を侵略し(土地を買いあさり)、日本を属国にと目論んでいる状況の中で、今こそ目覚めるときが来ているように思います。

小浜氏も危機意識をもって強く主張しているのは、2つの亡国の危機。

一つは、財務省の緊縮財政路線。すなわち、成長を否定する財務官僚の愚策。これによる今回の各地の水害の主要因であるインフラの整備の遅れ、科学技術の予算削減による技術立国の危機、軍事予算の削減から隣国中国と圧倒的差を付けられつつある国を自力で守る力の弱体化。日本国の愚策は情けない限りです。

その背景には、国の借金1,000兆円、国民一人当たり800万円という財政破綻論のデマ。
国債の発行は全て円建てで破綻などありえない、おまけにあたかも国民に借金があるように(実は国民が債権者)プロパガンダをながしています。

二つ目の亡国の危機は、グローバリズム、新自由主義に対抗する考えが希薄なことです。実質的な移民化政策、教育の英語化、電力の自由化、水道の民営化等も実のところグローバル企業(中国も含む)の餌食にされているだけの現状をどこまで認識しているのでしょうか。

それもこれも日本独特の民間議員を野放図にした結果であることは承知しているでしょうか。議員でも何でもない財界の要人を、未来投資会議、経済財政諮問会議等の名目で参画させ、実のところかれらが自分たちの関連した企業に利益誘導をしている(健全なロビーイングならまだしも)、私利をむさぼる構造を生み出してしまった日本。

この稿では決して政治に深入りしたいわけではないのですが、今の日本を健全に憂うる姿勢が望まれます。

福澤諭吉は、一般に誤解されているような西洋かぶれではなく、真摯に日本を想い、西洋の文物をいわば‘翻訳的方法’で、しつかり咀嚼し、日本的な文脈で‘翻案’していく姿勢を堅持していました。第二の福澤諭吉の誕生が待たれます。

第204号 ALUMNI編集室から

第204号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 


 
今、偉大なる‘翻訳者’、福澤諭吉が生きていれば?


 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


「学問のすすめ」

天は人の上に人を造らず、人の下に人をつくらず、と云えり。

 

人は生まれながら平等であると言われているが、

現実には大きな差がある。それはなぜであろうか。

その理由は、学んだか学ばなかったかによるものである。

学問を身につけ、自分の役割を果たし独立すべき。

自由とわがままは異なる。学問とはその分限を知ることである。

自分の行いを正し、学問を志し、知識を広め、各自の立場に応じて才能と人格を磨き、

外国と対等に付き合い、日本の独立と平和を守ることが急務である。

 

 福澤諭吉の「学問のすすめ」は、明治維新の5年後、1872~76年に書かれています。人口が3500万人の当時、340万部も売れた驚異のベストセラー、今日で言えば、日本の人口が1億2千万人であるとすると、なんと1200万部ということになります。

 

 当時の日本は明治維新を経て、言わば強制的に鎖国を解かれ、本格的なグローバル社会へ突入した、まさに激動期、社会、国家革命を目前にした時です。

 

 この本は、まさに新しい時代を拓く指南書として多くの日本人が貪り読んだ本でした。

 

 従って、「学問のすすめ」は単なる個人の能力至上主義を唱えたものではなく、個人の社会的あり方、役割を説いたもので、個人が自立するなかで国家自体の繁栄が成し遂げられる事を説いています。これが独立自尊。

 

 今という時代の課題を考えると、当時、日本が直面していた難題と不思議と符合すると言われます。

 

・グローバル化の波が押し寄せ、右往左往する主体性を欠く日本

・近隣諸国が謂れなき侵略意図をほのめかし、

・国は長期の財政赤字で破綻寸前

・政府は企業優先、庶民を顧みない

・社会制度の崩壊、遅々として進まない構造改革

 

等々の状況を見ても、当時、福澤が指摘すると同様、今こそ、次の時代への明確な展望を持つべきときに来ていると思います。国に依存せずに、個々が自らできることを自覚するときにあると考えます。

 

そんな時代に福澤諭吉が唱えたのが実学のすすめ」

 

ここで私は、時代意識を転換する新しい視点として、優れて実践的な学であるべき翻訳、

日本の世界における新たな役割を示唆する「翻訳のすすめ」、いや『日本発信のすすめ』を今こそ皆さんとともに考えていきたいと考えます。

 

世界がボーダレス一つになる中、各々の言語を生かしつつ、情報の共有化を図り、世界を融和、相互発展させるには『 翻訳 』は欠かせない方法論と考えます。日本は‘翻訳立国’と言われて久しいにも係わらず、国家レベルの施策において翻訳の占める位置付けはあまりにも低いとしか言いようがありません。細やかなコミュニケーションスタイルをもつ日本人の特性を持ってすれば、多・双方向翻訳で『翻訳再立国』を果たし、東西、南北の橋渡しとなり、日本と世界との情報格差を無くし、その‘多・双方向翻訳力’を持って世界に貢献するという図式もあながち夢物語ではないと考えます。

 

 そのために、バベルは翻訳大学院を2000年に設立しましたが、翻訳高等教育の在りかたにとどまらず、国家レベルの施策としての『 翻訳ナショナリズム の構築』をめざしたいと思います。

 

 日本は明治維新以来、福沢諭吉をはじめ、西周、中江兆民をはじめ多くの啓蒙家が、西欧の文化、文物を‘和魂洋才’を念頭に急速に取り入れ、国家の近代化を果たしてきました。これは、換言すれば、‘翻訳’を通して当時の西欧の先進文化、文明を移入してきたと言えます。俗に、‘翻訳立国―日本’と言われる所以です。

 

 六世紀から七世紀にかけて中国文化を移入したときには大和言葉と漢語を組み合わせて翻訳語を創り、明治維新以降は西欧の人文科学、社会科学等のそれまで日本にはなかった抽象概念を翻訳語として生み出してきました。societyが社会、  justiceが正義、truthが真理、reasonが理性、その他、良心、主観、体制、構造、弁証法、疎外、実存、危機、等々、これらの翻訳語は現在のわたしたちには何の違和感もなくなじんできているのは承知の通りです。

 

 翻って、この‘翻訳’の現代に占める社会的位置は、と考えてみると、不思議なくらい、その存在感が読み取れません。

 

 もちろん、巷では、翻訳書を読み、政府、また企業でも多くの予算を翻訳に割いています。また、ドストエフスキー、トーマス・マンをはじめ、世界中の古典文学を何の不自由もなく親しめる環境があるのも事実です。また、将来を展望しても、ITテクノロジーによる更なるボーダレス化を考えても翻訳は計り知れないビジネスボリュームを抱えています。

 

 一説には、一般企業が年間に外注する翻訳量は金額に換算して、2000億円市場とも言われます。これに、政府関係、出版関係(デジタルを含む)、更にアニメ、マンガといったコンテンツ産業関連を加算すれば、優に、一兆円を越える市場規模になると言われます。

 

 とすると、過去は言うに及ばず、今後、日本のビジネス取引、文化形成における‘翻訳’の役割は、想像以上に大きいと言わざるを得ません。そうした認識をふまえ、現状の日本の‘翻訳’の在るべきかたちを見直し、受信型翻訳から発信型翻訳へシフトし、西と東の融合に大きなきっかけを提示できればと考えます。

 

今、偉大なる翻訳者、福澤諭吉が生きていれば???

かれは豪放磊落にこう言ったかもしれません。

 

『 一身独立すれば一家が独立し一国が独立する。一人ひとりがその目で世界を観て、

世界の中で日本の果たすべき役割を考えよ。日本はその深く、細やかなコミュニケーション力をもって世界の融和に果たせる力量を備えているということは誰しも否定しないであろう。まずは大志を抱き一人ひとりが行動してみよう。

やってもみないで事の成否を疑うな! 』と。

 

更に、福澤諭吉は、翻訳者はどうあるべきかを問われて、こう言うかもしれません。

 

『行動する翻訳者たれ!!

その目で、その五感で良きものを見極め、それを己の文化に取り込み、更に己の文化を掘り下げこれを世界に伝えよ!そして、東西の半ばに立ち、東西文化、東西文明の融合に尽力せよ!!』と。

 

次回は、本年5月に刊行された小浜逸郎著「福澤諭吉 しなやかな日本精神」を参考に、今、福澤諭吉に学ぶべきこと、誤解の多い諭吉の本質に迫り、決して旧くなっていない、むしろ今こそ学ぶべき諭吉の思想を紹介します。

 


 

第203号 ALUMNI編集室から

第203号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 


 
国のアイデンティティを‘翻訳’で守る


 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


 我が国は古来こういう国なので、こうありたい、と堂々と自国を主張しにくくなっているのが昨今のヨーロッパ事情のようです。

 

 人、モノ、金、情報の自由な移動、グローバリズムを盲目的に良しとしている人は、そもそもこの願い自体が意味のない事と言うのかもしれませんが。

 

 例えば、今、ドイツはドイツ人がドイツはこういう国だ、と堂々と言えない国になりつつあると言います。これらの国へは年間何十万人もの移民が、特にイスラム系の移民が流入していて、自国のことを声高に主張すると、レイシスト呼ばわりされる国になりはて、おまけに、流入する移民たちは凶悪犯罪の温床にもなっているとも言われています。

 

 日本も着々と移民国家への道を歩んでいるのをご存知でしょうか。コンビニの店員がアジア系というのは身近に感じているのでしょうが。我々が知らないところでこの移民化政策が進行しつつあります。

 

 技術研修生という名のもとに日本に5年間滞在、その後はその技術をもって母国に貢献するというのがその制度の目的だったはずですが、これからは、更に5年更新され、一定の要件を満たせば、専門技能の人材として家族帯同が許され、実質的に移民なっていくと言います。また、定員割れの大学、各種学校が留学生と称して受け入れるに関しても移民化につながるグレーな部分が多いと聴きます。更に、介護、農業の分野でも同様の危惧が感じられます。

 

 もちろん、私もこのような移民政策の全てを否定するわけではないのですが、資格要件は明確にしなければ、それに関する様々な利権がもぐり斡旋ビジネスに利用され、なし崩し的に緩い移民受け入れ制度になる危険性もあります。例えば日本であれば、その要件の一つとしてその専門技能等の基本要件はもちろんですが、少なくとも日本語の能力を明確に資格審査に加えるなどしないと、ヨーロッパの二の舞になるのは明らかです。

 

 世界で最も移民の割合が高いのはUAEで、人口の88%。次いでフランス領ギアナが40%、サウジアラビア37%、スイス30%、オーストラリア29%、イスラエル25%、ニュージーランド23%、カナダ22%、カザフスタン20%などの順で、米国は15%、ドイツも15%、英国は13%、イタリアは10%となっていますが、日本もこれらに次に位置する状況にあると聞きます。

 

 では、この移民化政策がなぜ、ひそかに進んでいるのでしょう。一つは経済界の要請、人件費を上げたくない、生産性向上より、安易に、人件費を抑えるために移民化を後押ししているようです。その背後には、自らの利益を優先するグローバル資本家、株主の意向があることは明らかです。

 

 加えて、無防備な日本、それに付け込んで入り込んでくる中国をはじめとする移民予備軍。中国はいわば一帯一路に象徴されるように、世界の覇権国家たらんとし、各国に人民を送り込んで洗国(Ethnic Cleansing)を企んでいるというのがその歴史からも想像できます。

 

 中国本土の高額な医療費を逃れるために、日本で起業、ビザを取って3年もすると、日本の国民健康保険に加入でき、中国では膨大な治療費がかかる高額医療を日本で受けられると言います。おまけに、高額医療費を逃れ、日本の国民保険を食いものにする仲介ビジネスが中国本土で活況を呈しているといいます。情けないことに、日本の厚生労働省はその実態すら把握できてないという体たらくだそうです。

 

 こうした実態をみると、少なくとも移民政策の先進国?のヨーロッパの惨状を知っているのかと日本政府に言いたくなるところです。のほほんと移民化政策を進める日本。その無防備な日本にあきれるばかり。アメリカの傘のもとに危機感を忘れ去ってしまった日本に今こそ自立と自律が必要なのでしょう。

 

 スーパーグローバルユニバーシティとかいって日本の高等教育の英語化政策も、別の意味での欧米金融資本に洗国をうけているとも言えるのではないでしょうか。日本は明治以来、他のアジア諸国と違い日本語を堅持して翻訳を通じて国の在り方をここまで維持してきたわけですからその事実をしっかり受け止めて英語導入には慎重さが必要でしょう。

 

 万世一系の2000年の系譜をもつ天皇家を擁する日本という国体すら、女系天皇制というまやかし議論のもとで侵されようとしていることをどれだけの日本人が危機感をもって感じているでしょうか。

 

 こうしてアイデンティティを喪失していくのは、安易な移民問題に加えて、グローバル化のもとの安易な英語化政策を進めることも英米の2流国に甘んじることなので、同様の結果になることを肝に銘じましょう。日本語、日本文化というアイデンティティを大事にして、あくまでも自立し、翻訳を通じて自立した者同士互いの意思疎通を図るという健全なコミュニケーションスタイルをめざすべきでしょう。

 

 翻訳はいわば自立のためのソフトパワー、このソフトパワーを隅に置くのではなく、前線に置く時代が来ているように思います。


 

第202号 ALUMNI編集室から

第202号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 


 
公選された世界最高齢の国家主席、マハティール


 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


 本年5月、マレーシアで政権交代、マハティール元首相が率いる野党連合が大方の予測に反して総選挙で勝利。
 
  親日家で、「ルック・イースト(日本の経済成長を見習おう)政策」を首相就任中に推し進めた92歳のマハティール・ビン・モハマド氏が5月9日に行われた選挙で勝利し、マレーシア首相に返り咲きました。
 
 中国が南シナ海を埋め立て、軍事基地化をしようと企んでいる今、また、前首相が中国に操られていたことを考えると、反中国路線を鮮明にしているマハティール首相の返り咲きは歓迎すべきことです。
 
 ランドパワーの国、中国がいまやシーパワーになって世界の覇権を、と考えているのでしょうが、なぜ、日本にその危機感を持つものが多くないのでしょうか。中国が南シナ海を占拠してしまえば、石油やその他の資源などを中東から南シナ経由で船で運んでいる日本は、回り道をしなければならなくなります。国民にのしかかる費用は莫大なものになります。
 
 マハティール首相に「立ち上がれ、日本人」(新潮新書)という著書があります。
 
 その著書の中で、マハティール首相は、2002年にマレーシアを訪れた日本の修学旅行生たちに向かって「あなたたちは日本人の勤勉な血が流れているのだから、誇りに思いなさい」と訴え、感激して涙を流した生徒もいたという記述があります。
 
 また、著書には、
「軍国主義はよくないことだが、愛国主義的であることは悪いことではない。愛国主義は国が困難を乗り越える上で助けになる。祖国を守ることと攻撃的な軍国主義は同義語ではない」
「はっきり申し上げれば、いまの日本人に欠けているのは自信と愛国心です。日本が『愛国心』という言葉に過敏になる理由は、私にもわかります。 確かに、過去に犯した多くの過ちを認める用意と意思は持たなければならない。しかし半世紀以上も前の行動に縛られ、恒常的に罪の意識を感じる必要があるのでしょうか」
 
 自虐史観に侵されている日本人の猛省をここで求めたいと考えます。
 
 これからの多難な国家運営に90代の高齢であることを不安視する向きもあるようですが、報道で見る限り、その意欲は100歳をも超えて輝くように確信しました。
 
 日本だけではなく、世界でも人生100年時代というのが現実的になってきたように思います。高齢になっても自分のやりたいことを持ち続け、それに情熱を傾け続けられる強靭な精神力と体力を持ち続けるには、ミッション、というより確固たる使命もつことに尽きると確信します。
 
 使命、すなわち何に命を使うかが定まれば、90歳、100歳を超えてでもはつらつといられることをマハティール首相は教えてくれているように思います。
 
 まだ66歳の私としては、感謝、感謝です!!


 

第201号 ALUMNI編集室から 

第201号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 


 
凋落する日本の科学技術力


 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


 
6月13日の朝日新聞によると、
『政府は今年6月12日、科学技術について日本の基盤的な力が急激に弱まってきているとする、2018年版の科学技術白書を閣議決定した。引用数が多く影響力の大きい学術論文数の減少などを指摘している。

 白書によると、日本の研究者による論文数は、04年の6万8千本をピークに減り、15年は6万2千本になった。主要国で減少しているのは日本だけだという。同期間に中国は約5倍に増えて24万7千本に、米国も23%増の27万2千本になった。

 また、研究の影響力を示す論文の引用回数で見ると、上位1割に入る論文数で、日本は03~05年の5・5%(世界4位)から、13~15年は3・1%(9位)に下がった。

 海外の研究者と共同で書いた論文ほど注目を集めやすいが、日本の研究者は海外との交流が減っている。14年度に海外に派遣された研究者の数は7674人だったが、15年度は4415人に。海外から受け入れた研究者の数も、15年度以降は1万2千~1万5千人程度で横ばいを続けている。

 白書は大学に対し、会議を減らして教員らが研究に割ける時間を確保することなどを提言。政府には研究への十分な投資や、若手研究者が腰をすえて研究に取り組める「環境の整備」などを求めた。(小宮山亮磨)白書では、この状況を打開するために、大学に対し、 「会議を減らして教員らが 研究に割ける時間を確保すること」などと責任逃れを言っています。

 実のところは、2000年を100として、各国の科学技術関係予算の推移をドイツ、イギリス、中国、韓国と比較すれば明らかですが、アメリカ、ドイツ、イギリスは1.5倍、韓国は4.7倍、なんと中国は11倍と言う状況です。対して、日本はなんと横ばいの1.06倍。国立大学が法人化された2004年には1兆2415億円だった国立大学法人運営等交付金は、 2017年には1兆0970億円にまで削減されたと言います。

 文部科学省は、法人化の際に「今回の法人化は、財政支出の削減を目的とした 「民営化」とは全く異なるものです」と説明していましたが、国立大学が法人化された2004年には1兆2415億円だった国立大学法人運営等交付金は、2017年には1兆0970億円にまで削減されました。

 それは単に、2004年以来の緊縮路線に過ぎず、長期的な研究開発がほぼ不可能の状況になっているのが現状のようです。

 国を支える人材、教育投資が後手に回っていることは、このコーナーで何度か指摘してきましたが、国を支える技術投資までもがここまで遅れをとって大丈夫でしょうか。せめて米英独並に科学技術関係予算を増やし、長期的研究に取り組める体制をとらないことには日本の長期停滞は払拭できないのではないでしょうか。

 
以上
 

第200号 ALUMNI編集室から 

第200号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 


  ‘Independent’の時代へ

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


 アメリカの唱える経済システム、民主主義、政治システム、軍事政策、そして教育システムに普遍性があるとの幻想に操られてここ30年突っ走ってきた日本。ここで言うアメリカとは今、崩壊、変貌しようとしているグローバリストが主導する、1%が主導するアメリカ。

しかし、トランプが大統領選挙という民(People)の意思で出現したことにより、あのアメリカでさえ、グローバリストにNo!を突きつけ、アメリカファースト、自国のPeople を尊重する政策に舵をきったわけです。

それに先んじていたのが英国、英国は2016年、民の意思でEUから脱退を決意して、イングランドファーストに向かっています。

翻って日本は1952年に実質的に占領下を離れたとはいえ、いまだに緩いアメリカの占領下におかれているかのようにアメリカに追従をしています。そもそも憲法9条を堅持するという姿勢ですらアメリカの核の傘のもとにあるからこそ言えることでしょう。

世界の大きな潮流はまさにIndependent に向かっていると言えるでしょう。Independent な人、社会、国が、Independent な人、社会、国とInter-Independentな関係をもって、
融和していく。そこには一定レベルの争いもあるでしょうが、それを覚悟で調和をめざす必要があるのでしょう。

最近の文科省の小学校での英語教育政策の提案、大学をスパーグローバルユニバーシティと持ち上げて、米国を中心とするグローバリストの甘言に乗って進んでいる大学、大学院の授業の英語化、受験でのTOEFLの採用、英語での論文推進、等の行き過ぎた愚行をここらで改める時期に来ているように思います。

米国の教育行政が破綻しかけていると言うと大げさかもしれませんが、日本は米国の教育
システムをモデルと考えているようですが、米国では州立大学を卒業するに生活費を含めて年間400万円から500万円かかるといいます。一流の私立になるとなんと年間で1,000万円以上もかかるといいます。こんな学費等を破綻寸前の連邦政府の奨学金でほとんどの学生が賄っているといいます。米国の異常な状況を追従するように、日本の大学生も卒業時に500~600万円の借金を抱えて社会人になると聞きます。まさに、病的に肥大化して改革すらできない米国の教育システムを周回遅れで追っかけているようです。

一昨日、文部科学省が進めている専門職大学構想の説明会に行って強く感じたのは、
アメリカ流Degree Inflation, これは結局のところ、大学になりたいとの願望を抱える専門学校、各種学校向けの政策としか思えません。

この点で言えば、米国を代表するハーバード大学に象徴されるように、大学ではいわばリベラルアーツ、人文、社会の広い教養を学び、そのうえで大学院教育では、専門職業教育(例えばロースクール、メディカルスクール、フアーマシースクール、ビジネススクール)に移行する、というシステムは妥当なシステムに思えます。

『天は人の上に人を造らず、人の下に人をつくらず 
    人は生まれながら平等であると言われているが、
    現実には大きな差がある。それはなぜであろうか。
    その理由は、学んだか学ばなかったかによるものである。
    学問を身につけ、自分の役割を果たし独立すべき。
    自由とわがままは異なる。学問とはその分限を知ることである。
    自分の行いを正し、学問を志し、知識を広め、各自の立場に応じて才能と人格を磨き、
    外国と対等に付き合い、日本の独立と平和を守ることが急務である。』
 
福澤諭吉の「学問のすすめ」は、明治維新の5年後、1872~76年に書かれています。人口が3500万人の当時、340万部も売れた驚異のベストセラーで、今日で言えば、日本の人口が1億2千万人であるとすると、なんと1200万部に相当する販売ということになります。
 
当時の日本は明治維新を経て、言わば強制的に鎖国を解かれ、本格的なグローバル社会へ突入した、まさに激動期、社会、国家革命を目前にした時です。
 
この本は、まさに新しい時代を拓く指南書として多くの日本人が貪り読んだ本でした。 
従って、「学問のすすめ」は単なる個人の能力至上主義を唱えたものではなく、個人の社会的あり方、役割を説いたもので、個人が自立するなかで国家自体の繁栄が成し遂げられる事を説いています。これが独立自尊、すなわちIndependent です。
 
諭吉が当時、日本が直面していた難題と考えていたのが以下の通りですが、不思議と今の
我々の課題と符合するように思います。
 
・グローバル化の波が押し寄せ、右往左往する主体性を欠く日本
・近隣諸国が謂れなき侵略意図をほのめかし、
・国は長期の財政赤字で破綻寸前
・政府は企業優先、庶民を顧みない
・社会制度の崩壊、遅々として進まない構造改革
 
等々の状況を見ても、当時、福澤が指摘すると同様、今こそ、次の時代への明確な展望を持つべきときに来ていると思います。外国に振り回されずに、また、国に依存せずに、個々が自らできることを自覚し、実行するときにあると考えます。

 
以上
 

第199号 ALUMNI編集室から 

第199号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 

今、なぜ‘教育的翻訳’が必要なのか
―新連載スタート『総合的な翻訳による英語教育』

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹


 この号より、大阪大学名誉教授、成田一先生の『総合的な翻訳による英語教育』の新連載がスタートします。連載はこれまで悪者扱いにされていた文法訳読方式を正しく変換する
英語教育の観点からの‘教育的翻訳’の必要性を具体的な方法論も含めて書いていただきます。現状の袋小路に入った観が否めない、中高レベルの英語教育(本当は幼児、初等教育も同様ですが、これは改めて)を打開する大きなヒントが満載です。

詳しいことは成田先生の連載に委ねるとしまして、この連載を主催する立場として、今、なぜ、‘教育的な翻訳’という観点が必要なのかを考えてみます。これは実は、中高生に限らず、幼児の言語教育、今、文科省が必死に進めている初等教育にも当てはまる本質的な考えを含んでいると考えます。

はじめに、‘教育的翻訳’という意味を考えてみましょう。例えば、私、バベルは過去約10数年間、日本ディベート協議会(現 日本ディベート協会)と協力して、米国のディベートチャンピオンを日本に招いて日本全国を英語、そして日本語でディベートコンテストを催す機会を得ました。その際に、使われたのが‘教育的ディベート’、すなわち、ディベートを通じて日本人に議論、討論できる力を養っていこうと言う意味です。教育の方法としてディベートという技法を活用するという考え方です。同様に‘教育的翻訳’とは翻訳という方法を活用して、まずは英語力、そして日本語力、読解力、表現力等、考える力のベースを涵養するという考え方です。

では、今、なぜ、教育的翻訳なのかを考えてみたいと思います。

これを考えるにあたって、4半世紀前に私がバベルにおいて行ったある実験的企画に触れたと思います。それは、当時、バベルの教育部長であった長崎玄弥先生と中学2,3年生を7,8人集めてある実験をしました。長崎玄弥先生は当時、‘奇跡の英語シリーズ’で100万部を越える売り上げを誇っていた天才的英語の使い手でした。彼は日本をいっさい出ることなく、英語ネイティブと、丁々発止の議論、喧嘩もできるという天才でした。そのプロジェクトでは英単語が500語から1,000語に限定された英語のラダーエディションを教材に翻訳演習を試みたのです。

そこでは、文法、構文の理解から発音までの技法を伝えつつ、単なる英文解釈ではなくきちんとした日本語に翻訳するという訓練でした。そして驚くべきことに約1年この訓練を終えると生徒の英語力は言うに及ばず、国語、社会、数学等の学校での成績が1段階か2段階上がったのです。その後、私たちも根気強くこのプロジェクトを続けて実証データを積み上げていけばよかったものの、その後、翻訳の社会人教育、翻訳の大学院を米国に設立するなどの他の仕事にとらわれてこれができなかったことが今でも悔やまれます。

この辺の、翻訳の視点からの英語教育の課題打開の方法論が今回の連載で見えてくるように思います。

ここで今、なぜ、教育的翻訳なのかを考えるにあたって更にこれを抽象化して考えると
こんなキーワードが思い浮かびます。

多文化共生
異文化融合

今の世の中がどういう方向に進もうとしているか、その辺の経緯となぜ、いま多文化共生、
異文化融合なのかは丁度この前の号で触れていますので、その一部を転載させてください。

次のステージは、多文化共生の時代、お互いの文化の違いを認め合って共生していく社会のように思います。
また、それこそが翻訳の真髄と考えます。 

あのサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」を人種差別の書と断定する米国知識人に中国とは違った大覇権主義の限界が見え隠れします。常に普遍を追求して違いを消去してきた米国。それに反して、植民地政策の歴史を持つ英国は国際政治において揉まれたことにより、文化差に対しては経験的に理解し対処しよう言う姿勢をもっています。

また、この多文化を認め、その上で、自文化を重んじる、ある意味の度量(否、戦略)が英国のEU脱退、BREXITにつながったのかもしれません。 

1853年ペリーの来航からから始まった日本の極めて浅い国際政治への参画、対して百戦錬磨の英国のような国とは比べようもないのですが、日本の行く末を考えていくには、経験に不十分ながらも代替できるヒストリーリテラシーを高めることが必要と考えます。 

我々、バベルグループができることと言えば、政治、経済の領域ではなく、国家の文化・社会戦略としての‘翻訳’を考えることと確信します。 

なぜなら、翻訳こそ、多文化共生に基づく世界の融和政策だからです。


これからの世代、小・中・高校生が生きていくべき世界は、しつかりと英語で書け、話せることが期待されます。翻訳は書くことを中心に展開される知的作業です。バベルの持論は
‘書ければ話せる’、‘Write as you talk, talk as you write’です。そのためには文法は
必須学習内容です。英語でメールを受け取った時に文法的なミスが散見される文章を見せると知性を疑われる、これが私のビジネスでの苦い実体験です。

翻訳はこうした英語の基本技術を学ぶことは言わずもがなですが、しっかりとした日本語を書く的確な訓練にもなります。

更に言えば、多文化共生、異文化融合の時代、翻訳で訳文を創りだすことが、異文化融合
体験となります。英語と日本語の格闘の中では、日本と違う異文化をどう受け入れ、伝えていくのか、どんな訳語を選ぶのかと言った様々な葛藤があります。

これこそが、なぜ、‘教育的翻訳’が必要なのか、究極の回答になるのではないでしょうか。

更に加えるなら、オーラルな日本語、英語の習得には翻訳ならぬ、‘教育的通訳’を考えたいと思っています。これには、今は亡き上智大学名誉教授渡部昇一さんの実証的論文を思い出します。

第198号 ALUMNI編集室から

第198号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 

ヒストリーリテラシーを高める
―‘翻訳’から日本の行く末を考える

 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹
 


 私が、20有余年、老荘思想によるマネージメント(Tao Management)を学んできた田口佳史先生が、課題に直面した時に、物事の本質をとらえ行動に移す時の大切な指針として言われたことは、

 ・多様性の視点

・長期の視点

 そして、そこから導かれる

・根源的な視点

が必要であるということでした。

 

世の中は、生々流転の過程で様々なものが生まれ消え、また生まれ、多様化が促進されます。しかし、この多様性に振り回せれないためには、長期の視点、すなわち、歴史に学ぶという姿勢が必要であるということです。

 

これにより課題のソリューションにつながる根源的視点が持てるとのことでした。

 

確かに現状を近視眼的に観ていると、その多様性に目をくらませられて本質が見えなくなってしまいます。しかし、ここにいったん、長期の視点、すなわち歴史の潮流に身を置いて考える、あるいは、そのことの歴史的な背景はどうだったかを辿ることにより現状の光景もその見え方が相対化され、更には抽象化され、違って見えてくるように思います。

 

例えば、日本にとっての翻訳の歴史をとってみても、その歴史を知ることにより新しい気づきを得られるものです。

 

これは、再三言ってきていることではありますが、翻訳は単に異国の文化を言語変換して享受してもらう行為と一面的にとらえてしまうと翻訳のもつ根源的部分を看過してしまいがちです。

 

6,7世紀ころから中国文明を消化、吸収するに中国文化を和漢折衷で 受け入れ、真名、仮名、文化を作り上げできた融通無碍な翻訳日本文化。

 

明治維新以降も、翻訳という方法を通じて、欧米の当時の先進文化を土着化することによって民度を上げて世界のトップに躍り出た日本。

 

日本は明治の近代化で翻訳を通して知的な観念を土着化し、だれでも世界の先端知識に触れられる環境を創ってきました。ひとつ間違えれば、国の独立さえ危ぶまれた明治の日本は当時の英語公用語化論を退け、翻訳を通じて日本語による近代化を成し遂げました。

 

明治維新以降、先人、福澤諭吉、西周、中江兆民等々が、西欧文化、技術、制度、法律等、日本にない抽象概念を数々の翻訳語を創って受け入れてきました。 societyが社会、 justiceが正義、truthが真理、reasonが理性、その他、良心、主観、体制、構造、弁証法、疎外、実存、危機、等々。

 

しかし、その後、日清戦争、日露戦争に勝利して、国際政治において舞い上がって第二次大戦では敗戦、半植民地状態になって今に至る日本。とは言え幸運にも日本語を堅持し、日本文化、日本の国体を維持しつつある幸運な国、日本。

 

一方、英語による支配の序列構造の中で、英語公用語を採用して、二流国を甘んじて受け入れたインド、マレーシア、ケニアなどの旧イギリス植民地諸国、フィリピン、プエルトリコ等々。

 

明治維新以降の初代文部大臣、森有礼が劣った言語、日本語を廃止して英語に変えると言ったときに強硬に反対、この案をつぶした福澤諭吉をはじめとする先達に脱帽です。

 

世界の歴史潮流は、人、モノ、金の自由化、移民受け入れ、小さな政府、市場開放、英語化という所謂、グローバリズムにNo!を宣言しているにも拘わらず、いまだにグローバリストの先鋒である英米金融資本に踊らされて、郵政民営化、司法制度改革、商法改正、農業移民受け入れ、学校の英語教育早期導入、スーパーグローバル大学の授業の英語化等々、グローバリストの意向を唯々諾々と受け入れ、最後尾をのろのろ走っている日本。

 

このままでいけば、英語化二流国家、格差社会、自信喪失社会が目の前に見えてきます。

 

これらの経緯を読み解くと見えてくる将来の世界、それは世界の歴史が東と西の選手交代するという村山節氏の歴史800年周期説というより、次のステージは、多文化共生の時代、お互いの文化の違いを認め合って共生していく社会のように思います。また、それこそが翻訳の真髄と考えます。

 

あのサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」を人種差別の書と断定する米国知識人に中国とは違った大覇権主義の限界が見え隠れします。常に普遍を追求して違いを消去してきた米国。それに反して、植民地政策の歴史を持つ英国は国際政治においてももまれ、文化差に対しては経験的に理解し、対処しようとしています。この多文化を認め、その上で、自文化を重んじる、ある意味の度量(否、戦略)が英国のEU脱退、BREXITにつながったのかもしれません。

 

1853年ペリーの来航からから始まった日本の極めて浅い国際政治への参画、対して百戦錬磨の英国のような国とは比べようもないのですが、日本の行く末を考えていくには、経験に不十分ながらも代替できるヒストリーリテラシーを高めることが必要と考えます。

 

我々、バベルグループができることと言えば、政治、経済の領域ではなく、国家の文化・社会戦略としての‘翻訳’を考えることと確信します。

 

なぜなら、翻訳こそ、多文化共生に基づく世界の融和政策だからです。

 

 

第197号 ALUMNI編集室から

第197号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 

Shohei Otani に学ぶこと
 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹
 


 

まず以下の曼荼羅チャートをご覧ください。

 

皆さんは仏教の曼荼羅をヒントにした曼陀羅チャートをご存知だったでしょうか。私も20年前くらいでしょうか、ビジネスの世界に入って「目標達成のためのシート」として、事業計画や問題解決などに利用しました。類似のもので言うとトニー・ブザンのマインドマップなどもその種のツールかと思います。

 

以下をご覧ください。これが現在大リーガーで活躍するOhtani選手が高校1年の時に書いた曼陀羅チャートです。

 

シートの9つの四角の中心にある四角が、「達成するための要素」になります。そして、その四角は9つのマスに区切られていて、中心のマスに「達成目標」を書き入れるのです。大谷選手は「ドラ18球団」、ドラフト会議で8球団から1位指名を目標としました。


 

大谷翔平が花巻東高校1年時に立てた目標達成表

 

 (注)FSQ、RSQは筋トレ用のマシン  (出所)スポーツニッポン

 

「ドラ18球団」に必要なことは

・体づくり

・コントロール

・キレ

・スピード160km/h

・変化球

に加え、なんと

●メンタル

●人間性

●運

と書いています。

 

メンタルでは

 ・はっきりとした目標、目的をもつ

 ・一喜一憂しない

 ・頭は冷静にこころは熱く

 ・雰囲気に流されない

 ・仲間を思いやる心

 ・勝利への執念

 ・波をつくらない

 ・ピンチに強い


人間性では、

 ・愛される人間

 ・計画性

 ・感謝

 ・継続力

 ・信頼される人間

 ・礼儀

 ・思いやり

 ・感性


なんと、運では、

 ・ゴミ拾い

 ・部屋そうじ

 ・審判さんへの態度

 ・本を読む

 ・応援される人間になる

 ・プラス思考

 ・道具を大切に使う

 ・あいさつ

 

これらの信念を読むと、今のようなスターダムにのぼり詰めるのは最初から約束されていたとすら思えます。

 

私自身も、叔父が読売ジャイアンツ、南海フォークスの投手だったので、高校は投手として甲子園めざしてをいたのですが、大谷選手が高校1年生の時にここまでの人生設計図を

描いていたことにただただ驚くばかりです。

 

一方で最近の活躍の後の大谷選手のインタビューで強く印象にのこるのは、

‘そのこと自体を楽しむ’という姿勢です。

 

ご承知のように、孔子の論語でも、

「之れを知る者は之れを好む者にしかず。

 之れを好む者は之れを楽しむものにしかず。」と言われています。

 

すなわち、

 

「ある物事を知っている人は、それを好む人には勝てない。」

「ある物事を好む人は

 それを楽しんでいる人には勝てない。」

 

結局は楽しんでいる人には誰にも勝てない、

ということです。

 

年齢に関係なく、学ぶべきは学ぶという姿勢で生きていきたいと考えます。

第196号 ALUMNI編集室から

第196号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

 

思考法が変われば、幸せになる!?
 

バベル翻訳専門職大学院(USA)  副学長 堀田都茂樹
 



 最近、坂本尚志氏による「バカロレア幸福論」というユニークな著書に出会った。その帯には「日本人が不幸なのは、哲学をやっていないからだ!!」とある。その前書きで、失業率、殺人発生率、交通事故死者数、肥満率といった社会生活を平穏に送る上で重要な指標を日本とフランスを比較している。どのデータも日本の方がフランスより、良い数値を示していながら、国連の「世界幸福度報告(2016年)」によると、150以上の調査対象国の内、フランスは幸福度が32位という自己評価。対して日本は53位。この違いは一体何かを論証していく書籍だった。

 

 結論から言うと、その原因は、フランスの大学入試統一試験の中にある、バカロレア哲学試験にある。バカロレア試験は日本でも最近は導入準備をしているところも多いようだが、フランスでは大学進学を目指す高校生のほとんどが受験するという。

 

 この過程で、彼らは様々な哲学的な立場や議論を学びそれらを使って哲学小論文という「思考の型」を使って表現する。フランス人は高校時代に徹底的にこれを練習する。

 

 翻って、日本はというとOECDのPISA、15歳時の学力調査はひところのゆとり教育の低迷から一転、2015年は科学的リテラシーと数学的リテラシーは1位、読解力は6位と自慢げだが、哲学的思考訓練をしているとは聞いたことがない。

 

 ご承知のように、日本の高等教育たるやさんざんたる状況だ。世界基準となっている英タイムズ・ハイアー・エデュケーションの世界大学ランキングでは東京大学がアジアNo.1の座をシンガポール国立大学に譲り、一気にアジア7位、世界39位まで低落している。

 

 おまけに日本では有名な早慶上智ですら300位以内にすら入っていないという体たらく。その主な理由は補助金頼み、経済的に自立できない、これに加え、教養教育の貧弱さと言われている。この辺は、高校時代より哲学教育を行うフランスとの違いも鮮明だ。

 

 一般教養というと欧州が本場と考えがちだが、実のところ現在ではリベラル・アーツ教育をしっかり実践しているのは、ハーバード、プリンストン、イェールなどのアイビーリーグや、リベラル・アーツ・カレッジ(全米に280校余り在る)が主力。米国では日本と違って専門課程の教授より、教養課程の方がステータスが高いと言われている。

 

 世界有数の優秀な学生は教養過程でその知的筋力と自ら考える力、思考の型を養うと言われる。

 

 こうして考えると、幸せ観をもって職業生活を平穏に暮らす技術も、幸せとは何か、働くとは、翻訳の仕事とは、それらの問いかけを自らに向け、その背景となる教養を磨き、哲学し、その「思考の型」を学ぶことが、これからの翻訳者はもちろん、幸せに働きたいもの全てに求められているように思う。

 

 今一度、翻訳者としてどう幸せに生きるか、ともに考えていきたい。

 

 アメリカの哲学者、心理学者であるWilliam Jamesが言うように、

 

・心(思考)が変われば行動が変わる。

・行動が変われば習慣が変わる。

・習慣が変われば人格が変わる。

・人格が変われば運命が変わる。

 

思考が変われば、運命すら変わるのだから。

 

 

第195号 ALUMNI編集室から

第195号 ALUMNI編集室から 
発行:バベル翻訳大学院 ALUMNI Association

スタートの春に向けて

――目標へのステップとして、翻訳修士号を取得し翻訳資格にも挑戦しよう

バベル翻訳専門職大学院(USA)  Alumni Service 宮本寿代


 

 みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

もうすぐ4月です。大学院で学習中の方も、すでに修了された方も、新たな気持ちで春をお迎えのことと思います。

 

 大学院生のなかには、ご自身のお仕事やご家庭との両立に苦労され、なかなか先に進まないという方も少なからずいらっしゃいます。でも翻訳を勉強しようと決めて大学院に入学されたのですから、まずは大学院の修了をひとつのマイルストーンとしてがんばりましょう。苦労して勉強されたことはきっとご自身のお力となって、将来、役に立つはずです。春はスタートの季節です。これまでの学習状況を振り返り、これからどのように進めていきたいのかを改めて考えてみましょう。もしも何かお困りのことや、お悩みのことがありましたら、ご遠慮なくご相談ください。大学院では院生のみなさまを支援するためにコンサルティングを実施しています。ぜひご活用ください(http://www.babel.edu/support/)。
 

 また、大学院を修了されてご活躍中の方も、ご自身を振り返り、さらなるスキルアップを目指して新たな目標を立ててみてはいかがでしょうか。大学院では修了生の方からのご相談もお受けしています。修了以来、ご縁が続いている方もこれまではあまりご縁のなかった方も、ぜひ積極的にご連絡ください。

 

 大学院を修了して翻訳修士号を取得することは、大きな目標です。でも、翻訳者としての数々の通過点のひとつです。修了生の方はおわかりかもしれませんが、修士号を取ったからといってすぐにお仕事が途切れずに舞い込んでくるとは限りません。業務経験を重ね、実績を積み上げていかなくてはなりませんが、その道のりは決して楽なものではないと思われている方もいらっしゃるでしょう。

 

 そんななかで、自分自身の実力を知るためのみならず、ほかの方に知ってもらうためにも、客観的な尺度でスキルを測るというのも方法のひとつです。一般社団法人日本翻訳協会(JTA)でも、翻訳に関するさまざまな検定試験を実施しています。「出版翻訳能力検定試験」と「ビジネス翻訳能力検定試験」があり、それぞれ以下のような分野にわかれています。
 

 ○出版翻訳能力検定試験

  ・絵本翻訳能力検定試験 

  ・ヤングアダルト・児童書翻訳能力検定試験

  ・エンターテインメント小説翻訳能力検定試験

  ・ロマンス小説翻訳能力検定試験

  ・スピリチュアル翻訳能力検定試験

  ・一般教養書(ビジネス関連)翻訳能力検定試験

  ・一般教養書(サイエンス関連)翻訳能力検定試験

  ・出版シノプシス能力検定試験
 

 ○ビジネス翻訳能力検定試験

  ・IR/金融翻訳能力検定

  ・リーガル翻訳能力検定

  ・医学/薬学翻訳能力検定